弾突バトル!フリックス・アレイ 第24話

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第24話「悪夢の決勝戦!ドライブヴィクター魂のシュート!!」
  

 遠山カップ会場。
 バンとレイジの試合が終わり、Bブロックの準決勝の試合が行われていた。

『さぁ、白熱の遠山カップもあと2試合を残すのみとなった!
次に行われるのは、準決勝第二試合!ザキ君VS川田史郎君だ!!ザキ君はスクールが誇る最強のフリッカー、そして川田史郎君はスクール最高クラスに所属しているフリッカーだ!これは、スクール生同士の頂上決戦となる屈指の好カードだ!!』

 ザキと史郎がフィールドの前に立った。
「スクールの切り札だかなんだかしらないけど。Sクラスの誇りにかけて、僕は君を倒す!」
 史郎は凛とした表情でザキと対峙した。
「けっ、次元が違うんだよ」
 ザキは、そんな史郎を鼻で笑うようにして吐き捨てた。
 
 そしてバトルが始まる。

『さぁ、アクティブを制して先攻を取ったのは川田史郎君だ!!』
「いけっ!ドライブフレーム!!!」

 史郎が狙いを定めてシュートした。まずは攻撃ではなく移動させるようだ。
 機体を移動させた位置は、真ん中の障害物の手前だ。
『さぁ、史郎君は早速障害物の手前に量産ドライブヴィクターをつけた!これはスタンダードな戦術だ!これでは次のターンザキ君は攻撃できないが、どうするんだぁ!?』

「攻撃できない……?」
 ザキは実況の言葉を聞いて、ピクッとコメカミを動かした。
「随分と舐められたもんだ」
 ザキはシェイドスピナーを構えて、力を込めた。
 ギシギシと力を込める指が軋む音がする。
「はああああああああああああ!!!!!」
 バシュッ!!

 ザキが超パワーでスピンシュートを放った。
 しかし、その方向は中央から若干ずれており、端に設置されている障害物に向かっている。
『な、なんだぁ?シュートミスなのか、ザキ君のシュートは狙いが逸れているぞ!』

「ふっ、さすがのザキも準決勝で緊張してるのかな?」
 実況の言葉と余裕な史郎を見て、ザキは心底軽蔑するように笑った。
「けっ、無能どもが。ミスかどうか、しっかり味わうんだな!!」
 ガッ!!

 シェイドスピナーが回転しながら隅の障害物にぶつかる。
 すると、急激にシェイドスピナーの軌道が変わり、中央の障害物に隠れているはずの量産ドライブヴィクターに向かって突進した。
「なにっ?!なんだあの反射角度は……!」
「だから無能だっつったんだよ!!」

 バンとリサは、その様子を客席の方から見ていた。
「なんだよ、今のシュート……」
 驚くバンに、リサは冷静に分析した。
「スピンシュートで反射角度を調節したんだ……それで」
「隠れた相手にも攻撃できるって事か……!」
 レイジとは違った形で障害物を無視したシュートをするザキを見て、バンとリサは驚愕した。

 バキィィ!!
『なんと!ザキ君の攻撃がヒット!!凄まじい衝撃に、量産ドライブヴィクターはたまらず場外にフッ飛ばされた!!!』

 場外にフッ飛ばされた量産ドライブヴィクターは、地面に叩きつけられて砕けてしまった。
「そ、んな……」
 史郎は砕けた愛機を見つめて、ただ茫然としていた。
『さぁ、序盤から圧倒的な力を見せつけたザキ君!史郎君の逆襲はあるのか!?』

「なに言ってんだ、てめぇ」
 ザキはバトルフリッカーコウをギンッ!と鋭く睨み付けた。
『え、なんだい……?』

 その迫力にたじろぎながらもバトルフリッカーコウは受け応えた。
「規定によれば、フリックスがシュート出来なくなればその時点で自動的に勝敗が決まる。奴のフリックスをよく見てみな」

『え?……あっ!』

 ザキに言われて、コウは気づいた。
 場外した量産ドライブヴィクターのシャーシが砕けており、とても次のバトルに耐えられるものではない。
『こ、これは……!量産ドライブヴィクター、再起不能!第二セットは耐えられないと判断されたので、第一バトルをもって勝者はザキ君に決定だ!!!』

