オリジナルビーダマン物語 最終話 前編

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!

 

最終話「今すぐ炎のビー玉ブチかませ!!」前編


 ビーダマンワールドチャンピオンシップ優勝決定戦の舞台、北極特設フィールド。

「ヒンメルッ!俺は竜崎修司!お前の対戦相手だ!!ライバルだ!!!」
 シュウが正気を失っているヒンメルの前に無理矢理現れて宣言する。
しかし、そんなシュウへのヒンメルの反応は冷たい。
「知らない」
ヒンメルはシュウに対しては嫌悪感を露わにして顔をそむけ、再び笑いながらビー玉を関係ない方向へ乱射する。
バゴォ!!ボゴォォ!!!!
そのショットでフィールドの氷が砕ける。そして間接的にシュウにダメージが伝わる。
「このぉ!!」
砕けた氷の破片を払いのけながら、シュウは再び駆け出してヒンメルの前に出た。
「俺を狙えぇぇ!!!」
「っ!!」
発射されたヒンメルの玉がシュウへ向かう。
「うおおおおお!!!」
バゴォォォ!!!!
またもパワーショットで相殺するが、衝撃波はシュウをフッ飛ばす。
「ぐああああああ!!!!!」

『さぁ、激しくビー玉を撃ち続けるヒンメル君だが、そのショットの前シュウ君が飛び出してパワーショットで相殺!
しかし、そのたびに巻き起こる衝撃波でシュウ君はフッ飛ばされてしまう!!この戦い方はあまりにも無謀だ!!』

「う、ぐ……!まだ、まだぁぁ……!!」
シュウは再び立ち上がり、ヒンメルの発射したショットの前に出てパワーショットで相殺し、発生した衝撃波にフッ飛ばされる。
「うぐおおおおおお!!!」

『シュウ君は、暴走するヒンメル君と無理矢理バトルをしているようだが、そのたびに受ける身体的ダメージが大きい!これでは、決着が着く前に体が壊れてしまうぞ!?』

シュウの控え室。
「シュ、シュウ先輩……大丈夫なんですか……!」
リカがあわあわしてる。
「無茶よ!こんな戦い方して、身体が持つわけがない!やっぱり、出るべきじゃなかった……!」
彩音が悲痛に叫ぶ。
「彩音さん、落ち着いて。シュウはバカで無茶だが、バトルで意味もなくヤバイ事をする奴じゃない」
「そうだな。確かにバカで無茶な行動だが、理には適っている」
ヒロトはシュウの行動の意図を冷静に把握していた。
「そ、そうなの、ヒロ兄?」
「ああ。暴走ヒンメルが一番厄介なのは、強大なパワーじゃない。対戦相手を無視して乱雑に強力なショットを放つ事だ。
これじゃバトルにならない上に、周りに散々被害を出した挙句、間接的に対戦相手にダメージを与え続けてバトルにならないまま終わってしまう事だ。
竜崎の夢だった『ヒンメルと戦って勝つ事』は『勝つ事』を叶えるどころか『戦う事』にすら辿り着けない」
「勝つ前に、ヒンメルにバトルをさせる事が難しいんだよね……」
「だが、ヒンメルのショットの前に強引に現れれば、どんな意図で放たれたものであれ、そのショットは対戦相手に向けられたショットになる。
これによってヒンメルは、自分の意志に関係なく強制的に竜崎とバトルをしている事になる。つまり、第一段階クリアだ」
「決着をつけられるかは、また別問題ですけどね……」
ヒロトの分析に対してタケルが言う。
「まぁな。あくまで、第一段階だ」
それだけ言うと、ヒロトは口を閉じてテレビ中継に集中した。

『さぁ、シュウ君はヒンメル君のショットの前に現れては衝撃波で飛ばされる事を繰り返しているが、このままではバトルが進まない……い、いや!?』
ビーダマスタージンは、二人のシャドウボムのHPが同じ分だけ減っていることに気付いた。
『衝撃波に気を取られていて気付かなかったが、シュウ君とヒンメル君のシャドウボムのHPが減っている!互いに残りHPは47!!これは、どういう事か!?』

「うおおおおおお!!!」
シュウがヒンメルのショットをパワーショットで相殺する。
バゴォォォ!!!!
そして、衝撃波でフッ飛ぶ。

その瞬間、シュウとヒンメルのシャドウボムのHPが同じ分減った。

『シュウ君がヒンメル君のショットを弾いた瞬間に、二人のボムのHPが同じ分だけ減っている!
なんと!弾かれたビー玉が互いのボムに当たっていた!だから同じ分だけダメージを受けていたのだ!!』
互角の威力のショットがぶつかり、そのエネルギーを保存したまま力の方向を変えて互いのボムに命中していた。
衝撃波でビー玉が隠れていたから今まで気づかなかったのだ。

『現在のHPは互いに14!いつの間にやら、バトルは終盤戦だ!しかし、HPの差は全くない!どちらが勝つのか全く分からないぞぉ!!!』

「ぐっ……そろそろ限界だ……!」
シュウの身体は度重なる衝撃波を受けてボロボロだった。
同点とはいえ、シャドウボムのHPが減っている事だけが救いだ。
どちらが勝つかは分からないが、あと1,2回耐えればバトルは終わる。

