爆砕ショット!ビースピリッツ!!
第83話「敗者復活!南極予選スタート!!」
南極へ出発する前日の放課後。
シュウ達はクラブで練習をしていた。
「いっけぇ!ビクトリーブレイグ!!」
シュウはヒロトを相手にパワーウォールで練習している。
「くっ!」
パワー重視の競技ゆえ、ヒロトが若干押され気味だ。
「あっ!」
ここでブレイグが玉切れになる。
「今だ!」
シュウがリロードする隙をついてヒロトは猛攻しようとする。
しかし。
「いっけぇ!!」
素早くリロードしたシュウがすぐに体制を立て直してパワーショットを放つ。
それによって、シュウはウォールをヒロト側へ押し込んだ。
「よっし、俺の勝ち!」
「反応速度はまずまずだが、まぁこんなもんだろう」
ヒロトは本気を出していなかったようで、すまし顔でヴェルディルのメンテを始めた。
「やれぇ、レックス!」
「サンダーグルム!!」
琴音とタケルもブレイクボンバーで練習をしている。
カンッカンッ!!
フィールド内にボムとビー玉が乱れ飛ぶ。
そして、互いに赤ボムが二個撃ちぬかれた所で中央の赤ボムが一個降りた状態になった。
「雷光一閃!!」
中央の赤ボム目掛けて琴音が必殺ショットを放つ。
「グランドプレッシャー!!」
タケルも必殺ショットを放った。
バーーーーン!!!
赤ボムを挟み、二人の必殺ショットが激突する。
力押しではタケルの方に分があるのか、赤ボムは琴音の連射を押し切って、撃ち抜かれた。
「あぁ!」
「よしっ!」
バトルが終わり、二人は一息つく。
「南極予選に向けて、かなり仕上がってきたね、タケル!」
琴音が額の汗を拭いながら爽やかに言った。
「ああ。この数日で良い調整が出来た」
タケルはレックスの汚れを吹きながら応える。
「良い感じじゃん、タケル!」
一足先に練習を終えたシュウとヒロトがタケル達の所へやってきた。
「まぁな。お前も調子良さそうだな、シュウ」
「おう!次の南極予選は、俺とタケルの優勝でバッチリだぜ!」
調子づくシュウへ、ヒロトが一言。
「バッチリにはまだまだだがな。まぁ、予選通過くらいは余裕だろう」
「なんだよ、回りくどい言い方しやがって」
シュウ達が話し込んでいる所へ黄色い声が飛んできた。
「みなさん、お疲れ様ですぅ!」
リカが人数分のタオルを持ってきた。
「おっ、サンキュ!」
「シュウ先輩もタケル先輩も南極予選に向けて気合入ってて凄いですぅ!」
リカは興奮気味にシュウへ向かって話し掛けた。
「おう!せっかくのチャンスなんだ絶対に優勝して世界大会本戦への出場を決めてやるぜ!」
「そうだな。もう後が無いんだ。アジア予選の時みたいな失態は繰り返せないぞ」
シュウとタケルはグッと拳を握りしめた。
「うわぁ、私も応援し甲斐がありますね!南極に行くって言うんでしっかり防寒対策の準備もしてたんですよ~!」
言いながら、リカはじゃーんとどこから取り出したのか、防寒ジャケットや大量のホッカイロを両手に抱えて見せ付けた。
「あ~、リカ……お前は、と言うか今回の南極予選は選手以外は来られないぞ」
「えぇ~~~!!!」
リカはあからさまに不満な声を上げた。
「南極にそんなに立派な施設は建設出来ないからな。何日かかけて開かれる大会だから、どうしても人数は絞られるんだ」
「そんなぁ……アジア予選終わってからあんまりシュウ先輩と一緒にいられなかったから、今度こそはと思ったのに……」
「いいからお前は普通に仕事しろ」
ガックリと肩を落とすリカに、タケルは冷静に突っ込んだ。
