オリジナルビーダマン物語 第85話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!



第85話「勝て、タケル!データVSビー魂!!」


 



 南極予選特別宿舎。
 大会参加者は、特別に建設されたこの宿舎に泊まる事になっている。
 予選ヒートを終えて見事勝ち抜いたタケルとシュウは自分たちが止まる部屋に入りひと時の休息を取っていた。
 
「ガツガツ!んめぇ~!かき氷の自家栽培やってるなんて、さっすが南極だぜ!」
 暖房の効いた部屋のコタツの中に入りながら、シュウはかき氷をがっついていた。
「これ、自家栽培って言うのか……?」
 タケルの目の前にもかき氷があるが、さすがに食は進まない。
「食わないのか、タケル?しっかり食わないと力出ないぞ」
「こんなの食べても力なんか出るか!」
「じゃあ俺が貰う!」
 シュウは言うが早いか、タケルのかき氷を奪ってがっついた。
「食い過ぎて腹壊すなよ」
「心配ねぇよ、美味いし!」
 口いっぱいにシロップと氷を頬張りながら言う。
「美味さは関係ない」
 はしゃぎまくるシュウに呆れながら、タケルはレックスを取り出した。
 休息出来る時間は限られている。
 今のうちに機体のメンテをしておかなければならない。ビーダーばかりが休憩しているわけにはいかないのだ。
 
 タケルがカチャカチャと機体を弄っていると、それに習ってシュウもブレイグを取り出した。
「う~ん、氷結防止スプレーをかけたとはいえ、この低気温であれだけのバトルをしたんだ。ガタがくるのも無理はないか」
 ボロボロになったレックスをメンテしながらタケルが言う。
「そっか?そんなでもないけどなぁ」
 その横で、シュウはそこまで深刻にメンテをしているタケルを不思議そうに見た。
「なに?」
 タケルはブレイグとレックスの消耗具合を見てみた。
 確かにシュウの言うとおり、レックスと比べてブレイグは大したダメージは無い。
「……」
 それ見て、タケルは考え込んだ。
(性能なら、世界を相手にも渡り合える。だが、これからのバトルは性能だけじゃ……!)
 タケルは密かに、クウに渡されたパーツが入っている小袋を握りしめた。
 
 そして、翌日。
 ビーダー達は特設スタジアムへ集まった。
 南極とは言え、スタジアム内は特殊な空調が効いているので若干肌寒い程度の気温に保たれている。
 
『皆、昨日はぐっすり休めたかな?!そして、機体のメンテはバッチリか!?
一回戦を始めるぞ!一回戦のルールは、予選を勝ち抜いた10人で対戦カードを組んでタイマンバトルだ!勝利した5人が決勝へ進めるぞ!!
競技内容は、ガチンコアルティメットシューティング!対面に設置されたアルティメットシューティングを同時に撃ち合い、先に100点ゲットした方の勝利となる!
3回勝負の2本先取だぞ!』
 
 ルールを把握するタケルとシュウ。
「アルティメットシューティングかぁ。関東予選以来だなぁ」
 シュウが懐かしげにつぶやく。
「だが、これは対面式の対戦競技。相手にショットを阻害される要素もある……普通のアルティメットシューティングの感覚とは違うだろうな」
「へっ、だったらパワー型の俺とタケルは有利じゃん!相手のショットをブッとばしつつ、ターゲットも狙える!」
「そうだな。普通のアルシューだったら、どちらかというと連射型の方が有利だが。対面式ならパワー型にも利がある」
 タケルとシュウは自分の戦術に自信を持った。
 
『それでは、さっそく対戦カードを発表しよう!モニターに表示するから良く見てくれ!!』
 対戦カードは予選成績は関係なくランダムで決まるらしい。
 モニターに対戦表が映し出された。
 