「あと、もう少しだ……!決着をつけるぜ……ヒンメルゥ!!!」
「あーっはっはっはっはっは!!!」
シュウを無視して笑い続けるヒンメル。
「これが、最後の勝負だ!!!」
ダッ!!!
シュウが渾身の力を振り絞ってヒンメルの前に出る。

「っはーーっはっはっはっはっはっは!!!!」
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

ズガギャアアアアアアアアン!!!!!
パワーショットがぶつかり合い、一際大きな衝撃波が巻き起こる。
「ぐおおおおおおお!!!!」
バゴォォォォ!!!
吹き飛ばされて地面に伏すシュウ。
バーーーーーン!!
同時に爆発する二つのシャドウボム。
「はっはっは……はは……は……」
ドサッ!!
そして、ヒンメルの笑い声が徐々に小さくなり、まるで電池の切れたおもちゃのようにフッと力が抜けて倒れてしまった。

『ど、同時撃破ーーーー!!!二つのシャドウボムが、全く同時に撃破されてしまった!!!最終戦は、ドローだ!!!』

「は、はぁ、はぁ……!くそ、ギリギリで避けたつもりだったのに……!」
反射されたヒンメルのショットを躱すつもりではいたが、やはり体はそんな余裕はなかったようだ。

『これによって、決着はサドンデスによってつけられることになったぞ!!』

シュインシュインシュイン……!
シュウとヒンメルの近くに、サドンデス用のシャドウボムが送り込まれた。
『このボムに先に一発攻撃を与えた方の勝ちだ!』

とは言え、ヒンメルは力を使い果たしたのか、氷の上でうつ伏せに倒れ眠りこけている。

『ヒンメル君は、意識を失っている!これは、シュウ君の勝利確定か……?』
「ぐっ……!」
しかし、シュウのダメージも大きい。なんとか立ち上がったものの、なかなかビー玉を発射できない。

『シュウ君も満身創痍だ!しかし、立ち上がった分だけ有利……いや、これは!?』
ビー玉が撃てないのは、シュウだけの問題じゃなかった。
「ブ、ブレイグ……!」
ブレイグのコアはビー玉が撃てない程に潰れていた。

『ビクトリーブレイグのコアが破損している!この状態ではショットは撃てないぞ!!』

「く、くそぉ……!」
体は動くのに、ビーダマンが壊れてはバトルにならない。

『ヒンメル君は戦闘不能。そしてシュウ君もビーダマンが破損!
二人とも、長期間の戦闘能力喪失によって、大会規定によりこのサドンデスは後日に持ち越される事になるぞ!!』
ビーダマスターから意外な宣告が言い渡された。

「ご、後日……?」

『そうだ!2日後、また改めて再試合をしてもらう!会場は……今のフィールドはしばらく使えそうにないから、また追って連絡を……』
北極バトルフィールドはヒンメルとシュウとのバトルで滅茶苦茶になっている。また別の場所を探す必要がありそうだ。
(別の会場……そうだ!)
シュウは何かを思いついたのか、ビーダマスタージンに訴えかけた。
「待ってくれ!!」
シュウの訴えにビーダマスターが首を傾げた。
『なんだい?』
「会場なんだけどさ、ちょっと……お願いがあるんだ」
『お願い……?』
「ああ……!」

北極会場を撤収した仲良しファイトクラブは、ジェット機で日本に向かっていた。

「まさか、縺れに縺れた最終戦が、また縺れるとはな……」
タケルがため息をついた。
「あぁ……」
シュウが小さく答える。
「大丈夫、シュウ君?身体、痛くない?」
彩音が心配そうにシュウを見つめる。
「もう平気だよ。大した怪我はしなかったし、休めば全快するさ。それよりも、問題はブレイグだ」
シュウが、コアが潰れたブレイグを取り出す。
「こいつも再試合までにどうにかしないと……」
「それだったら私に任せて。必ず試合までに修理するから」
「うん。頼んだよ、あやねぇ」
シュウは彩音を信じてブレイグを託した。

