爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション第1話

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唐突ですが

昔某所にアップしていた小説を投下します

 

ジャンルは『切ナイ恋愛小説』です。某ケータイ小説恋○を参考にして執筆しました。

なので、苦手な方はご注意ください

題材ホビーは『MTB』です。

 


爆闘アタッカーショウ!!2ndエディケイション
 
第1話「漕ぎ出せ!勇気のライトニング・フューチャー」
 
 
 
きみは、当たり前のように笑うけれど
 
 
きみは、当たり前のように微笑むけれど
 
 
きみは、当たり前のように笑顔を浮かべるけれど
 
 
僕は、あの時きみが見せた顔を、一生忘れる事はないだろう・・・
 
 
 
 
「うおおおお!カッ飛べぇ!!」
 僕は今、風になっていた。
 
 前を歩く制服姿の少年少女達の背中が次々と目の前を通り過ぎていく。
 見慣れた景色が流れていく。
 
 僕は青いMTBを猛スピードで漕ぎ、ほにゃらか中学校への通学路を駆け抜けているのだ。
 
「ユウジ!今日こそお前に勝ってみせるぜ!!」
 
 僕と同じように赤いMTBを漕いでいる少年が並走して、僕に啖呵をきってきた。
「望むところだ、権兵衛!!」
 僕も、隣を走る少年……権兵衛へ向かって叫ぶ。
 
 それからは、二人とも口を閉じた。
 ペダルを漕ぐのに集中するためだ。
 発言すればテンションが上がり、アドレナリンが増大するのだが
 集中力が欠けてしまい、安定性がなくなる。
 通学生の多いこの場所で集中力を欠くのは命取りと言える。
 なぜなら、歩行中の学生とぶつかろうものなら、先生からめっさ怒られるからだ!
 それだけは避けたい。事故だけに
 
 そうこうしているうちにレースは中盤戦。
 二人とも、実力は伯仲。
 抜いたり、抜き返したりを繰り返し、なかなか決め手にならない。
 
「このままじゃ、ジリ貧だ……!」
 僕は呟いた。
「今だああああ!!!」
 その一瞬の隙を、権兵衛は見逃さなかった。
「くっ!」
 いや、違う!
 権兵衛は僕の隙を突いたんじゃない!
 目の前をよく見る。
 そう、目の前には、連続コーナーが続いていた。
 この通学路、最大の難関ともいえる名所だ。
「縫い抜け!ボルカニックフリーザー!!
俺のアソコのように!高く雄々しく、突き立てろぉ!!!」

 バッ!
 権兵衛は、ハンドルをしっかりと握り締め、そのまま逆立ちしてしまった!
「ドメスティックドリフター!!」
 そう、これこそ奴の必殺走行。
 ハンドルを支点に逆立ちする事により、全体重をフロントタイヤに掛け
 リアタイヤの加重を極力減らす事によって、急激なドリフトを可能にしているのだ!
 
 華麗なコーナリングで連続コーナーをクリアしていく権兵衛。
「くっそぉ……!」
 遠ざかっていく背中……いやお腹を、僕はぎこちないコーナリングをしながら眺めている。
「このまま、何も出来ずに終わってしまうのか……」
 諦めかけたその時、僕の脳裏にある言葉が浮かんだ
 
 “タマネギ、にんじん、それから、コショウをお願いね”
 
 “わーい!今日のお夕飯はカレーだね!”
 
 “ふふ、よく分かったわね。ご褒美にゆうちゃんにはマカロニサラダもつけてあげるわ”
 
 “やったぁ!ママ大好き!!”
 
 それは亡くなったお母さんとの、唯一覚えている思い出だった。
 だからこそ、僕は負けるわけにはいかないのだ!!
 
