オリジナルビーダマン物語 第90話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第90話「幻影の覇者!ミステリアスパワーを打ち破れ!!」





 サハラ砂漠特設フィールド。
 そこで、タクマとブッシュが戦っていた。
『さぁ、本戦リーグ第3回戦!第2試合のタクマ君VSブッシュ君の戦いも更に白熱してきている!!』
 
「ふはは!正義の鉄槌を受けるがいい!!」
 ブッシュは相変わらずの空中殺法でタクマを追い詰めていく。
 
『ブッシュ君得意の空中殺法炸裂!!スカイビークルでの奇襲も加えて押しに押しているぞ!!』
 
 現在のHPは、タクマが32。ブッシュが56で、ブッシュがリードしている。
 
「なかなかやるな」
 タクマは余裕の表情を崩さないままブッシュを賞賛した。
「これが、正義の力だ!」
「ふん、くだらん!」
 ジャキィ……!
 タクマがブッシュへ銃口を向ける。
「正義など、元来存在しない。そこにあるのは、絶対的強さと、群衆の支持のみだ!」
 空中へ飛ぶブッシュのシャドウボムへビー玉を発射する。
「支持は常に変化する!そして、絶対的強さがそれを手にする!!」
 ズババババババ!!!
 タクマの強力な連射がブッシュのシャドウボムに連続ヒットする。
『のおっと!ここにきてタクマ君が猛チャージ!!今まで力を温存していたのか!?バトル序盤とは比べ物にならない勢いだ!!』
「むっ!!」
 突然の猛攻に、ブッシュはバランスを崩して攻撃することなく着地した。
 ガクガクガク!!
 そして、ドライグのエアリアルバイザーが振動を始める。
「喰らい尽くせ……!ドラゴニックブレス!!!」
 ブシュウウウウウウ!!!
 空気のトンネルがブッシュのシャドウボムにぶち当たる。
 そして、ハイパワー連射がその筒を通ってブッシュのシャドウボムにヒットしていく。
「くっ!!」
 それを避けるためにブッシュはジャンプするのだが。
「無駄だ!ドライグからは逃げられん!!」
 タクマがドライグの向きを変えると、空気のトンネルとその中を通っていたビー玉も向きを変えてシャドウボムを追っていく。
「なに!?」
 なすすべなく、ブッシュのシャドウボムは撃破されてしまった。
『決まったぁ!勝者は、見事な必殺技でタクマ君のコンフターティスドライグだぁぁ!!』
「正義は我にあり。だな」
 負けて悔しがるブッシュを見る事なく、タクマは踵を返してさっさと歩いて行った。
 
 そのバトルの様子を見ていた控え室のシュウ達仲良しファイトクラブ。
「前にシュウがあれだけ苦戦した相手をあっさりと倒しちゃった……!」
「タクマの奴、前よりもずっと強くなってやがる……!」
「当然だ。タクマがあんな奴に負けるわけがない」
 タクマの強さを支持していたヒロトとしては、タクマが勝つのは当然だと思っている。
「へっ、そうじゃなきゃおもしろくねぇ!くぅぅ、俺も早くバトルしたいぜ!!次の相手は誰なんだぁぁ!!」
 タクマのバトルを見て、シュウは興奮が抑えきれない様で、叫びだした。
「うるさいわねぇ。すぐに発表されるわよ」
 
 と、琴音が文句言った所でビーダマスターのアナウンスが流れた。
 
『それでは、次の対戦カードの発表だ!第3試合は……アメン君とシュウ君だ!熱い戦いを期待しているぜ!!』
 
「おっ、やっと俺の番だ!!」
 バッとシュウは立ち上がった。
「アメンって言ったら、あのピラミッドパワーよね……」
 琴音が呟く。
「結局、あのパワーの秘密は分からずじまいだからな」
「えぇ。気を付けて、シュウ君」
「大丈夫だって!どんな力でも俺のブレイグでブッ飛ばす!」
 心配そうな皆へシュウは自信満々に答えた。
「そうですよぉ!シュウ先輩なら絶対に勝てますよね!」
「あったり前だ!んじゃ、行ってくるぜ!」
 シュウは片手を上げて返事をし、部屋を飛び出して行った。
 
