オリジナルビーダマン物語 大長編2 前編

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!

大長編2「爆走外伝!アルティメットレジェンダー」

 爆球町商店街。
今日は、この商店街で秋祭りが開催されていた。
商店街に飾られた提灯に出店。そしてマーチングパレードなんかでにぎわいを見せている。
その中の一角。中央広場では、祭りの喧騒をはるかに上回る熱気に包まれていた。

『さぁ、爆球商店街秋祭り特別ビーダマン大会もいよいよ決勝戦だぁぁ!!ここまで勝ち上がったのは、今回ワールドチャンピオンシップ本戦への出場を決めた竜崎修司君!!』
 バトルステージにシュウが現れる。
「いや~、どうもどうも~!!」

『対するは、ダーティなプレイで勝ち上がってきたこの街の荒くれ者!バッドビーダーズの悪山悪彦君!!』
 シュウと対峙するのは、かつて彩音をさらった事のあるバッドビーダーズのリーダーだった。
「久しぶりだなぁ!世界大会出場だかなんだか知らないが、あの時の落とし前、キッチリつけてやるぜ!」
「おう!誰だか覚えてないけど、勝負だぜ!」

『ルールは、DXブレイクボンバー7のように左右に動くパワープッシュ!ムービングパワープッシュだ!!』

 競技台の上に、ムービングパワープッシュが用意された。
『それでは始めるぞ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
「いっけぇ!ブレイグ!!」
「ぶちのめせぇぇ!!」
 ズバババババ!!!!
 競技台の上でビー玉が飛び散る。
 その様子を、傍から仲良しファイトクラブのメンバーが観戦していた。
「がんばってくださーい!シュウ先輩~!!」
 リカは両手をメガホン代わりにして、周りの喧騒に負けじと声援を送る。
「ったく、ワールドチャンピオンシップ本戦が始まるまでのちょっとした休息のつもりで祭りに来たのに。ここでもバトルしてたんじゃ休みの意味ないじゃない」
 琴音が呆れながら言う。
「まぁ、でもシュウ君らしいけどね」
 彩音は苦笑する。
「バトルと言っても遊びみたいなものだ。勝ち負け忘れて楽しむのが一番の休みになるさ」
「ふん。この程度のバトルじゃ、休憩しているのとほとんど変わらないからな」
 ヒロトはこのバトルに既に興味を失っているようだ。

「うおおおおお!!!」
「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」
 バトルはほぼ一方的に、シュウが押している。
「動いてて狙いづらいけど、一定の速度で動いてるなら!イタリアのあいつみたいに……!」
 ターン!ターン!!
 シュウがステップを踏みながらリズムを取って撃ち始めた。

『さすがはブレイグのパワー!!ターゲットが動いていても変わらない!!悪彦君を圧倒しているぞ!!!』

「負けるかぁぁ!!」
「いっけぇl!!」

 ババーーーーン!!!!
『決まったぁ!!勝ったのは、ワンサイドゲームで竜崎修司君の優勝だぁぁぁ!!!』
「そ、そんなぁ……」
 悪彦はガクッと膝をついた。
「やったぜぇぇぇ!!!」
 対照的にシュウは飛び上がって勝利の喜びを表現した。

「やったぁ、かっこいいですぅ!シュウ先輩!!」
「あの程度、勝って当然だ」
 シュウと同様に素直に喜ぶリカとくだらないと一蹴するヒロトは対照的だ。
『それでは、優勝者の竜崎君には、家族で行ける1泊2日伊香保温泉旅行のチケットを進呈するぞ!!』
「え、伊香保、温泉……?」
 ……。
 …………。
 と、言うわけで。シュウ達は、せっかく手に入れたチケットで慰安旅行にと伊香保温泉に来ていた。
 渋川駅よりバスで20分に位置するその町は、石段が特徴的な温泉街だ。

「おぉぉ、ついに来ました伊香保温泉!!!」
 バスに降りるなり、鼻孔をくすぐる温泉の香りにシュウは浮き足立った。
「うわぁ、ここが伊香保温泉ですかぁ!!」
「へぇ、なかなか良い所じゃない」
 シュウに続いて他のメンバー達もバスを降りてきた。
「ちょっと前まで南極だったからなぁ、早く暖まりたいぜ……!」
 タケルは南極でのバトルを思い出して身震いした。
「た、確かに……!」
 シュウも思い出し身震いした。
「あはは……。旅館までは少し歩くし、ちょっと散策しながら向かおう」
「あ、あれなんだぁ?!」
 彩音が提案するよりも先に、シュウが真新しいものを発見したのか駆け出して行った。
「あ、待てよシュウ!」
「待ってください、シュウ先輩!!」
 タケルとリカが慌ててシュウの後を追いかける。
「ほんと落ち着きないわねぇ」
「いい加減集団行動くらい覚えろ……」
「まぁまぁ。琴音ちゃん、ヒロト君、私達も行こう」
 彩音が二人を宥めながら、三人も少し遅れてシュウの後を追った。