「そうだ、負けるわけにはいかない……あの時の約束を、守るためにも!!」
 僕は気力を振り絞って、ペダルに力を込めた。
 
 そしてついにレースも終盤戦。
 最後の難関は、校門まで続く傾斜60度の過酷なダラダラ坂だ!
「くっ、最後にこれはキツイ……!」
 トップを走っていた権兵衛のペースが落ちる。
 抜くなら今しかない!!
「轟け!ストームランサー!!
僕の心のように、青く激しく吹き荒れろぉ!!」
 僕は、最後の力を振り絞って、サドルに腰を沈めた。
 
「韋駄天ホッピング!!」
 
 そして、僕は勢い良く体のバネとサスペンションの反発力を利用して飛び上がる。
 
「な、なにいいいい!?」
 
 僕とストームランサーは大空を舞った。
 そして、ダラダラ坂を走る権兵衛を飛び越し、そのまま校門へとゴールしたのだった。
 
 
「ちくしょう、また俺の負けかよ……」
 レース終了後、僕らは校門から自転車置き場までの道のりを、愛機を押して歩いた。
「へへっ、これで僕の5連勝だな!」
 
 僕らの通う中学校「ほにゃらか中学校」は、僕がほんの数ヶ月前に通っていた「ほにゃらか小学校」とは何もかもが違っていた。
 一番の違いは、学校から家が遠い生徒は申請さえすれば自転車通学が許された、と言う点だろう。
 これは、MTB大好き少年であるこの僕、極村原河(ごくむらはらがわ)ユウジとしては、願ったり叶ったりだった。
 小学校からの親友であり、MTBでは最大のライバルでもある権兵衛も同じ気持ちだったのだろう。
 中学に入学してから二ヶ月間、僕らは毎朝通学路を利用してMTBバトルをしていた。
 ルールは簡単、待ち合わせ場所からスタートして、先に校門に辿り着けた方が勝ち。
 戦績は、勝ったり負けたりだが、今のところ僕の方が勝ち越している。
 
「なんでお前はそんなに速いんだ?」
 得意気な顔をする僕を見ながら、権兵衛は心底不思議そうな顔をした。
「こいつがそう簡単に負けるかよ」
 言って、ストームランサーを撫でてやった。
「初めて買ってもらったMTBで、一生懸命練習して、一生懸命手入れして……こいつは、俺のアイボウなんだ」
 愛機へ慈しみの視線を送る僕に、権兵衛はフッと笑った。
「ったく、敵わねぇよお前には」
「はっはっは!……ってか、今何時だ?」
 ふと、僕はある事に気付き足を止めた。
「ん、7時30分くらいだな」
 権兵衛がポッケから携帯を取り出して時刻を確認する。
 それを聞いた瞬間、僕の血の気がサーと引いた。
「やっべぇ!時代劇の再放送の留守録忘れてた!!」
「ま、マジかよ!」
「急いで家に戻らなきゃ!!」
 僕はストームランサーに跨り、来た道を逆走しようとする。
「間に合うのか!?」
「大丈夫!昼休みには間に合うさ!」
 心配する権兵衛に、僕はサムズアップしてみせた。
「そうか、ならよかった」
 僕の言葉を聞いて安心した権兵衛に見送られながら、僕は帰路についた。
 
 キーンコーンカーンコーン……
 カーンコーンキーンタマ
 
 ほにゃらか中学校にお昼休みを告げるチャイムの音が鳴り響く。
 と同時に、1年B組の教室の扉が勢い良く開いた。
「とうちゃーっく!!」
 僕は、昼休みの喧騒に包まれる教室の中にダイナミック入室した。
「よぉユウジ、間に合ったみたいだな」
 早速権兵衛がお出迎えしてくれた。
「おう、なんとかなぁ……ふぅ、危なかったぁ」
 僕は、息を整えながら額の汗を拭う。
 
「どこが間に合ってるのよ?全然アウトじゃない!」
 と、俺たちに突っかかってきたのは、ツインテールでややツリ目の女の子だ。
「郷田山……」
 彼女の名前は郷田山ウンミ。学級委員長をしている。
 お堅い性格で、何かとめんどくさい奴だ。
「全く、毎朝毎朝暴走運転してるかと思えば、その癖いつもいつも遅刻ばかり!
少しは中学生としての自覚を持ちなさいよね!」
 
