爆砕ショット!ビースピリッツ!!
第92話「劉洸の秘密!巧妙な罠!!」
中国の武陵源。
緑溢れるこの渓谷が本戦リーグ第5回戦のバトルフィールドだ!
いつものように控え室でシュウ達は作戦会議を開いている。
「本戦リーグももう5戦目。これまででシュウ君がまだ戦ってないのは、ヒンメル君、タクマ君、劉洸君、マサーイ・マーサイ君、ベルセルク君の5人ね」
「こいつらの対戦成績は?」
「タクマ君とヒンメル君が4勝0敗。劉洸君は、この前タクマ君に負けたから3勝1敗。マサーイ・マーサイ君とベルセルク君は0勝4敗ね」
彩音から各人の成績を聞いて、シュウは苦笑した。
「随分と極端な成績だなぁ」
「ある意味、美味しい連中が最後に残ったな」
「芸人みたいに言うなよ、タケル」
バトルの相手も美味しいも不味いもない。
「マサーイ・マーサイ君以外は全員、前々からシュウ君と因縁のある相手ばかりだからね。激しいバトルになる事は必至。ここからが世界選手権の本番って感じね」
「へんっ!本番は最初っから始まってんだ!誰が相手でも変わらねぇよ!」
彩音の言葉にシュウが拳を握りしめながら答える。
「気合が入るのは結構だが、ヒンメルにもタクマにもベルセルクにも劉洸にすら、お前は一度も勝ってないらしいな」
ヒロトが痛いところを突いてきた。
「う、うっせ!ようは本戦で勝ちゃ良いんだよ!!」
それから、しばらく時間が経ち。第一試合マサーイVSベルセルクはマサーイの不戦勝、第二試合ヒンメルVSカルロスはヒンメルの圧勝。
そして第三試合はアメンVSブッシュの試合となった。
テレビからビーダマスタージンの音声が聞こえてくる。
『さぁ、盛り上がってきたブッシュ君VSアメン君の試合もいよいよ終盤戦!互いの必殺ショットがぶつかり合うぞ!!
……決まったぁ!勝ったのは、アメン君だ!ブッシュ君も良く頑張ったぞ!!』
「アメンが勝ったかぁ」
テレビを見ながら、シュウが呟く。
「さすがのブッシュ君もアメン君の幻影は破れなかったみたいね」
「へっへっへ、今の所俺だけだよなぁ。アメンの幻影を破ったの!」
シュウは胸を張って得意気になる。
「あんな格下。秘技を破るまでもない」
ヒロトが言う。確かにヒロトなら、タネさえ分かってしまえば分身された所で乱射で片づけてしまいそうだ。
「ちぇっ。まぁみてろよ。これからの試合にだって勝って、俺の実力を証明してやるぜ!」
「そうですよ、シュウ先輩なら誰が相手だって負けません!」
「おうよ!」
そして、アナウンスが流れる。
『それでは、第四試合の対戦カードを発表するぞ!』
それを聞いて、シュウは浮き足立つ。
「おっ、いよいよ俺の番か!?」
身を乗り出してワクワクしながら聞いているが。
『第四試合は、タクマ君VSプーチン君だ!良いバトルを期待しているぞ!!』
期待に反して、シュウの名前は上がらなかった。
「俺の試合はまだかぁ……!」
シュウはソファの上でズッコケた。
「騒がしい奴だ」
「あんまドタバタしないでよ、埃立つでしょ」
琴音が文句を言う。
「まぁでも、消去法でシュウ君の対戦相手もハッキリしたね」
彩音は苦笑しながら言った。
「そうですね。これまでで挙がってない名前は、劉洸か……」
タケルは頷き、重々しげに呟く。
「劉洸と、いよいよ当たるのか」
起き上がってソファに座ったシュウも、噛みしめるように呟いた。
「ある意味、最終試合なのはラッキーだったな。第四試合の間、ジックリと対戦相手の対策を練る事が出来る」
