弾突バトル!フリックス・アレイ 第2話

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第2話「華麗なるフリックス使い」


フリックス大会前日。
 中央公園では、いつものようにフリッカー達がたむろっていた。
「いくぜ……ドライブヴィクター!!」
 その中で、バンは他の友達に見守られながら、フィールド上に設置してある複数のターゲットを見据えてドライブヴィクターを構えていた。
「いっけぇぇぇ!!!」
 バシュッ!!!
 バンの渾身のシュートに、ドライブヴィクターがターゲットめがけてぶっ飛ぶ。

 バコーーーン!!!!

 そして、ドライブヴィクターがヒットし、複数あったターゲットが一気にはじけ飛んでしまった。
「おっしゃああ!!絶好調だぜ!!」
 ガッツポーズを決めるバン。
「相変わらず、すげぇ破壊力だよな……」
「うん、単純な威力は、前に見た時よりも数段上がってる……!」
 唖然した表情のマナブとオサム。
「へへっ、なんたってこいつを貰ってから一週間、毎日使いこなすために練習してるからな。明日の大会に向けて!」
 バンはヴィクターを拾うと得意気に笑う。
「あぁ、そういえばもう明日なんだよなぁ、ゴトーマガリカドーフリックス大会!こりゃ俺もウカウカしてられないや」
 バンに負けじと気合を入れるオサム。
「まっ、優勝はダントツで、俺とドライブヴィクターだけどなっ!」
「あんまりいい気になってると足元掬われるぜ。俺だって猛練習して強くなったんだ」

「なにをぅ!絶対俺が優勝だ!!」
「いや、俺だな!」
「俺!」
 バンとオサムは睨み合い、バチバチと火花を散らす。
「よーし、だったら今すぐバトルで決めようぜ!どっちが明日の大会で優勝出来るか!!」
「あぁ、望むところだね。新しい機体手に入れたからって勝てるとは限らないって事を教えてやる」
 フリックスを構える二人を、マナブが慌てて止める。
「お、おいおい!それじゃ本末転倒だろ(汗」
「へっ?」
「なんで?」
 何故止められたのか本気で分らない様子の二人に、マナブは呆れてため息をついた。
「はぁ……(この脳筋どもが)」
 額に手を当てつつマナブは言う。
「せっかく明日大会でバトル出来るのに、その決着を今ここで着けたら意味ないだろう」
 その言葉に、ふたりはハッとする。
「あっ」
「確かにな」
「さっすがマナブ!学級委員長だけあって頭良いぜ!!」
 多分関係無い。
「とにかく、エキサイトするのは明日にしておけ。今日のところは解散しよう。もうこんな時間だし」
 マナブが、公園に設置してある時計を指さす。
 時計の針は5時を指していた。
「あ、やっべぇ!もうこんな時間か!!」
「母ちゃんにどやされる……!」
 気がつくと、さっきまでワイワイやってた他の子たちもすでに帰路についているようだ。

「じゃあな、明日楽しみにしてるぜ!」
「おう!!」
 バン達も散り散りに家に帰っていった。

 そして、夜。
 街灯も消え、人通りの少なくなった商店街の裏路地で、一人の12歳くらいの少女が乱れる息を抑えながら走っていた。
2話①

「…は…ぁ……!」
 しきりに足音と背後に気を配りながら、足早に駆け抜けている。
 その様子は、目的地へ急いでいると言うより、何者からか逃亡しているようだった。
 咄嗟に、少女は一軒の文具店の裏手に入る。そして、壁に背を付けてジッと息を殺す。

 しばらくすると、少女の走った道のりを辿るように、数人の騒がしい足音がどんどん近付いてきた。
 やってきたのは黒服の男たち。どいつもこいつも物々しい形相で何かを探しているように辺りを見回している。
「くそっ、見失った!」
「まだこの近くにいるはずだ。必ず見つけ出せ!」
「よし、手分けして探すんだ!」
 黒服の男たちが散っていく。

 その様子を物陰から伺っていた少女はソッと膨らみかけの小さな胸を撫で下し、その場にしゃがみこんだ。
「これから、どうしよう……?」
 キュゥゥゥ……と、お腹が鳴る。
2話②
「お腹……空いたな……」
 カサッ
 空腹を感じて自分の腹部を見下ろした少女は、足元に一切れの紙を踏んでいることに気づき、それを拾い上げた。
「……ゴトーマガリカドーフリックス大会?」
 淡々と読み上げた少女の瞳は密かに輝いていた
 夜は、深々と更けて行った……。

