オリジナルビーダマン物語 第98話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第98話「光を求める闇」





 世界選手権本戦リーグ最終戦の前日。
 源氏派のアジト。
 
「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 トレーニングルームで、タクマは鬼神と見紛うほどの気迫でドライグを撃っていた。
 バゴォォォ!!!
 フィールドに設置されたターゲットがドライグのショットによって粉々に砕け散る。
「はぁ、はぁ……!」
 全てのターゲットを破壊し終え、タクマは肩で息をする。
「次だ!」
 が、明らかに疲れているのに休む事もせず、タクマは傍にいる部下たちに次のターゲットを用意するように命じた。
「し、しかし、タクマ様……!」
「アジトに戻られてから数時間、ずっと撃ちっぱなしではありませんか!少しは休息なされた方が……」
 部下達は戸惑いながらも、タクマに休憩を勧める。しかし、タクマは怒声でそれを振り払った。
「いいから言われた通りにしろ!!我にはもう後が無いのだ!!」
「「は、はいぃ!!!」」
 タクマに怒鳴られ、部下達はビクッと身体を震わせて慌ててターゲットをフィールドへ設置し始めた。
 しばらくしてターゲットの設置が終わり、タクマが再び練習の構えを取る。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 先ほどの気迫を上回る勢いで次々とターゲットを破壊していく。
 しかし、あと一個の所でタクマのショットは外れてしまった。
「ぐぅ……!」
 さすがに疲労が祟ったのか、タクマは腕を抑えて呻いた。
「タ、タクマ様……!」
 部下達が心配そうに駆け寄ろうとするのだが、タクマはそれを一睨みして制した。
「なんでもないっ!少し手が滑っただけだ……!余計な真似はするなっ!!」
「で、ですが……!」
 明らかに無理をしているタクマを心配したいのだが、それすらも許されずに、部下達はオロオロするしかなかった。
「感心せぇへんなぁ、タクマはん」
 そこへ、いつもと変わらぬ口調で話し掛けてきたのは、難波クウだった。
「世界選手権も残すところあと一戦。気合いが入るのは分かりますが、入れ込み過ぎは身体に負担をかけるだけでっせ」
「心配は無用だ。この程度、我はどうと言う事は無い……!」
「タクマはんは平気かもしれへんけど、ドライグはどうでっしゃろな?」
「……」
 難波クウに言われてドライグを見るタクマ。
 度重なる特訓で、ドライグはもうボロボロだった。
「タクマはんがどんな特訓をしても勝手やけど、それでビーダマンに無理をさせるのはメカニックとして見過ごせまへんなぁ。
どうでっしゃろ?ここは一旦、ドライグのメンテが終了するまで特訓は休止という事で」
「ちっ、好きにするがいい」
 タクマはクウの提案に舌打ちをしつつも、ドライグを投げ渡した。
「確かに、預かりましたで」
 ドライグを受け取ったクウはニンマリと笑った。
「なるべく早く頼むぞ。我には時間が無いのだ」
 焦心を露わにしているタクマに対して、クウはおちょくるようにふざけるような口調で言った。
「らしくあらへんなぁタクマはん。メアシはんが抜けた事、そして本戦リーグでの一敗がそんなに堪えてまんのか?」
 クウは、大阪人特有の図太さでタクマの傷心へズケズケと入り込んだ。
「……メアシには最初から期待していない。奴の始末など、後でいくらでも出来る」
「という事は、ヒンメルはんか」
 消去法でいくともう答えはそれしかない。
「……」
 タクマは返事に窮し、不機嫌そうに黙りこくった。
「図星ですな?」
 クウの図太さに観念したのか、タクマはゆっくりと口を開いた。
「……奴の強さは、十二分に理解していた。戦えば、負ける可能性がある事も重々承知していた。
だが、あの敗北は普通ではない。我が、ただの一撃も与える事なく敗れてしまった……!源氏派の全てを担うこの我が!!
この一敗はあまりにも大きい!我にもう負けは許されぬ!!次の試合、必ず勝たねば源氏派の未来は無い……!」
 胸の内を語るタクマの顔は悲痛に歪んでいた。
 源氏派の存在を世に知らしめるべき責任の重さが、あの敗北でより大きくなったのだ。
