オリジナルビーダマン物語 最終話 後編

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!

最終話「今すぐ炎のビー玉ブチかませ!!」


 そして、会場の方は……。
ズババババババ、バーーーーン!!!!
ブレイクボンバーはあっさりと全てのボムを撃ち抜かれて機能を停止してしまった。
『ファイナルブレイクボンバー撃沈!!さすがは世界の精鋭達だ!!!そんな彼らに、惜しみない拍手を送ってくれぇ!!』
ワーーーーーー!と歓声と拍手が沸き起こった。

それを浴びながら、6人のビーダー達は観客に手を振りながら退場していった。
と同時に、スタッフが現れてブレイクボンバーを片付けていく。
その間にビーダマスターは実況で繋げる。
『そう、彼らはまさしくトップビーダーと呼ぶに相応しい存在!!誰がナンバーワンになってもおかしくない!
だが、戦えば順位がついてしまうのが勝負の世界。誰しもが優勝の可能性を秘めていながら、それでも彼らは惜しくも敗れてしまった……!
そして今日、順位を付けるべきなのは……世界最強ナンバーワンの称号!!
それを争うのは、この二人だ!!!』

丁度準備の整ったバトルフィールドに、シュウとヒンメルを抱えたルドルフが現れ、それぞれスタート位置についた。
『もはや説明不要であろう!本来、この大会は行われないはずであった!ワールドチャンピオンシップの優勝は既に決まっているはずだった!
しかし!先日北極を舞台に行われた優勝決定戦は、ドローで終わってしまった!リーグ戦の勝利数でもドロー!直接対決でもドロー!と引き分け続き!
このサドンデスで、果たして決着はつくのか!?それとも、またしても縺れてしまうのか!?最後まで、目が離せない事は間違いなしだ!!!』

(ヒンメル……決着を付けようぜ!)
少し離れた場所にいるヒンメルを見ながら、シュウは強く想った。
「ヒンメル様。いきますよ」
ルドルフは、ヒンメルに気付け薬を嗅がせて、素早くその場を去った。

『それでは、二人とも準備はOKかな?バトル開始の合図は、会場の皆で行おう!!そんじゃ、行くぜ……!!!』

「「「「「「レディ、ビー・ファイトォォォォ!!!!!」」」」」」

会場の皆が声を一つに揃えて叫んだ。
それを聞き、シュウはダッと駆け出した。

「うおおおお、ヒンメルうううう!!!!」
シュウがスタート位置で佇むヒンメルの前に立った。
「俺は、お前を全力で倒すっっっ!!!!」
射程圏内まで駆け寄り、いきなりパワーショットを放つ。

『シュウ君がスタートダッシュを決めた!!出会い頭に一発ぶち込む!!』

ガキンッ!!
しかし、ヒンメルは俯いた状態でビー玉を撃ち、あっさりとそのショットを逸らしてしまった。

『が、ヒンメル君はそれを防ぐ!ビクトリーブレイグのパワーが通じない、相変わらずの防御力!!』

客席の誠&ハヤミ。
「あぁもう、何やってんだよシュウ~!!」
ヤキモキして立ち上がるハヤミを誠が宥める。
「あのショットは多分牽制だよ。並のショットが通じないのはシュウ君自身が一番よく分かってるはずだから」
「お、俺だって分かってるよ!」
そう誤魔化しながら、ハヤミはゆっくりと座った。
「へっ、負けるかよ!!」
ドンッ!ドンッ!!
シュウはめげずに何発も撃ち込むが、ヒンメルは全て逸らしてしまう。
そして……。
「ふふ、ははは……あーーっはっはっはっは!!!!」
ヒンメルは顔を上げて笑い出した。暴走の始まりだ。
ドギュッ!ドギュッ!!
乱雑に破壊的なショットを放ちまくる。