「そ、そんな……たった一撃で買ったばかりのフリックスが」
 史郎は、呆然自失と言った表情で膝をついた。

 観客席のバンとリサ。
「ひっでぇ、相手のフリックスを壊すなんて。反則だろ、あんなの!!」
 ザキのバトルを見て憤るバンの頭上から、良く知った男の声が降ってきた。
「甘いな、段田バン!」
「え?」
 見上げると、そこにはMr.アレイが立っていた。
 ただでさえ満員の客席の中に立っているので、他の客はかなり迷惑そうだが、本人は大して気にしていないようだ。
「Mr.アレイ!?」
「フリックスバトルは、フリックスをぶつけ合う競技だ。つまり、競技に勝つためには、意図的に破壊を避けながら戦う事は100%不可能!例えザキに破壊の意志があったとしても、それを証明する事が出来ない以上、反則はとれない!」
「ぐっ……!」
 悔しいが、Mr.アレイの言うとおりだ。
 ぶつかりあう事を前提とした競技である以上、相手を全く傷つけずに勝利する事など不可能に近い。
 そんな競技をして、フリックスを破壊されたとしても、誰も文句は言えないのだ。
「今のバトルは、単純にザキが相手よりも強かったと言うだけだ。圧倒的にな」
「そ、そりゃ、そうかもしんないけど」
 理解は出来ても、納得が出来ない。
「それよりも、明日は我が身だぞ。段田バン」
「え?」
「決勝戦。お前が同じ目に合わないという保障はどこにもない」
 そう言い放つMr.アレイの瞳は黒く、そこから真意をくみ取る事は出来ない。
「俺が、負けるってのかよ……!」
 バンは拳を握りしめて、Mr.アレイを睨み付けた。
「違うな」
「え?」
 バンの疑問には返答せず、Mr.アレイは踵を返した。
「な、なんだよ!言いたい事があるならハッキリ言え!!」
 呼び止めようとするバンに、Mr.アレイは振り向きもせずにこう言った。
「これだけは言っておく。何があっても、決して立ち止まるな」
 それだけ言うと、Mr.アレイは飛び上がって去ってしまった。
「なんなんだよ、あいつ……」
 もう見えなくなったMr.アレイの方向に向かって、バンは小さくぼやいた。
「でも、ザキは本当に強いよ。大丈夫、バン?」
「ったり前だ!ここまで来た以上、もう勝つしかねぇんだ!」
 勝機があるわけではない。だが、だからと言って怖気づいている場合でもないのだ。
「……バン、耳貸して」
 リサはコソっとバンに何かを伝えた。
「え……!」
 バンはリサの言葉に驚いた。
「もし、勝機があるとしたらこれしかない」
「リサ……分かったぜ!絶対勝ってきてやる!!」

 と、そうこうしているうちに決勝戦の時間になった。
『さぁ!波乱含みだった遠山カップもいよいよ決勝戦だぞ!!勝ち上がってきたのは、ガッツなアタックが得意技!段田バン君!!対するのは、今大会優勝候補!スクールの秘密兵器、ザキ君だ!!』

 フィールドを挟んでバンとザキが対峙する。
「久しぶりだなぁ。少しは腕を磨いてきたか?」
「あぁ!あの時の俺と思うなよ!!」
「なるほど。腕を磨いただけじゃなく、少しは勝機も用意していたか」
 ザキは、バンの顔を見ただけでそれを看破した。
「っ!」
「何があるかは知らねぇが、楽しみにしておくぜ」

『それでは、今回のフィールドの紹介だ!!今回は、直径1.7メートルの円形フィールドが舞台だ!中央と四隅に障害物が設置してあるぞ!!
フェンスが無い分フリップアウトはしやすいように思えるが、今までのフィールドよりも広大な分力加減が難しいぞ!!』

 観客席で見ているレイジと剛志。
「剛志、大丈夫?やっぱり医務室に戻った方が……」
「心配するな、十分休息はとったんじゃ。それより、あいつの試合はこの目で見届けんとな!」

 少し遠くでリサは心配そうに見ている。
「バン、気を付けて……」

『そんじゃ、そろそろおっぱじめるぞぉ!!3.2.1.アクティブシュート!!』

「おっしゃぁ!!いくぜ、ドライブヴィクター!!」
 バンが気合いを入れてドライブヴィクターをシュートする。
 バシュッ!!
 バンはドライブヴィクターを、自分側近くの障害物にピッタリくっつけた。
「ふん」

 対するザキは珍しくストレートシュートして奥へ進んだ。

『バン君、まずはドライブヴィクターを障害物に接触させた!フリップアウトを防ぐ作戦か!?そしてザキ君はヴィクターよりも奥へ進んだ!先攻はザキ君だ!』

「なるほどな。障害物の影に隠れても俺のシェイドスピナーの前では無意味だ」
「でも、障害物が支えになってれば、フリップアウトは防げる!」
「少しは考えてきたようだな。だがっ!」
 バシュッ!!
 ザキは、障害物に支えられているドライブヴィクター目掛けてスピンシュートを放った。