「せやったら、なおさら自分の身体は大事にせんとあかんで。今のタクマはんはタクマはんだけのものやないんや。せやろ、みんな?」
 クウが部下達の方を向いて同意を求めると、部下達は大きく頷いた。
「……少し仮眠を取る。機体の修復が完了したらすぐに起こせ」
 タクマは小さくそう言うと、仮眠室がある方へゆっくりと歩いて行った。
 その背中を見た部下達の顔には安堵が浮かんでいた。
「……」
 その様子を見て、クウは密かに考えを巡らせた。
(タクマはんは、本当に源氏派のメンバーに好かれとる。
ビーダーとしての実力だけやのうてカリスマ性も備えとる、トップに立つに相応しい人間や。
せやけど、タクマはんを慕っとる古株のメンバーに、即戦力になりうるビーダーはおらん。
戦力になりうるヒロトはんや琴音はん、そしてメアシはんは悉く抜けていきおった。
まぁ、かくいうワイも敵であるはずのタケルはんに肩入れしとるから、人の事は言えへんな……。
それはともかく、タクマはんには悪いけど、ワイの目には今の源氏派は組織として穴だらけに見える。
いくらタクマはんが優秀でも、厳しい戦いになるやろな……)
 クウは、憐れむような、ほくそ笑むような、そんな複雑な表情で源氏派について思いを馳せていた。
 一方の仲良しファイトクラブ。シュウ達は本戦リーグ最終戦に向けての会議を開いていた。
 休憩室でシュウ、タケル、彩音、ヒロト、琴音が卓を囲って座っている。
「いよいよ次の試合で本戦リーグもラスト。泣いても笑ってもこれで全てが決まるぞ」
「俺の最後の相手はタクマか……」
「あいつは源氏派の考え方を世に浸透させるためにこの大会に参加している。負けは絶対に許されないな」
 タケルの言う通り、タクマの勝利は源氏派の勝利を意味する。
 負けた相手のビーダマンを奪ったり破壊したりするようなバトルをビーダマン界の常識にするわけにはいかない。
「世界選手権優勝のために、タクマは長い時をかけて虎視眈々と準備を進めていた。智蔵の孫でもある竜崎相手には、死んでも勝ちにいくだろうな」
「……」
 ヒロトの言葉に、シュウは唾を呑みこんだ。
「だが、その直前にタクマはヒンメルに敗れている。あの敗北が奴の精神に与えた影響はデカいだろうな。吉と出るか凶と出るか……」
「いつものタクマとは違うって考えた方が良いのかな……?」
「確証はないがな」
 ヒロトの発言はいつも素っ気ない。
「前回のヒンメル君の勝利によって、次の試合は実質シュウ君とタクマ君の二位決定戦みたいなものになってるね。
もし、ヒンメル君が負ければ、まだ優勝の可能性はあるけど……」
 彩音が勝利数を確認しながら言う。
「まずありえないわよね~。ヒンメルの次の対戦相手から考えると」
「シュウの優勝の可能性を考えるなら、ヒンメルの敗北を願いたいところだが、厳しいな」
「何言ってんだよタケル、ことねぇ!他人の負けなんか期待してもしょうがねぇだろ!俺は目の前の戦いに勝つ事しか出来ないんだ!」
 シュウが、二人のネガティブな発言を振り払うように言った。
「まぁ、そりゃそうだがな……」
「シュウはそれでいいの?結局ヒンメルへのリベンジは果たせなかったどころか、本気で戦えもしなかったのに」
 琴音が少し心配そうに言うが、シュウは元気に返した。
「ヒンメルとは、大会の後にだって戦うチャンスはある!今回は叶わなかったけど、俺の夢が無くなったわけじゃない!」
「だな。目の前のバトルを全力で戦っていけば、いつか必ず夢は叶う」
「そのためにも、タクマにだって負けられねぇ!源氏派の事もあるけど、それ以上に一つ一つのバトルがヒンメルに繋がってるんだ!」
 シュウは今まで、数々の事情に遭遇した。
 ゆうじの死。智蔵派と源氏派の対立。ビーダーの解放者。ヒンメルの都市伝説。
 それでも、ヒンメルを倒したいと言う自分の夢だけは見失わず、全てそのための糧にしてきた。それこそがシュウの本当の強さなのかもしれない。
「それでこそシュウだな!」
「源氏派の連中に、本当のビーダマンを教えてやらないとね!」
 盛り上がる一同だが、シュウは琴音の言葉に違和感を覚えた。
(本当のビーダマン……?)
 その違和感と同時に、以前父と交わした会話を思い出した。
 “それって本当に悪い事なのか?”
 