「タケル君、シュウ君。練習はもう終わった?」
奥から、スポーツドリンクを持って彩音がやってきた。
「えぇ。最終調整はこれで、あとはしっかり身体を休めるだけですね」
「お疲れ様。それじゃあビーダマンを貸して。今日中にしっかりメンテナンスしておくから」
「ああ」
「サンキュ、あやねぇ!」
シュウとタケルがビーダマンを彩音に渡した。
「あ、そう言えば南極予選はあやねぇ来られないんだよなぁ。大会期間中のメンテや故障は俺達だけでどうにかしないといけないのか」
彩音の指導によってある程度出来るようになったとはいえ、シュウは少し不安げになる。
「いつまでも彩音さんに頼りっきりなわけにもいかないだろ。ビーダーなら自分のビーダマンくらい自分で管理しないとな」
「わ、分かってるって!あやねぇほどじゃないけど、俺だってメンテくらい出来るよ」
「一応、工具類や予備パーツは私が用意しておくから。それから、これも」
彩音はスプレーのようなものをタケルとシュウに手渡した。
「これは?」
「氷結防止用のスプレーよ。南極に着いたら、ボディとホールドパーツには定期的に吹きかけておいて」
「え、なんで?」
シュウが聞く。
「温度が低い場所だと、素材が固くなるから。このスプレーはそれを防ぐためのものなの」
「硬くなるって事は、それだけ強くなるって事だよな?それって良いんじゃないの?」
「いや、単純に硬くなった場合は柔軟性が失われるからな、衝撃や曲げに弱くなる。下手するとビー玉発射するだけでホールドパーツが折れる可能性もある」
タケルが彩音の代わりに説明した。
「うぇ、マジか……!」
「うん。さすがに南極でのバトルデータはそろってないから、これがベストかどうかは正確には分からないけど。でも、無いよりはマシなはず」
「サンキュー!こんだけ用意してもらっちゃ、負けるわけにゃいかねぇぜ!」
「必ず優勝してきますよ!」
シュウとタケルは彩音やクラブのみんなに堂々と優勝宣言をした。
そしてその夜。
竜崎家の食卓は、美味しそうな湯気が濛々と上がっていた。
「さ、修司!晩飯できたぞ~!」
エプロン姿の父がテーブルの前でシュウを呼ぶ。
「おぉ!すっげぇ豪華!!」
テーブルに着いたシュウが、その上に乗っている料理を見て感嘆を上げた。
「どうだ!父ちゃん特製超大盛り鍋焼きうどんだ!!ただ大盛りなだけじゃないぞ!具も麺も最高級の素材を使ってある!!」
「うっはぁ!なんでこんな豪華なんだ?!」
涎をダラダラたらしながら、シュウは言った。
「当然だろ!お前明日っから南極だって言うからな、今のうちに父ちゃんの料理で身体あっためとかねぇとな!
南極行っても、父ちゃんの料理食った事思い出せば凍える事はないだろ!」
「と、父ちゃん……!」
父の気遣いに、シュウは感動の涙を両目に溜めた。
「ささ、感動してねぇで食うぞ!せっかくの鍋焼きも、冷めちまったら意味ないからな!」
「おう!食いまくるぜ!!」
二人は両手を合わせていただきますして、出発前夜の食事を楽しんだ。
一方その頃。
夜も耽った月の下、タケルは自宅近くの小さな公園で自主練をしていた。
と言っても、そんなに激しいものではなく、メンテしたばかりのレックスの慣らし的な意味合いの軽いものだ。
バシュッ、カーーーン!!
ベンチの上に置かれた空き缶が、レックスのショットによって高い音を響かせながら弾け飛ぶ。
「よし、彩音さんのメンテは完璧だな」
タケルはもう一度空き缶を置いて、距離を取って狙いを定める。
ドンッ!!