『ザキ君は、防御態勢は万全のドライブヴィクターへとシュートを放った!この位置からではフリップアウトは狙えないはずだが……?』

「甘いっ!!」
 バゴォォ!!!
 シェイドスピナーはスピンによってドライブヴィクターの弾き方向を調整していたらしく、障害物から剥がすようにしてドライブヴィクターをフッ飛ばした。
「うっ!!」
 キュルキュルとドライブヴィクターはフィールド端へと滑っていく。
「耐えろぉぉ!!」
 ガッ!

 さすがにこの状態では十分に力は伝わっていなかったらしく、バリケードでなんとか耐えきった。
「は、はぁ……!」
「耐えたか」
「一撃で終わってやるかよ……!」
「へっ、良い心がけだ」

 バンのターン。
「本番はここからだ……!いっけぇ!ブースターインパクトォ!!」
 バンは、いきなりブースターインパクトを繰り出した。

『なんとぉ!バン君、試合開始早々の必殺技!!しかし、ドライブヴィクターの軌道とシェイドスピナーの延長線上には障害物がある!このままぶつかっても、シェイドスピナーは障害物に守られてしまうだけだが……?!』

「いっけぇ!!」
 ガッ!
 ドライブヴィクターがシェイドスピナーにヒットする。しかし、シェイドスピナーは回転してそれを受け流し、ドライブヴィクターは障害物に叩きつけられた。
「む……!」
 ザキの表情が一瞬動いた。
「よし!」

『渾身のブースターインパクトだが、不発に終わった!……あぁ、っとしかしぃ!?ドライブヴィクターはシェイドスピナーと位置が入れ替わり、逆に障害物に支えられる位置につけた!!』

「てめぇ……シェイドスピナーのスピンの特性を逆に利用したな……!」
 シェイドスピナーはドライブヴィクターの攻撃をいなしたのではない。
 ドライブヴィクターがわざと攻撃の重心をズラす事によって、攻撃を与えつつ捻じ込んだのだ。
「この位置につけるためには、ブースターインパクトでもしなきゃ無理だったからな」
「随分と臆病じゃねぇか。てめぇはバカみたいに突っ込むのだけが取り柄なんじゃねぇのかよ」
「……」
 ザキの問いに答えずにいると、ザキは軽蔑するように鼻で笑った。
「宗旨替えか、まぁいい。だが、俺に隙が出来るまで耐えきれると思ってるのか?」
 ザキのターン。
 至近距離からのスピンシュートでドライブヴィクターを左方向へ弾き飛ばす。
「ドライブヴィクター!!!」
 ギャギャギャ!!!
 障害物にこすれてブレーキになったおかげで、何とかこれもギリギリでバリケードで持ちこたえた。
「くそっ……!一撃一撃が重すぎる……!」
 たった一発防御するだけでかなり体力を削られてしまう。
 ドライブヴィクターもボロボロだ。
「でも、これしかないんだ!!」
 バンのターン。
 バンは再び必殺技の構えを取った。
「いっけぇ!ブースターインパクトォ!!!」
ズギャアアアアアアア!!!!

『バン君、必殺技の連発だぁ!!すさまじい勢いだが、シェイドスピナーは障害物を支えにしている!フリップアウトは難しいぞ!』

 バキィ!!

 障害物に密着しているシェイドスピナーの横っ腹にドライブヴィクターの剣先がヒット。
 ヴィクターと障害物に挟まれたシェイドスピナーはその圧力で右方向へ吹っ飛ぶ。
 そして、ドライブヴィクターは障害物にぶつかって停止した。

『やはり決め手にはならない!お互いにHPは無傷のままだが、ドライブヴィクターの物理的なダメージは大きい!こんなに必殺技を使って、大丈夫なのか?!』

「はぁ、はぁ……!」
 ザキの攻撃とブースターインパクトの二連続使用によって、バンの息は切れている。それでも気力は失うまいとザキを見据える。
「なるほど、必殺技の攻撃力で有利な位置へ俺を徐々に誘導してるってわけか。悪くはねぇが、そんな戦い方がいつまでも続くと思うなよ?」
「続けてやるさ……!何が何でもな!!」
「ほぅ」
 ザキのターン。
 シェイドスピナーをセットし、ドライブヴィクター目掛けて左回転のスピンシュートを放った。
 バキィ!!
 シェイドスピナーから見てドライブヴィクターの左側には障害物が無い。左回転によって、障害物から引きはがされるようにドライブヴィクターがフッ飛ばされた。
 ガンッ!
 ドライブヴィクターは反対側の障害物に激突して停止した。
「あ、ぶねぇ……!」
「運が良いな、お前」