「いやぁ……ははは、今日はさ、ほら、時代劇の再放送の録画しなきゃいけなかったからさ……」
 僕は冷や汗をかきながら弁解する。分かってくれるだろうか?
「オベッカ使ったってダーメ。今度遅刻したら先生に言いつけるからね」
「げっ!なんで僕がオベッカ使ったってバレたんだよ……」
 もしかしたら郷田山ってエスパーなのか?
「その格好見ればすぐ分かるでしょ……」
 郷田山は額に手をあてる。心底僕に呆れてしまったようだ。
 僕は、自分の格好を再度確認する。
 まだ6月とは言え、全速力でMTBを漕いだせいで汗だくだ。
 なるほど、これならすぐバレるか。仕方ないね。
「テヘッ☆」
 僕は右手で後頭部をかきながら、舌を出して誤魔化してみた。
 
「それよりユウジ。早く購買いかないと人気のもずくパンが売り切れちまうぜ!」
「あ、そうだった!悪いな郷田山!僕、急ぐから……」
 言って、駆け出そうとする僕を郷田山は呼び止めた。
「待って!」
「へ?」
 呼び止められるとは思わなかった僕は、やや不意打ち気味に振り返る。
 すると、郷田山は顔を真っ赤にしながら、僕に円柱型の入れ物らしきものを差し出した。
「これ、受け取りなさいよ」
「は……?」
 わけが分からず呆然としていると、郷田山が喚いた。
「だから、スポーツドリンクよ!」
 それは、見れば分かるが……。
 とりあえず受け取る。ひんやりとした感触が心地良い。
「でも、なんで……」
「か、勘違いしないでよ!あんた、汗だくで汗臭いから……それでよ!」
「あぁ、なるほど」
 確かに、汗だくだ。スポーツドリンクくらい飲んでいったほうがいいだろう。
「サンキュ、郷田山!」
 僕は素直に礼を言うと、購買へと急いだ。
 一瞬、郷田山の顔が更に赤くなってうつむいたのが見えた気がしたが、多分幻覚だろう。
 
 
 楽しい学校生活が終わり、僕は友達と別れ、家に帰った。
 学校から少し離れた住宅地にある普通の一軒家……よりも、少しだけ大きい家が僕の家だ。
「ただいま」
 返事を期待しない帰りの挨拶が、玄関に虚しく響く。
 返事なんてあるはずないのに、それでも言ってしまうのは、単なる癖なのか、それとも心のどこかでそれを望んでるからなのか。
 まぁ、そんな事はどうでもいい。
 
 僕は乱暴に靴を脱ぎ、居間に辿り着くとカバンを放り投げてソファに寝転んだ。
 そして、リモコンに手を伸ばし、今朝録画しておいた時代劇の再放送を再生した。
「……」
 虚ろな瞳で、画面内を元気に駆け巡る侍たちを眺める。
 この広い家の中で、唯一音を出しているのはテレビだけだった。
 なんだか、あまり面白く感じられない。
 殺陣も、時代劇特有の勧善懲悪も、大好きなはずなのに。気持ちは沈んでいた。
 いつもそうなんだ。
 見終わった後、友達と一緒に内容について語ってる時は凄く楽しい。
 だから、僕はこの番組が大好きなんだと思う。
 でも、こうしてリアルに見てる瞬間は、楽しくもなんとも無い。ただ、内容が頭の中に入っていくだけだ。
 
 だって、そうだろ?
 どんなに楽しいものでもさ
 こんな広い空間で、たった一人で見たって、面白いわけないじゃんか。
 
 一人は慣れていた。
 だって、僕は生まれた時から一人だったから。
 物心つく前に両親に捨てられ、孤児院でも孤立していた。
 だから、平気。
 一人なのは、平気。
 平気……だった、はずなのに……。
 
