爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション最終話

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爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション
 
 
☆☆☆前回のあらすじ☆☆☆
 
 
 ほにゃらか中学校。
 
「なぁなぁ郷田山~!」
「ググレカス」
「俺まだ何も言ってないよ!?」
 
 
☆☆☆あらすじ終了☆☆☆
 
 
 
最終話「君の微笑みに抱かれて ホールド・スリーピング・ホッピング」
 
 
 
 
「う、うぅ……ん……」
 土砂が焦げる臭いが鼻につき、僕は目を開いた。
 目の前に広がるのは、雲ひとつない真っ青な空。
 背中には、ゴツゴツと砂利が当たっていて少し痛みがある。
 周りには、木々が生い茂っており、ここが人気の少ない近所の山道だと言う事を悟った。
 
「僕……は……」
 状況を把握するために上半身を起こそうとすると、激痛が走った。
「ぐっ!」
 全身が、まるで動く事を拒絶しているかのごとく軋んでいる。
 感覚としては筋肉痛の時の痛みに近いが、痛みの大きさは段違いだ。
「うぅ……」
 とは言え、ソッと動けばなんとか痛みを感じずに済みそうだ。
 僕は、痛みに気を使いながら上半身を起こした。
 
「……」
 視界が高くなるだけで、状況把握能力は飛躍的に向上した。
 
 そう、ここは、自宅から病院に行くまでに通る、人気の少ない山道。
 そして、僕は、姉ちゃんを病院に連れて行くために、嵐の中、ストームランサーを漕いで……そして……。
 
「っ!ストームランサー!!」
 
 そうだ!あの時、勢いに任せて韋駄天・ホッピングを繰り出したいせで、雷に打たれたんだった!!
 何故か僕は無事だったけど、大切な愛機のストームランサーは……!
 
 僕は、必死で辺りを見回し、愛機の姿を見つけて、慌てて駆け寄って、愛機の安否を確認する。
 
「よかった……無傷だ」
 ストームランサーは、所々焦げてはいるが、大事には至らなかったようだ。
 
「うぅ…ん……」
 その時、傍らで女性の声が聞こえた。
 ハッとしてその方を向く。
「姉ちゃん!」
 忘れてた!
 姉ちゃんは不治の病に侵されていて、それで病院まで連れて行こうとする途中に雷に打たれたんだ!!
 
 僕は慌てて駆け寄って、姉ちゃんを抱きかかえた。
「姉ちゃん!姉ちゃん!!!」
 姉ちゃんは、虚ろな瞳で僕を見つめてくる。
 その瞳の輝きは、弱弱しく、今にも消えてしまいそうだった。
「……」
 僕は唇をかみ締めた。
 
 僅かな可能性にかけて、全身全霊でMTBを走らせたというのに
 結局、結局間に合わなかったのだ。
 
 
 僕は、姉ちゃんを、救えなかった……
 
 
「ぐぐ……!」
 許せない。
 姉ちゃんの反対を押し切って
 自分の勝手な判断で、姉ちゃんの命を奪ってしまった
 
 僕は、姉ちゃんを、殺したも同然なんだ……!
 
「あれ?」
 僕が自分自身への怒りに打ちひしがれていると、姉ちゃんがなんとも間抜けな聲をあげてきた。
「???」
「動いてる……私の心臓、動いてるよ!」
 
 思考が、上手く働かない。
 
 動いてる?心臓が?
 
 そんな、バカな。
 だって、姉ちゃんは、不治の病で、しかも雷に打たれたのに
 もう、死んでるはずなのに……。
 
 お前はゾンビか!!
 
 と言う突っ込みが喉まででかかったが、さすがにそれは失礼だと思って飲み込んだ。
 
「ゆうくん!私、生きてる!!もう、病気も治ったみたいよ!!」
「えええええええええ!!!!」
 
 何その超展開。
 頭おかしいんじゃねぇか?
 
「よくやったな、ユウジ!!」
 僕が、状況を上手く把握できずにいると、頭上から大人の男の声が聞こえてきた。
 顔を上げると、そこには、半裸で髭もじゃの男が立っていた。
 
「お、オヤジ!!」
 そう、そいつは、極村原河ショウ……僕の父親だった。
 何故、こんな所に……?
 
「不思議そうな顔してるな」
 そりゃ、そうだよ。
 何故、こんな所に……。
 
「ふっ、簡単な事だ。車に乗っていれば雷が落ちても車のボディが電流を受け流すと言うのは周知だろう?
それと同じ原理だ。MTBのフレームは、雷を受け流す!!」
 いや、そこじゃなくてさ。
 
「そして、MTBによって弱まった電流が、アイの患部へと働きかけ、不治の病を治してしまったんだ!!」
 だから、そこじゃなく……って、えええええええ!!!!
 
「そんなバカな!!!」
 ありえるのか、そんな事が!?
 僕が頭を抱えていると、ソッと姉ちゃんが僕の頬に手を添えてきた。
「ありがとう、ゆうくん……」
「姉ちゃん……」
 僕は、その手を握り締めた。
 温かい。これは、姉ちゃんの中に流れる血液の温度だ。
 
 そうさ。ありえるかどうかなんて、問題じゃないんだ。
 今、この瞬間に姉ちゃんが生きていてくれている。
 それだけで、十分じゃないか。
 
「よかった……本当によかった……!」
 僕は姉ちゃんを抱きしめて、静かに涙を流した。
「ゆうくん……」
 
「まさに、奇跡だ……!」
 
「それは違うぞ、ユウジ!」
「え?」
「これは、奇跡などではない!!」
 オヤジは、穏かな、それでいて凛とした声で言う。
「これは、お前のMTBに賭ける想いが起こした、幻だ!!」
 
「僕の、MTBに賭ける想いが……」
 そうか……そうだったのか……!
 