「それにしても、シュウ先輩はやっぱり凄いです。あの暴走したヒンメルを相手にあそこまで戦えたんですから!再試合だってきっと……」
「いや、あれじゃダメだ!」
リカの言葉に、シュウは思わず声を荒げた。
「え?」
「あ、ゴメン。……あのバトル、俺はただヒンメルの暴走の被害を最小限に抑えただけだ。バトルが出来たわけじゃねぇ……!」
「で、でも、あの状況じゃあれが最善だったんじゃ……」
琴音がフォローしようとするのをヒロトが遮った。
「確かにな。発想は悪くなかったが、あれじゃ自分から災害を受けに行っているだけのただのバカだ」
ヒロトの厳しい言葉を、シュウは肯定する。
「そうだ。そうなんだ。あのバトルは、俺がバトル出来てる気になってるだけなんだ……!
ちゃんと、ヒンメルが自分の意志で俺に攻撃の矛先を向けてくれないと……俺に勝とうとしてくれないと、ビーダマンバトルじゃねぇんだ!!」
「そうだな。勝負ってのは、互いに勝利を目指しあってこそ成立するんだ。
片方が勝利を目指さない状態での戦いは、例え勝ち負けの決着が着いたとしても、勝負とは言えない」
タケルがシュウの言葉を要約する。
「それで、どうするのよ?そんなんで再試合を戦えるの?」
「そんなの、分かんねぇよ!分かんねぇから……俺はもう、全力をぶつけるしかできねぇ!!
俺のパワー、テクニック、経験、戦術、そしてビー魂をぶつけるしか、出来る事が無い!!」
相変わらずの無計画っぷりに、琴音が諭そうとする。
「それじゃあいつもと変わらないじゃないの。それが意味ないから苦労してるんじゃなかったの?」
「いや、たった一つの策が通じなかったんなら。いっそ、いつも通りでいいんじゃないのか?」
ヒロトが言う。
「え?それって、ただの投げやりじゃ……!」
困惑する琴音に対してタケルが言った。
「そうとも言えないさ。俺達は、今までもそうやってきた。それを信じるだけだな、シュウ!」
「おう!その通りだぜ!ってなわけだから、俺は寝る!!」
そう言って、シュウはドカッ!と背もたれに背中をぶつけ、目を閉じた。
「って、寝るの?!」
「シュウ先輩、寝つき良いですね……」
「まっ、今できる最善の行動はそれだけだな。俺達は、シュウの体力回復を邪魔しないように、静かにしとこうぜ」
タケルが言うと、一同口を閉じてシュウの寝顔を見守った。

日本に帰国したシュウ達は急いで仲良しファイトクラブへ戻った。
そして、彩音専用のラボに駆けこんだ。
「よし、急いでブレイグの修理を始めよう!彩音さん、頼みます!」
「うん!」
彩音がブレイグのパーツをバラし、破損状況をパソコンでしっかりチェックしていく。
「お姉ちゃん、あたし達も手伝うよ!」
「うん。それじゃあまずパーツの汚れキレイにして!専用の洗剤と布巾はあそこの棚にあるから!細かい所は、この綿棒を使って」
「分かったよ!」
「分かりましたぁ!!」
琴音とリカが彩音に言われた通り布巾や洗剤を持ってきてパーツを拭き始めた。
「結構汚れがこびり付いてますね……!」
「あれだけのバトルをしたんだから、当然よね」
「汚れが付着しているとコンピュータで読み取りづらくなるから、出来るだけキレイにしてね」
彩音が言う。
「了解!」
「任せてください!!」
琴音とリカは気合いを入れて作業に没頭した。

「……」
その中、ヒロトはパーツの掃除には参加せず、ラボの中にある袋や引き出しの中をしきりに見て、そこから何かを取り出したりしている。
「ヒロトさん、どうしたんですか?」
「予備パーツの準備だ。機体を修理した所で、また壊れないとも限らないからな。
さすがにボディやコアの予備は用意出来ないが、他のパーツなら予備は多いに越した事はない」
そう言いながら、ヒロトはラボで見つけた大量のマガジンやスタッド、スプリング等の中からビクトリーブレイグの予備パーツに使えそうなものの厳選を始めた。
「出来れば一番負担がかかる箇所の予備が欲しい所だが、さすがに既製品の中にはないか」
「それなら俺は……!」
タケルはプラ板を削ってトリガーを作成し始めた。トリガーは既製品の予備を用意しづらいが、形状が単純なので手作業で予備を作れる。
「やるな、お前」
ヒロトが、タケルの手際の良さに感心する。
「俺は彩音さんみたいにコンピュータは使えないけど、こういう工作は得意なんですよ」
「そう言えば昔からお前、図体に似合わず細かい作業が得意だったな」
それぞれがブレイグのために出来る事を精一杯やってくれている。
傍から見ていたシュウは、その事に感動した。
「皆……ありがとな、俺とブレイグのために……!」
両目からダラダラと大量の涙を流し始めるシュウを見て、タケルが突っ込んだ。
「良いからお前は、休憩室で少しでも寝ろ!飛行機や電車の中じゃ、ロクに深く眠れてないだろ」
「お、おう!頼むな、皆!」
追い出されるように、シュウはラボを出て行った。
試合前夜。
暗闇をライトアップした中、再試合の舞台と思われる場所でスタッフ達が会場のセッティングをしていた。

「はい、次は観客席の建設です~!ライト、そっち映して~!!」
作業員たちを指揮しているのは、ビーダマスタージンだった。
スタッフ達は忙しなく動いて次々と必要なものを建設していく。

一方で、佐津正義が警備班を指揮して当日の警備体制の計画を立てている。
「一般の方の入場はこの通路に通して、退場する方との混雑の無いようにお願いします。もし、不審者や不審物を発見した場合はすぐに本部まで連絡をするように」
正義も出世したものである。