『ヒンメル君!あの時と同様再び暴走開始!!果たして、これに対してシュウ君はどうするのか!?』

「もう俺はお前に無理矢理バトルは強要しねぇ!お前が俺を無視しようが、勝手に暴走しようが、関係ねぇ!全力でお前に勝ちに行くぜ!!!」
バギュッ!!!
シュウが暴走しているヒンメルのボムへパワーショットを放った。
が、ヒンメルは先ほどと同じようにショットを逸らした。
『ヒンメル君は、正気を失っているにも関わらず、シュウ君の攻撃にはバッチリ反応!ダメージは与えさせないようだ!!』
「このぉぉ!!」
ドンッ!ドドンッ!!!
シュウは何発のパワーショットをブチ込むのだが、暴走しているにも関わらず、それだけにはしっかりと反応している。
「だったら、これならどうだぁぁ!!!」
ガクガクガク!!!
エアリアルバイザーが振動する。そこへメタル弾をセットした。
「スーパー・フェイタルストーム!!」
ドンッ!!
空気の膜を纏ったメタル弾が発射される。これだったら逸らせられないはずだ。
「はーーっはっはっはっはっは!!!」
ヒョイッと躱された。
「ぐっ!な、なんだよ!俺とバトルする気ねぇくせに、負ける気も一切無いってのかよ!!!」

客席。メアシ&マリア
「妙な試合ですね、お兄様」
「ヒンメルの心とシュウ君の魂。二つがすれ違っている限り、決着はつけられない。いや、このままではシュウ君が体力を使い果たして自滅する……!」
「……!」
バゴォ!バゴォォォ!!!
次第に、ヒンメルのショットによってフィールドが破壊されていく。
「でも、もうこれしかねぇんだ!小細工なしで俺のビー魂をぶつける!!最大パワーで何が何でもあいつを倒しに行く!!それしか……!!」
シュウは何度も何度もヒンメルのボムを狙おうとチャレンジするが、全て防御されてしまう。

「シュウ!これ以上試合は長引かせられないぞ……!」
客席にいるタケルがシュウへ向かって叫ぶ。

「わぁってる!」
シュウは若干イラつきながら、ヒンメルの顔を見た。
「っ!」
その時に気付いた。
ヒンメルの瞳に、涙が溜まっていた事に。
狂気的に笑いながらも、その奥に哀しみを潜ませていた事に。
(ヒンメルは、本当に楽しんでるのか……?)
ヒンメルの笑い声が聞こえる。それを聞けば聞くほど、嘆きの声に感じられた。
(そっか……。ヒンメルはバトルをしないんじゃない。誰も相手にならないって諦めてるんだ。
だから、そんなヒンメルが楽しむためには、一人でビーダマンを撃つしかないんだ)
シュウはグッと拳を握りしめた。
(だったら俺は……!)
シュウはダッと駆け出してヒンメルの目の前に来た。

「ヒンメル、楽しそうだな」
シュウはゆっくりと話し掛けた。
すると、ヒンメルは笑うのをやめて、不気味な笑顔のまま言った。
「うん。楽しい。ビーダマン楽しい」
「だけどさ、本当に楽しいのか?」
「楽しいよ」
「俺は、そうは見えねぇな。お前は楽しもうとはしてるけど、心から楽しいと思ってない!」
「そう」
ヒンメルはシュウを無視して再びビー玉を撃ち始めた。その衝撃波がシュウを襲うが、それでも構わずに話し続ける。
「この公園、覚えてるか?俺とお前が初めて戦った場所だ!俺はお前にボロ負けして初めて知ったんだ、負ける悔しさと、面白くないバトルを!!
だから、今度こそ俺はお前と楽しいバトルがしたい!そして勝つんだ!!」
それを聞いたヒンメルはゾッとするほど冷たい目でシュウを睨んだ。
「無理だよ」
「っ!」
「誰も、僕の相手にならない。つまらないバトルしかできない。楽しくない。バトルなんか、しない方が楽しい。一人で、ビーダマンで、壊し続けてた方が楽しい!!」
その言葉は、まるで小さい子供が拗ねているようだった。
「そんな事ねぇ!!!」
シュウが一喝すると、ヒンメルの目が少しだけ見開かれた。
「強さなんて関係ねぇ!結果なんて関係ねぇ!互いに勝利を目指してバトルすれば、楽しいんだ!!全力でぶつかり合えば、それだけで!!」
「全力をぶつけたら、皆逃げるじゃないかぁぁぁ!!!!!」
初めて、ヒンメルが激しく慟哭した。
「ヒ、ヒンメル……!」
「うああああああああああ!!!!!!」
泣き叫びながら、パワーショットをシュウへぶち込んだ。

