オリジナルビーダマン物語 第89話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第89話「空中大決戦!アクロバティックバトル!!」



 いよいよ始まったビーダマンワールドチャンピオンシップ本戦リーグ。
 その第一回戦を辛くも勝利したシュウだが、まだまだ試合は始まったばかり。
 これからの強敵とのバトルに備え、シュウ達は仲良しファイトクラブの休憩室で前の試合のビデオを見ていた。
 
 映像は、シュウがアマゾン河から飛び出したシーンが映されている。
「それにしても、河の中からメテオールバスター繰り出すとか、どううやったんだ?」
 タケルが感心しながらシュウに聞いた。
「えっと、俺も夢中だったからあんま良く分からないんだけど、フェイタルストーム使ったら出来たんだ」
「つまり、フェイタルストームを水中に向けて撃って、それに向かって潜れば空気の膜が泡になったまま空中を移動する。
その中にシュウ君が入って一緒に潜れって行けば、底にぶつかった時に空気の膜が爆発して、その勢いでシュウ君を水上に吹き飛ばしたって事ね」
 彩音が分析する。
「そうそう、きっとそんな感じ!」
 シュウも便乗したが
「お前絶対分かってないだろ」
 タケルは突っ込んだ。
「あはは……」
「竜崎の終わった試合の分析はもういいだろ。重要なのは他の奴らの試合だ」
 ヒロトが先を促した。
「ああ、そうだな!」
 
 映像が次の試合を映し出す。
「アメンとプーチンの試合か」
 
 アメンとプーチンのバトルは、プーチンが力で圧倒しようとするものの、アメンがまたも幻影を作りだし、それに惑わされたプーチンが自滅する展開だった。
 
「アメンのピラミッドパワー。相変わらずだな」
「これの原理ってまだ分からないの、お姉ちゃん?」
 琴音が彩音に尋ねるが、彩音は困ったように首をひねるだけだ。
「う~ん、さすがに。多分ビーダマンに秘密があるんだと思うんだけど、詳しく機構を見てみない事には……」
 考えても答えは見つからない。
「所詮はまやかしだ。恐るるに足らん」
 ヒロトはそう切り捨てた。
 
 次の試合を見る。
 が、次の三試合は一方的な試合だった。
 劉洸VSベルセルクは、ベルセルクが試合放棄して劉洸の不戦勝。
 タクマVSマサーイ・マーサイは、タクマが圧倒的な力で勝利。
 ヒンメルVSブッシュも、ヒンメルが圧勝した。
「生で見た時も思ったが、あっさりな試合内容だよな」
 タケルは拍子抜けした。
「でも、ヒンメルの奴は、やっぱ強いぜ……!」
 シュウはヒンメルの試合に身震いした。
「タクマの場合は、相手が弱すぎだな。なんだあのレベルは……」
 ヒロトはマサーイに対して嫌悪感を抱くほどの悪態をついた。
「でも、あいつ、弱いけど楽しそうだったよな」
「だが、世界選手権に出られるレベルじゃないな、アレは」
 ヒロトは興味失せたと言わんばかりに立ち上がった。
「あれ、ヒロ兄どうしたの?」
「練習に戻る。これ以上映像を見てもしょうがないからな」
 そう言うなりヒロトは部屋を出て行った。
「あ、だったらあたしも!」
 琴音も慌ててその後を追った。
 
「まっ、観るものは観たし、俺も練習するかなぁ」
 シュウはう~んと大きく伸びをした。
「……でも、ベルセルクの奴、なんで試合放棄なんかしたんだろ?会場には普通にいたのに」
「お前以外と……いや、ゆうじさん以外と戦う気は最初からないんだろ。多分、お前と当たるまであいつはずっと不戦敗を続けるだろうな」
 タケルに言われ、シュウは一瞬考えを巡らせた。
 が、すぐに口を開いた。
「まっ、何でも良いぜ。俺だって、大会の優勝よりも、ヒンメルとのバトルの方が大事なんだ。でもだからって、他の奴にも負けたくないけどな!」
「そうだな。んじゃ、練習に戻るか!」
「おう!」
「次の試合会場は、アメリカのグランドキャニオンだから、強い風や高低差のあるフィールドを想定とした練習をするといいと思うよ」
 彩音が次の試合の説明と練習のアドバイスを同時にこなした。
「分かった!よし、早速やるぞー!!」
 シュウとタケルは練習場へ戻って行った。
 