『立て続けにシェイドスピナーの猛攻を受けるドライブヴィクター!機体強度もバン君の体力も、そろそろ限界か?』
 バンのターン。

「ここからが、正念場だ……!」
 バンは、じっくりと狙いを定めてシェイドスピナーを見据えた。
「ここでミスれば全部水の泡だ……頼むぜ!ブースターインパクトォ!!」
 再びブースターインパクトを放った。
 空気を切り裂きながらシェイドスピナーへ猛突進。

 バゴォ!!
 シェイドスピナーにヒット。しかし、シェイドスピナーは障害物に密着しているため、全く動じない。
 それどころか、真芯を捉えてヒットしてしまったため、衝撃が作用反作用でドライブヴィクターに返ってしまい、ドライブヴィクター自身が反対側へフッ飛んでしまった。
が、運よく中央の障害物の影に隠れる事が出来た。

(これで、状況は整った……!)

『ドライブヴィクター!自らの反動で、攻撃したにも関わらず弾かれてしまった!が、なんとか陰に隠れる事は出来たが……!』

「シェイドスピナーの前には隠れたって無駄なんだよ!!」
 ザキが障害物に向かってスピンシュートを放った。
 ガンッ!
 反射を利用してドライブヴィクターに迫る。
 そして……。
「今だっ!!」
 迫って来るシェイドスピナーのタイミングに合わせてステップでヴィクターの向きを変えてアタックをいなした。
「なにっ!」
 いなされるまま、シェイドスピナーは障害物にヒットし、その反動でフィールドの端まで滑って行き、止まった。
「よかったぜ……反射してシェイドスピナーのスピードが落ちてなかったら、絶対に成功しなかった……」
「てめぇ……最初からこれが狙いか!」
 強大な力に勝つには、受け流して逆に利用してしまえばいい。
 まともにシュートを喰らってはバンのテクでは受け流しは成功しないだろうが、陰に隠れて、クッションを入れる事でシェイドスピナーのスピードと攻撃精度を落とすことによって、ドライブヴィクターでもいなしを成功させる事が出来たのだ。
「へへっ、リサの言うとおりにして正解だったぜ。いなしたおかげで有利な位置のまま俺のターンだ!」
 次のターン。障害物もなく、シェイドスピナーは場外を背に向けている。十分にフリップアウトを狙える!
「だが、甘いな。俺の技を忘れたか?」
 ザキは余裕の表情を崩さない。
 ここでフリップアウトされても、アンデッドリバースを使えば生き返る事が出来る。
 そして今度こそ、満身創痍のバンをいたぶり倒す事が出来るだろう。

『さぁ、バン君絶好のチャンスだ!このままキッチリフリップアウトを決めて、先制ダメージを与えるかぁ?!』

「いくぜ……」

 バンはブースターインパクトの構えを取る。
「その構え……てめぇ今にこの状況を分かってるのか?こんなところで必殺技使っても自滅しちまうぞ」
「だろうな」
「なんだと…!てめぇ、フリップアウトしたいのか自滅したいのかどっちだ!?」
「どっちもだ!!」
「どう言うことだ……!」
 バンは狙いを定めた。
「ブースターインパクトォ!!!!」

 バゴオオオオオオオオオ!!!!

 ドライブヴィクターがブースターインパクトでブッ飛ぶ!

 ガシュッ!!!
 ドライブヴィクターの攻撃を受けて猛烈にスピンしながらシェイドスピナーは場外へ飛んでいく。
「へ、何企んでるか知らねぇが乗ってやる!」

 しかもドライブヴィクターも勢いが止まらずに後を追うように場外してしまう。

「使うまでもねぇが、せっかくだ。アンデッドリバース!!」

 ガンッ!
 シェイドスピナーは壁にぶつかった反射でフィールドへ戻ろうとする。
 しかし……。

「よし、いまだ!」
「なに!?」

 戻ろうとしたシェイドスピナーの先に、場外へ飛び出したドライブヴィクターがあった。
 バキィ!!
 空中で激突!弾かれたドライブヴィクターはフィールドへ戻り、シェイドスピナーは場外してしまった。