 そして翌日の昼下がり。
 ゴトーマガリカドーの屋上。
 普段は、駐車場として利用されるこの場所だが、今日は違う。
 でっかく『フリックス大会!』と書かれた看板が掲げてあり、うめつくすようにフリックスバトル用のステージが設置してあった。
 端の方にはマイクや照明の用意されているステージがあり、いつもの草バトルとは違う特別な雰囲気を醸しだしていた。
 そして、その雰囲気に吸い寄せられるようにたくさんの人がごった返している。

「うわぁ!人いっぱいだなぁ!!」
「俺、大会来るの初めてだけど・・・フリックスってこんなに人気あったんだなぁ」
 バン、オサム、マナブの三人が周りをキョロキョロ見ながら会場を歩く。
「そりゃ、今や一大ブームを巻き起こしてるホビーだからね」
 と言いつつ、マナブもこの大盛況っぷりには感嘆しているようだ。
「こいつら全員と戦うのか……くぅぅぅ!腕が鳴るぜ!!」
「いやいや、さすがに全員とバトルはしないって(汗)」
 興奮するバンに、マナブが突っ込む。
「え、そうなの?」
 本気で残念そうな顔をするバンに、マナブが追加説明する。
「多分、予選で篩にかけて、上位者でトーナメントを組むんだと思うけど」
「ふるい??俺は新しい方が好きだ!!」
 至極簡単で常識的なルールだが、バンには理解出来なかったようだ。

「い、いや、そうじゃなくて(汗)」

「???」
「まぁいいや。とにかく、受付に行こう」
 そんなわけで受付を済ませた三人は、大会の開始を厳かに待つことにした。

 そしていよいよ大会の開始時間になり、ステージの方から軽快な音楽が流れてきた。
『レディースえぇぇんどジェントルメェェェン!!!』
 耳を塞ぎたくなるような大音量とともに、マイクを持った奇抜な服装をした兄ちゃんがステージに現れる。

『皆!ゴトーマガリカドーフリックス大会へようこそ!!大会の司会進行はこの俺、バトルフリッカーコウが務めるぜ!みんな、よろしくなぁ!!』
 彼の登場により、歓声が沸き起こる。

「な、なんだぁ!?あの変な格好した人は!?」
 フリッカーコウを初めて見たバンはその奇抜な姿に目を丸くした。
 それもそのはず、赤青黄の原色カラーでまとめられた服装に加え肩にはゴツイプロテクター、そして金ぴかのバンダナをつけたその格好は、この間見たMr.アレイにも劣らないインパクトのある姿だ。
 そんなバンに、マナブは丁寧に説明する。
「フリックス大会の公式スタッフだよ。大会ではあの人が大会を実況して盛り上げるんだ」
「へぇぇ~!!なんかますます面白そう!!」 
『そんじゃま、早速大会ルールの説明だ!!よぉく聞いてくれよぉ!!
今回の大会は、予選で勝ち残った上位8名で本戦のトーナメントを組んで戦う形式だ!!
本戦のルールは通常のフリックスバトル!
そして、予選のルールは……フリップボウリングだ!!』
 ステージに設置された巨大モニターに『フリップボウリング』と言う文字がデカデカと浮かぶ。
「フリップボウリングかぁ!オレの得意分野だぜ!!」
 ターゲットバスター系の競技は、場外を気にせず思いっきりフリックスをシュートできるので、バンが最も好きな競技の一つだ。
「パワー重視のドライブヴィクターにはうってつけだからね」
「おう!予選は楽勝だなっ!」
 意気込むバンに、オサムも負けじと気合を入れる。
「ちぇ、俺だって負けるかよ!この大会に向けて特訓した成果、見せてやる!!」
「まっ、それでも一位は俺だけどなっ!」
「俺だよ!」
「俺っ!!」

「はぁ、こいつらは……」

『参加者の皆には受付で貰った用紙に書かれている記号のテーブルに行ってもらい、フリップボウリングをしてもらう!
ターゲットは正三角形状に集められた10本のピンだ!これを2回撃って、その合計ポイントで競ってもらうぞ!得点の上位8名が本戦進出だ!』
「えっと、俺は……Aのテーブルだ」
 バンはAテーブル。
「俺は、B」
「俺もBだ」
 オサムとマナブはBテーブルのようだ。
「なんだよ、俺だけ仲間ハズレか」
 仲間のうち一人だけAテーブルなバンは不満そうに口を尖らせた。
「まぁ、勝ち進めばトーナメントで戦えるんだからいいじゃねぇか」
「そりゃ、そうだけどさぁ」
「予選通過の順位はテーブルごとじゃなく、全体で決めるみたいだし。このブロック分けは混雑を避けるためだけのものみたいだね」
「ようは、どのテーブルにいようが高得点を出せばいいんだ。バン!決勝で待ってるぜ!」
「そうだな。よし!絶対に三人で予選通過しような!!」