 
 そして、第二回戦の開催日。
 シュウ達仲良しファイトクラブはグランドキャニオンに建設された特設ビーダマンバトル会場へやってきた。
 
『さぁ、今日は世界選手権本戦リーグ第二回戦を開催するぞ!
開催地はここ、グランドキャニオン特設フィールドだ!!この広大な渓谷でどのようなバトルが繰り広げられるのか?!』
 ワーーーと言う歓声。
 選手の皆は今回からは紹介の必要が無いので控室で待機している。
『それでは、早速対戦カードを決定しよう!ルーレットスタート!!』
 モニターに劉洸とカルロスが映し出された。
『第一試合は劉洸君とカルロス君だ!両者ともにバトルフィールドまで来てくれ!!』
 シュウの控室。
 控え室には中継用のモニターがあり、そこでシュウ達仲良しファイトクラブのメンバー達が会場の様子を見ている。
「最初はカルロスと劉洸か……カルロス、頑張れよ!」
 シュウは遠いながら、カルロスへ声援を送った。
 
 そして、会場に劉洸とカルロスが姿を現す。
「カルロス、いい試合をしよう」
 劉洸は爽やかに誠実にカルロスに挨拶した。
「え、うん!お互い頑張ろうね!」
 カルロスも真面目に返事した。
 
『さぁ、お互いスポーツマンシップ溢れる爽やかな挨拶をしたところで、始めて行くぞ!二人とも、スタート地点についてくれ!!』
 カルロスと劉洸がスタート地点に着く。
『いくぜ、レディ、ビー・ファイトォ!!』
 試合開始。
 カルロスは自慢のフットワークでゴツゴツした路面をものともせずに素早く射程圏内まで近づいた。
「いっけぇ!エースストライカー!!」
 バーーーーン!!
 早速先制点ゲット。
 そして、得意のヒットアンドアウェイ戦法に持ち込んだ。
『バトル開始早々、カルロス君のフットワークが冴える!着実にHPを削っていくぞ!!』
「くっ!」
 劉洸も一定のリズムで連射してちょこちょこカルロスのボムにヒットさせている。
 
『劉洸君も反撃しているが、その差は歴然!カルロス君有利の展開で進んでいるぞ!!』
 
 だが、バトルも中盤戦になった所で、カルロスの攻撃が鈍った。
『のおっとどうした!?カルロス君の動きが心なしか遅くなっているような……っと、ここで劉洸君猛反撃!!凄まじい勢いでカルロス君のHPを削っていく』
「なにっ!」
「……ふふ」
 劉洸は不敵に笑った。
 射手兵のショットに変化はないように見える。しかし、カルロスはどこか違和感を覚えていた。
(体が、自由に動かない?上手く戦えない……!)
 気持ち悪さを心に抱いたまま、それでも戦うが、徐々に劉洸のペースに持っていかれ、そして……。
『決まったぁ!!劉洸君の逆転勝利だ!!』
 
「そ、そんな……!」
 序盤リードしていたのに、いつの間にかペースを乱されて逆転されてしまった。
「良い試合だったね、カルロス」
 呆然とするカルロスに、劉洸は笑顔で近づいて握手を求めた。
「あ、う、うん……」
 カルロスは、薄気味悪さを感じつつもその握手に答えた。
 
『試合の後は熱い握手!二人の間に友情がめばえたようだ!最初から最後まで爽やかな対戦だったぞ!!』
 ビーダマスターがそう囃し立てるものの、カルロスは未だ心に生まれた違和感をぬぐえないでいた。
 シュウの控室。
「カルロスの奴、なんか中盤動きが鈍ってたな」
「体調でも崩したんじゃないですかぁ?」
「いや、俺が戦った時とよく似ている……」
 タケルは苦い顔になった。
「タケル?」
 タケルの表情に疑問を抱いたシュウだが、その後のアナウンスによってその疑問は掻き消えた。
 
『さぁ、次の対戦カードは、シュウ君VSブッシュ君だ!!早速バトルフィールドに着いてくれ!』
 
「あ、俺の番だ!」
 シュウが慌てて立ち上がる。
「しっかりやんなさいよ、シュウ!」
「頑張ってね、シュウ君」
「シュウ先輩なら絶対勝てますよ!頑張ってください!!」
 皆が口々に声援を送る。
「おう!バッチリ勝ってくるぜ!!」
 それに応え、シュウは駆けていった。
 