レックスからショットが放たれる。が、そのショットが空き缶にヒットする前に、横から2つのビー玉が飛んできて空き缶を飛ばした。
「っ、ダブルバースト!?」
ザザッ!と物音が聞こえ、足音が近づいてくる。
「誰だ!?」
徐々に人影が月明かりによってハッキリとした姿を照らす。
「お前は……難波クウ?!」
難波クウは関西人特有の人懐こい笑みを浮かべながらタケルへ片手を上げた。
「久しぶりでんなぁ、タケルはん。確か、ジャパンビーダマンカップ以来やなぁ」
「……」
タケルは険しい表情をしながらレックスの銃口を向ける。
「あわわ、そう怖い顔せんといてぇな!今のワイに戦う気はあらへんて!」
クウはヴォラシティを懐にしまって、両手を上げた。
それを見たタケルも、レックスの銃口を下げた。
「何の用だ?源氏派として、俺を大会前に潰しに来たか?」
「そんな野暮な事はせぇへん。ワイは個人的な用でタケルはんに会いに来たんや。源氏派は関係ないで」
「なに……?」
源氏派も関係なく、個人的に会うほどクウと親しくした覚えはないが。
「タケルはん、南極予選がんばりぃや。とりあえずエールを贈っとくわ」
「お前に応援された所で嬉しくはないが、一応礼は言っとく」
友好的なクウに対し、タケルはそっけなく返した。
「そう邪険にせんといてぇな。前にも言うたけど、ワイはほんまにタケルはんの事を高く評価してまんのや。現に、タケルはんの公式戦は全て見さしてもらいましたわ。
さすがワイの見込んだ男や。海外の強豪ビーダーを相手にしても、その力は遜色あらへん!いや、さすがや!」
クウは胡散臭いくらいにオベッカを使ってくるが、どうも嘘ではなさそうだ。
「で、お前はそんな事を言いにわざわざ来たのか?」
「まぁまぁ。本題はここからですわ」
クウは先ほどとは打って変わって真剣な表情でタケルを見た。
「タケルはん。あんさんは率直に強い。世界のトップを狙える実力の持ち主や。せやけど、まだまだその力は未完成や」
「なんだと……!」
「その証拠に、あんさんは劉洸はんに負けた」
「っ!」
タケルがクウを睨み付ける。
「せやけど、こいつがあれば完璧になる」
クウはタケルの視線を無視して、懐からあるパーツのような物体とUSBメモリを取り出してタケルに手渡した。
「こいつは……?」
「ワイはずっとタケルはんのバトルを見て、そのデータ収集し、熟成しとったんや。そいつは、それを形にしたものや」
タケルは手の中にある物体とクウの顔を見比べた。
「俺に恩を売ろうと言うのか?」
「そんなつもりはあらへん!いや、むしろ逆やな。タケルはんのデータは、源氏派でも存分に活用させてもろうた。これはほんの恩返しのつもりや」
「……」
タケルはいぶかしげな視線をクウに向けた。
クウが手渡したそれが、本当に自分にとって益になるものか、判断しかねているようだ。
「恩返しか……そんな律儀な事をする義理はないだろ。それとも、何かお前にとって得でもあるのか?」
「もちろん、得はあるで。ワイはただ強いビーダーがより強くなって、もっと面白いバトルをしてくれれば、こないな楽しい事はないんや。
その方がもっとええデータが取れるさかいな。そのためやったら、味方やろうが敵やろうが、ワイの力で強く面白く出来るんやったら、喜んで手を出すんや!」
タケルが強くなることは、クウにとっても益になる。そう言われれば多少は信憑性はあるが……。
「信用は出来んな。例えお前が本心から源氏派に仕えているビーダーでなくとも、お前が俺達の敵側にいる事は変わりない」
「もちろん、無理強いはせぇへん。使う使わんはあんさんが決めればええ事や。ほな、ワイはこの辺で」
クウは、タケルがしっかりと自分の手土産を手にした事で満足したのか、軽く頭を下げて去って行った。
タケルは、そんな後姿を睨みながらも、渡されたパーツだけはしっかりと握っていた。
……。
………。
そして、南極予選当日。
南極に特設された屋外会場にビーダー達が集まっている。
天候は晴れだったのが幸いだが、さすがに南極は寒い。
しかし、特設会場は屋外にも関わらずそこそこ暖かい。特別な暖房設備でもあるのだろう。
ビーダー達の中には、当然シュウとタケルも混じっている。
「いよいよ来たぜ、南極予選!絶対に勝とうぜ、タケル!!」
シュウは隣にいるタケルへ気合いを入れた。
「ああ。ここで負けたら世界への道は閉ざされるからな。必ず勝つ!」
周りを見ると、見た事のない顔が揃っている。
というか、シュウ達は全部の予選を見たので、参加ビーダー全員の顔を一度は見ているはずだ。
「今までいろんな大陸の試合を見てきたけど、強敵ぞろいだった」
「ああ。予選敗退したからと言って、全員油断ならない相手だって事は確かだな」
シュウとタケルは気を引き締めた。
そうこうしているうちに、ステージにお馴染みビーダマスタージンが現れた。
『さぁ、皆ようこそ!南極予選大会を始めるぞ!