『ヒンメル君が、シュウ君のボムへパワーショットをぶち込む!!自分から攻撃を仕掛けたのは、これが初めてだ!!』

「ぐぅぅぅぅぅ!!!!」
ボムに大ダメージが入り、その衝撃波でシュウも吹き飛ばされて倒れた。
ボムの残りHPは64だ。一気に36も喰らってしまった。

「全力を出したい……だけど、ぶつけたら皆逃げる……!
だから、ぶつけないようにしないと……全力を出さないようにしないと……楽しまないようにしないと、楽しめない……!!」
ボロボロと涙を流しながら、ヒンメルは嘆き続けた。
「へっ、隙ありぃ!!」
シュウは立ち上がりざまにヒンメルのシャドウボムへショットをブチ込んだ。
バーーーーン!!
さすがに体制が整ってなかったのでダメージは少ないが、それでも一気に15ものダメージを与えた。

『おおっと!ヒンメル君が泣いている隙に攻撃をぶつけた!シュウ君、これはちょっとズルいぞ!?』

「なんもルール違反してないだろぉ!!」
「……」
思いがけぬシュウの行動に、ヒンメルは唖然とした。
「言っただろ!何が何でも全力で勝ちに行くって!じゃなきゃ面白くないからな!!ルール違反じゃなかったら、俺は勝つためになんだってするぜ!!」
「どうして……?」
「さぁ、お前ももっと全力で来いよ!!へへっ、やっと面白くなってきたぜ……!」
シュウはニカッと笑いながらヒンメルを挑発した。
「どうして、笑っているの……?」
ヒンメルは、その挑発を受けるよりも、シュウが笑っている事への疑問を口にした。
「嬉しいんだよ!やっとお前が全力をぶつけてくれた。俺とバトルしてくれた事がな!」
「嬉しい……?」
「ああ!お前が、強すぎるからバトルが出来ないってんなら……俺が、お前の強さの全てを受け止める!!さぁ、もっと来いよ!!」
「……」
ヒンメルは、すぐには返事が出来なかった。
「来ないんだったらこっちから行くぜっっ!!!」
ドンッ!!!
シュウのショットがヒンメルを襲う。
「あっ!」
バキィ!!
躱しきれずにヒットする。

『どうした事か!ヒンメル君は不調なのか?二発も攻撃を喰らってしまい、残りHPは62!シュウ君に抜かれてしまったぞ!!』
「どぉだ!抜いてやったぜ!!」
「こ、このぉぉぉぉ!!」
シュウがからかうと、ヒンメルは悔しさを感じたのか怒りをあらわにしてショットを放った。
「ぐわっ!!」
バキィ!!
ボムに攻撃を喰らう。
が、そのダメージは先ほどより弱かった。

『シュウ君もヒット!!油断してしまったようだ!残りHPは55!!』
「へへへっ、やれば出来るじゃねぇか!さぁ、もっとやろうぜ!ビーダマンバトルを!!」
シュウが笑顔で言った。
「……」
ヒンメルは、少し考えた後、スゥと息を吐いてから答えた。
「……うん、やろう!ビーダマンバトル!」
その顔は、今までの無感情なものではなく喜びに満ちたものだった。
「そうこなくっちゃ!!」
それから、シュウとヒンメルは互いに全力で撃ちつ撃たれつの攻防戦を繰り広げて行った。
その様子をバトルフィールドの隅で見ていたルドルフは目を見開いた。
「ウラノス……!」

『さぁ、激しいバトル展開になってきた!!シュウ君がヒンメル君のボムを撃つ!と思ったら、ヒンメル君がやり返す!!
無傷の大天使の異名とはほど遠いが、ヒンメル君もシュウ君も凄く楽しそうだ!!』

客席の仲良しファイトクラブ。
「シュウ先輩~!!頑張ってくださ~い!!」
リカが必死に応援している中、タケル達はヒンメルの代わり様に驚いていた。
「ヒンメルの奴、まるで人が変わったみたいだな……」
「竜崎のビー魂が、ヒンメルの心を開かせたか」
「ヒンメル君はずっと、自分が畏怖される存在だと言う事にコンプレックスを抱いていた。だから感情を封じていた。
でも、それでも楽しみたいと言う心が溢れ、歪んだ形で表れていたのね……。
シュウ君は、ヒンメル君の強さに絶望も恐怖もせず、真っ直ぐなビー魂で受け止めようとしてくれた。だからヒンメル君はシュウ君に全力をぶつける決意が出来たのね」
「結局、ヒンメルの強さを一番恐れていたのは、ヒンメル自身だったって事だ。シュウのビー魂は、その恐怖を乗りえる勇気を与えたんだな」
「これでようやくスタート地点に立てたって事だ。勝負はこれからだな」
ヒンメルとシュウのバトルはここからが本番だ!
「って、呑気に言ってるけど!あの化け物みたいなヒンメルが全力でシュウに向かって行ったら、それこそ勝ち目がないんじゃないの?!」
琴音が慌てながら言う。
「いや、そうでもないさ」