 ある日、僕はとある一家に引き取られた。
 それが、この極村原河家だった。
 一家は、元は両親と僕より年上の一人娘の三人家族だった。
 そこに僕が加わっても、極自然に受け入れてくれた。
 まるで、最初から四人家族だったみたいに。
 幸せだった。
 生まれてから数年。初めて幸せを感じる事が出来た。
 でも、それも短い時間だった。
 
 5年前に、優しかったお母さんは糖尿病で死去。
 それから、優しくも厳しかったお父さんは、変わってしまった。
 毎日のようにMTB酔いをし、MTBに溺れていった。
 そして3年前、僕一人をこの家に残し、『MTBで世界征服をする!』と言って旅立ってしまった。
 
 別に構わないさ。
 一人でいる事には慣れてる。
 定期的にお金も入れてくれてるし。
 生活さえ出来ればそれでいい。
 
 だけど……ただ一つ
 
 ただ一つだけ、許せない……
 
 
 なんで、僕に幸せを与えた?
 
 最初から最後まで、何も無かったら、それでよかったのに
 幸せを感じなければ、不幸せも感じる事はなかったのに
 幸せが無くなる事を辛いと感じる事もなかったのに
 
 
 
「あ……」
 気が付くと、頬が濡れていた。
 ツーッと目頭が熱くなっている。
 僕は歯を食いしばって、緩んだ涙腺を引き締め、頬を乱暴に拭う。
「はは、僕としたことが、センチメートルになっちまったぜ」
 
 まぁ、別にいいさ。
 何を恨んだって始まらない。
 一度は慣れたんだ。
 だから、また、一人が平気になる時が来る。
 今だって、前よりはマシになってきてるんだし。
 
 ピンポーン
 
 だから、願わくば
 
「なんだ?宅配便かな……?」
 
 今のこの状態を……。
 
「ほ~い」
 
 今更、変えるような事はしないでくれ……!
 
「どちら様ですか~ぃっと」
 玄関を開けると、そこには見覚えの無い……それでいてどこか懐かしい雰囲気の少女が立っていた。
 セミロングのストレートヘア。柔らかな瞳。やや細めのスタイルに膨らみかけた胸。美人、と言うより可愛いと言った方がしっくりとしそうで、それでいてどこか大人びていたその姿に、僕はしばらく見惚れてしまった。
 少女は、両手に大荷物を抱え、まるで長い旅行にでも行くような格好をしている。
「えっと……?」
 さまざまな疑問が頭の中を巡り、一瞬思考が停止する。
 
 見た感じ、宅配とかの業者と言うわけではない。
 かといって学校の友達でもない。
 では何故、こんな美少女が俺の家に突然やってくるんだ?
 
「大きくなったねぇ……」
 少女は目を細め、感慨深げに呟いた。
「はっ?」
「久しぶり、ゆうくん」
 
 “ゆうくん”
 その呼び名には、覚えがあった。
 そして、その呼び名で僕を呼ぶ人物は、二人しかいない……。
 
「あ、あんた……まさか……」
 声が、震える。
 恐れていた事態が、起きてしまった。
「ただいま。元気だった?ゆうくん」
 満面の笑みを浮かべる少女。
 だが、次に放った僕の言葉は、傍から見れば外道発言と取られても仕方ないものだった。
 
「出てけ!」
  
「……っ?!」
 
 少女がハッと息を呑む音がはっきりと聞こえた。
 それでも、僕は続ける。
「僕は……お前を認めない!!!」
 その時、少女が一瞬見せた表情は……
 きっと、十字架となって一生僕を苦しめる事になるんだろうなって、漠然と思った。
 
 
 
 次回
 
「ついに始まったMTBフェスティバルカップ三回戦!
次に俺と当たるのは、なんとあのケイスケだった!
ジャンプの鬼で有名なケイスケに、俺はどうやって戦えばいいんだ!?
次回!爆闘アタッカーショウ2nd!『ライバル登場!マキシマム・ポリフェノール』
熱き闘志を、ダッシュ・セット!」
 
 
 
 
 
 

 

 




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