 バトルフィールドでシュウとブッシュが対面した。
 
「シュウ君!あの時は世話になったな。君がいなければ私はこの舞台には立てなかった」
「礼を言うのは俺も同じだぜ!タケルのバッグ取り返してくれなかったら、俺達一文無しだったからな!」
「はっはっは!なるほど、ならバトルは全開で行かせてもらう!」
「そういや、協力して戦った事はあったけど、ブッシュと対戦するのってこれが初めてだったな!へへっ、楽しみだぜ!」
「良い試合をしよう!!」
 軽く会話を交わし、二人は離れたスタート地点に着いた。
『それでは、準備は良いな?行くぜ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
 
「うおおおおおお!!!」
 スタートとともにシュウはブッシュへ目掛けて駆け出した。
 一方のブッシュは腕組みをしたまま棒立ちしている。
「とっとと射程圏内まで近づいて、一気に決めてやるぜ!!」
 ドンッ!!
 シュウは走りながらブッシュのボムへパワーショットを放った。
 シュンッ!
 しかし、シュウのショットは外れてしまった。
「なに!?」
 よく見ると、先ほどまでそこにいたはずのブッシュの姿が消えていたのだ。
「私はここだ!」
 頭上から声が聞こえた。
 見上げると、真上でブッシュがビーダマンを構えていた。
「うっ!」
 ズドドドド!!!!
 重力を利用してのショットがシュウへ襲い掛かった。
「うわあああああ!!!!」
『さすがはブッシュ君!岩の壁を蹴っての大ジャンプ!そのまま真上からの攻撃!!なんというアクロバティックなバトルスタイルだ!!』
「す、すげぇジャンプ力……!」
「ふっ!しかも片手で握る事によって発射できる、マジックハンドを応用したトリガーによって、激しくジャンプしても取り回しが良いのさ!」
 ヒーロー口調だが説明口調だ。
「くそっ!これじゃ攻撃が届かねぇ!」
 
 ドンッ!ドンッ!!
 ブッシュは空中殺法でシュウのボムへ攻撃を続けていく。
『ブッシュ君の空中殺法に成す術無しか!?これは一方的な展開だぞ!!』
「ふははははは!ヒーローに敗北は無いっ!!」
 バッ!!
 ブッシュは再び飛び上がった。
「くっそぉ……ジャンプなら俺だって!!」
 ガッ!
 シュウは地面を蹴って飛び上がり、ブレイグを地面に向かって撃った。
 バーーーーン!!!
 ショットの反動でシュウはブッシュ目掛けて飛び立った。
 
 上空で、ブッシュとシュウの目が合う。
「なにっ!?」
「へへっ、おいついたぜ!!」
『のおっと!シュウ君もブッシュ君に続いて大ジャーーンプ!!空中で大激突だ!!』
「くっ!」
「いっけぇ!!」
 バーーーーン!!!
 シュウとブッシュのボムが同時に撃たれる。
 
 そして、着地したと同時に再び両者飛び上がって空中で激突。
 バーーーーーン!!!!
 
『これは凄いぞ!!両者とも、戦いの舞台を地上から上空へと変えて互角の立ち合いを見せている!!なんというアクロバティックバトル!!』
 
「うゎ、とと!」
 着地に失敗したシュウがよろめく。
「空中戦では私に一日の長があるようだな!」
 ドーーーン!!!
 よろめいた隙に、ブッシュが一発ぶち込む。
「くそっ!」
 シュウは急いで体制を立て直して飛び上がった。
「ふんっ!」
 ブッシュもそれを追って飛び上がり、再び空中で激突。
 バーーーーーン!!!!
『互角と思われた立ち合いだが、やはりブッシュ君の方が一枚上手か!?HPではわずかにブッシュ君の方がリードしている!』
 
「くそっ!同じように空中戦できるようになったと思ったのに」
「ヒーローは必ず勝つのだよ!はっはっは!」
 ブッシュは勝利を確信したのか、高笑いしている。
「あいつに勝つには、もっと高く飛ばないと……!」
「さぁ、そろそろ終わりだ!」
 バッ!
 ブッシュが飛び上がる。
「あ、ま、待て!!」
 ドギュッ!!
 シュウも地面を撃って飛び上がった。
『さぁ、両者とも飛び上がった!HPはもう残り少ない!この立ち合いが、最後の勝負となるか?!』
 