「……」
 急に黙り込んだシュウに、彩音が心配そうに声をかけた。
「どうしたの、シュウ君?」
「あ、いや……タクマって、ほんとに悪い奴なのかなって」
「悪かどうかは一概には言えんが。少なくとも、俺達にとっては敵だな。奴のやり方には賛同できない」
「……そうだよな。敵ではあるんだよな」
 シュウは呟きながら、何か頭の中で整理しているようだ。
「何が言いたいんだ?」
「いや、俺も良く分からないんだけどさ。まぁ、とにかく、相手が誰でもバトルするからには勝つだけだぜ!!」
 結局、結論はそこに行きつく。
 タクマが源氏派であろうがなかろうが、バトルする以上は勝たなければならない相手に代わりは無いのだ。
 
 その夜。
 竜崎家の居間ではいつものように夕飯の料理がテーブルの上に並べられていた。
「どうだ、修司!今日の料理は、チキンカツ定食大盛りだ!!」
「おぉ!!うまそう~!!!」
 テーブルの上に置かれが大量のチキンカツに、シュウは目を輝かせた。
「今度の試合相手はかなり強いらしいじゃねぇか!だからこそ、チキンな心に勝つってな!これ食って、絶対に勝てよ!」
「うん!いただきます!!」
 シュウは早速目の前の料理をがっつき始めた。
「はっはっは!食え食え!父ちゃんの飯が一番だ!!」
 父は胸を張って高笑いする。料理に関しては人一倍プライドを持っているようだ。
「んめ~!!!」
 ガツガツ!飯を食っていたシュウは、不意にその手を止めて、ジッと父の顔を見つめた。
「ん、なんだ?おかわりか?」
 父は怪訝な顔をする。
「いや、えっと……そう言えばさ、父ちゃんって子供の頃ビー玉やベーゴマを奪い合ってたって言ってたじゃん」
「人聞きが悪いな……賭けてただけだ」
「でもさ、負けたら自分が大事にしてたビー玉とか取られちゃうんだろ?父ちゃんは、取られて悲しくなかったのか?」
「ん~……」
 父は天井を仰ぎ、昔を思い出しながら答えた。
「そうだなぁ。悲しいと言うか、悔しいとは思ったな」
「そんな遊びて、楽しかったのかよ?」
「まぁ、遊びは遊びだからな。前にも言ったが、だから負けたくないって燃えるんじゃないか!」
 父の意見は、タクマの言っている事と似ている。
「だけどさ。父ちゃんだって、勝ったら相手のビー玉取ったりしてたんだろ?相手が可哀相だとか思わなかったのか?」
 父はケロッとした顔で答えた。
「考えた事もないな。そう言うルールで勝負をした以上、互いに承知の上なんだ。逆に取り上げなかったらルール違反だし、相手にも失礼ってもんだろ」
「……」
 シュウは言葉を失った。
 それは、驚きに近かった。
 ビーダマンを取り上げ無かったら失礼。そんな事は全く頭になかったからだ。
「そっか……」
 それを聞いて、シュウは何かを悟ったような気になった。
「よし!父ちゃん、おかわり!!」
 どこかすっきりしたような顔になり、勢いよく空になった茶碗を突き出した。
「なんだよ、変な奴だなぁ」
 父は怪訝な顔をしながらも茶碗を受け取り、ご飯を大盛りでよそってくれた。
 