しばらくして、ビーダマスタージンは一休みにとテントの中に入り座り込んだ。
「ふぅ……」
連日仕事しっぱなしだったので、さすがに疲労がたまっているようだ。
「ほれ、あったかいぞぃ」
と、不意に濛々と湯気の立つコーヒーの入った紙コップを差し出された。
「あ、ありがとうございま……って、あなたは!!」
差し出した人物を見て、ジンは目を見開いた。
「よぅ、ジン!久しぶりじゃのぅ!!」
「く、倉田さん……!」
智蔵が、さも親しげにジンに片手をあげて挨拶していた。
「なんか懐かしくなってのぅ。来ちゃったっ☆」
「あ、あぁ、お、お久しぶりです!!その節は、お世話になりました!!!」
昔からの知り合いなのか、ジンは急に固くなって頭を下げた。
「まぁ、そう固くなりなさんな。相変わらずクソ真面目な奴じゃ」
「は、はぁ……で、今日はどうして……?」
「言ったじゃろう。懐かしくなっただけじゃと。試合を見るのもええが、たまには裏方の仕事を見るのも悪くないのぅ」
智蔵はずずぅーと昆布茶を啜りながら、作業をしているスタッフたちを眺めた。
「それにしても、北極やらなんやら壮大な場所で開かれておった大会の最後の舞台が、こんな地味な場所とはなぁ」
智蔵が苦笑しながら言った。
「えぇ。シュウ君の希望なんです。ヒンメル君と決着をつけるなら、ここが一番相応しいと」
「ほぉ、それでよく上の人間が許可したのぅ」
「……バトルの主役はあくまでビーダー達ですからね。私達は、彼らにとって最高のバトルが出来るようにサポートするだけですよ」
「ふ、ふぉっふぉっふぉ!成長したのぅ、お主も!ビーダマスターになりたての頃は、緊張しまくり噛みまくり。
おまけに放送禁止用語まで連発して、クレームだらけじゃったのに」
智蔵に昔の恥ずかしいエピソードを掘り返され、ジンは慌てて両手を振った
「あわわ!それは言わないで下さいよぉぉ!!」
「ふぉっふぉっふぉ!えぇ事じゃ!わしの作ったビーダマン界が、それぞれの道で自由に成長していく……これほど嬉しいことは無いぞ」
智蔵は嬉しそうにしみじみと言った。
「……倉田さん。オフィシャルに戻る気はありませんか?僕も他のスタッフも、あなたの帰りを待っています。ポストだってまだ残って……!」
「言ったじゃろう。ビーダマン界は、それぞれの道で自由に成長していくものじゃ。ワシはもうとっくに子離れしたんじゃよ」
それだけ言うと、智蔵は立ち上がった。
「倉田さん……」
「それじゃあの。最終戦、楽しみにしておる。しっかり盛り上げるんじゃぞ!」
智蔵は片手を上げてニッと笑うと、鼻歌を唄いながらゆっくりと歩いて行った。
「……」
ジンはその後ろ姿を見つめながら、呟いた。
「きっと、最高の試合を見せてくれますよ。彼らなら」

翌朝。
パンッ!パンッ!パンッ!!
イベント開催日を知らせるピンク色の花火が上がる。
爆球町中央公園の広場では、バトルフィールド、観客席、屋台……などなど、大会を開くに相応しい施設が立派に建設されていた。
会場では既に、ワールドチャンピオンシップ最後の試合を拝むための観客達でごった返していた。

その地に、仲良しファイトクラブのメンバーが足を踏み入れる。
「うわぁぁ、すっげぇぇ!!」
「たった一日でここまで出来るもんなんだなぁ」
普段見慣れている中央公園が、ちゃんと大会が開かれる場所に相応しく彩られていることに、仲良しファイトクラブのメンバーは感動した。
「観客達もいっぱいだ……。急に決まったのに、よく集まったなぁ」
「それだけ皆、この試合に注目しているんだな」
「注目なら前からしてただろうが、北極に観客は来られなかったからな。その分、生で観たかった奴らが多少無理してでも足を運ぶんだろう」
「確かに、少なくともここは北極よりは来やすい場所だしね」
彩音が苦笑する。
「それにしても、最終戦の戦いの舞台が北極からこんな町の公園だなんて、随分とスケールダウンしたわねぇ」
琴音が軽く皮肉っぽく言った。
「いいんだ。ここは、俺とヒンメルが出会って、初めてバトルした場所……俺にとっての、始まりの場所なんだ。
あいつと決着をつけるのに、これ以上の舞台なんてありえねぇ!」
シュウが決意に満ちた表情でそう言った。
「そう言えばそうだったわね。あの時は、ヒンメルが世界チャンピオンと知るなりいきなり勝負を挑んでいって、無謀なバカだと思ったけど……」
琴音が懐かしみながら言う。
「う、うっせ!」
「そういや、琴音はその場にいたんだったよな。俺も琴音からその話を聞いた時は吹き出したよ。だが、面白い奴だと思ったな」
それが、タケルがシュウを勧誘するきっかけになったのだ。
「むぅ……」
「なんだかんだ、あの時のことねぇがいろんな事のきっかけになってたのかも。
俺がヒンメルと会う前にことねぇが小さい子虐めてなかったら、ヒンメルと戦う事もなかったし」
「虐めてないし……」
琴音がジト目で突っ込む。あれはシュウの勘違いだ。
「そう言えば、あやねぇと初めて出会ったのもこの公園だったっけ?」
シュウが彩音に話を振った。
「そうだね。あの頃は、クラブでの活動があまり盛んじゃなかったから、良く外で子供達のビーダマンを見てたんだっけ」
「小さい子虐めてたことねぇと違って、あやねぇは子供達に優しかったなぁ」
母性溢れる彩音の姿を思い出すシュウ。
「むぅぅ……」
「だからっ、虐めてないって言ってるでしょ!」
「あはは、ごめん!冗談冗談!」
いい加減怒ってきた琴音に、シュウは笑いながら謝った。
「まったくもぅ」
ぷんぷんしながらも、琴音の怒りは多少静まったようだ。
そんな琴音を横目で見てクスリと笑いながら、彩音は昔を懐かしむように目を細めた。
「ふふ。……あの時、シュウ君と初めて出会った時は目を疑ったなぁ」
「初めてあやねぇに会った時、開口一番ゆうじと間違えられたんだったよなぁ」
「うん。シュウ君を一目見た時、お兄ちゃんが帰ってきてくれたんじゃないかって、ビックリした」
「今となっては、なんとなく分かるけど。あの時はちょっとムカついたなぁ」
実際にゆうじと会って戦った事があるシュウなら、どうして自分がゆうじと間違えられるのか理解できる。
が、やはりいきなり年上の女性に兄貴扱いされるのは微妙な気分だ。
「あはは、ごめんね……でも、やっぱりシュウ君はシュウ君だった。お兄ちゃんじゃない」
「当たり前じゃん」
「うん。私は、それでよかったって思ってるよ。今は、そう思えの」
彩音は、意味深にそう呟いた。
「あやねぇ……」
意味は分からないが、シュウはなんとなく雰囲気で察した。ように感じていた。