今回集まってもらったビーダーは皆、各大陸の大会で惜しくも敗退してしまったビーダー達ばかり!
つまり、これはワールドチャンピオンシップ本戦へ進むための敗者復活のラストチャンスってわけだ!
絶対に負けられない戦い!皆、気張って行けよ!!!』
「言われるまでもないぜ!!」
今回、観客はいないが、ビーダマスタージンの言葉にビーダー達は湧き上がる。
『それでは、早速予選ヒートを始めるぞ!
ルールは簡単、皆はこの会場外に出てもらい、一時間以内にあるビーダー達を倒してもらう。
そして、倒した数の多い上位10名が予選ヒート突破者だ!』
「あるビーダーを、倒す……?」
『そのビーダーとは、これだぁ!!』
ステージのモニターに、そのビーダーの姿が映し出された。
それを見た全員が驚愕した。
「「「ぺ、ペンギン!?」」」
モニターに映し出されたのはリアルに野生のペンギンの姿だった。
『ただのペンギンではないぞ、手(?)元を見てくれ!!』
よく見ると、ペンギンの手(?)にはペンギン型のビーダマンが握られている。
「ペンギンが、ビーダマン持ってる……」
『そのとーり!南極のペンギンは特殊な訓練を受けてビーダマンを使う事が出来るようになったビーダーペンギンなのだ!
ペンギンの持っているペンビーにビー玉を一発当てれば倒したことになるぞ!
ただし、皆にはシャドウボムを装備してもらう。このシャドウボムに一発でも攻撃を喰らったら、そこでリタイヤだ!
基本的にペンギンは一体につき一点だが、稀に超強いペンギンの皇帝が現れる事がある!そいつを倒せたら一気に100点ゲットだ!!』
「つまり、運良く皇帝に会えたら予選突破は確実って事か!」
シュウが言う。
『しかし、遭遇率は10%!着実にペンギンたちを倒して行った方が効率はいいと思うぞ!』
「まっ、そりゃそうだな。シャドウボム付きって事は、他の奴らから攻撃される可能性もあるって事だ。
ペンギンたちばかりに集中して、不意打ち喰らわないようにしないとな」
「日本選抜戦の予選みたいな感じだな」
『それでは、選手の皆はシャドウボムをセットしてくれ!』
スタッフからシャドウボムを渡され、ビーダー達はそれをセットする。
『準備は出来たな!そろそろおっぱじめるぞ!!レディ、ビー・ファイトォ!!』
ビーダマスタージンの合図とともにビーダー達が一斉に外へと飛び出して行った。
『いよいよ始まった敗者復活の南極予選!果たして、この極寒の地を制して世界へ羽ばたくのはどのビーダーなのか!?』
「絶対に負けられねぇ!いくぜ、ビクトリーブレイグ!!」
つづく
次回予告
「ついにはじまった敗者復活戦!絶対に勝って、ワールドチャンピオンシップ本戦への切符を手に入れてやるぜ!
ペンギンだろうがなんだろうが、ブッ倒してやる!
そんな俺の前に現れたのは、最強のペンギンだった!!
次回!『最強のビーダマン?ペンビーエンペラー!!』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」