「俺は……いきなり第一試合か」
「しかもタケルの相手って」
 タケルの名前の隣には『ラウル』とあった。
「北アメリカ予選で、ブッシュと戦った奴だな」
「あの時はブッシュが勝ったけど、あいつもすげぇ強かったよな」
「トリガーと連動したマガジンによる超速連射……そしてそこそこパワーもある。アルティメットシューティングにはお誂えな性能だ」
 タケルは北アメリカ予選でのバトルを思い出しながら分析した。
「んで、俺の相手は……っと!」
 シュウはモニターから自分の名前を探した。
「あ、あったあった!俺は二回戦か。相手は……アラストール!?」
 その名前を確認した途端、どこからか視線を感じ、反射的にその方へ向く。
 そこには、多くのビーダーの中に紛れてアラストールがシュウを睨み付けていた。
「あいつ……!」
 シュウと視線があった途端、アラストールは視線を逸らし、どこかへ歩いて行った。
「シュウの相手はアラストールか。あいつは何故かヒンメルに執着している。お前にとっては避けられない相手だな」
「へっ、上等だぜ!ヒンメルにリベンジするのはこの俺だ!誰にも渡さねぇ!!」
 シュウは拳を握りしめて気合いを入れた。
 
「まぁ、まずは俺の試合からだな」
 タケルが準備運動がてら体を伸ばし、コキッコキッと関節を鳴らした。
「おう、頑張れよタケル!タイラントレックスのパワーならいけるぜ!!」
「ああ、そうだな」
 タケルはシュウの声援を受けながら、バトルフィールドへ歩き出した。
 
(パワーなら、勝てる……だが……)
 心に一抹の不安を抱えながら。
「……レックス・パワーグリップモード」
 バトルフィールドに着く前に、タケルは静かにレックスのモードチェンジをした。
 
『それでは、第一試合を始めるぞ!対戦者のタケル君とラウル君はバトルフィールドについてくれ!!』
 設置されているバトルフィールドへ、タケルとラウルが対峙した。
 
「タケル……君は確か仲良しファイトクラブの……」
 バトル開始前にラウルがタケルへ話しかけてきた。
「あぁ、リーダーをしている」
「そうか。話によれば、北アメリカ予選で君のチームメイトがブッシュを助けてくれたそうだな。礼を言う」
 律儀に礼を言ってきたラウルへ、タケルはそっけなくと返した。
「別に俺がやった事じゃないし、あいつもブッシュへ借りを返しただけだ。礼を言われる事じゃない」
「君達にとってはブッシュへの恩返しに過ぎないかもしれない。だが、俺にとっては立派な恩だ」
「律儀だな。だが、ブッシュを助けた事で、結果的にお前は予選を敗退してしまった。むしろ恨むべきじゃないのか?」
 タケルが言うと、ラウルはフッと笑った。
「戦わずに得た勝利よりも、戦って得た敗北の方が価値がある。やるかやられるか、敗者は全てを失う時代はもう終わったんだ。
それに、今ここで勝てばいいだけの事」
「ほぅ、随分と自信があるんだな」
 
『さて、軽く言葉のジャブを交わしたところで、そろそろおっぱじめるぞ!!』
 タケルとラウルがビーダマンを構える。
『レディ、ビー・ファイトォ!!』
 
「はぁぁぁぁ!!!」
 ラウルのガトリングリボルバーが連射でどんどんポイントを稼いでいく。
 
『さすがは連射タイプ!スタート早々、ラウル君が次々とターゲットへとショットを当てていく!!』
 
「前にも見たが、大した連射力だ。だったら、こっちは!」
 タケルはホールドパーツをシメつけた。
「うおおおおお!!!!」
 ドンッ!!
 そしてパワーショットを連射する。
 ガガガガガ!!
 向かってきたラウルのショットを弾き飛ばしつつ、ターゲットへショットをぶつける。
 
『タケル君も負けてはいない!パワーショットでラウル君のショットを弾きながら得点を稼いでいる!
得点を稼ぐ速度は遅いが、防御をしながら着実に差を縮めている!!』
 
「それがパワー型の利点か!」
「お前の連射は通じない!!」
「そうはいかない!!」
 ラウルは更にトリガーを強く押し込んで連射した。
 ズドドドド!!
 タケルのショットの合間を潜ってラウルも得点を重ねる。
「っ!」
「パワー負けしていても、隙をつけば得点は出来る!!」
  
 ズバババババ!!!
 