「もおおおお!みなさんズルいですよぉぉ!!」
と、感傷に浸っている中、リカがいきなり大声を出した。
「おわっ、なんだよ……!」
「私、シュウ先輩と会ったのつい最近だから、その前の思い出が無いです!この公園も、全然シュウ先輩との思い入れが無いんですよ!?」
「そりゃ、当たり前だろ……!」
「ズルいです!私もこの公園でのシュウ先輩との想い出が欲しいです!だから……」
リカはピトッとシュウの腕に絡みついた。
「シュウ先輩っ!試合頑張ってくださいね!リカの応援で、世界一になってください!!」
「お、おう……!」
べたべたひっついてくるリカにシュウはひきつった笑いを見せる。
「はいはい、そう言うのは後にしようね」
琴音がリカを引っぺがす。
「あぁんもう!琴音先輩は私の気持ちが分からないんですよぉ!」
「あたしだって、別にロクな思い出があるわけじゃないっての」
琴音の場合は、いじめっ子だと勘違いされた上にバトルで負かされた苦い記憶しかないのだ。
「ちょっとリカちゃん」
彩音が少し厳しい表情でリカの顔を覗き込んだ。
「な、なんですか……?」
そして、コソッと耳打ちする。
「応援なら、私も負けないからね。シュウ君を優勝に導くのは私よ」
「なっ!」
それを聞いて顔を赤くするリカに、彩音はクスッと笑った。
「わ、私だって負けませーーん!!!」
リカはじたばたと暴れ出した。

「全く、女の執念ってのは恐ろしいな。リカがウチに来るまで、彩音さんのああいう所見た事なかったし」
その様子を見ながら、タケルがやや引きながら言う。
「それは、確かに……。この俺もたまに恐怖を感じる事がある」
ヒロトは言いながらチラッと琴音の顔を見た。
「え、ヒロ兄何か言った?」
琴音はキョトンとして首を傾げた。
「いいや」
ヒロトはすまし顔で目を逸らした。