「そうね。劉洸君のデータはたくさん揃ってるんだけど、肝心な所が謎だらけだから……」
彩音はパソコンの画面に、今まで収集した劉洸のデータを映し出した。
「劉洸君は、三国志で活躍した劉備の子孫で、劉洸君もご先祖様をリスペクトして、その人柄や戦い方を真似ている節がある」
「爽やかで誠実な性格に、真正面からぶつかるバトルスタイル。そして、それ故の単調で読みやすい攻撃。どれも史実にある劉備のままですね」
「そう。でも、実戦ではそれだけでは説明がつかないような事象が数多く起こっている」
単調な連射しかしてこないにも関わらず、相手は調子を狂わされたり。一定のリズムを守っているかと思えば、急に全力投球してきたり……。
「劉洸君の機体、射手兵(しぇしょうびん)は、センターグリップの片手撃ち機で、弓を模したグリップによって片手撃ちでの操作性を高めている連射型ね。
でも、たまに予想外な性能を発揮したりして、肝心なところが不透明な気がする」
低威力の連射しかしてこなかったはずなのに、モードチェンジも撃ち方も何も変えずに急にパワーショットを放ったり。
分かっているスペックだけでは明らかに無理な現象が起きている。偶然とは思えない。
「偶然じゃないのか?もしくは、油断しすぎたとか」
「戦った俺だから分かる。あれはそんなもんじゃなかった。もっと根本的に、内側から影響を与えられたような感じだった」
タケルが苦々しく言った。アジア予選決勝での敗戦の記憶がよみがえったのだろう。
「内側から……マインドコントロールの類か?」
ヒロトが、口元に手を当てながら推測する。
「そんな事をしていた素振りはなかったと思うけど……」
アジア予選決勝を分析していた彩音は、思い出しながら言う。
「マインドコントロールは、洗脳や催眠術とは違う。普通では気付かないちょっとした事で可能だ。熟練者なら、相手と言葉を交わさなくても意のままに操る事が出来る」
「劉洸が、その使い手だって言うのか?」
シュウが問うとヒロトは素っ気なく答えた。
「あくまで可能性の話だ」
「なんだよ、ハッキリしねぇなぁ」
「それだけ劉洸は得体のしれない相手だってことだ。シュウ、今回ばかりは慎重に行け。むやみに攻撃を仕掛けると返り討ちにあうかもしれない」
タケルが念を押してきた。
「あ、あぁ……」
シュウは、躊躇いがちに頷いた。
そして、タクマとプーチンの試合が終わり、いよいよシュウと劉洸の試合時間になった。
バトルフィールドでシュウと劉洸が対峙する。
「そう言えば、君と公式戦で直接戦うのはこれが初めてだったね。良いバトルをしよう、シュウ!」
劉洸は爽やかな笑みを浮かべながら、握手を求めるように手を出した。
「あ、あぁ!」
シュウは戸惑いながらもその手を取る。
先ほどまでの作戦会議で抱いた劉洸と今現在の劉洸の態度へのギャップを感じているのだ。
(なんか、調子狂うなぁ……でも、タケル達も言ってたし、油断は禁物だな)
グッ……!
シュウは無意識に、握手している手に力を込めた。
「……」
劉洸は、その手をジッと見ながら微かに口元が緩んでいた。
『さぁ、二人ともバトル前の挨拶は済んだかな?そろそろスタート位置についてくれ!!』
ビーダマスターに促されて、シュウはハッとする。
「おっと!」
「ふふっ、それじゃあまた後で」
劉洸は微笑みながら手を放して、スタート位置まで駆けて行った。
「……やるしかねぇ!」
シュウも気合いを入れ直して劉洸とは反対方向へ駆けた。
『準備が整った所でそろそろ始めて行こうか!レディ、ビー・ファイトォ!!』
ダッ!