 
 そして、試合当日。
 今回のバトルフィールドは、カナダのバンクーバーだ!
 近未来を彷彿とさせるハイテク都市の中に設置されたドーム内。
 バンクーバーを模したようなフィールドが建設されている。
 
『さぁ、皆!世界選手権本戦リーグ!最終戦へようこそ!!
今回の舞台はカナダのバンクーバー!!近未来を思わせるこのハイテク都市で、一体どのような激闘が繰り広げられるのか!?
泣いても笑っても、これが最後の戦いだ!!悔いのないバトルをしてくれよなぁ!!!』
 
 控え室。
 いつものように仲良しファイトクラブのメンバーが卓を囲って作戦会議をしている。
「さて、これが最後の戦いだな、シュウ!気張って行けよ!!」
 タケルはシュウの肩を叩いて喝を入れる。
「タクマは強敵だ。一筋縄でいくと思うな」
 ヒロトは腕組みをしながらシュウに忠告した。
「シュウ先輩なら誰が相手でも絶対に勝てますよ!」
 リカは相変わらず盲信的にシュウを応援する。
「おう!絶対に勝ってやるぜ!!」
 シュウはガッツポーズしてその応援に答えた。
「このバトルは源氏派と智蔵派の決戦でもあるんだからね。慎重に行きなさいよ、シュウ!」
「分かってるって!!それに、智蔵派としてじゃない!竜崎修司として、俺はあいに勝つんだ!!」
 タクマは源氏の孫、シュウは智蔵の孫だが。
 バトルをするのはシュウとタクマ。そこに派閥は関係ない。あくまでシュウはそのスタイルだ。
「一試合してない分、ブレイグのメンテナンスは完璧だから。存分に戦えるよ!」
 彩音が、新品同様にピカピカになったブレイグをシュウへ渡す。
「サンキュー!これで百人力だぜ!負ける気がしねぇ!!」
 ブレイグを受け取ったシュウは、勇気百倍と言わんばかりに笑顔を見せた。
「んで、シュウ。タクマ戦に向けて、何か策でもあるのか?随分自信満々だが」
「んなもんねぇよ!これまでのバトルを活かして、精一杯ぶつかるだけだぜ!あいつにはそれが一番良い!」
 シュウは、拳をグッと握りしめて応えた。
「単純ね~」
「ま、お前らしいっちゃらしいな」
「だが、一理あるな。今のタクマに下手な小細工は通用しないだろう」
「真っ向勝負が一番ですね、シュウ先輩!!」
 単純だが、シュウらしい答えに一同はむしろ安心しているようだ。
 
『それでは、対戦カードの発表だ!第一試合を戦うのは……シュウ君VSタクマ君だ!!
アジア予選Bブロックでのあの激闘が、再び観られるのか!?』
 
 ビーダマスターのアナウンスを聞いて、シュウが立ち上がる。
「おっしゃ!いきなり戦えるなんてラッキーだぜ!!」
「シュウ君、頑張ってね!」
「おう!!」
 彩音の声援を受けて、シュウは部屋を飛び出して行った。
 