「っと、そうだ!忘れるところだった!」
しばらくギャーギャー騒いでいたが、彩音が不意にシュウの方へ向き直った。
「はい、シュウ君。ビクトリーブレイグは完全に治ったよ」
彩音はシュウへ新品同様にピカピカになったブレイグとパーツの入った袋を手渡した。
「おぉぉ!!」
「素材が完全に固まるのに時間が掛かったから、会場に着くまで渡せなかったんだけど……。試合前に何発か慣らしショットをすれば性能は元通りだよ」
「さすがあやねぇだ!これで百人力だぜ」
「それから。ブレイグの予備パーツも出来るだけ入れておいたから、試合中に破損してもある程度は対応できるよ」
「そっかぁ。皆が協力して準備してくれたんだよな……」
シュウはマジマジとブレイグを見つめた。
「このブレイグには、皆の想いや頑張りが詰まってんだよな……こいつのためにも、負けられないぜ!」
「ああ。交代で休息は取ったが、彩音さんなんかほとんど徹夜作業だったんだ。大事に扱えよ」
「分かってる!昨日皆が頑張ってくれた分、今度は俺が頑張る番だ!!」
シュウはブレイグを掲げて言った。
「それじゃ、そろそろ俺達は行く。今日は観客席からしっかりお前の戦いを見てるからな」
そう言えば、本戦リーグからは控え室でのテレビで試合を見ている事が多かった。
仲間達に観客席から見られるのは久しぶりだ。
「頑張ってね、シュウ君」
「しっかり応援してますからね!」
「油断はするなよ」
「しっかりやんなさいよ」
「何があっても、ビーダマンを信じ抜け。いざって時はそれしかない」
メンバー達が口々に声援を送りながら観客席へと足を運んでいく。
「サンキュー!皆の頑張りは無駄にしねぇぜ!!」
そんなメンバー達へ、シュウは力強く叫んだ。
メンバー達と別れ、シュウは自分の選手控室へ向かおうとした。
その時だった。
「やぁ、シュウ君」
後ろから良く知った男の声が届いた。
振り向くと、そこにいたのはビーダマスタージンだった。
「ビーダマスタージン……!どうしてここに?」
「試合が始まるまで休憩を貰ってね。ちょっと君と話がしたかったんだ」
そう笑顔で話し掛けるジンに、シュウは少し違和感を覚えた。
「はは、なんかいつも聞いてる声だけど、変な感じがするな」
シュウが苦笑いするとビーダマスターもつられて苦笑した。
「そうだね。こんな風に話をするのは初めてだしね。それより、どうだい?君とヒンメル君が、最終戦を戦う舞台は。
ワールドチャンピオンシップの最後に相応しい舞台になるよう、精一杯セッティングしたんだよ」
ビーダマスタージンは、しっかりと整備された公園を見ながら言う。
「うん。ありがとう、ビーダマスター!俺のワガママを聞いてくれて」
「君達選手が最高のバトルを出来るようにサポートするのが僕達の役目さ。思う存分戦ってくれ」
「おう!」
「それと、僕達のサポートは舞台のセッティングだけじゃないんだ」
「え?」
「モニターを見てごらん」
ビーダマスターは、特設ステージに設置されたモニターを指差す。
そこには、観客席の様子が映し出されていた。
そのモニターがランダムに観客席をズームしていっている。

「あ、あれは!」
モニターに映し出された人物を見て、シュウは驚きの声を上げた。

『いよいよこれが最後の試合でござるなぁ、ニンニン』
『思えば、遊園地で奴と初めて対峙してから、随分と時間が経ったものだ……』
『某達を乗り越えて行った者が天下を取る瞬間。見逃せんなっ!』
『えぇ、しっかり見届けましょう!将軍様!!』
『で、ござるなっ!』
藩屏、忍、玄摩が三人並んで席に座っていた。

「チーム、風林火山……!」
懐かしの人物の姿を見て、シュウは呟いた。
モニターが別の人物を映し出す。
「チームマイスイートシスターズ……!」
『赤鈴~!僕のフランクフルトいる~?』
『いらない』
『もう、しょうがないなぁ。食べかけだけど、一口あげるよっ!』
『だからいらないって言ってんでしょ!無理矢理押し付けるなバカ兄貴!!』
ぐいぐいとウインナーを口に押し付けてくる藍人に対して、赤鈴はゲシゲシと蹴りを喰らわせた。
『あうっ!もう、照れ屋なんだから~』
『照れてない!!』
『お二人ともそのくらいで。他のお客さんに迷惑ですよ』
縁が穏やかな顔で二人を宥めると、赤鈴は顔を真っ赤にして周りの人に頭を下げた。
『ご、ごめんなさい!ごめんなさい!』
相変わらず姦しいチームだ。

そしてまた別の人物が映し出された。
シュウと同い年くらいの少年が二人並んで話している。
『俺の宿命のライバル、シュウがついに世界一になるのかぁ』
『まだ決定したわけじゃないけどね』
『あいつが勝つに決まってるぜ!なんたってあいつは、この俺を破って、波木町のチャンピオンになったんだからな!』
『あはは、町内チャンピオンって言うとちょっとスケールが小さい気もするけど……』
しかし、良く考えたらシュウが個人で優勝し、チャンピオンの肩書を得たのは波木町のチャンピオンだけである。
関東大会は団体戦では優勝したものの、個人戦では決勝を放棄。全国大会は2位。アジア予選でも南極予選でも2位で終わっている。
『そう言うお前だって、あいつの優勝を信じてるんだろ?』
『……まぁね。ハヤミ君には悪いけど、彼は僕にとっても宿命のライバルだからね』
『そうこなくっちゃな!あいつが世界一になったら、どっちが先にあいつを倒せるか……!』
『うん、勝負だよ!!』
二人は仲良さげに拳をぶつけていた。
「誠!……と、ハヤ……ミ、だったかな?あの二人、仲良かったんだ」
妙な組み合わせに、シュウはなんだか不思議な気分になった。
って言うか、どっちがシュウのライバルかを競うライバルと言うのもややこしい。

またもモニターは客席の人物を映し出す。
『bぎうsgさいgdそp』
『さあがsdgぽあskvがおpgさ』
『dさがsdgdさkdsぁあr』
チームインセクターの三人が談笑していたが、言葉は聞き取れなかった。

「さすが、グンマー……!」
そう言う問題なのか?