ビーダマスターの合図とともにシュウが劉洸のいる場所目掛けて駆け出した。
聳え立つ岩や木々の間をすり抜けていく。
「とにかく、あいつと遭遇しない事には始まらないんだ!それはあいつだって同じはず……!」
『早速二人ともフィールドを駆ける!!だが、二人が目指している場所は、全く違うぞ!!』
「なにっ!?」
シュウが劉洸のスタート地点に辿り着いた。しかし、ここまで劉洸とは出会わなかった。
お互いを目指して進み合えば、必ず途中で遭遇するはずなのに。
『劉洸君を目指して真っ直ぐに駆けて行ったシュウ君に対して、劉洸君はシュウ君から逃げるように全く別の方向へランダムに駆けている!
これでは、お互いに戦う事は出来ないぞ!!』
「な、なにぃ?!あいつ、戦う気無いのかよ……!」
フィールドは広い上に見通しが悪い。
互いに出会おうと動かなければ遭遇する事は難しい。
中継を見ている控え室の仲良しファイトクラブ。
「あいつ、何か策でもあるのか……!?」
タケルが劉洸の読めない行動に苦々しい顔をしながら呟いた。
「単純な真正面からのぶつかり合いを避けて、奇襲でもかけるつもりか?」
ヒロトはタケルと違って冷静に推測する。
「その可能性は高いね。今回のフィールドは死角が多いから、奇襲はピッタリの作戦よ」
パソコンでデータ分析していた彩音もヒロトに同意する。
「でもぉ、それってさっき言ってた劉備って人っぽくないですよね?」
リカが疑問を口にする。
劉備はまっすぐに勇猛果敢に攻める戦士だったはずだ。奇襲をかけるとは思えない。
「劉備……あっ!もしかしたらっ」
彩音はリカの言葉を聞いて何かに気付いたのか、カタカタとキーボードを叩いた。
そして、バトルの方は。
シュウと劉洸は未だに遭遇できていない。
『さぁ、バトル開始から既に2分経過しているが、未だにシュウ君と劉洸君は顔を合わせていない!
このままでは、バトルが進まないぞ!?一体どうなるんだ!!』
「ちっくしょう!逃げずに戦え!劉洸!!」
キョロキョロと忙しなく首を振りながら、劉洸を探すシュウだが、その姿はどこにも見当たらない。
一方の劉洸は、素早いフットワークで岩の間をすり抜けていたが、ある程度まで進んだところで立ち止まった。
「さて、そろそろかな」
そして、射手兵を空へ向けて、真上へ連射を始めた。
ズババババババ!!!
『のおっと!?劉洸君が真上に向かってビー玉を連射!!』
「なに!?」
突然のその行動に、控え室のタケル達がビックリした。
「あいつ、奇襲をかけるつもりだったんじゃないのか!?」
ヒロトも劉洸の理解不能な行動に動揺を隠せない。
劉洸のショットによる音と、天に上がるビー玉によって、シュウは劉洸の位置をある程度把握できた。
「劉洸はあそこかっ!」
ダッ!
シュウはビー玉が発射されている場所目掛けて駆け出した。
『劉洸君のショットが、まるで狼煙のように自分の位置を知らせています!それに目掛けてシュウ君が駆ける!!いよいよ激突か?!』
そして、ついにシュウは劉洸のいる場所へたどり着いた。
「やっと会えたな、劉洸!」
シュウは、仁王立ちしている劉洸を指差した。
『ついに!ついに!シュウ君と劉洸君が顔を合わせた!!ようやくバトルが始まるのか!?』
「ふふふ、待っていたよ。シュウ君」
シュウの姿を見るなり、劉洸は笑いかけてきた。
「うっせぇ!自分から逃げてたくせに!!いいからさっさと勝負だぜ!!」
シュウがブレイグの銃口を劉洸へ向ける。
「さぁ、どこからでもかかってきなよ」
「えっ!?」
しかし、シュウはブレイグを撃つのを躊躇った。
『な、なんとぉ!!どういう事だ!?せっかく対面したと言うのに、劉洸君はビーダマンを持っていない!丸腰の状態で両手を上げている!!!』
「ど、どういうつもりだ……!」
シュウはたじろいだ。丸腰相手に迂闊にショットを放てない。
「いいから、撃てばいいよ」
「ぐっ……!」
シュウはブレイグのトリガーに力を入れる。
が。
“今回ばかりは慎重に行け。迂闊に攻撃すれば返り討ちに合うかもしれない”
タケルの言葉が蘇り、シュウはあと一歩のところで力が入らない。
(なんでだ、なんでビーダマン持ってないんだよ?何か、あるのか……!)