 煌びやかな電子機器の光に包まれた街フィールドで、シュウとタクマが対峙した。
「タ、タクマ……お前っ!」
 現れたタクマの姿を見て、シュウは息を呑んだ。
「……」
 タクマの姿は、体中ボロボロで、頬が痩せこけていた。
 まるで、浮浪者のように。
「お前その姿、だいじょ……!」
「何も言うなっ!貴様に我の事を言われる筋合いはないっ!!」
 言葉を遮られ、口を噤むシュウ。
「楽しみにしていたぞ智蔵の孫、竜崎修司よ……!智蔵派と源氏派、二つの流派の決着をつけるべき、この時を!!」
「っ!」
 タクマの放つ視線から、身を強張らせるほどの殺気を感じた。
「我にはもう後がない……これ以上の負けは許されぬ!例えこの命果ててでも、貴様を倒す!!」
「……」
 タクマのあまりの気迫に、シュウは言葉を出せないでいた。
 
 が、ビーダマスターのアナウンスで我に返る。
『さぁ、二人ともスタート位置についてくれ!そろそろバトルを始めるぞ!』
 
「あ、は、はい!」
 シュウはビクッとしてスタート位置へと駆ける。
「ふん」
 タクマもゆっくりとスタート位置へと歩いて行った。
 
『それでは、二人とも準備はOKだな!いよいよバトルをおっぱじめるぞ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
 
 ダッ!!
 合図とともに二人は互いを目指して駆けだした。
 
「うおっ!これは、動く歩道?!」
 途中、進行方向へ向かって動くベルトコンベアーの道があった。
 さすがはハイテク都市だ。
 シュウはそれを利用して猛ダッシュした。
 
『おおっと!シュウ君とタクマ君は早速バンクーバーのハイテク設備を利用して猛加速!!距離を縮めていくぞ!!』
 
 ベルトコンベアーのおかげか、二人は早い段階で対面した。
 
「おっしゃ、ここなら射程圏内だ!いっけぇ!!」
 バゴォ!!
 先に動いたのはシュウだ。
 パワー型のシュウの方が射程距離は長い。タクマよりも早く攻撃を仕掛けられる。
「遅いっ!」
 が、タクマは動く歩道の挙動を利用してシュウのショットを躱し、一気に差を縮めた。
「ふっ、これで我も射程圏だ」
「くそっ!」
 シュウの射程距離の長さは活かされる事なく、タクマは互角の位置につけてしまった。
 
『さぁ、早速二人が射程圏内に入った!熱き激闘が始まるか!?』
「うおおおおお!!!いっけぇ!ブレイグ!!!」
 シュウのパワーショットが炸裂。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
 が、タクマがものすごい気迫でパワー連射をし、そのショットを弾き飛ばした。
「負けるかぁ!!!」
 ドンッ!!
 間髪入れず、シュウは再びパワーショットをブチ込むが、同じようにタクマはそのショットを撃ち落とす。
「さすが、あやねぇのメンテナンス!こんだけパワーショット撃ってもビクともしないぜ!」
「ぬるいわっ!!」
 ドンッ!!!
 タクマは、バックパーツをパワーモードにして、ブレイグに負けないほどのパワーショットをブチこんだ!!
「うぉっ!!」
 シュウは間一髪でそれを躱す。
「なんて、パワーだ……!今までのタクマとは違う!」
「我は、負けるわけにはいかぬのだ!!この間違った世界を正す!そのためにも!!!」
 タクマの叫びはどこか苦痛が混ざっていた。
「タクマ……!」
『早くも熱き激闘!!輝ける白と青の龍ビクトリーブレイグ!陰に染まる暗黒の竜王コンフターティスドライグ!!まさしく、光と闇の激突だぁぁぁぁ!!!』
 ビーダマスターの実況に、タクマはコメカミをピクリと動かした。
「闇……だと……!」
「タクマ?」
「我が、好きで闇に浸かっていると思うかっ!!!」
 ズバァァァ!!!
 凄まじいパワーショットが三発ほどシュウを襲った。
「ぐっ!」
 防ぎきれずに、一発喰らってしまう。
 
