オリジナルビーダマン物語 第84話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第84話「最強のビーダマン?ペンビーエンペラー!!」




 南極予選予選ヒート。
 無数のペンギン達を相手に、世界への切符を勝ち取るためにビーダー達は極寒の地を駆け出した。
『さぁ、いよいよ南極予選のスタートだ!
ルールは簡単、南極に生息するビーダーペンギンを、一匹でも多く倒したビーダーの勝利だ!』
 
 シュウとタケルは二人で走っている。
「シュウ、ここは一旦離れるぞ!固まってると機動力が削がれる!!」
「わ、分かった!」
「ビーダーとは戦わずにペンギンだけを狙うためにも、なるべく他の奴らとは離れるんだ!」
「おう!!」
 ダッ!
 シュウとタケルは二人別方向へ駆け出した。
 
 晴れているとはいえ、走っているからか顔に冷気が吹き付けて身を強張らせる。
 
「さみぃ……!」
 体の表面は寒いのだが、走って行くうちにどんどん内側が熱くなってくる。
 しばらく走っていると、数体のペンギンを発見した。
「ガァ、ガァ」
 と可愛らしい鳴き声を発しているそのペンギン達の手(?)には、ペンギン型ビーダマン略して『ペンビー』が握られている。
「ほ、ほんとにビーダマン持ってやがる……!」
 若干引きながらも、シュウはペンギンの持っているビーダマンへ銃口を向けた。
「ちょっと可哀相だけど、これもバトルだ!いっけぇ!!」
 ドドンッ!!
 シュウは軽く二発撃った。
 バシュッ!バシュッ!!
 見事二発ともペンビーに命中。
「よっしゃぁ!二ポイントゲット!!」
 と、喜んでいる隙に一匹のペンギンが反撃に撃ってきた。
「うわわ!」
 それを躱しつつ、反撃して倒す。
「ふぅ、やっぱ相手も撃ってくるんだよなぁ……油断は出来ないぜ」
 シュウは一息ついて、再び獲物を探すために駆け出した。
 
 他のビーダー達も思いがけないペンギンの強さに驚きながらも得点を重ねていく。
 
「くっ!腹滑りか……!なんて機動力だ!」
 タケルは腹滑りするペンギンに苦戦している。
「ならば!!」
 ドンッ!!
 ドライブショットで地面を走らせる事で滑っていくペンギンたちのビーダマンへヒットさせていく。
「よし!」
 タケルも順調に得点しているようだ。
「ここら辺のペンギンは殲滅したみたいだな……次の場所に行くか」
 ペンギンが多くいる場所を目掛けてタケルは走った。
 そして、その先の小さな氷山のある場所で、3人の大男の影が見えた。
「っ!敵か!!」
 タケルは反射的にビーダマンを構えた。
 が、その3人からは殺気を感じなかった。
「?」
 よく見ると、三人は氷の塊を肩に抱えて、スクワットをしているだけだった。
「えっほえっほ!雪国のトレーニングはやっぱり効くなぁ!!」
 さらによくよく見ると、そいつらはガードイズストロンガーだった。
「お、お前らは……ガードイズストロンガー?」
 タケルが言うと、三人はタケルの顔を見て、表情を緩ませた。
「おぉ、そういうお前は仲良しファイトクラブの!久しぶりだな!」
「な、なんで、こんな所に?ってか、何やってんだ、お前ら……?」
 南極予選は参加者とスタッフ以外の人間はいないはず。
 にも関わらず、日本代表でもなんでもないこいつらが南極にいて、しかもビーダマンするでもなくトレーニングしていると言う状況がタケルには信じられなかった。
「俺達は、ジャパンビーダマンカップの決勝戦を見て、雪国でのトレーニングが効果的だろうと悟った!」
「そこで、より過酷な雪国を探して渡り歩いていたら、この素晴らしい場所へとたどり着いたのだ!」
「ここでのトレーニングは最高にキてるぜ!」
 まさか、日本から雪国を探して南極まで、生身の身体でたどり着いたと言うのか。
 しかも、トレーニングをするためだけに……。
 アホなのか、凄いのか。タケルは開いた口がふさがらなかった。
「ところで、お前はなんのためにこんな所に来たんだ?」
「一緒にトレーニングするか?」
 何故かトレーニングに誘われたが、タケルは丁重に断った。
「いや、お前らは勝手にやってろ……」
 付き合ってられないとばかりに、タケルはその場を駆け出した。
 ガードイズストロンガーは特に気にする事無く、何事もなかったかのようにトレーニングを再開した。
 