「やった!成功した!」
「空中で、追撃だと……!ちっ、それで自滅する勢いで必殺技撃ったのか」

『これは大番狂わせだ!!これまで、他者を寄せ付けない圧倒的な強さを誇っていたシェイドスピナーが、まさかまさかのフリップアウト!!バン君とドライブヴィクターの底力を見せてくれたぞぉぉぉぉ!!!』

 観戦席の剛志&レイジ。
「す、すごいすごい!あのザキをフリップアウトしちゃった!!」
「ああ、さすがじゃ!バン!!あのザキを追い詰めたぞ!!」

 リサもホッと顔を綻ばせていた。
「やったね、バン……!」

 その歓声を聞きながら、ザキは徐々に平静を取り戻していった。
「はぁ、ったく。少し余裕かましすぎたな」
 ポリポリと後頭部を掻いて、顔を上げた。
「俺を追い詰めた……か。てめぇは、そうは思ってないみたいだな」
 ザキはバンの表情を見ながら言った。
 バンは、フリップアウトさせたにも関わらず緊張を解いていない。
「あぁ。よく分からねぇけど、正直まだ勝てる気は全然しねぇ。俺の方がリードしてるはずなのに、ほんとお前はすげぇや」
「その認識は正解だ。お前はただアンデッドリバースを封じただけだ。俺とシェイドスピナーを追い詰めたわけじゃない」
「……!」
 確かに、今のはザキがただアンデッドリバースを過信して油断していたから勝てただけの話。
 まだまだ実力で勝てているわけじゃない。
「せっかくここまで善戦してくれたんだ。次は俺の力の片鱗を見せてやる」
「っ!」
 ザキはまだ何か隠し球がある。そして、バンの手にあるドライブヴィクターはここまでのダメージの蓄積で所々ヒビが入っている。状況は決して良いとは言えない。
(ドライブヴィクターも、もう限界か……無茶させてすまねぇ……!でも、あとちょっとだけもってくれ……)

『さぁて、そろそろ仕切り直し行うぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「よく見ておけ、バン。本当の恐怖をな……!」
「っ!」
「はああああああああああ!!!」
 バシュッ!!
 ザキがフルパワーでシェイドスピナーをスピンシュートする。

 キュルルルルルル!!!!
 シェイドスピナーがものすごい勢いで回転する。
 が、距離が足りず、ドライブヴィクターに届く前に失速してしまった。
(なんだ……何をしてくるんだ……!)
 ザキから発せられる得体の知れない威圧感を警戒し、バンは軽めのシュートを撃った。それでも進んだ距離はバンの方が長い。

『ザキ君、凄まじいパワーでのシュートだが、届かず!さぁ、バン君の先手だ!』

 運良くドライブヴィクターからシェイドスピナーの延長線上にマインがある。普通に撃てばマインヒットできるはずだ。

(とにかく、あと一回マインヒットすれば勝てるんだ……このターンで……!)
 バンがドライブヴィクターに触れようとしたところで、ザキが吼えた。
「まだだぁぁ!!」
「え?」
 シュンシュンシュン!!
 シェイドスピナーを良く見てみる。

『シェ、シェイドスピナーは、まだ動いていた!その場にとどまり、猛烈な回転を続けている!!』

「な、なんだ、この回転は……!」
 シェイドスピナーの回転は止まるどころか、ますます勢いを増している。

『シェイドスピナーの回転はまだとまらない!!不気味な轟音を鳴り響かせながら、回り続けている!!!』

 ビュウウウウ……!
 風が吹いた。
「……風?」
 その風が、シェイドスピナーの回転に合わせ大きくなり、巨大な旋風となる。

『こ、これは……!シェイドスピナーの回転力によって、竜巻が発生したぁぁ!!なんなんだこれはぁぁぁ?!』

「い、一体……!」

 ズズズ……!

 気づくと、ドライブヴィクターがカタカタと振動し、徐々に徐々に動いていっていた。ドライブヴィクターはシェイドスピナーの巻き起こした竜巻に吸い寄せられているようだ。
「ド、ドライブヴィクター?!どうしたんだ!!」
「無駄だ。もうドライブヴィクターは逃れられない。シェイドスピナーの引力からはな!!」
「なにっ!」
 成す術もなく、ドライブヴィクターは無防備のままシェイドスピナーの元へと吸われていく。
 そして、そのまま接触する……!
「闇よ渦巻け……!ブラックホールディメンション!!!

 バキィィ!!!!

 接触した瞬間。ドライブヴィクターはボディを砕かれながら木の葉のように吹き飛ばされ、地面に叩きつけられた。

「う、うわああああああああああああ!!!!!」

 

           つづく

 

 次回予告
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




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