『シュウ君、1発ダメージを喰らった!残りHPは86!これはいきなり大ダメージだ!!』
 
「我等を陰へと追いやったのは、光を名乗る貴様達だ!!我等は決して、暗黒を望んだわけでは無い!!!!」
 バギュウウウウウ!!!!
 タクマの叫びとともに再び強烈なショットが襲い掛かる。
「うわああああ!!!!」
 バーーーーン!!!
 気迫に押され、シュウはなすすべなくダメージを受けてしまった。
 
『タクマ君の気合いに負けたのか、シュウ君は再びダメージを受けてしまった!反撃は出来るのか!?』
 
「貴様に分かるか!!他者を圧倒出来る力を持ちながら、それでもなお敗者の烙印を押され続けた我らの痛みが!!」
 バギュウウ!!!!
 またもタクマのショットがシュウのボムへダメージを与えた。
「力があるのに、敗者……」
 シュウは呟いた。
(そうか……タクマたちにとっての勝利は、相手のビーダマンを奪う事。でも今の公式大会で、そんなルールでバトルは出来ない。
だから、バトルに勝っても、タクマ達にとっての勝ちにはならないんだ……!)
 タクマの持つ痛みを感じたシュウは、すぅと深呼吸してからタクマに向き直った。
「タクマ……だったら、今回のバトルはお前ら源氏派を受け入れるぜ!」
 と言いつつショットを放った。
「なに……?」
 シュウの発言に、タクマは面食らった。
 その隙にシュウのショットがタクマのボムを直撃する。
『ここで、シュウ君がタクマ君へ初ダメージ!!さぁ、まだまだバトルは分からないぞ!!』
「お前が勝ったら、このブレイグをお前にやるって言ってんだ!!」
 シュウはブレイグをタクマへ突き出しながら答えた。
「正気か、貴様……?」
「あぁ、それがお前達源氏派のルールってんだろ!!その代わり、お前も智蔵派のルールを受け入れてもらうぜ!」
「智蔵派のルール?」
「そうだ!俺が勝ったら、お前はまた俺とバトルをしろ!!それが智蔵派の……俺達が今までやってきたやり方だ!!」
「勝った条件が、再戦の申し込みだと……?一度倒した弱い相手と戦ってなんになるというのだ!?」
 タクマはシュウの突き付けた条件を聞いて、鼻で笑った。
「勝とうが負けようが、同じ機体の同じ相手と何回でも戦える!それで、また勝ったり負けたり出来る!だから強くなれるんじゃねぇか!
勝って長所を伸ばして、負けて短所を治して……俺はそうやってライバル達と一緒に強くなったんだ!!」
「頂点に立つのは一人!自分以外は全て敵!味方になるものは全て部下だ!だからこそ己自身が強くなれるのだ!!
一緒に強くなるなど、そんな生温いものはバトルとは言えん!やはり智蔵派は理解不能だ」
「理解不能はお互い様だよ。でも、俺がお前の条件を受け入れたんだから、お前だって受け入れろ!」
 多少無茶な暴論だが、タクマは面白そうに口元を吊り上げた。
「良いだろう。貴様の余興、受け入れてやる。どのみち、我が勝てば何も変わらん!」
 ドンッ!!
 タクマがパワーショットを放つ。
「それもお互い様だっての!」
 ドンッ!!
 シュウもそれに対抗してパワーショットを放った。
 
 バーーーーーン!!!
 二人の間で二つのビー玉が弾け飛んだ。
(そうさ、これは光と闇の対決なんかじゃない!輝く色が違うだけで、光と光の対決なんだ!!)
 
       つづく
 
 次回予告
 
「智蔵派と源氏派……結局、どっちもビーダマンバトルが好きなだけなんだよな。
派閥なんて関係ねぇ!勝つのは、よりビーダマンが好きな方だ!!
 次回!『宿命の決着』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 

 



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