モニターが切り替わる。次も三人組が映し出された。
『ワールドチャンピオンシップ……俺達が昔戦ったあいつが世界一を賭けて戦うのかぁ』
『思えば、あのばすたーぶれいぐとか言う奴のショット、強かったよなぁ』
『今はもっと強くなってんだよなぁ!なんか俺の方が緊張してきたぁ……!』
コザッコザッコチームは相変わらず小心者で、ブルブルと震えている。
(えっと、誰だっけあいつら?)
シュウはコザッコザッコの印象が薄かった。
そして、次にモニターが映し出したのは、藤原辨助だった。
『ふぅ、まだ試合はじまんねぇのか……』
辨助は椅子に踏ん反り返って退屈そうにしていた。

「辨助……!」
めんどくさがりでいい加減なあいつが山口県からこんなところまでわざわざ来るとは……。

『サー!東京は寒いサー!でも、この会場は暖かいサー!!バトル楽しみサー!!』
次にモニターが映し出したのは、沖縄出身の流縄アツトだった。
相変わらずサーサー言っている。

「アツト……!」
次は、見た事のない少年たちの集団だったが、その中で二人ほど見知った顔を見つけた。
『あのシュウ君がここまで勝ち上がるなんてね……』
『楽しみだなぁ、決勝戦!!』
『ああ。生で試合が見られるなんて、チームの練習を休みにした甲斐があるよ』

「康成……!」
康成と輝彦だった。その他の少年達は彼の所属するチームのメンバーだろうか。

今度は、男女二人を映し出した。
『お兄様。飲み物どうですか?』
女の子の方がバッグから水筒を取り出して温かいお茶を入れる。
『あぁ、ありがとう。マリア』
兄は穏やかな顔で礼を言い、それを受け取った。
『私、嬉しいです。こうしてお兄様と一緒に試合を見られるなんて』
『マリア……。今まで、本当にすまなかった』
『いいんですよ。全部、私を思っての事なんでしょう?私は、今こうしてお兄様と一緒にいられるだけで幸せです』
『私もだ、マリア』

仲睦まじい兄妹の二人は、メアシとマリアだった。
「メアシ、マリア……!そっか、一緒になれたんだな。よかった……」
幸せそうな二人の顔を見て、シュウは心から安心した。

次に映し出されたのは、席の上で座禅を組んで瞑想している少年だった。
(我が友が世界を極める試合……それを最後まで見届ける事もまた、修行の一環です)

「マハラジャッ!あいつも来てくれたのか……!」

次は、アラストールが映し出された。
アラストールは厳しい表情をしながらも、静かに席に座っていた。
「アラストール……!」

そして、ロマーノ、ラインハルトが順に映し出された。
「あいつらは、南極予選決勝で戦った……!」

そして、最後に映し出されたのは……。
『じゃんじゃんじゃじゃーーーん!!オレっちは、ジャン・ジャンじゃーーーーん!!!』
ジャンだった。
周りの迷惑顧みずにエアギターをしている。

「って、最後にジャンかよぉ……!」
予想してなかった人物の登場にシュウはズッコケてしまった。

「で、でも、すげぇ!皆応援に来てくれたんだ……!」
シュウが感動していると、ビーダマスタージンが説明してくれた。
「ああ。公式で君が戦った全てのビーダーに招待状を送ったんだ。全員、と言うわけには行かなかったけど……。
同じように、ヒンメル君が公式で戦ったビーダーにも招待状を送っているんだ」
現在南極での修行を続けているガードイズストロンガーの三人や、最終戦の舞台が韓国じゃない事に機嫌を損ねてしまったキム・ヨンジュンは来ていない。
「そうなんだ。さっすが公式委員会だぜ……!」
「ふふ、これでヤル気が出たかい?」
「ああ!ヤル気1000%だぜ!!ほんと、ありがとうビーダマスタージン!!」
「なら良かった!あと僕に出来るのは、君たちの試合をしっかり見届け、世界中の皆に伝える事だけだ。最高の試合を期待しているよ!」
ビーダマスタージンは片手を上げて歩き出した。
「おう!任せとけ!!」
去っていくビーダマスタージンにシュウはサムズアップして返事をした。

そして、いよいよイベントが始まるようだ。
ビーダマスタージンがステージに現れた。
『皆ぁ!!ビーダマンワールドチャンピオンシップ優勝決定戦サドンデスバトルへようこそ!!ちょっと長い!
今日、この爆球町中央公園で行われるのは、本戦リーグ同率一位だったシュウ君とヒンメル君の雌雄を決する戦いだ!!』
ワーーーーー!歓声が上がる。

『それでは、試合開始の前にちょっとしたオープニングセレモニーを皆様に楽しんでもらいましょう!ステージ、オン!!』

ビーダマスターが合図をすると、バトルフィールドに、卓球台よりも少し大きめな長方形のテーブルが出現。
そして、その上に巨大なブレイクボンバーが設置されていた。

「なんだ、あの巨大なブレイクボンバーは!?」
「最終戦の競技がブレイクボンバーなのかな?」
「アルティメットシャドウヒットバトルじゃないの?」
「って言うか、オープニングセレモニーってなんなんだよ……?」
会場が騒然とする。

『今出現した競技台は、名付けてファイナルブレイクボンバー!!50×50!計2500個ものボムで敷き詰められているぞ!!』

「ちょっと待ってよー!赤ボムが50個じゃ偶数になるから、対戦にならないんじゃ?」
「そうそう!引き分けになったらどうするんだよ~!」
観客席からツッコミの声が上がる。