「今まで、本当によく頑張ったな。我が息子よ……」
「オヤジ……」
 僕は立ち上がり、オヤジと向き合った。
 
 今までずっと、僕を置き去りにしてきた男。
 今までずっと、恨み続けていた相手。
 今までずっと、対面したいと願っていた敵。
 
 僕は、ついに、同じ土俵へと上がったのだ。
 
「フッ。MTBライダーの顔になってきたな、ユウジ」
「御託はいい!……他に言うべき事があるだろ」
 オヤジは、一瞬だけ口元を釣り上げると、ゆっくりと口を開いた。
 
「そうだな。今こそ全てを話そう。何故、俺がお前を養子として引き取ったのか。
そして、何故今までお前を一人ぼっちにさせてきたのか。その、全てをな」
 
 いよいよ、全てが分かる時が来た。
 恐れたりはしない。
 真実はきっと、僕の味方をしてくれると信じてる!
 
「俺は、MTBライダーとして世界中のMTBの大会を総なめにしてきた。
そんな俺の事を人はいつしか『爆闘アタッカー』と呼ぶようになっていた。
だが、そんな俺にもいずれは老いが来る。体の衰えには抗えない。
そうなってしまえば、俺の『爆闘アタッカー』の称号も、いずれは過去のものになってしまうだろう……」
 
「……」
 そう語る父の顔は、どこか寂しげであった。
 
「そこで俺は、結婚し、子供を作り、俺の跡を継がせようと企んだ。
だが、生まれてきたのは、女の子だった……。
フッ、初めての子だ。最高に嬉しかったさ。だが、やはり野望は捨て切れなかった」
 なんとなく、話が見えてきたぞ。
「そこで、さまざまな孤児院を渡り歩き、MTBライダーとしての素質がありそうな子供を探し回った。
そして、ようやく見つけたのが、ユウジ。お前だった」
「それで、僕を養子に……」
 
「だが、まだ障害は残っていた」
「え?」
 
「お前が、俺の予想以上に、マザコンで、シスコンだったからだ!!」
「!?」
 確かに、僕は、お母さんが大好きで……姉ちゃんが、大好きだった……。
「お前にはMTBの素質があったし、MTBも好きだったんだろう。だが、それ以上にマザコンで、シスコンだった!!」
 そんなに繰り返さないでくれよ!!(涙)
 
「妻が亡くなった時の、お前の落ち込みようは、見るに耐えなかった。
毎日のように引きこもり、MTBの練習もしなくなった。
このままでは、お前はだめになる。だからこそ俺は、アイを連れて世界を飛び立った。
そして、そのついでにMTBによる世界征服を企んだのだ!」
 
「そうか……そうだったのか……僕を、MTBライダーとして強くするために、オヤジと姉ちゃんは……」
 
「そう、全ては爆闘アタッカーの系譜のために。
人はコレを、『爆闘アタッカーショウによる、第二世代への教育!!』略して『爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション』と言うのだ!!」
 
「っ!!!」
 
 まさか、タイトルにそんな意味があったなんて……!
 
「そして、今こそその教育は終わった。
お前は、MTBライダーとして立派に成長し、そしてアイの病までMTBの力で完治させてしまった!
お前こそ、『爆闘アタッカー』の称号を受け継ぐに相応しい!
今日からお前は、『爆闘アタッカーユウジ』を名乗れ!!」
 
「オヤジ……」
 
「おめでとう、ゆうくん」
 
「姉ちゃん……」
 
 この人達は、こんなにも僕の事を想っていてくれてたなんて……。
 感動のあまりちょちょぎれる涙を拳で拭い去り、僕は顔を上げた。
 
「よーし!!」
 そして、倒れているストームランサーを起こし、跨った。
「いっくぜえええええええ!!!」
 
 気合いを込めて、ペダルを漕ぐ。
 
「轟けぇぇ!!!ストォォーームランサァァァーーー!!!!」
 ストームランサーが青き光に包まれる。
 
「僕の心のようにぃぃ!!青く、激しく、吹き荒れろぉぉぉぉーーーーー!!!!!」
 
 
 雨上がりの空に浮かぶ虹の向こうへ、僕とストームランサーは走り続けた。
 真の栄光を目指して……!
 
 
 人はコレを『俺達の戦いはこれからだ!! ユージン先生の次回作にご期待ください』と、言うのだ!!
 
 
 
 
        完
 
 
 
 
    
新小説予告!!
 
 
最強の男に与えられる『爆闘』の称号。
今、新たなる『爆闘伝説』が始まる!!
 
炎の拳を胸に秘める男、極村原河フブキ!
極寒の地にこそ、体温を上昇させるヒントがあると豪語する彼の前に立ちはだかるライバル達!
そう、今こそ、フブキによるフブキのための、切なき恋の物語が幕を開けたがっていた!
 
 
 新小説!『爆闘ファイターシュウ!!も~っとキュート☆』
 
ビークル・セット!ゴー・ファイトォ!!
 
 
  
  

 

 




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