相手の策が分からない。
丸腰状態の相手。絶対的にシュウの方が有利な状況なのに、この状況を作っているのが劉洸自身だという事にシュウは動けないでいる。
迂闊に動けば、予想もしないような罠が待ってるかもしれない。
でも、かといって相手の策を見破る事も出来ない。
『せっかく対面したと言うのに、両者ビー玉を撃たずににらみ合いが続く!いつになったらバトルが始まるんだ!?』
「くっそぉ!とっととビーダマン構えろよ!!戦いづらいだろ!!」
いい加減イラついたシュウが怒鳴りつける。
が、劉洸は余裕の表情を崩さない。
「今ですっ!」
と、突然カッと目を見開いた。
「え?」
ズドドドドドドド!!!!
急に、真上からビー玉が降ってきて、シュウのシャドウボムを襲った。
「なにぃ!?」
『なんとぉ!!先ほど真上に撃っていた劉洸君のショットが、今になって降ってきた!!!シュウ君のシャドウボムに見事ヒットしていくぞ!なんという運の良さ!!』
「ぐっ!」
それを見た控え室の彩音が突然立ち上がって叫んだ。
「やっぱりそうだったんだ!」
「え、どうしたんですか?」
「劉洸君は劉備の子孫じゃなかったんだ!劉洸君の本当の先祖は……孔明だったんだわ!」
彩音の言葉に、タケルは驚愕した。
「孔明って、あの劉備に協力したって言う戦略家か?」
「えぇ。今の戦いで確信できたの。孔明の戦略でこんなのがあるの。
攻めてくる大勢の軍隊に対して少数の舞台で城を守るために、城の門を開門して琴を弾いて敢えて余裕を見せる事で、あいてに『何かあるんじゃないか』と思わせて進軍を防いだ。
今の戦術はそれと全く同じよ!」
タケルの言葉で慎重になったシュウに対して、敢えて丸腰になる事でシュウの動きを封じたのだ。
「それなら、納得がいくな……。劉備の先祖だって嘘をついたのも、全部戦略のうちだってのか!」
「きっとそうね。それから、さっき調べてみたら、パソコンにジャックがかかっていたの。それも射手兵に対してだけジャミングがかかるように」
「そんなピンポイントな事をいつやられたんだ?」
「あの時……アジア予選の前に劉洸君の家でシュウ君がバトルした時にやられたんだわ」
「じゃあ、あれはシュウのビクトリーブレイグを分析するためじゃなく、彩音さんのパソコンが狙いだったのか?!」
「それで分かった事は。
射手兵は、片手撃ちのためのグリップが直接カウンターレバーと連動して、グリップを引く事でホールドパーツをシメつける事が出来るようになっていたの」
「って事は、片手でシメ撃ちが出来るのか!?」
「ええ。それで、片手撃ちをしながら微妙に威力を変える事で、対戦相手のリズムを微妙に崩して力を発揮させないようにしてたんだわ!」
「催眠術の応用って所か……」
「くっ、それじゃ、シュウが危ない!」
タケルは部屋を飛び出して会場へ向かった。
「シュウ!!気を付けろ!!そいつの先祖は劉備なんかじゃない!!そいつは、孔明の子孫だったんだ!!!」
タケルが、バトルフィールドにいるシュウに向かってありったけの声で叫んだ。
その声はシュウの耳に微かに届いた。
「タケル?こいつが、劉備の子孫じゃないって……」
シュウがチラッと劉洸を見る。
すると、劉洸は笑いながら語り始めた。
「ふっ、バレてしまったか。その通り。私は劉備の子孫ではない。孔明の子孫さ」
