爆砕ショット!ビースピリッツ!!
第86話「シュウVSアラストール!リベンジャー同士の戦い!!」
南極予選一回戦第一試合のタケルVSラウルは、タケルが見事勝ち抜いた。
そして、いよいよ第二試合はシュウとアラストールのバトルだ。
選手控え室。
「次は俺のバトルか……」
シュウがバトルフィールドに着く前に大きく伸びをしてアップを始める。
「気を付けろよ、シュウ。あいつの執念は半端じゃないぞ」
「それは俺だって同じ事。絶対に勝って、ヒンメルにリベンジするんだ!」
シュウは、同じようにアップを始めているアラストールの方を向いて睨み付けた。
アラストールはそれに気づいているのかいないのか、黙々とアップを続けている。
「あいつの持ってるシュヴァリエルは、恐らくお前が前にルドルフさんと戦った時の機体と同じものだ。注意しろよ」
タケルが、アラストールを警戒しながら言った。
「分かってる。でも、ブレイグはあの時よりもずっと強くなったんだ。俺だって同じ。今度は負けるもんか」
シュウはブレイグを手に持って見つめた。
そして、時間が経ち……。
『さぁ、いよいよ第二試合を始めるぞぉ!!』
バトルフィールドにシュウとアラストールが対峙している。
『対戦カードは、シュウ君とアラストール君だ!おおっと、試合前から両者激しいにらみ合い!!この二人には、並々ならぬ因縁でもあるのか!?』
「まさかお前ともう一度戦う事になるとはな」
「誰が相手だろうと俺は勝つ!そして、本戦でヒンメルと戦うんだ!!」
ヒンメルという言葉を聞いてアラストールがピクッと反応する。
「ヒンメルだと……!」
「おう!俺はずっとヒンメルと戦って勝つためにバトルしてきたんだ!お前に勝ってやる!!」
シュウがそう宣言すると、アラストールは怒りの感情を露わにした。
「ふざけるな!あいつの息の根を止めるこの俺だ!お前如きに譲れるかっ!!」
「っ!」
凄まじい怒号にシュウは一瞬怯んだ。
「な、なんだよ……!」
「お前如きの信念に、俺を止められると思うなよ!」
アラストールの気迫に、シュウは完全に気圧されてしまった。
「お、お前とヒンメルに、一体何が……?」
『さて、そろそろ試合をおっぱじめるぞ!両者ともに準備はいいかぁ!?』
シュウがアラストールに問おうとするのをビーダマスターが遮った。
「ああ!とっとと始めろ!」
アラストールはスタートを急かす。
「っ!おお!俺も準備オッケーだ!」
シュウも慌ててビーダマスターへ返事した。
『そんじゃ、いくぜ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
合図とともにアルシューが可動する。
「とにかく今は、バトルに集中するだけだ!いっけぇ、ブレイグ!!」
シュウはパワーショットを連射してターゲットにショットを当てていく。
「うおおおおお!!!シュヴァリエル!!!」
アラストールはシュウを遥かに上回る気迫でダブルバーストを猛連射してきた。
「っ!!」
『のおおっと!シュウ君も凄いショットだが、アラストール君はそれをはるかに上回っている!!グングン得点を上げていくぞ!!』
「くっ!」
必死に対抗しようとするシュウだが、そもそもの気合いが違い過ぎる。
性能や実力では互角のはずなのに、気力で一気に差を付けられてしまった。
「どうした!?ヒンメルにリベンジしたいんじゃなかったのか!?」
アラストールが挑発してくる。
「くっそぉ!!」
その挑発に乗って気力を奮い立たせるものの、差がなかなか縮まらない。
『バトルは一方的な展開だ!スタートダッシュを決めたアラストール君が完全にペースを自分のものとし、どんどん差を広げていくぞ!!』