『シュウ君とヒンメル君の激しい立ち合い!!バトルは互角!お互いにHPは40を切ったぞぉ!!』

その実況を聞いて琴音が驚く。
「ご、互角、って……?そう言えば、今のヒンメルって強いは強いけど、前みたいな人外な強さじゃ無いような……」
「ヒンメル君のあの次元の違う強さは、脳の使い方に秘密があったのよ」
彩音がパソコンで分析しながら言う。
「脳の使い方?」
「普通の人間は、本来の能力の30%しか発揮できて無いの。無意識のうちに脳がリミッターをかけているから。
でも、ヒンメル君は人としての感情を封印していたせいで、そのリミッターが働いてない状態だった。
だけど、今はシュウ君がヒンメル君の心を開いた」
「つまり、脳のリミッターが正常に働いてるってわけだ」
タケルが納得して頷く。
「へぇ、じゃあ勝機はあるのね!」
琴音の顔が明るくなる。
「とは言っても、元々ヒンメルの強さはリミッターがかかっていても別格だ。パワー面はともかく、テクニック面では世界中のどのビーダーをも圧倒するくらいにな」
「シュウが勝つには、限界を超えて今以上の力を発揮するしかないな……」
タケル達がそんな話をしていると、リカが少し怒ってきた。
「ちょっと先輩たち!そんな冷静に分析してないで、シュウ先輩を応援してくださいよ!!」
「お、おう!」

『さぁ、バトルはいよいよ終盤戦!シュウ君の残りHPは7!一方のヒンメル君の残りHPは5!二人のパワーを考えれば、一撃で勝負が決まるか!?』
気が付けば、バトルは終盤戦だ。シュウは集中力を高めてヒンメルを見据えた。
「一撃当てれば……!」
ドンッ!!
シュウが最大パワーのシメ撃ちを放つ。
「無駄だよ!」
ガキンッ!!
ヒンメルの防御は硬く、逸らされてしまう。
「だったら、これならどうだ!!!」
ガクガクガクガク!!!
エアリアルバイザーが振動する。
「フェイタルストーーーーム!!!!」
バギュウウウウウウウウウウ!!!!!
『でたぁぁ!!!!シュウ君の必殺のフェイタルストーム!!空気の膜を纏ったショットがヒンメル君へブッ飛ぶぞぉ!!』

「デオス・パノプリア!」
ヒンメルはタクマ戦で見せたビー玉のバリアを放った。
「くっ!」
そのバリアが放つ衝撃波が空気の膜を引きはがし弾き飛ばしてしまった。
「やっぱ、効かねぇか!!」

『起死回生と思われたフェイタルストームが不発!!ヒンメル君は完全防御態勢に入ったぞ!!』

「次に来るのは、あの最大の攻撃技……!!」
「行くよ……デオス・ネメスィ!」
バリアを張っていたビー玉が地に堕ちる。
その瞬間、猛回転で地面を蹴って全てのビー玉がシュウのボムへ向かって行った。

ガッガッ!!!
何発かボムにヒットする。
『ヒンメル君最大の攻撃技が、シュウ君のボムへ的確にヒットしていく!!残りHPはあと僅か……!』

「負けるかぁぁぁぁぁ!!!!」
バーーーーン!!!
ショットがボムへぶつかる直前、シュウは地面へビー玉を撃って飛び上がった。

『シュウ君飛び上がったぁ!!ギリギリ、HPを1残した状態で躱したぁぁぁ!!!このままメテオールバスターへとつなげるか!?』

「リング・エンゲルと違って、上に躱される事は想定してなかったみたいだな!」
「くっ!」
「一気に決めてやるぜ!!」
バリアの無いヒンメルへ一発ぶち込もうとするシュウだが……。
「遅いよ。デオス・パノプリア!」
ヒンメルは急いでまたデオス・パノプリアを張った。
「だったら、今度こそそのバリアごとぶち抜いてやる!俺の、今までの限界を超えた全力ショットで!!!」
シュウは上昇を続けながら、ブレイグにメタル弾をセットした。
「うおおおおおおお!!!!」
ガクガクガクガク!!!!
ブレイグのエアリアルバイザーが再び振動を始めた。

『シュウ君の上昇はまだ止まらない!しかも、ブレイグの光の刃は振動している……?まさか、まさか……!!!』

そして、シュウの上昇が止まった。
「よし、ここだぁぁぁ!!!!!」
最大の位置エネルギーによる重力×メタル弾の重量×シメ撃ち×空気の膜は……!!!!