『さぁ、各者バラけたようだが、それぞれ着実に得点しているぞ!
現在のトップは、ギリシャ代表のアラストール君!なんと既に25体ものペンビーを撃破している!!』
 
 ビーダマスタージンのアナウンスを聞いて、シュウが反応した。
「アラストールが?!もうそんなに得点稼いでんのかよ……!」
 ドギュンッ!
 気を取られているところに、ペンギンがシュウのシャドウボムへショットを放つ。
「うおっ、やべっ!!」
 シュウは慌ててそのショットを撃ち落とし、素早くペンビーへ攻撃した。
「ふぃ~、他人気にしてる場合じゃないぜ」
 シュウは冷や汗を掻きながらも気を引き締めた。
 
 そして、話題に上がったアラストールは……。
「うおおおお!!!」
 バシュッ!バシュッ!!
 物凄い気迫でペンギンたちを狩っていた。
「俺は必ず勝つ!勝ってもう一度ヒンメルと戦う!!」
 アラストールの前にペンギンの大軍が現れる。
「俺の邪魔をするものは、ペンギンだろうがブチ倒す!!!」
 ズババババーーーーン!!!
 凄まじいパワーダブルバースト連射によって、目の前に現れたペンビー達は一気に吹き飛ばされてしまった。
 
「俺も負けてられねぇぜ!」
 シュウはチラッと、自分の順位を確認した。
 ギリギリ10位には入っているものの、いつ順位が落ちてもおかしくない。
「いっけぇ、ブレイグゥ!!」
 ドギューーーン!!
「ガァ!ガァ!!」
 ペンギンも負けじと反撃するのだが、ブレイグンのパワーに勝てるはずもなく、あっさりとやられてしまう。
「へへっ、ペンギンが俺に勝てるかっての!」
 ちょっと得意げになるシュウ。そこへ、どこからともなく鋭いショットが飛んできた。
「おわっ!」
 間一髪でそれを躱すと、素早くビー玉が飛んできた方向を見た。
「ペンギンかっ!?」
 しかし、そこにいたのはペンギンではなく、人だった。
「お前は、マハラジャ……!」
 それは、かつてアジア予選で戦ったマハラジャだった。
「久しぶりですね。あなたと戦えるのを楽しみにしていましたよ」
 マハラジャは銃口をシュウのボムへ向けている。
 これはサバイバルバトル。敵はペンギンだけでなく、ビーダー同士でもあるのだ。
「ま、待てよ!これはペンギンを倒した数で競うものだぜ!俺達が戦っても、他の奴らに先を越されるだけだろ!?闘いたいなら、予選突破してからでも良いじゃねぇか」
 シュウは両掌を向けて、マハラジャの攻撃を制止しようとした。
「えぇ、あなたの言う事は正論です。しかし……私の順位は現在11位。そしてあなたは10位。あなたは目の上のたんこぶなんですよ」
「くっ!」
 ここでシュウを倒せば、マハラジャが繰り上がって10位に入れる。
 ペンギンを倒していくよりもこっちの方が早いと判断したのだろう。
「そしてそれ以上に、私のビーダーとしての本能が、早くあなたと戦いたがっているのです!」
 ドギュッ!
 マハラジャがシュウのボムへ攻撃を仕掛けた。
「くっ!」
 シュウはそれを撃ち落とす。
「へっ、そう言う事なら、受けてやるぜ!」
 シュウもビーダーだ。売られたバトルは買わないわけにはいかない。
「一族の誇りを超え、一人のビーダーとして私はあなたを倒します!アーサナヨーガ!!」
 ズドドドド!!
 アーサナヨーガから凄まじい勢いのパワー連射が吹く。
「くっ!前よりもパワーアップしてる!!」
 ザッ!
 シュウは反撃するよりも躱した方が確実だと思い、その場を動いた。
 ツルッ!