「「ああ!」」

 三人はトーナメントで会う事に誓い、各々のテーブルへと向かう。

「え~っとAテーブルは、っと……」
 仲間と別れたバンはキョロキョロとAテーブルを探す。
「あぁ、あったあった!」
 Aと書かれた厚紙が貼られたテーブルを見つけ、そこに向かう。
 テーブルには既に数人のフリッカー達が順番待ちをしていた。

「それでは次の方!準備してください!」
 係員のお兄さんがターゲットをセットし、参加者を促す。

「おっ!始まってる始まってる!」
 バンは、列の後ろからその様子を首を伸ばしながら眺める。

 バシュッ!
 モブフリッカーのシュートでフリックスがターゲットへと吹っ飛ぶ。

 バチコーン!!

 ターゲットが5本倒れる。

「一回目、5ポイント!」
「くそぉ、次こそ……!」
 係員がターゲットを立て直し、2回目スタート。

「いけっ!」

 バチコーン!!

 今度は、やや軌道がズレてしまい3本しか倒れなかった。
「あぁ…!」
「ニ回目、3ポイント!合計8ポイントです」
「くっそー、こんな点数じゃ予選通過できないよぉ……」

「では、次の方に交代してください」
 係員の言葉に従い、落胆しながらもその場を離れる。
『比較的簡単なルールのこのフリップボウリングだが、皆思いの他苦戦しているようだ!得点が伸び悩んでいるぞ!!
やはり皆はバトルに慣れているから、こういう競技は苦手なのかなぁ?』
 会場全体の様子を見ながら、フリッカーコウは的確な実況をする。

 そして、その様子を眺めているバンも感心している。
「へぇぇ、結構苦戦するものなんだなぁ」

 そして、いよいよバンの順番になる。
「では、次の方」
 係員に促され、バンがテーブルの前につく。
「よっしゃー!頼むぜ、ドライブヴィクター!!」
 ドライブヴィクターをテーブルに置き、構える。
「いっくぜぇぇぇ!!」
 ターゲットを見据え、指先にパワーを溜める。
「ブッ飛べ!ドライブヴィクター!!!」
 
 バシュウウウウウ!!!!
 バンの強烈なシュートを受けて、ドライブヴィクターが回転しながらターゲットに向かう。

 バーーーーーン!!!

 ドライブヴィクターの猛回転が、設置されたターゲットを全部吹き飛ばしてしまった。

「1回目、10ポイント!」
「おっしゃぁ!!」
 ガッツポーズするバン。
 係員は、淡々とターゲットを設置しなおす。
「では、2回目の準備をしてください」
 バンは頷いて、再びドライブヴィクターをセットする。
「もう一回!いっけぇぇ!!!」

 バーーーン!!!

 一回目と同じく、ドライブヴィクターの強烈シュートがターゲットを全部ブッ飛ばす。

「2回目、10ポイント!合計20ポイントです」
「やったぁ!満点だ!!」
『のおっと!みんなが苦戦している中、Aテーブルの段田バン君!なんと満点をゲットしたぁぁ!!これは、今大会の優勝候補かぁ?!』
「へっへっへ~!あったり前だぜ!俺がダントツ一番だ!!」
 ドライブヴィクターを掲げるバンに、フリッカーコウの実況が響く。
『おおおおっと!なんと、ここでも一気に全部のターゲットを倒したフリッカーがいるぞぉ!!』
「な、なにぃ!?ダントツなのは俺だけじゃないのかぁ?!」
『しかもなんと、女の子だぁ!Cテーブルでは、女の子フリッカーの遠山リサ君が全てのターゲットを倒してしまったぁ!!まだ1回目のシュートみたいだが、2回目もパーフェクトなら、20ポイントでバン君と並ぶぞぉ!!』
「し、Cテーブルか!」
 バンは急いでCテーブルへ向かった。

 Cテーブルでは、その女の子フリッカーが2回目の準備をしていた。
 シュートする前にバンが到着する。
「ま、間に合ったか!?」

 係員がターゲットを設置しなおし、女の子フリッカーにシュートを促す所だ。
「では、2回目スタート!」
 女の子はコクリとうなずき、フリックスをセットした。
 そのフリックスを見て、バンは驚愕する。
「なんだ、あのフリックスは!?見た事無いぞ……!」
 それは、まるで揺らめく炎のような曲線的なデザインをしたフリックスだった。

「いけっ、フレイムウェイバー」
 女の子がそう呟くと同時にシュートする。

 バシューー!