「メテオ・フェイタルストォォォーーーム!!!!!!」
バギュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!
空中から重力を利用して放たれたフェイタルストームが、ヒンメルのデオス・パノプリアを上からこじ開けていく。
『これは凄まじい!!!メテオールバスターとフェイタルストームの合体技!!重力によって加速したフェイタルストームがヒンメル君へと迫るぅぅぅぅ!!!』
ガキッィィィィィ!!!!
「っ!デオス・パノプリアが、弾かれていく……!?」

『のおっと!最強の盾であるデオス・パノプリアが、徐々に徐々に剥がれていく!!』

「負けない……!負けないいいいいい!!!!」
ヒンメルはデオス・パノプリアの中からビー玉を連射してデオス・パノプリアを補強し、メテオ・フェイタルストームを止めようとする。
しかし、メテオ・フェイタルストームは負けじと突進する。

『最強の盾と究極の矛の対決!!!防ぎきれるかヒンメル君!突破できるかシュウ君!!勝敗は、必殺技同士の激突で決まるぞおおおおぉぉぉ!!!』
最後の激突に、客席の皆が注目した。

アツト。
「ど、どっちが勝つのサー!?」
辨助。
「けっ、良いバトルしやがって」
アラストール。
「必ず勝てよ。その時は、お前が次の標的だ」
田村&吉川。
「「頑張れシュウ~!!」」

ジャン・ジャン。
「(エアギター)じゃんじゃんじゃじゃんじゃんじゃんじゃじゃじゃんじゃんじゃーーーん!!!」
チーム風林火山。
「いよいよ終盤でござるな……」
「良い戦いであった」
「フッ、ビーダマン武士道を極めるのも、もうすぐだな」
マリア&メアシ。
「全ては、神の思し召しですわ」
「あぁ」

マハラジャ。
(良い気の流れを感じます……勝つのはおそらく……)
「シュウ様……ありがとう……!」
ルドルフは顔を伏せ、一筋の涙を流した。

少し場所が変わって、源氏タワーの練習場でビーダマンを撃っているタクマ。
試合は観ていないが、シュウとヒンメルの激突が終盤に差し掛かっているのはなんとなく伝わっていた。
「はぁぁぁぁぁ!!!」
ドライグのショットでターゲットが次々と撃破されていく。
「世界一で待っていろ、竜崎修司……!我はいずれ、必ずそこへ辿り着く……!」
それぞれが最後の瞬間に向けて想いを馳せた……!
『最後にして最大の激突!!果たして、勝つのはどっちだ!?』
そして、客席の仲良しファイトクラブは立ち上がってシュウへ精一杯の声援を送る。
「シュウ君、ビーダマンを信じて!!」
「竜崎、ナンバーワンの座は一先ずお前のものだ」
「シュウ、負けんじゃないわよ!!」
「頑張ってください!!!」
「いけぇぇぇーーーー!!!シュウーーーー!!!」

シュウは落下しながらヒンメルへ向かってありったけの気合いで叫んだ。
「うおおおおおおおお!!ヒンメルウウウウウウウウ!!!!」
「シュウウウウウウウウ!!!!」
ヒンメルも負けじとシュウへ対して気合いを込めた。

落下するシュウと迎え撃つヒンメルの影が重なった瞬間。
バーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!
と、ボムの破裂音がひとつだけ聞こえた。
『決まったあああああああぁぁぁぁ!!!!激闘を制して、勝利を収めたのは……………!』

ジー……ジジジ……。
首都高のど真ん中、シュウの父が運転しているトラックがトンネルの中に入り、ラジオの電波が途切れてしまった。
「あ、なんだよ!いいとこだったのに!結局修司のやつは優勝出来たのか!?」
父は慌ててラジオのアンテナを動かすが、トンネル内ではどうしようもない。
「まっ、あいつなら心配ねぇか」
と、シュウの事を信じている父はすぐに平静に戻った。
「そうだ。優勝記念にちょっくら美味いもんでも買って帰るか」

