flicker’s anthem Shoot7「闘争」

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shoot7「闘争」

 

 千春と同じく謎の少女からカードをもらったと言うアリスと遭遇。
 2人はバトルをするために場所移動していた。
「で、さっきの感じからお前このカード争奪バトルは初めてか?」
「あ、はい。アリスさんとやるのが最初です」
「なら運が良いな。俺がある程度ルール教えてやるよ。
賭けられるカードの枚数は2枚まで、同じ相手とは二度と戦えない。カードが全てなくなったら脱落、先に10枚集めて主催者を倒せれば優勝らしい」
「……なんだか、回りくどいゲームですね。どうしてこんな事をさせるんでしょう」
「さてな。何か陰謀があるのか、それともただの物好きか。勝ち進めば答え合わせもできるだろ。参加者はカードを手に入れるために死に物狂いで挑んでくる奴らばかりだから、スリル満点だしな!」
「……」
「お前は何か叶えたい願いでもあるのか?」
「私は、別に……強くなりたいとは思うけど、人に叶えてもらうものじゃないし……強いて言うなら親友を見つけたい、かな?」
「親友って、さっき質問した金髪の奴か」
「うん。なんか行方不明になっちゃってさ。根拠はないけど、このカード貰った事と、タイミング的に関係あるんじゃないかって……」
「そっか。まぁ、今はバトルを楽しもうぜ。どっちにしても戦う事しか俺達にはできねぇんだ」

 アリスに連れられてやってきたのは廃ビルだった。ペンキかスプレーで書かれた落書きがいくつもあり、千春は少し身震いした。

「こ、こんな所でやるの……?」
「ま、安心しろよ。俺がここを見つけてから不良共は来てないようだぜ。それにここにはいい感じの台があってな、それを改造したんだ」
 階段を登り廊下を進むと、明かりのついている部屋が見えて来た。
「ここだ。とりあえず入りな」
 中に入るよう促された千春はそっとドアを開け中へと入って行った。
 部屋の中には壊れかけのソファーや事務机、ゴミ袋のようなものがあり、部屋の中央にコンクリート製のような台が置かれていた。
 辺の長さは2メートルほどで高さは1メートルだろうか。よく見ると面の中央が少し膨らんで山のようになっていた。
「これがフィールドですね」
「そう、真ん中が出っ張ってるから勢いが強すぎるとかっ飛んで自滅だ。なかなか面白いだろ?」
 ここに住んでいるのではないだろうか、という疑問を飲み込み、一言そうだね、と千春は答えた。
「よし、早速やろうぜ。強くなったあんたと早く戦いたいんだ」
 そう言うとアリスはフィールドの角にファランクスドールを置いた。
 以前千春が対峙した時とは違い、機体側面に取り付けられた時計から鎖に繋がれた鍵のようなものが付いていた。
 そしてゴムで繋がれた鎌を引っ張り、ギミックを装填した。
「私もどれだけ強くなったか、アリスさんに見てもらいたいんです!」
 フィールドの対角線上にルナ=ルチリアが置かれた。同時に二人はフィールド上にフリップマインを設置した。
「煩わしい前置きは無しだ!行くぞ月の!3、2、1、アクティブシュート!!」
 アリスが叫び、勢いよくファランクスドールが打ち出された。それと同時にルナ=ルチリアも正面からぶつかり合うことを期待してか真っ直ぐに打ち出された。
 強いパワーでシュートされた2つの機体はフィールド中央の山に差し掛かり、跳ぶのと同時に衝突をした。
「なっ……!?」
 ファランクスドールのギミックが発動し、鎌が勢いよく振られた。だが鎌はルナ=ルチリアを捉えることなく宙を切り、反動によってフィールドの端へと自ら滑っていった。
 一方のルナ=ルチリアは、パワーが相殺されたとはいえ吹き飛ばされずに距離を稼いだ。
「私の先行ですね」
 千春が宣言をし、ファランクスドールに標準を合わせた。
 しかしフリップアウトは可能だが自滅の危険性がある難しい位置だ。
 それに加えファランクスドールとルナ=ルチリアの距離は離れており、シュートが弱すぎると届かない可能性もあった。
 マインは遠くにあり、落とすか自滅、もしくはターンを譲るかとも言えた。
「……っ、行きます」
 息を呑み、千春はルナ=ルチリアを比較的強めにシュートした。
 ルナ=ルチリアは時計回りにスピンをし、ファランクスドールへと向かっていった。
 ファランクスドールとルナ=ルチリアが接触。
 スピンのエネルギーをファランクスドールへと伝え、ルナ=ルチリアは大きく移動しなかったにも関わらずファランクスドールは大きく吹き飛ばされ、台の外へと落ちていった。
「ショックを吸収しきれなかった……成長したって言うのは間違ってなかったようだな」
 アリスがそう言うと鎌の先端に鍵付き鎖を付け替えギミックを準備した。
「次こそ仕留めてやるよ。ここまでワクワクしたのは久しぶりだ」
 口角を上げ半ば威嚇するように、だが楽しそうにアリスは千春を睨んだ。ただならぬ気配を感じ、千春は鳥肌が立つのを感じた。