「こ、こうめい……?って、なんだか知らないけど。なんでそんなウソついたんだよ!」
「劉備の子孫と言えば、私を攻略するために劉備の戦い方を研究し、対策をするはず。だからこそ私は劉備の真似をしつつ、その対策をしてきた相手の裏をかいてきた。
そして、裏をかく事で相手は更に慎重になる……そう、君の軍師にあたる、タケルのようにね」
「なっ!」
タケルは劉洸に対して、過剰なまでに慎重になっていた。
そして、その慎重さはタケルを兄貴分としているシュウにも影響するのだ。
「全ては私の手の中という事さ」
「くっ!でも、そんなペラペラバラしちまっていいのかよ!もう俺を騙す事はできねぇぜ!!こっからが本番だ!!」
タネさえ分かればもう怖いものは無い。
シュウは迷うことなくブレイグの銃口を劉洸へ向けた。
「このネタバラしも、戦略のうちさ」
劉洸がニヤリと笑う。
「なんだとっ!」
「今です」
劉洸が言うと、空からビー玉が降ってきた。
打ち上げたビー玉はまだ残っていたのだ。
「なにっ!?」
「ここの地形は複雑でね、上空では特殊な風が流れている。それが打ち上げたビー玉を一定時間滞空させて、落下速度をズラしていたのさ」
「ぐっ!」
『なんと!ビー玉の雨は第二波が残っていた!!上空から大量の玉がシュウ君に襲い掛かる!!』
「負けてたまるかよ!!」
シュウはそのままブレイグの銃口を上に向けて降ってきたビー玉を弾き飛ばした。
「どうだぁ!そうそう思い通りにいくと思うなよ!!」
「遅いっ!」
シュウが上のショットに気を取られている隙に、劉洸は素早く射手兵を構えてシュウへ向かって連射した。
「くっ!」
シュウは素早くその場から離れてそのショットを躱した。
そして、おかしそうに笑い出した。
「へへへ……はっはっは!!」
「何がおかしい?」
「いや、すっきりしたなぁって。ずっとモヤモヤしてたんだ。お前が真正面から戦うタイプなのか、それとも小細工仕掛けるような奴なのか」
「ふっ、私の先祖が孔明だと分かった所で、私の罠を防ぎきれるとは限らないぞ?」
まだ罠を仕掛けていると言うのか。劉洸はにたりと笑った。
しかし、シュウは動じない。
「お前がどんな手を使ってくるかはもうどうでもいいよ。問題なのは、お前がどんなタイプなのかハッキリしなかった事だけだから。
罠仕掛けて来るってのが分かったんなら、俺がやる事はただ一つ!真正面からぶつかるぜ!!」
シュウにとっては、どんな罠を仕掛けてあるかが問題なんじゃなく
罠を仕掛けるタイプなのか否かという事だけだった。
そして、それさえハッキリすれば、迷うことなく戦えるのだ。
「いっくぜ!もう慎重になる必要なんかねぇ!!あいつの作戦も、全部俺とブレイグのパワーでブッ飛ばしてやる!!」
シュウは気合いを入れて劉洸へ向かって駆け出した。
「甘い。今です!!」
バゴォォ!!
「うおっ!」
突如、シュウが踏みしめた地面が陥没した。
おそらく、予め劉洸が仕掛けた落とし穴なのだろう。
「ぐっ……!」
「私がただフィールドを駆けまわっただけと思ったかい?もうここら一帯は私のテリトリーだよ!!」
落とし穴にはまって動けなくなったシュウのシャドウボムへ銃口を合わせる劉洸。
「この程度で負けるかよぉぉ!!」
バーーーーーン!!!