「おわっ!!」
 が、滑って転んでしまった。
「くぅぅ……なんであいつはこんな路面で平気なんだよ」
「これが、ヨガの力です」
「ヨガの力って、すげぇ……!」
 ヨガとは、身体の構造を最大限活かす能力。それこそが、こんな氷の大地でも安定した機動力を誇っている秘密なのだろう。
「私とアーサナヨーガは、例えどんな場所でも、どんな体勢でも、安定して撃つ事が出来る!」
 バッ!
 マハラジャは、滑って転んだシュウへ狙いやすいように逆立ちしながら撃ち始めた。
「嘘だろっ、こんな場所であんな事出来んのかよ!!」
 シュウは起き上がるのは間に合わないと思い、寝そべった体勢でそのショットを撃ち落として行った。
「それでも、パワーなら俺の方が上だ!!」
「やりますね、さすがです」
 全てのショットを撃ち落とし、互いにリロードしなければいけないタイミングになった所でシュウは起き上がった。
「この氷の路面じゃ、俺はどうしても発射が遅れる。でもあいつは、どんな状態でも普通どおりに発射できる……!早撃ち勝負じゃ、勝てねぇ!」
「勝負ありましたね。今回は私の勝ちです」
 マハラジャは勝利を確信し、余裕の表情で銃口をシュウへ向ける。
「まだまだぁぁぁ!!!」
 バーーーーーーン!!!!
 シュウは、氷に向かってパワーショットを放った。
「っ!」
 ビキビキ……!
 シュウの目の前から氷がひび割れていく。
「な、なにを……!」
「うおおおおおお!!!」
 そして、マハラジャのボムへショットを放つ。
「そ、そんなもの……!」
 マハラジャは余裕でそれを躱そうとする。
 しかし……。
「っ!」
 ボムが、先ほどのひび割れにはまってしまい、マハラジャの動きについてこれなくなっていた。
「くっ!」
 マハラジャは、慌ててシュウのショットを撃ちおとそうとするのだが、パワーで敵うわけがない。
 なすすべなくマハラジャのボムは撃破されてしまった。
 バーーーーン!!
「ま、負けた……」
「おっしゃぁ!!」
「まさか、氷にヒビを入れて動きを封じるとは……。相変わらず読めない戦いをする人だ」
「へっへっへ!」
 得意げになるシュウだが、このタイムロスのせいで順位はどんどん落ちている。
「おーい、シュウ!」
 と、シュウの姿を見つけたタケルが駆け寄ってきた。
「お前ら何やってんだ?!」
 タケルがマハラジャのボムを見て、マハラジャとシュウが戦い、マハラジャは撃破された事を知った。
「バトルしてたか……だが、シュウ!お前の順位がヤバいぞ!」
「え?」
 見ると、シュウの順位が最下位になっている。
 ちなみに、タケルは3位をキープ。
「げぇ!?」
「残り時間ももう少ない!急がないと予選突破出来ないぞ!」
「くっそぉ!!」
 慌てて駆け出そうとするシュウをマハラジャが止めた。
「待ってください!」
「な、なんだよ!時間ないんだよ!」
「私に勝った褒美というわけでないですが。良い情報を教えましょう。ここから南西100m先に、大型のペンギンを見つけました。おそらく、あれが高得点のペンギンの王」
「っ!」
「私が無駄足と知りながらあなたを襲ったのは、あなたを倒した後に皇帝ペンギンと戦うつもりだったからなのですが……。
勝ったのはあなたです。この情報はあなたが得る権利がある」
「マハラジャ……!」
 マハラジャは笑顔でシュウを促した。
「さぁ、時間が無いですよ」
「お、おう!サンキュ!」
 シュウとタケルはマハラジャの教えてくれた場所へと駆け出した。
 