 全くブレの無いストレートシュートだ。しかし、あからさまに勢いが足りない。
「あ、あんなシュートで倒せるのか?!」
 バンの疑問をよそに、フレイムウェイバーは真っ直ぐターゲットへと向かい、ターゲットとターゲットの隙間を縫うようにすり抜けて行った。
「なにっ!?」
 そして、真ん中のターゲットにヒットする。
 ヒットしたターゲットは倒れ、後のターゲットをドミノ倒ししていく。
 そして、フレイムウェイバーは反射して、前のターゲットを倒していく。
 フレイムウェイバーの反射と倒したターゲットの連鎖効果で、内部から次々とターゲットを倒してしまったのだ。

「……嘘、だろ。あんな弱いシュートで……」
 フリップボウリングは、正確さとパワーがものを言う競技だ。しかし、その常識を打ち破り、遠山リサと言う少女は弱いシュートでターゲットを全部撃破してしまったのだ。
「2回目、10ポイント!合計20ポイントです!」
「やったっ」
 係員の判定に、リサは静かに嬉しそうに顔をほころばせる。
『決まったぁ!Cテーブル、遠山リサ君のフレイムウェイバーがパーフェクト達成!!バン君と並んで、今大会の優勝候補間違いなしだぁぁ!!』
「……」
 その様子に、しばらく呆然としていたバンだが、すぐに精彩を取り戻す。
「遠山リサにフレイムウェイバー……か。くぅぅぅ、これだからフリックスバトルはやめられないんだ!」
 バンはダッ!と駆け出し、リサの目の前に現れて、仁王立ちする。
「っ!」
 いきなりのバンの登場に、リサはビクッと体を震わせる。
 が、バンはそんな事お構い無しに、リサに向かってドライブヴィクターを突きつけた。
「遠山リサ!俺はお前と同じく満点を取ったフリッカーの、段田バンだ!!」
「……」
 目の前のバンの行動が理解できず、キョトンとするリサ。
「決勝トーナメントでは、絶対にお前のフレイムウェイバーを倒してやるからなぁ!この俺がダントツ一番だ!!」
2話③ (1)

「え、えっと……」
 バンの勢いに押されて、尻込みするリサだが、すぐに顔を引き締めて。
「う、うん……!」
 と、頷いた。

     つづく

 次回予告

炎のアタッカーユージンの競技玩具道場!フリックスの特別編!!

うっす!ユージンだ!!フリックスの特別編もいよいよ第二回目!今回も始めて言っちゃうぜ!!


今回のお話は、ドライブヴィクターを手に入れたバンが初めて大会に出場するってお話だったよね。

この世界ではフリックスバトルが大人気で毎日のようにどこかで大会が開かれているんだ。小さな店舗大会や公式の大きい大会まで、種類はさまざま。

あれだけ大盛況のゴトーマガリカドーフリックス大会も、実は比較的小さな規模の大会みたいなんだ。

公式大会になるとどんだけだよ!?って感じだよねw


でも、そんな大会にも思わぬ所にライバルが潜んでいるから面白い!


予選でバンと同得点を叩きだした女の子、遠山リサちゃんにフレイムウェイバー。

彼女はフリックスが上手いだけじゃなく、何者かに追われているようだったけど……。


次回は、いよいよバンとリサとの対決!この出会いが、バンにとってどんな意味をもたらすのか!?


謎が謎を呼ぶ展開に今後も目が離せないぞ!


そんじゃ、本日の格言いってみよう!!

『ライバルは、いたるところに潜んでいる!さぁ、外へ飛び出そう!!』


この言葉を胸に、皆もキープオンファイティンッ!また次回!!






 

こちらから音楽をお借りしました

BGM:フリー音楽素材 Senses Circuit

http://www.senses-circuit.com/

キャラクターデザイン 白娥 貴騎様
 

 

弾突バトル!フリックス・アレイ 第2話」への2件のフィードバック

  1. ユージン

    SECRET: 0
    PASS:
    ヒロインもちゃんとキャラデザありますぜw
    このヒロインが、バンにとって今後の運命を決めるキーパーソンだったりします!

    返信

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