 そしてバトルフィールド。
 砂煙の舞う砂漠の地にシュウは足を踏み入れた。
「くぅぅ、結構風強いんだな……!」
 右手で吹き付ける砂から顔をガードしながら歩く。
「ふっふっふ!久しぶりであーるな!!」
 目の前にアメンが現れた。
「アメン!へへっ、来たぜ!今度こそお前のピラミッドパワーを破ってやるからな!覚悟しとけよ!!」
「楽しみにしているであーる!!」
 
 シュウとアメンは、それぞれスタート位置についた。
 
『そんじゃ、両者ともに準備は良いな?そろそろおっぱじめるぜ、レディ、ビーファイトォ!!』
 
 バトル開始。
 しかし、路面が柔らかい砂なので自由に動けない。
「くっ、ここじゃまともに走れねぇ!」
 砂に足を取られ、シュウはその場からなかなか動けない。
「情けないであーるな!」
 と、シュウの目の前にいつの間にかアメンが現れた。
「なっ、いつの間に!」
 シュウは急いでブレイグを構えてアメンに向かって撃った。
 しかし、手応えが無かった。
 ビー玉がすり抜けた瞬間にアメンの姿も消えたのだ。
「げ、幻影!?もう使ってきたのか!!」
 
『どうしたんだ?シュウ君はいきなり何もない空間へショットを放った!まだ二人の距離は空いている!射程圏内まで近づかない事には何も始まらないぞ!!』
「えぇ?!あいつ、離れててもピラミッドパワーを使えるのか?!」
 驚くシュウだが、控え室にいる彩音はこの現象を冷静に分析していた。
 
「ううん。まだアメン君はピラミッドパワーを使ってない。これは自然現象ね」
「自然現象って?」
 琴音が聞く。
「蜃気楼よ。砂漠の熱気が光を屈折させて、遠くにある物体を近くにあるように錯覚させるの。多分アメン君も同じ現象が起きてると思うんだけど……」
「あいつはエジプト出身だからな、蜃気楼かどうかの区別はついてるんだろう」
「多分そうね。……蜃気楼?」
 そこまで言って、彩音は一瞬黙り込んだ。
「彩音さん?」
「ううん。なんでもない」
 確証が得られないからか、彩音は頭をふった。
 
 そしてバトルの方は……。
「な、なんとか近づけはしたけど……これじゃまともに相手の攻撃を避けられないぞ」
 えっちらおっちら歩いていき、シュウはようやくアメンの姿を確認できた。今度は蜃気楼ではないだろう、さすがに。
「ふっふっふ!よくぞ、ここまでたどり着いたであーるな!」
 アメンは仁王立ちし、偉そうな態度をとっている。
「っていうか!俺が必死に歩いてきたのに、お前全然動いてないじゃないか!!道理で、距離が遠いと思った!」
 普通だったら互いに射程まで走っていくものだから、結構早くに近づけるのだが。
 今回はアメンがずっと動かずにいたため、シュウだけが倍の距離を歩いた事になる。
「そちが動くのであれば、王である余がわざわざ動く必要はないのであーる!」
 相変わらずの尊大な態度である。
「あぁそうかよ!!」
 ドンッ!!
 そんなアメンへシュウはパワーショットを放った。
 バーーーン!!
 あっさりとボムへ命中。
『ヒットォ!先制点はシュウ君が取ったぁ!いきなりの大ダメージだぞ!!』
 
「なかなかな攻撃であーる!!」
 ズドドドド!!
 アメンも反撃してくる。
「お前もやるな!幻影だけじゃなく、パワーもある!」
「当然であーる!!」
 暫く、真正面からの立ち合いが続く。
 