「うおおおおお!!」
「ちぃぃ!!」
乱れ飛ぶビー玉。だが、その勢いは依然アラストールの方が上だ。
そして……。
『決まったぁ!勝ったのは圧倒的な差でアラストール君!まずは一勝だ!!』
「ぐぐ……!」
悔しがるシュウに対し、アラストールは鼻で笑った。
「ふっ」
『それでは、10分のインターバルの後に第二ラウンドをスタートするぞ!両者とも控えのベンチへ戻って機体のメンテナンスをしてくれ!』
ビーダマスターに言われ、シュウはトボトボとベンチに戻った。
「くっ!」
そして、ドサッと力を抜いて乱暴に座る。
「くっそぉ……!」
悔しげにベンチを叩いた。
「俺だって、俺だってヒンメルへリベンジしたいんだ……なのに、あいつの方がその思いが強いってのかよ……!畜生……!」
試合に負けた事よりも、ヒンメルへの想いに負けた事が悔しくて、シュウは言葉を漏らした。
「シュウ……」
それを観ていたタケルはたまらなくなり、シュウの元へ駆け出そうとする。
が、その前に別の人物がシュウの傍にやってきた。
「背負う物があれば人は強くなれる。ですが、それが重すぎれば身動きが取れなくなる。私はあなたからそう学びました」
「え?」
シュウが顔を上げると、そこにはマハラジャがいた。
「マハラジャ……」
「想いの、重さでは確かにアラストールの方が上でしょう。しかし、想いの強さは重さではなく、純度です」
「純度……」
「あなたはその純度で私を含め、数々のバトルに勝利してきた。それを忘れないでください」
「……」
シュウがあっけにとられていると、マハラジャはそれ以上何も言う事は無く、静かに去って行った。
そして、次のラウンドが始まる。
シュウとアラストールはバトルフィールドについた。
『そんじゃ、そろそろ第二ラウンドをおっぱじめるぜ!!』
「ウラノスと戦うのはこの俺だ。お遊び気分のお前は、ここで消えてもらう」
アラストールの言葉を無視し、シュウは思案していた。
(想いの純度……俺は、ヒンメルと戦いたい。負けっぱなしじゃ嫌だから、絶対に勝ちたい。そのために……そのためだけに今まで頑張ってきた……。
他の奴らだって、いろんな想いでビーダマンやってきてたはずだ。でも、俺はそれでも、俺のために戦って勝ってきた)
『いくぜ、レディ、ビー・ファイトォ!!』
ビーダマスターがスタートの合図をする。
「一気に決めるぞ、シュヴァリエル!!」
ズドドドド!!!
再びシュヴァリエルのダブルバーストが火を吹く。
『第一ラウンドと同様、開始直後にアラストール君の猛攻だ!!シュウ君はもう成す術がないのか!?』
(俺は、例え想いで負けたとしても……このバトルは負けたくない!!!)
シュウはキッと顔を上げてブレイグを構えた。
「うおおおおおおお!!!」
そして、先ほどとは比べ物にならないほどのショットでアラストールのショットを弾き飛ばして得点していった。
「なにっ!?」
「絶対に勝つぞ!ブレイグ!!!」
『のおっと!シュウ君の大反撃!先ほどとは打って変わっての精彩に満ちたバトルだ!!』
「なに!?まだそんな力が……!」
「アラストール!お前の方がヒンメルへの想いは強いのかもしれない!でも、それとバトルは別だ!想いが弱くても、それでも俺は負けたくないんだ!!!」
「っ!てめぇ……!!」
アラストールも激情してペースを上げる。
『実力はほぼ互角!同じペースで得点を重ねている!!どっちが勝ってもおかしくないぞ!!』
「お前に勝つ!そして、ヒンメルにも勝つ!!」
「潰す!俺は必ずウラノスを!!その邪魔をする奴も一人残らず潰す!!!」
ズババババババ!!!!