高速を降りてから、父が向かったのは築地近くのとある魚屋さんだ。
「オヤジ、こいつもらうぜ!」
父は店先のでっかいタイを片手で持って店の奥へ叫んだ。
すると、黒いエプロンをした威勢の良さそうなおじさんが現れた。
「まいど!お客さん、良いの選んだねぇ」
「へへへ。めでタイってな!今晩息子の祝いなんだよ」
「そうかい!じゃあ安くしとくよ」
「悪いね!」
そんな父と店主が話している魚屋の奥の部屋では、子供達がテレビで大会の中継を見ていた。
そのテレビからは、ビーダマスターの声が流れてくる。

『さぁ、表彰式を始めるぞぉ!!
栄えあるビーダマンワールドチャンピオンシップを制したのは……竜崎修司君!ビーダーネーム、シュウ君だぁぁぁぁ!!!』
そこからは、ハッキリとシュウの名前が聞こえてきた。

……。
…………。
………………。

それから、1週間後。
仲良しファイトクラブでは、クラブ入部希望者が増え、忙しい毎日を送っていた。
タケルやヒロトや琴音は自分達の練習をしつつも後輩たちの指導をして、彩音とリカもサポーターとして仕事が増えていた。
そんな中、シュウは……。
「ほけーーー」
練習場端にあるベンチでボーッとしていた。
そんなシュウへ、タケルがつかつかと歩み寄る。
「くぉらぁぁぁシュウーーー!!!サボってんじゃねぇぇぇぇぇ!!!!」
耳元で怒鳴った。
「うわぁぁぁ!!!」
シュウはビックリしてベンチから転げ落ちた。
「ってて……いきなりビックリするじゃねぇか!」
「お前がボーッとしてるからだ!クラブに来てるんだったら、仕事するか練習するかしろ!」
「ちぇ、ちょっと休憩してただけなのにさ……」
シュウはぶつくさ言いながら立ち上がり、よろよろと練習台についてターゲットシューティングをしていた。
「……」
が、そのショットにはキレがなく、何発か外れているのにシュウは全く気にしていない。

その様子を見て、タケルと琴音と彩音は心配そうに話をする。
「シュウの奴、なんか気が抜けてるわね」
「大会が終わってからここ一週間ずっとこの調子だ」
「無理もないよ。あれだけの激闘が終わった後だし」
「目標だったヒンメルを倒して、世界一になった。燃え尽きるのも分かるがな……」
「これから追われる立場になると言うのに、呑気な奴だ」
いつの間にかヒロトが会話に加わっていた。
「ヒロ兄……」
「むしろ大変なのは世界一になった後だ」
「追われる立場、か」

ガラッ!
その時、練習場の扉が控えめに開かれた。
入部希望者かな?と思ってタケル達がその扉を開いた人物を見て、驚いた。
「すみませーん、仲良しファイトクラブってここで……」

「「「「「「ヒンメルっ!?」」」」」
一同がその姿を見て驚き、ヒンメルを取り囲んだ。
「ど、どうしてヒンメルがここに!?」
「な、何か用なのか!?」
取り囲まれて質問攻めにあっているヒンメルは、苦笑いしながらもその中に誰かの姿を探している。
そして。
「あ、シュウく~ん!!」
練習台の方にいるシュウの姿を見つけたヒンメルは取り囲む人を掻い潜り、シュウの元へ駆けつけた。