 空中で目が合うブッシュとシュウ。
「ヒーローの力を見せてあげましょう!」
 ブッシュの攻撃がシュウにヒットする。
「負けてたまるかぁ!!」
 シュウはブッシュのシャドウボムの真上に来た。
 そして、真下にあるシャドウボムへパワーショットを放つ。
 
 バーーーーーン!!
 その反動でシュウは更に上昇し、ブッシュのシャドウボムは下へ叩きつけられた。
「なに!私のシャドウボムを踏み台にした!?」
「これで、俺の方が高いぜ!!!」
 控え室にいる仲良しファイトクラブメンバーもこの方法に感心した。
「まさか、メテオールバスターにこんな使い方があったなんて!」
「やるな、シュウ……!」
「さすがです、シュウ先輩!!」
 大絶賛だ。
 
 そして、バトルフィールドでは。
『これは凄い!シュウ君はブッシュ君のシャドウボムを利用して更に高く飛び上がった!いつものメテオールバスターとは一味違うぞ!?』
 
 上空から地に堕ちたブッシュのシャドウボムを狙うシュウ。
「私も、この程度では負けはしない!」
 ブッシュはスーパースカイビークルをセットした。
「スーパースカイビークル、ファイアー!!!」
 ドンッ!!!
 遥か上空にいるシュウのシャドウボムへスカイビークルが飛び上がる。
 飛行機型のメカなので上昇力は大したものだ。
 ある程度距離を稼いだところでビー玉を発射する。
 
『上空にいるシュウ君への対抗策へ、ブッシュ君は必殺のスーパースカイビークルを出してきた!距離を稼いでのショットならシャドウボムに届くはずだ!』
「負けてたまるかっ!!ライジングメテオールバスター!!!」
 ドーーーーーン!!!!
 いつもより高い位置エネルギーによる強力なメテオールバスターが火を吹く。
 ガキンッ!!
 当然、シュウのショットの威力の方が強い。
 ブッシュのショットを弾き飛ばし、吸い込まれるようにブッシュのシャドウボムを撃破した。
「くっ!!」
『決まったぁ!!ブッシュ君のHPは0!よって、勝者はシュウ君だぁぁ!!』
 
 控え室。
「やったぁ、シュウ先輩が勝ちました!」
「うん、やったね、シュウ君!」
「ふん、あの程度の相手に手間取り過ぎだ」
 皆がシュウの勝利に喜ぶ中、タケルは冷静に言った。
「でもあいつ、あんなに高く飛んで、大丈夫か?」
「「「あ……」」」
 
 そして、空を飛んでいるシュウは。
「やったぜぇ!!!」
 勝利の喜びに浸っているのもつかの間。
 すぐにシュウの身体は重力に従って落下していく。
「へっ、あれ?……うわああああああ!!!!!」
『のおっと!勝利を決めたシュウ君だが、上空から落下していく!このままでは、岩に叩きつけられてしまうぞ!!』
「うわああああああああああああ!!!!」
 猛スピードで落下していくシュウの真下に、人影が現れた。
「とう!!」
 人影はジャンプし、空中でシュウをキャッチした。
「おおっ!」
 抱きかかえられるまま、無事に着地する。
「お前……ブッシュ」
 シュウを助けたのは、ブッシュだった。
『おおっと!シュウ君を助けたのは、バトルに負けたはずのブッシュ君だ!』
「お前、なんで……」
「ふっ、バトルには負けたが。人を助けるのがヒーローだからね!」
「……サンキュ」
 ブッシュの腕から降りたシュウは礼を言った。
「それにしても、落下する事も考えずにあんな戦法を取るとは、勇気溢れる少年だな!」
「いやぁ、それほどでもないぜ!」
「そんな君に、スーパーヒューマン2号の称号を与えよう!」
 そう言って、ブッシュは懐から、スーパーヒューマンの衣装を取り出してシュウへ渡そうとした。
「い、いやぁ、それは遠慮しとく(汗)」
 シュウはコメカミに汗を浮かべながら受け取りを拒否した。
「はっはっはっはっは!!!」
 そんなシュウの態度に気にせず、ブッシュは胸を張って高笑いする。
「あ、あはは……」
 シュウは苦笑いするしかなかった。
 
 
 
       つづく
 
 次回予告
 
「さぁ、次の相手は不気味な技を使うピラミッドキング!アメン・ラーだ!
こいつの技は謎だらけだけど、絶対に見破ってみせるぜ!!
 
 次回!『幻影の覇者!ミステリアスパワーを打ち破れ!!』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
 

 

 



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