火花を散らしながら飛び交うビー玉。
そして、勝利を得たのは……。
『決まったぁ!!勝ったのは、僅かの差でシュウ君だ!!これでバトルは、第三ラウンドに持ち越された!!』
「くっ……!」
「おっしゃぁ!!」
「バカな……俺は、ここで終わるわけにはいかないんだ……!」
拳を握りしめて悔しがるアラストールへ、シュウは話し掛けた。
「アラストール」
アラストールがゆがんだ顔を上げる。
「次で最後だ。良いバトルしようぜ」
シュウは笑顔で言った。
「なん……だと……!」
アラストールは更に顔をゆがませる。
「俺の目的はヒンメルだし、だからこそ絶対に負けたくないけど。でもお前とのバトルだって、どうせやるなら楽しまなきゃ損だからな!」
「……楽しめる、余裕があると思っているのか……!」
「ああ!だって、俺達はビーダマンバトルをやってんだからな!」
屈託のない爽やかな顔で言うシュウだが、それが却ってアラストールは癪に障った。
「っ!ふざけるな……!」
「?」
「俺は、バトルがしたくてビーダマンをやってるわけじゃない……!俺のビーダマンは遊びじゃない……!!」
「俺のだって遊びじゃねぇよ!全力の真剣勝負だ!!」
その言葉を聞いて、アラストールは狂ったように叫びだした。
「違うううううぅぅぅ!!!!そうじゃない!!そうじゃない!!俺はお前とは違う!目的は同じでも、お前とは違う!!!俺は許さない!ウラノスを、許せない……!」
奥歯を噛みしめ、瞳に涙を浮かべながらシュウへ訴える。
そのあまりの狂気に、シュウは狼狽えた。
「な、んだよ……!何がお前をそこまで……お前とヒンメルに、一体何があったってんだよ!!」
「俺はっ!奴に、全てを奪われた……!故郷も、何もかも……あいつを許せない!あいつを潰す事だけを考えて、そのためだけにビーダマンの腕を磨いてきた……!
ただそれだけのために……!負けたから、リベンジしたいからだと……!俺とのバトルも楽しみたいだと……!!
その程度の……その程度の想いで、俺の邪魔をするなあああああ!!!!!」
涙ながらの咆哮。それを受けてシュウは一瞬たじろいだ。
(ヒンメルが、そんな事を……?ほんとなのか?)
にわかには信じられない話だ。しかし、今はその真偽を確かめる暇はない。
シュウすぐに平静に戻ってアラストールをまっすぐ見つめた。
「何が違うんだよ」
シュウは冷静にそう言った。
「なんだと……!」
「『このバトルには負けられない。ヒンメルにリベンジしたい』結局それだけじゃねぇか。同じだよ、俺もお前も」
「……」
アラストールは言葉を返せなかった。
「それに、ヒンメルにリベンジ出来た所でさ、ただ嬉しいってだけじゃん。それでお前どうしたいんだよ?」
「俺は、恨みを晴らして……」
「だから、晴らしてどうすんだよ。俺は、ヒンメルを倒して嬉しくなりたいってだけだけどさ!」
「……」
アラストールは言葉に窮したのか、何もしゃべらなくなった。
シュウも特に喋る事が無くなったので控えのベンチに戻る事にした。
そして、第三ラウンドがスタートする。
『そんじゃ、最後のラウンドだ!行くぜ、レディ、ビー・ファイトォ!!』
スタートの合図とともにシュウがブレイグで連射する。
「行くぜブレイグ!ヒンメルに何があろうと、俺の目標は変わらない!!」
ズドドドド!!
「……」
対するアラストールは動きが鈍い。
『どうした事か?シュウ君は勢いは凄いが、アラストール君は先ほどと打って変わって動きが鈍い!これも、何かの作戦なのか?!』
「いっけぇ、ブレイグ!!!」
シュウがどんどん得点を重ねていくのに対し、アラストールはロクにショットも撃たず、思案していた。
(俺は、ずっとウラノスへの憎しみだけで動いていた……それだけが俺がビーダマンをする理由だった。
だが、ウラノスへの恨みを晴らして、それで、結局どうするつもりだったんだ、俺は……)
「アラストール!」
(ウラノスへの憎しみはどうあっても消えない。だが、ウラノスを潰して、俺は嬉しいのか……?)