『パワーVS連射!両者ともに実力は互角か!?同得点のまま点数を重ねていく!!
現在、両者ともに70点!そろそろ第一バトルも終盤か!』
 
「ペースは互角!あとは気力の勝負だ!!」
「うおおおおお!!!」
 ガガガガガガ!!
 二人が一気にペースアップする。
 その時だった。
 ベキィ!!
 嫌な音が響き、タケルのショットのペースが落ちた。
「っ!」
 
『のおっと!!ここでタケル君のペースがガタ落ち!!何かトラブルでも起きたのか!?
そして、そこをラウル君が突いて、今100点に到達した!!第一バトルの勝者は、ラウル君だ!!』
 
「ふぅ……」
 ラウルは撃つのをやめて一息ついた。
「くっ……!」
 タケルが悔しげに口元をゆがませた。
 
「タ、タケル……」
 その様子を見ていたシュウは、心配そうに呟いた
 
『それでは、10分間のインターバルのあと第二試合を始めるぞ!両者ともにベンチでビーダマンのメンテをしてくれ!!』
 
 タケルとラウルはベンチに戻った。
「くそっ!」
 タケルはベンチに戻るなりレックスを見た。
「これは……パーツにヒビが入ってる」
 グリップとコアにヒビが入っていた。
「もう限界が来てるのか……このインターバルで修理する事は可能だが、付け焼刃の応急処置をした所で、またバトル中に自壊するのは目に見えている……!」
 タケルは、懐からあるパーツを取り出した。
(何もしないまま、無駄な足掻きをするよりは。賭けてみるか……?)
 
 そして、10分が経過した。
 ラウルとタケルがバトルフィールドに着く。
 
『さぁ、第二ラウンドを始めるぞ!のおっと、タケル君は持っているビーダマンの形が違うようだが……!?』
 ビーダマスタージンが、タケルが持っているレックスの違いに気付いた。
 タケルのレックスは、全身にアーマーのようなものが装着されており、ゴツくなっていた。
「パーツを追加しただけですが、ルール上は大丈夫ですか?」
 タケルは一応お伺いを立てた。
『……なるほど、確かにビーダマン自体はタイラントレックスのままみたいだね。オーケー、認めよう!』
 タケルはビーダマスターに頭を下げるとラウルへ向き合った。
「ここにきて思い切った改造をするんだな」
「あぁ。ただ足掻くのも良いが、それよりも賭けをする事にした」
「面白い」
 ラウルはフッと笑ってビーダマンを構えた。
 それを見て、タケルも同じようにビーダマンを構える。
『それでは、そろそろ始めるぞ!レディ、ビーファイトォ!!』
 
「はぁぁぁぁ!!!!」
 ズドドドドドドド!!!!
 再びラウルの連射が火を吹き、得点を重ねる。
 
『スタートダッシュを決めたのはまたしてもラウル君だ!怒涛の勢いだぞ!!』
 
「うわわ、タケルの奴は大丈夫なのかよ!?」
 客席で見ているシュウは慌てている。
 
 ラウルは最初から飛ばす事でペースを自分有利に持って行っている。
「どうした?賭けとやらはその程度か?」
「……」
 一方のタケルは慎重に撃っていた。
 得点は重ねているものの、そのペースは遅い。
 が、タケルの表情は冷静だった。
(なるほど、こういう事か……)
 タケルは落ち着いて、クウから渡されたパーツの性能を確かめていたのだ。
 
『ハイペースで得点を重ねていくラウル君に対して、タケル君のペースはかなり遅い!このまま決まってしまうのか?!』
 
「はぁぁぁ!!」
 ズドドドド!!!
 ラウルのペースがどんどん上がっていく。
 が、ここでタケルの目の色が変わった。
「試し撃ちはこれくらいでいいな」
「何?!」
「行くぞ、レックス!!」
 タケルが、トリガーを押す指に力を込めた。
 ズバババババ!!!
 レックスからパワーショットの連射が火を吹く。
 