『さぁ、両者ともに足を固めて真正面からの激突!互いのHPがみるみる減っていくぞ!!』
 
「でも、このままのペースなら俺の方が有利だ!!」
 ぶつかり合いならばシュウの方に分がある。
 現在のHPはシュウが54。アメンが46。
 その差は徐々に広がっており、この状態が続けばシュウは楽に勝てるだろう。
 だが、さすがにそうはいかない。
 
「ふっ、そろそろ良いであーるな」
 アメンが不敵に笑った。
「なに!?」
「見せてやるであーる!ピラミタルファラオの真の姿を!!」
 カッ!!
 ピラミタルファラオの四角錐のヘッドが開き、中からファラオの顔が現れる。
 その瞬間、辺りに熱風が吹きつけた。
「ぐっ!!」
 熱風の勢いに、シュウは顔を顰めた。
 
『のおっと!ここで覚醒!!ピラミタルファラオが真の姿を現した!!』
 
「ぐっ、そろそろ来るか……!」
 シュウは少しずつ目を開けた。
 すると、そこには案の定何人にも分身したアメンの姿があった。
「げぇぇ……!」
「王の力を崇めるであーる!!」
 分身はシュウを取り囲み、グルグルと回っている。
「く、くそっ!どれを狙えばいいんだ……!」
 ドギュッ!ドギュッ!!
 シュウはがむしゃらに分身へショットを放つが、その全てはすり抜けてしまう。
「ぐぐ……!」
「次は余の番であーる!」
 反対にアメンのショットは全てシュウに命中する。
「うわああああああ!!!!!」
 ズババババババ!!
『アメン君のピラミッドパワー炸裂!!分身がシュウ君を取り囲み、強烈なショットを浴びせている!!』
「くそっ、囲まれたんじゃ、どうしようもねぇ……!待てよ!」
 囲まれた状態を脱出する方法。それは一度シュウが経験している事だった。
(ヒンメルを攻略するために、俺はあの技を磨いたんだ!ここでも!)
 バッ!シュウは地面に向かってショットを放った。
 バーーーーン!!
 しかし、ショットは砂煙を上げるだけで、シュウは飛び上がれなかった。
「嘘だろ、砂が柔らかすぎて、反動が吸収される……!」
 が、その砂煙の影響か、アメンの分身が吹き消えた。
「むっ!」
「え?消えた……」
「まだまだであーる!!」
 ズバババババ!!!
 アメンがでたらめに連射をする。そして。
「ピラミッドパワー発動であーる!」
「くっ!」
 急いで撃つシュウだが、アメンの姿が消えた。
「今度は瞬間移動か!」
 素早く後ろに回りこんだアメンがシュウのボムへ攻撃を当てる。
「くそっ!」
 急いで振り向くシュウだが、そこには既にアメンの姿が無い。
『シュウ君、アメン君のピラミッドパワーに翻弄されて成す術無しだ!このままアメン君が余裕の勝利を収めるのか!?』
「もうどうしようもないのか……!」
 絶望感が漂う。
 ここで、シュウはある事に気付いた。
(そういや、さっき俺が地面にパワーショットを撃ったら分身が消し飛んだよな……もしかしたら、風で……!)
 シュウは誰もいない虚空へ向かってブレイグを構えた。
「うおおおおおおお!!!」
 ドギュンッ!!!
 強力なパワーショットを放つ。
「血迷ったであーるか?余はここであーる!!」
 アメンが姿を現してシュウのシャドウボムを撃つ。
 が、シュウは気にとめない。
「いくぜ、ブレイグ!!」
 さっきのショットの反動で、ブレイグのヘッドの刃が振動する。
 ガクガクガク!!
「ランダム弾セット!いっけぇ!フェイタルストーーム!!!」
 シュウのショットが空気の膜を纏い、更にランダム弾のブレによってそれが肥大化しながら飛んでいく。
「ぐっ!!」
 あたりに嵐が吹き荒れる。
『うおおお!!シュウ君のショットによって、砂嵐が巻き起こったぁ!!視界が完全に遮られたぞ……!』
 