シュウはメテオールバスターの大ジャンプで落とし穴から脱出して天高く飛び上がった。
「いっけぇ!メテオールバスター!!」
『これは凄い!劉洸君の罠を、シュウ君はメテオールバスターで回避!そのまま必殺技がヒット!!劉洸君に大ダメージだぞぉ!!』
「くっ!」
「どんな罠が仕掛けてあろうと、罠があると分かってるなら、俺は全部打ち砕く!!」
罠も、劉洸も、全部まとめてぶち抜くつもりだ。
それからも、シュウは動くたびに劉洸が仕掛けた罠にはまってしまうが、そのたびにパワーショットで罠そのものをぶち壊しつつ劉洸へダメージを与えて行った。
『まさしく、策士VS戦士!いつの間にかフィールドに仕掛けられた罠を、シュウ君は凄まじいパワーで打ち砕いていく!!』
「バカな、私の策が……!」
「これで、決めてやるぜ!!」
気が付けば、両者ともにHPが残り少ない。
この一撃で決まるだろう。
「メタル弾セット!!」
「スピード弾セット!!」
シュウがメタル弾を、劉洸はスピード弾をセットした。
『両者ともにストライクショットをセットした!これで決着が着くか!?』
「いっけぇ!!スーパーフェイタルストーム!!」
ドンッ!!
ブレイグから強力なショットが放たれる。
「先にボムにヒットさせる!!スピードショット!!」
フェイタルストームが向かってくるより先に、劉洸のスピード弾がシュウのボムにヒットした。
『フェイタルストームがヒットするより先に、劉洸君のスピードショットが命中!しかし、シュウ君のボムはHPを1残したまま撃破ならず!!』
「なにっ!くそっ、ダメージ計算を誤った……!」
吹っ切れたシュウの思わぬパワーに動揺してしまったのか、劉洸はここで重大な作戦ミスを犯してしまった。
『そして、フェイタルストームが吸い込まれるように劉洸君のシャドウボムに向かっていく!』
バーーーーーン!!!!
劉洸のボムが破裂した。
『決まったぁ!!勝ったのはシュウ君だ!!!』
「おっしゃぁぁ!!!」
シュウは飛び上がってガッツポーズをした。
「負けた……私の策が……」
負けたショックでしばらく呆然とする劉洸だったが、勝利を素直に喜ぶシュウを見て、吹っ切れたような顔になる。
そして、シュウの元へ歩み寄り、手を差し出した。
「私の負けだ。おめでとう」
「劉洸……」
シュウはその手をがっちりつかんだ。
「試合前から入念に君への対策を準備していたんだが、まさかパワーだけで破ってくるとは。恐れ入った」
「へへへ。お前の作戦も凄かったぜ!俺じゃとてもあんな戦い方はできねぇ。ほんと、すげぇよ!」
シュウは、劉洸のやった行為を卑怯とは思わず、凄い事だと認めた。
「ふっ。次はもっと入念に作戦を練るとするよ。真っ向からね」
「おう、楽しみにしてるぜ!!」
劉洸の秘密も看破し、勝利を収めたシュウ。
本戦リーグも残り4回。折返し地点だ!
後半戦に突入し、これからどんな戦いが待ち受けているのか……
つづく
次回予告
「さぁ!次は!次は!次はっ!!いよいよ、ヒンメルとのバトルだああああ!!!!
ずっと、この時を待っていたぜ!さぁ、勝負だヒンメル!!
だが、気合十分な俺に対して、ヒンメルは棄権してきた!?冗談じゃねぇ!ここまで来て不戦勝なんて納得できるか!!
次回!『ヒンメルの罰 楽しむと言う罪』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」