『な、なんだぁ!?急激にレックスのペースが上がった!ラウル君の得点を猛追している!!あの追加パーツの効果なのか!?』
 
「ば、バカな!たかがアーマーを追加しただけでこんなに劇的に性能が変わるのか!?」
 
 その様子を、日本からテレビ中継でクウが見ていた。
「ええでぇ、タケルはん……。さっすがワイが見込んだビーダーや」
 クウはお菓子をボリボリ食べながらニタニタと笑っていた。
 
 琴音と彩音もテレビ中継で試合を見ている。
「す、すごいタケル……でも、どうして急にあんなショットが」
「分からない。けど、あのパーツが関わってるみたいね」
「あのパーツって、お姉ちゃんが渡したんじゃないの?」
 彩音は首を横に振った。
「ううん……どこであんなパーツ手に入れたんだろう……?」
「まぁでも、このペースならタケルの勝ちだよね!」
 琴音が嬉しそうに言うと、彩音は躊躇いがちに頷いた。
「う、うん。そうだね……でも……」
 彩音はどこか、タケルのショットに違和感を覚えていた。
 
 そして、試合はタケルがついにラウルの得点を抜かしていた。
『パワーアップしたタケル君の勢いは凄まじい!ついにラウル君を抜いて、どんどん差を広げている!!』
 
「くっ!」
 悔しげにするラウルだが、どうしようもならない。
(凄いな……。セットしたデータチップが、各アーマーと連動して、状況に応じて適切なパワーと連射を自動で使い分けている。
しかも俺のプレイスタイルに完璧に合わせ、ビーダマンが自動で発射しているみたいだ)
 ズバババババ!!
 タケルの勢いは更に増している。
(ある意味で、ビーダマンの理想型なのかもしれない。だが……なんだ、この違和感は?)
 タケルは、リードしていることに喜びつつも、どこか違和感を覚えていた。
 その時、ラウルが話しかけてきた。
「凄いな、まさかこんな隠し玉を持っていたとは。だが、俺は全力で戦うだけだ!」
「っ!?」
 圧倒的な力を魅せられても、まだ諦めずに自分を信じようとするラウルをみて、タケルは違和感の正体に気付いた。
(確かにこのパーツは強い。だが、これは本当に俺が戦っているのか?
自動で適切な機能に切り替わり、トリガーが勝手に動く。俺はただ手を添えているだけ……。
これじゃ、俺はただのパーツだ……ビーダーじゃない!)
 
『さぁ、バトルもいよいよ終盤戦か?!ラウル君の得点が50点なのに対し、タケル君は既に75点!大きくリードしている!!』
 
「……」
 ここで、タケルは撃つのを辞めた。
「なんだ?!」
 その事で、会場がざわめく。
 
「タケル、どうしたんだ?」
 シュウも疑問を抱いた。
 
『のおっとどうした事か!?タケル君が急に撃つのを辞めてしまったぞぉ!!』
 
(やはりこれは、俺のバトルじゃない)
 タケルは、レックスに付けたパーツを外した。
 
『しかも、レックスのアーマーを外している!?何か故障でもあったのか!?どうしたんだ、守野タケル君!!』
 
 テレビで見ているクウは驚いた。
「な、なんでや!?なんで勝利を手放すんや!!あのまま撃ち続けていれば、確実に勝てたはずやのに!!」
 菓子が零れる事も構わずに、クウはテレビへ向かって前のめりになった。
 
 そして、パーツを外し終えたタケルは、中継しているカメラへ向かって叫んだ。
「クウ!観ているんだろう!?俺は俺の力で戦う!データに勝たせてもらうつもりはない!!」
 
「な、なんだぁ?」
 シュウはタケルが叫んでいる意味が分からなかった。
 
 琴音もタケルの真意を分かりかねていた。
「タケル、どうしちゃったの?」
「タケル君……」
 が、首をかしげる琴音と違って、彩音はなんとなく状況を察したようだ。
 
 そして、肝心のクウは。
「うぐぐ……まぁ、これもタケルはんの強さっちゅう事かいな」
 少し悔しそうな顔をするが、すぐにいつもの表情に戻り、お菓子をボリボリ食べ始めた。
「ほんま、楽しませてくれるお方や」
 クウはどこか嬉しそうだった。
 