「アラストール!!」
(結局、俺は何もかもを失ったまま、変わらない……何をしたところで……変わらない……!
「返事しろ!アラストール!!!」
「っ!!」
アラストールはようやく、シュウが呼びかけていることに気付いてハッとした。
「何ボケッとしてんだ!真面目に戦え!!!」
「……ふん、この方がお前にとって都合がいいんじゃないのか?」
アラストールは皮肉っぽく言った。
「ふざけるな!俺は今、お前と戦いたいんだ!そんなんでヒンメルと戦えても、嬉しくねぇ!!」
「俺は、目標への価値を失った。勝手に勝てばいい」
「うるせぇ!価値なんて、俺にだってねぇよ!それでも俺はお前と戦いたくて、お前に勝ってヒンメルにも勝ちたいんだ!!」
「価値が、無いだと……!」
あれだけ言って悩ませた当の本人が、自分の目標に価値がないと言うとは。
信じられずにアラストールは困惑した。
「良いから!余計な事考えずに戦えつってんだよ!!」
シュウの叫びをみて、アラストールは深呼吸をした。
そして、息を吐き出すと、何かが吹っ切れたような顔でシュウを見据えた。
「うるさい奴だ。そこまで言うなら戦ってやるよ!!」
ドギュンッ!!
凄まじいパワーのダブルバーストがシュヴァリエルから放たれた。
「へへっ、そうこなくっちゃな!!」
『おおっと!ここでアラストール君のペースも復活!!二人の互角の立ち合いが始まったぁ!!
現在、シュウ君が大幅リードしているが、まだまだ勝負の行方は分からないぞ!』
「先の事を考えるのは辞めだ。俺はウラノスが憎いから潰す!そしてお前もムカつくから潰す!!」
「上等だぜ!!俺もヒンメルに勝ちたいから勝つ!!そしてお前にも勝ちたいから勝つ!!」
二人の目標が、想いが、同レベルでぶつかり合った。
「「うおおおおおおお!!!!」」
『さぁ、いよいよバトルも終盤戦!!どちらが勝つのか!?』
乱れ飛ぶビー玉。
飛び散る火花。
ぶつかり合う咆哮。
そして、勝負の行方は……!
『決まったぁ!勝ったのは、シュウ君だ!!!!』
「はぁ、はぁ……!」
「はぁ、はぁ……!」
バトルが終わり、二人は息を切らす。
「へへっ、俺の勝ちだぜ」
「……そうみたいだな」
アラストールは大して悔しがる様子もなく、結果を受け入れた。
そして、ゆっくりと顔を上げてシュウの目を見て話しだした。
「俺の憎しみは消えない。だが、このバトルをしている最中は、そんな事はどうでもなっていた」
「え?」
「お前に勝てなかったのは、正直悔しいがな」
「アラストール……」
照れ隠しか、アラストールは天を仰いだ。
「シュウ。ウラノス……いや、ヒンメルに必ず勝てよ」
「え……?」
「俺に勝ったんだ。お前にはその義務がある」
その言葉は、復讐者としてではなく、純粋なビーダーとしての言葉だった。
「おう!あったりまえだぜ!」
それを感じたシュウは、素直にその言葉に返事をした。
つづく
次回予告
「さぁ、南極予選も次が決勝戦だ!!
決勝の内容は、勝ち上がった5人が一斉に戦う耐久レース!
これに勝てなきゃ、世界選手権本戦には参加出来ない!?これが、最後のチャンスだ!
次回!『極寒の耐久レース!世界へのラストチャンス!!』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」