「ふぇっ、ヒンメル!?」
近づいてきた事でようやくヒンメルの存在気付いたシュウは、目を丸くした。
「久しぶりだね、シュウ君!」
すっかり明るくなったヒンメルが笑顔で言う。
「お、おう……!で、いきなりこんなとこまで来て、どうしたんだよ?」
「今日は君を誘いに来たんだっ!」
「誘い?」
「うん。君は、Unidentified Mysterious B-dar(未確認ビーダー)通称UMBを知っているかい?」
「UMB?なんだそれ?」
「ふっふっふ……じゃーーん!」
ヒンメルは懐から一冊の本を取り出した。それは、ビーダマンに関する都市伝説が解説されている本だった。
「ビーダマン都市伝説?何々……世界には強大な力を持ちながらも、とある事情で公式大会に出られないビーダーが多数存在していると言われている。
それらは通称UMBと呼ばれている……」
シュウは本の一文を読んだ。
「そう!世界大会が全てじゃないんだ!大会に出なくても強いビーダーはたくさんいる。
お金が無くて大会に出られないビーダーや宗教上の理由で大会を禁じられているビーダー、年齢制限で出られないビーダー……他にもいろいろ!
あ、中には、喋るビーダマンを使って戦う地下大会の噂もあるんだよ!面白いでしょ!?」
「ビーダマンが喋るの!?すっげぇ……!」
その話を聞いて、シュウは目を輝かせる。
「さすがにそれはありえないだろ」
「噂は噂よね」
タケル達が話に入ってきた。
「でも面白そうじゃん!!」
「信憑性は薄いが、火の無い所に煙は立たない。元はと言えば源氏派の存在も、公になるまでは都市伝説のようなものだったんだ。全てが嘘とも言えないだろう」
ヒロトが言った。
「だろ?」」
「それで、ヒンメル君の誘いって一体何なの?」
彩音がヒンメルに聞いた。
「うん。シュウ君、僕と一緒にUMBを巡る旅をしないかい?」
「俺と……?」
「僕はもっと強い相手と戦いたいんだ!君だってそうだろう?世界一になったからって、そこで終わりたくないんだろう?」
ヒンメルの言葉は、シュウの心に響いた。
世界一になったからって、ヒンメルに勝ったからって、夢を叶えたからって、そこで終わりたくない。
「あぁ、終わりたくない!俺は、まだまだ知らない奴らと、もっともっと強い奴らと戦いたい!!」
「君ならそう言ってくれると思ったよ!」
シュウは目を輝かせてヒンメルの誘いに乗った。
「いいよな、タケル?!」
シュウはタケルへ振り向いた。
「ったく、しょうがねぇな。次の世界選手権が開かれるまでかなり間が空くみたいだし、それまでの修行って考えればいいか」
タケルがしぶしぶ承諾する。
「サンキュー!!おっしゃぁ、早速準備するぞぉ!!ヒンメル、行こうぜ!!」
シュウがヒンメルの手を持って駆け出そうとする。

「待て!!!」
それを、ヒロトが止めた。
「な、なんだよヒロト……?タケルの許可は得たぞ!!」
「そうじゃない。ヒンメル、竜崎。俺と戦え!!」
「へっ?」
「世界一のビーダーが二人も揃った今を逃す手は無い。出発前に俺とバトルしろ!!」
ヒロトがヴェルディルを突き出した。
「あ、ヒロ兄だけズルい!そう言う事ならあたしも!!」
「せっかくだ、俺ともやってもらうぞ!」
琴音とタケルもグルムとレックスを出してきた。

「ちょ、ちょっと待てよ、お前らいきなり……!」
たじろぐシュウだが、ヒンメルはニヤリと笑った。
「へぇ、面白そうだ!出発前の肩慣らしだね!!」
「ヒンメルって、俺よりもバトルバカか……?ええい、だったらやってやるぜ!!まとめてかかってこい!!!」
シュウもヤケクソ気味に叫んだ。
「あーーーー!!あたしが倉庫整理している間に何か楽しい事してるーーーー!!!」
奥からやってきたリカが叫んでやってくる。
「ふふふ、ビーダマンバトルに終わりはないみたいね」
苦笑する彩音。
その時、フッと風が吹き、風が小さな声を運んできた。

「あーーーーくそっ!僕も霊体じゃなかったらバトルしたいぜーーー!!!!」

「え?」
彩音は声が聞こえた方角へ振り向いた。が、そこには誰もいない。
しかし、その声には聞き覚えがあった。
「お兄ちゃん……」
そう呟く彩音の表情は穏やかだった。

「先輩たちだけズルい!」
「バトルなら俺達もやりたいです!!」
練習生たちもビーダマンを持ってぞろぞろとやってきた。
「ああもう!だったら全員でまとめてやるぞ!!」
しっちゃかめっちゃかだが、もうどうにでもなれだ。ルールも勝敗もどうでもいい!!
シュウ達はバトル開始の合図を叫んだ。
「いくぜ!レディ……」

「「「「「「ビー・ファイトォ!!!!!」」」」」」

 ビーダマンが好きだ!だから僕達は戦い続ける……。

   おわり

 

 



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