 試合の方は……。
『タケル君が撃つのをやめた事で、ラウル君はどんどん差を縮めていく!
その差はあと5点!……4、3、2……ついに並ぶか!?』
 
「うおおおおお!!!」
 得点差が無くなった所でタケルが再び撃ち始めた。
 
『のおっと!得点が並んだ所でタケル君がバトル再会!どうやらビーダマンに故障はなかったようだ!!凄まじい気迫で撃ち続ける!!!』
 
「どういうつもりだ?」
 クウ関連の事情を知らないラウルはタケルの真意が理解できなかった。
「待ってたのさ。正々堂々と戦うためにな!」
「あのパーツに、何か事情があったみたいだな」
 ラウルはすぐに察した。
「だが、何があろうと俺は全力で戦う!」
「おう!!」
 
『さぁ、両者ともに凄まじい勢いで得点を重ねていく!!ついに、90点台に突入!!』
 
「うおおおおおお!!!」
「はああああああ!!!」
 ズバババババ!!!
 フィールド内に、ビー玉が乱れ飛ぶ。
 
『そして、ついに100点に到達!!!!だが、僅かの差でタケル君の方が先に100点をゲットした!よって、第二ラウンドの勝者は守野タケル君だ!!!
これでイーブン!勝負の行方は、第三ラウンドに持ち越されたぞぉ!!』
 
 バトルが終わり、タケルはラウルへ向き合った。
「すまなかったな、バトルを汚した。あのパーツはビー魂の精神に反するものだった」
 タケルはラウルへ頭を下げた。
「気にしてないさ。別にルール違反をしたわけじゃない」
 それ以上は二人とも何も言わず、踵を返してベンチに戻った。
 
 そして10分間のインターバルを終えて、第三ラウンドがスタートした。
 
 最初から全力で飛ばす二人は互角の立ち合いだった。
 しかし……。
『さぁ、最初から激しい戦いとなった第三ラウンドだが、おっと!タケル君のペースが急激に落ちた!!』
 
「くっ!さすがにあのパーツを外した状態じゃ、機体が持たないか……!」
 だからと言って、またあのパーツに頼る事はしたくない。
 機体が壊れないように、調整しながら撃つしかないのだ。
「悪いが手加減はしない!!」
 ラウルは、タケルのレックスが限界な事を知りつつも、それでも手加減はしなかった。
「上等だ!全力で来い!!」
 口ではそういうものの、内心かなり焦っていた。
 
(やはり、今のままじゃダメなのか……レックス!)
 その時だった。心の中の呼びかけに応えるように、レックスが淡く光り始めた。
(なんだ、この光は……?)
 そして、タケルの懐もシンクロするように同じ光を発していることに気付いた。
 光の正体を取り出すと、それはクウのくれたアーマーだという事に気付いた。
(レックス、お前が求めているのか……?)
 求めるままにアーマーを取り付けるタケル。しかし、ただアーマーを付けただけでは意味がない。
 
『おおっと!タケル君が試合中に機体の調整をしている!しかし、この競技でそんな事をしている余裕はないぞ!?』
 ビーダマスターの実況はタケルの耳には届いていない。
 タケルはただ、レックスの求めるものを探していた。
(アーマーを付けただけじゃ、ダメだ。レックスが本当に求めているものは別にある……)
 よく見ると、アーマーにも光っている部分とそうじゃない部分があった。
(そうか、いらない部分があるんだな)
 タケルは、光ってない部分を除去すればいいという事に気付いた。
(だが、この状態で出来るのか?彩音さんも工具も何もないこの状態で……)
 レックスはタケルが迷っている間も変わらずに導きの光を発している。
(そうだな、迷っている暇はない!形はレックスが導いてくれている!あとは俺の力次第だ!)
 決意したタケルは、パーツに手をかけた。
「うおおおおおお!!!!」
 バキィ!!!
 タケルは渾身の力でレックスの一部分をへし折った。
 