『ふっふっふ、大丈夫!この競技は、対戦用ではないんだ!』

ビーダマスターの返答に、会場は更に疑問で包まれた。
『このファイナルブレイクボンバーは、時間経過とともに徐々にビーダー側のフィールドに迫ってくる仕掛けになっている!
こいつを制限時間以内に全てのボムを撃ちぬけばクリアだ!!』
客席の仲良しファイトクラブ。
「えぇ、2500個のボムを全部……!」
「制限時間にもよるけど、それはそれで難しそうね……」
「俺なら三分もあれば余裕だが」
乱射の得意なヒロトなら3分で2500発撃つのはそう難しい事ではないだろう。

『それでは、この競技をプレイしてくれるビーダー達の入場だぁぁぁ!!!』
ビーダマスターがそう叫ぶと、選手入場口から、観客達も良く見知ったビーダー達が一列に並んで現れた。

カルロス、ブッシュ、プーチン、劉洸、マサーイ・マーサイ、アメンの6人だ。

『なんとぉ!ワールドチャンピオンシップ本戦リーグを戦った、世界各国から選りすぐられた強豪ビーダー達だぁぁ!!
残念ながら、タクマ君とベルセルク君は不参加だが、それでもこの6人は本戦リーグを盛り上げてくれた世界を代表するトップビーダー達だぞぉ!!』
彼らの登場に会場が更に湧く。
『この6人のビーダー達で、1分以内に全てのボムを撃ち抜いてもらう!協力プレイだ!!』

客席の仲良しファイトクラブ。
「へぇ、協力プレイかぁ」
「対戦も良いけど、皆で協力して一つの目標を達成するって言う競技も面白そうよね」
「ビーダピラミッドを思い出すね」
6人のビーダーが競技台についた。
「みなさーん!よろしくデース、よろしくデース!」
マサーイが楽しそうに挨拶する。
「うん、よろしく!」
「競技内容自体は大した事ないけど、協力プレイっていうのは面白い試みだ」
「ありそうでなかったな、そう言えば……」
『それでは、始めよう!準備はいいかな?オープニングセレモニー!レディ、ビー・ファイトォ!!』

合図とともに皆一斉に撃ち始める。
「勝負じゃないけど、世界大会最後の大舞台だ!頑張ろう、エースストライカー!!」
カルロスは、エースストライカーで的確に撃ちつつ、転がってきた玉をフットパーツで圧出して着実にボムを撃ち抜いていく。
『カルロス君は、フットワークを活かして次々にボムを撃ち抜いていく!!
本戦リーグでも見せてくれた、彼のフットワークとフットパーツでビー玉を発射すると言う驚きのギミックは我々に世界の広さを見せ付けてくれたぞ!!』

「ふっ!ヒーローはどんな悪にも屈しない!!スーパーヒューマン、状況開始だ!!」
ブッシュは迫りくるブレイクボンバーにも恐れずに堂々とボムを撃ち抜いていく。

『ブッシュ君も勇ましくボムを撃ち抜いていくぞ!!
本戦リーグでの彼も、アクション俳優として鍛えられた身体能力と勇気でアクロバティックなバトルを展開してくれた!魅せるバトルなら彼がナンバーワンだ!!』

「ぐわっはっはっは!!!こういうバトルもたまにはいいな!!!」
プーチンは、ドライブショットの二段攻撃でボムを撃ち抜いていく。

『プーチン君はドライブショットの二段攻撃だ!!
本戦リーグでは、その強力ドライブショットによって吹雪を巻き起こしてフィールドを変えてしまうと言う前代未聞のバトルが驚きだったぞ!!』

「この競技は手数が多い方が有利でアール」
アメンは幻影で分身を作り出して手数を増やしている。

『アメン君は本戦リーグでも見せてくれたピラミッドパワー発動!!分身して玉数を増やす作戦か!?相変わらずの神秘っぷり!!』
「この状況では、この角度であのボムを狙った方が効率がいいな……」
劉洸は冷静に状況分析しながら効率よくボムを撃ち抜いていく。

『劉洸君は冷静沈着なプレイ!本戦リーグでの彼も、知的な戦いが魅力だったね!』

「いえーい!皆で一緒にプレイ!!楽しいデース!!」
マサーイは本当に楽しそうにビーダマンを撃っている。

『マサーイ・マーサイ君!こっちまで嬉しくなってくるほどの笑顔で撃っている!彼はいつもそうだった。
本戦リーグでは1勝8敗と言う不名誉な結果でありながら、全ての試合を心から楽しんで観る者の心を温かくしてくれた!
勝ち負けだけが全てじゃないと言う事を教えてくれたぞ!!』

ところ変わって源氏タワー。
タクマがテレビ中継で大会の様子を見ていた。
「ふん、倒すべきビーダーがいない協力プレイだと……いかにも智蔵派らしい余興だ」
タクマはつまらなそうに悪態をつき、テレビを消した。
「タクマはん。試合見なくてええんか?セレモニー終わったらすぐ試合やで」
クウが問いかける。
「どちらが優勝しようが、我には関係ない」
そう言って、タクマは部屋から出て行った。
「まっ、どうでもええけどな。ワイはどんな試合でも興味津々や」
クウは再びテレビを付けた。


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