「……3、2、1、アクティブシュート!」
 

 千春が掛け声をかけると共に再び互いのフリックスがシュートされた。
 前回の強気なシュートに対しアリスは弱めのシュートをし、フィールド中央の山を越えることはなかった。
 一方のルナ=ルチリアはパワーが強すぎたのか山を越え、そのまま跳び場外へと落ちていった。
「技術は磨いたようだが勝負慣れしてないみたいだな?」
 アリスはそう確信し、千春に告げた。
「そうかもしれません。今もちょっと怖かった……。でも、それが楽しいんです。何だかよくわからないカードを賭けてるけど、とにかく本気でぶつかり合うのが楽しいんです!行きます!3!2!1!アクティブシュート!!!」
 三度フリックスがシュートされた。千春もアリスも興奮状態に入っているはずだったがシュートは冷静で互いに山を越えず斜面で停止した。
「ギリギリ俺の先攻か?じゃあ……削ってやるぜ?」
 鎌の先端に付けた鎖の先に付いた鍵をフリップマインの近くに移動。そしてファランクスドールがシュートされた。
 鍵がマインに当たり、本体が山を越え、そのままずり落ちるようにルナ=ルチリアに接触し停止。マインヒットだった。
「これでお互い1対1、さあ決着をつけようじゃねぇか!」
 マインは山の反対側に2つ。ルナ=ルチリアからマインを狙うのは至難の技だった。
 また2機はフィールド中央近くに止まっているためフリップアウトも狙いにくかった。
「マインヒットできれば勝てる。でもマインにどうやって当てる……?フリップアウト……は狙いにくい……。」
 小声で考えを纏めようとする千春。そして決意したかのように山の向こう側のマインに狙いを定めた。
 ルナ=ルチリアがシュートされた。ファランクスドールを押し、真っ直ぐに山へと向かった。
 そしてそのまま山を越えジャンプはせずに山頂を越えた。
「あとはこれから……!」
 摩擦係数の少ないルナ=ルチリアのシャーシ部分の恩恵か、緩やかに回転しながら滑らかに山の斜面を滑り降り、マインに接触した。


「……ふう。私の、勝ちです」
 

 安堵と達成感に包まれ、千春はそう宣言した。

ーーーーー

「くうーっ!完敗だわ!よくそこで当てられたな!いや、負けても気持ちいいぜ!ほら、カードやるよ。2枚だっけ?」
 
 廃ビルを去りながらアリスは千春にカードを2枚手渡した。質感は完全に千春が持っているカードと同じものだった。

「ほんと楽しかったです、また……戦っても良いですか?」


「当たり前だろ!もうあんたは俺のライバルだからな!……ってそうだ、同じ相手とは戦えないんだっけ」

「あはは、それじゃあ連絡先交換しましょう。それならカードと関係なく何度でも戦えますよ」
「おっ、そりゃいいや!!」
 元気よく笑うアリスにつられ、千春も笑みを浮かべた。


「ライバル……かぁ」
 

 そう小さく千春はつぶやき、幼馴染の事を思い浮かべていた。

ーーーーー

 千春と別れたアリスは余韻に浸りながら歩いていた。
「ほんと、良いバトルだったぜ。次会う時が楽しみだ」
 そう呟きながらアリスはカードを取り出し眺める。
「……こんなもん、もう俺には必要ねぇな」
 アリスはカードを放り捨てた。

「戦いの放棄は許さない」

 その時、アリスの前にあの白い少女が現れる。
「お前……!」

 白い少女は邪悪に微笑みながら、フリックスを取り出した。
 その機体のフロントには2本の刃が取り付けられていた。

「なんだよ、10枚集めてないのにバトル出来るなんてサービス良いな」
「バトル?違うよ、これは……」

 少女は一呼吸置いて言った。

「天罰」

 

    つづく

 

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