『な、なんだぁ?!タケル君が、レックスを自らの手で壊し始めた!?何がどうなっているんだぁぁ!!!???』
 その行動に会場はさらにざわめく。
 中にはタケルを非難する者もいた。
 だが、タケルはそんな事は気にしていない。
 
「ぐおおおおお!!!」
 なおも自力で、レックスが教えてくれる形になるように破壊していく。
「腕の力だけじゃ足りない!」
 タケルは近くにあった氷の塊を手に取って、レックスへ叩き付けた。
「作り上げるぞ!俺の手で!!」
 バキィ!ベキィ!!!
 何度も何度も叩き付け、そして……。
 ついに、光っている部分だけを残した形のレックスが完成した。
 完成と同時に導きの光も消える。
 
「出来たぞ……!これがお前の求める形なんだな」
 タケルは再びレックスを構えた。
 
『タケル君、バトル再開!!しかし、差は大きく広がっている!この差は縮まらないか……なに!?』
 タケルは凄まじい勢いでラウルを猛追した。
「なに、タケル、そのパーツは……!?」
「これはさっきとは違う!レックスが求め、俺が自分の力で形にしたもの!間違いなく俺の力だ!!」
「なるほど、面白い!!」
 ズババババババ!!!!
 新たなレックスの力は凄まじく、ラウルのショットを全て弾き飛ばし、どんどん得点を重ねて行った。
 
『タケル君の素晴らしい猛追!!パワーで圧倒し、ラウル君の得点を抜いた!!そして今、100点に到達!!
よって、勝ったのはタケル君だぁぁぁ!!!』
 ワアアアアアと歓声が上がる。
 
 バトルが終わり、フィールドから離れたタケルとラウルは向き合って握手した。
「まいった。まさかバトル中に素手でビーダマンを改造してパワーアップさせるとはな」
 ラウルはどこかスッキリした顔で、素直に負けを認めた。
「いや、俺だけの力じゃない。レックスが教えてくれたおかげだ」
「フッ、ビーダマンとの絆か。全く、ボールドな奴だ」
「ぼーるど?」
「大胆って意味さ。それじゃ、次の試合も頑張れよ」
 それだけ言うと、ラウルは去って行った。
 
「タケルー!!」
 入れ替わるようにシュウが駆け寄ってきた。
「やったな、タケル!すっげぇぜ新型レックス!!」
「いや、全部レックスのおかげだ。こいつが導いてくれなきゃ、俺は何もできなかった」
「レックスもタケルもどっちもすげぇって!んで、新しいレックスって名前なんて言うんだ?」
「名前?」
 タケルはキョトンとした。
「こんだけ形変わったんだから、もうタイラントレックスとは言えないだろ?」
 シュウの言うとおり、追加パーツを付けただけの感覚だったが、よく見ればもうタイラントレックスの原形を留めていない。
 元に戻すのも難しいだろうし、これは新型と言っても差し支えは無いだろう。
「それも、そうだな……それじゃあ」
 タケルは少し考えたあと、こう答えた。
「ボールド……ボールドレックスってのはどうだ?」
「ボールドかぁ、強そうな名前じゃん!次の試合も勝ちぬいて、俺のビクトリーブレイグと一緒に世界へ行こうぜ!」
「当然だ!!」
 シュウとタケルはレックスとブレイグを軽くぶつけ合った。
 
 
 
 
      つづく
 
 次回予告
 
「南極予選一回戦!次の試合は、俺とアラストールのバトルだ!
互いにヒンメルへのリベンジを賭けて、火花を散らす!!
世界へ行ってヒンメルと戦うのは、この俺だ!!
 
 次回!『シュウVSアラストール!リベンジャー同士の戦い!!』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
  
 
 
  
 

  
 

 



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