 しばらくすると、嵐が収まり、視界が良好になった。
「っ!」
 そこには、アメンとシュウの姿がハッキリと見えていた。
「んなっ!ピラミッドパワーが消えているであーる!」
「やったぜ!カルロスとのバトルしてから、ランダム弾使ってみたかったんだけど、こんな役に立つとは思わなかった!」
 
 控え室。
「そうか!やっぱりアメン君のピラミッドパワーは蜃気楼を応用したものだったんだ!」
「って、ビーダマンで蜃気楼を作り出したって事ですか?」
 タケルが驚きながら、彩音に聞く。
「うん。あの三角形のヘッドは、ビー玉を発射した時に生まれた摩擦熱を蓄熱するためのものだったんだ。そして、ある程度熱が溜まったらヘッドを開いて、熱を放出。
その熱気を使って蜃気楼を作り出して、姿を消したり、分身したりしてたんだわ!」
「じゃあ、シュウはフェイタルストームを使って……!」
「うん!フェイタルストームの空気の膜をランダム弾で膨らませて、蜃気楼を生み出す熱気を全部吹き飛ばしたのよ!」
「さすがですぅ、シュウ先輩!!」
 
 バトルフィールド。
「よ、余のピラミッドパワーが……くっ、今からパワーを溜めるのは時間が……!」
「さぁ、姿がさえ見えてりゃこっちのもんだ!!いっけぇぇぇぇ!!!!」
 バギュンッ!!!
 シュウは渾身のパワーショットでアメンのボムを撃破した。
『決まったぁ!!見事な大逆転!!シュウ君の機転で、ピラミッドパワーを打ち破ったぞぉ!!』
 ワーーーーー!と歓声が上がる。
「やったぜぇ!!!」
 シュウは拳を掲げた。
「まいったで、アール。バトルに敗れた事は幾度かあーるが、ピラミッドパワーそのものを破られたのはこれが初めてでアール」
 アメンは素直に負けを認めて、シュウへ向き合った。
「そちは大した戦士であーる」
「へへっ、お前こそ!」
 シュウとアメンはガシッと握手した。
 
 シュウは控室へ戻った。
「勝ったぜ、皆!ふぃ~疲れたぁ……!」
「お疲れ様、シュウ君。喉乾いてるでしょ?スポーツドリンク用意してあるから……」
 彩音が飲み物を差し出そうとするのをリカが遮った。
「それよりも!シュウ先輩砂まみれじゃないですかぁ!まずは身体を拭くのがさきですよねっ!」
 リカはすばやくタオルを取り出してシュウの身体についた砂を丁寧に落としていく。
「む……」
 彩音は先を越されて頬を少し膨らませている。
「ははは……だがシュウ。これで3連勝!なかなかいい調子だな」
「ああ!リーグ戦ったって、全部勝っちまえば優勝なんだ!トーナメントと変わらないぜ!」
 シュウは身体を拭かれながら胸を張っている。
「油断はするな。お前の他に、タクマと劉洸も全勝している。そして次に戦うヒンメルも間違いなく勝つだろう。
トップが四人も並んでいる状態だ。ここから先は楽にはいかないぞ」
 ヒロトが忠告する
「分かってるって!この戦いの中でだって俺は強くなってきてんだ!この先誰と戦っても、絶対に負けねぇ!!」
 シュウは改めて気を引き締めるのだった。
 
 
 
 
     つづく
 
 次回予告
 
「さぁ、次の対戦相手は……南極予選で激突したプーチンだった!
南極じゃ負けちまったけど、次のフィールドはハワイの火山口!南極とは真逆のステージなら、俺の方が有利だぜ!
しかし、これまで成績の振るわなかったプーチンは、ここで新兵器を出してきた!!
 
 次回!『灼熱の冷気!氷狼の牙!!』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!』
 
 
 
 
 

 

 



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