 マハラジャの言った先には、本当に大型のペンギンがいた。
 持っているペンビーも他のペンビーとは何かが違う。
「あいつか……!あいつを倒せば100点なんだな!」
 シュウは銃口を構えた。タケルもシュウをサポートするような位置につく。
「俺はもう予選突破圏内にある。皇帝ペンギンを倒せるように俺も協力するぞ、シュウ!」
「サンキュー、タケル!」
 ドンッ!
 シュウは一発皇帝ペンギンへノーマルショットを放つ。
「ガァ!ガァ!!」
 皇帝ペンギンは低い鳴き声を上げて、ショットを放った。
 ガキンッ!!
 皇帝ペンギンのショットがシュウのショットを弾き飛ばし、そのままシュウのボムへ迫る。
「な、なに!?」
「シュウ、ボサッとするな!!」
 そのショットはタケルが撃ち落としてくれた。
「わ、悪ぃ、タケル!」
「なんだ、あのペンビー……!他の奴らとは比べ物にならないぞ!」
「シメてないとはいえ、ビクトリーブレイグのショットを弾き飛ばすなんて……!」
 タケルは皇帝ペンギンのペンビーをよく見てみた。
「なるほど、この極寒地を利用して、氷でホールドパーツをガッチガチに固めてある。
更にサスペンション機能のあるバレルを装着して、とことん威力に特化しているんだ。さしずめ、ペンビーエンペラーってとこか」
「それがビクトリーブレイグのショットを弾き飛ばした秘密か!」
「あのビーダマンは規格外だ!100点得られるだけはあるな!」
 ドンッ!
 ペンビーエンペラーが再び火を吹いた。
「うおおおおお!!!」
 バキィ!!
 シュウとタケルが二人掛かりでそのショットを防御する。
「規格外だろうがなんだろうが、俺達だってパワー重視なんだ!正面突破しかねぇ!!」
「その通りだ!一気に行くぞ!!」
 ズドドドド!!
 小細工も何もない、皇帝ペンギンとの鬩ぎ合いが始まった。
 両者ともに互角。しかし、やや皇帝ペンギンの方が押されている。
 とはいえ、このままでは制限時間内に皇帝ペンギンのボムに到達するのは難しそうだ。
「くっそぉ!なんとかならねぇのかよ!!」
「徐々に押してはいるが、時間が足りない……!」
 その時だった。
 バキィ!!
 突如、ペンビーエンペラーのホールドパーツが鈍い音を立てた。
「なんだぁ!?」
「ホールドパーツが折れたんだ。無茶な威力改造に、この極寒の気温のせいで、ショットの圧迫に耐え切れなかったんだな……!」
 ホールドパーツが折れてしまっては、もうどうしようもできない。
「よし、いけっ!シュウ!!」
「おお!!」
 ドンッ!!
 ビクトリーブレイグから放たれたショットが真っ直ぐにペンビーエンペラーにヒットした。
「よっしゃぁ!これで100点だ!!」
 100点ゲット!と同時に、終了のサイレンが鳴った。
 ブーーーーーー!!
『ここで、終了!現時点での上位10名が予選を突破するぞ!!』
 
 順位を見てみると、一位はアラストール。二位がシュウ、そしてタケルは三位に付けていた。
 
「やったぜ、タケル!俺達予選突破だ!!」
「ああ!」
 ガシッ!とタケルとシュウが拳を合わせた。
「ん?」
 と、ここでシュウは皇帝ペンギンの腹に何か丸いものがある事に気付いた。
「これは……卵か?」
 ペンギンはオスが卵を温めると言う。
 そう言えば、皇帝ペンギンはビー玉を撃つばかりで避けようとはしなかった。
 卵を温めていたからなのだろうか。
「ガァ!ガァ!!」
 その時、皇帝ペンギンがより一層大きな鳴き声を上げた。
 そして、腹から卵を出す。
 ピシッ!ピシっ!!
 卵にヒビが割れていく。
「うわ、卵が!?」
「生まれるのか?!」
 生命誕生の瞬間に、タケルとシュウは目を見張った。
 パリーーーン!!
 卵が割れた瞬間、中から眩い光が漏れた。
 そして、そこから出てきたのは……。
「え、これが赤ちゃん……?」
「いや、違うな……」
 金色に輝く、何かのパーツだった。
「ガァ!ガァ!」
 皇帝ペンギンは、促すように鳴いている。
「俺に、くれるのか?」
 シュウはそのパーツを手に取ってみた。
「……なんなんだ、これ?」
「どことなく、ビーダピラミッドの賞品に似てるな」
「あぁ、あれか!あれも結局なんなのか分かんないんだよな」
 二人はしばらく考え込むが、答えは見つからない。
「まぁ、貰って損は無いだろうし。受け取っとけばいいんじゃないか?いずれ役に立つかもしれないし」
「そうだな」
 シュウはそのパーツを懐に入れた。
 
『それでは、本日のバトルはこれで終了だ!選手の皆は宿舎に戻ってくれ!!』
 ビーダマスタージンからのアナウンスが聞こえてきた。
 
「よし、戻ろうぜ、タケル!」
「おう!」
 二人は宿舎に向かって駆け出した。
 
 
 
 
     つづく
 
 次回予告
 
「おっしゃぁ!予選ヒート突破だぜ!というわけで、南極予選の一回戦に挑むぞ!
最初の対戦は、タケルとラウルのバトルだ!北アメリカ予選ではブッシュに敗れたものの、ラウルの実力はかなりのものだった!!
って、あれ、タケル……そのパーツは!?
 
 次回!『勝て、タケル!データVSビー魂!!』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
 

 



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