 シュウが見つけたのは『ボットル屋』と言う遊技店だった。
「ボットル……変な名前だなぁ、なんだこれ」
 店の看板の前でシュウが燥いでいる。
 少し遅れてタケルとリカがやってきた。
「シュウ先輩、速すぎですよぉ……」
「あ、タケル、リカ遅いぞ!」
「遅いぞじゃないだろ、バカ!」
 ゴチンッ!
 追いつくなり、タケルはシュウの頭に拳骨を落とした。
「ってー!」
「いきなり団体行動を乱すな!」
「学校の行事じゃないんだから、硬い事言うなよぉ……!」
 シュウは頭を抑えて涙目になった。
「学校であろうがなかろうが、団体は団体だ!」
「ちぇ……」
 タケルに叱られて、シュウは唇を尖らせて拗ねてみせた。
「シュウく~ん」
 彩音、琴音、ヒロトもやってきた。
「もぉ、勝手に駆け出すんじゃないわよ」
 来るなり、琴音は苦言を漏らした。
「はは、わりぃわりぃ」
 シュウは笑いながら軽く謝った。
「あれ、ここってボットルが出来るんだ?」
 彩音はシュウが目指した店の看板を見ながら言うと、シュウがそれに食いついた。
「それそれ!あやねぇ、ボットルって知ってるのか!?」
「うん。この温泉街で有名な遊技だよ。中に入ってやってみようか」
「うん!」
 シュウ達は、木の枠で出来た年季の入った店の扉を開いて中に入った。

 中はガランとしており、客を遮る低くて長細いテーブルと、その奥に小さな台にいくつか積まれた積み木のようなものがあった。
「こんにちはー」
 シュウ達が挨拶をすると、客が入れないスペースの端っこにパイプ椅子を置いて座っていた目つきの悪いお婆さんがギロッと睨み付けてきた。
「あぁ、お客さんかい。いらっしゃい」
 人相は悪いが、別に不機嫌と言うわけではなさそうだ。
 シュウ達は少したじろいだが、すぐに愛想笑いを浮かべた。
「あ、あはは……俺達、ボットルってのやりたいんですけど……」
「あぁ、いいよ。一回500円ね。ルールは知ってるかい?」
 ぶっきらぼうに話す婆さん。一回500円とは随分とぼったくりだ。
「あ、いえ……」
「そうかい。あの台に積んである積み木を、ボールを投げて台から落とすんだよ。まぁ、とりあえずやってみな」
 お婆さんはのっそりと立ち上がり、ボールを三つシュウに渡した。
「ボールは六球までだよ。全部落とせたら賞品があるからね」
「分かった!頑張る!」
 シュウは受け取ったボールをギュっと握りしめた。
 そして、積み木目掛けて剛速球を投げる。
「どりゃあああ!!」
 ズバンッ!!
 ボールは、空気を切り裂きながらまっすぐ飛び、積み木の上を通過して壁に激突した。
「あらら……?」
「ひゃっはっは!球は速くても当たらなければどうという事はないのぅ!」
 婆さんは失礼なほどに腹抱えて大笑いした。
「むっかぁ……!」
 その態度にシュウの頭の血が上って、連続でもう三回投げた。が、どれも威力はあるのだが当たらない。
「なんでだよぉぉぉ!!!」
 シュウは頭を抱えて地団太を踏む。
「シュウ、もうちょっと良く狙えよ!」
「ビーダマンだと思って!」
 タケルと彩音がアドバイスを送った。

「ビーダマンか。よっしゃぁ……!」
 シュウはもう一度、良く狙ってみた。
(俺はビーダマン。俺はビーダマン。俺がビーダマン……!)
 頭の中で何度繰り返し、自己暗示をかける。
「俺が、ビーダマンだ!!!」
 そう叫びながらボールをブン投げた。一直線に積み木へ飛んでいく。
 バゴンッ!
 積み上げられた、一番上のブロックが一個だけ落ちた。
「やった、当たったぜ!!」
「すごいです、シュウ先輩!」
 シュウは婆さんに向き直った。
「どうだ!当たったぜ!」
「あーダメダメ。全部のブロックを落とさないと失格じゃ」
「えーー!!」
 球はあと一つ。これで決めなければならない。
「くっそぉ、これで決めてやるぞぉ!」
「代われ竜崎。俺がやる」
 そこで、さっきまで後ろで見ていたヒロトがズイッと前に出て、シュウの持っていたボールを奪った。
「な、なんだよヒロト!」
「こういうのは、力任せに投げれば良いってもんじゃない。軽くても当たりさえすれば倒れるようになっているんだ」
 そう言って、ヒロトはシュッと弱めに投げた。
 ボールはヨロヨロ~っと弧を描いて飛んでいき、コツンッと積み木の山にぶつかる。
 すると、ガラガラガラ~と積み木が崩れて床に落ちて行った。

「す、すげぇ……」
「ヒロ兄さすが……」
 シュウがあれだけやっても出来なかったことをあっさりとやってのけたヒロトへ、一同は感嘆を漏らした。
「まっ、ざっとこんなもんだ」
 ヒロトはすまし顔で手をシャッと振ってから、踵を返した。
「おぉぉ、おめでとう若者よ。やっぱりイケメンは違うのぅ、ワシがもうあと5歳若かったらプロポーズしとったわい。ひょっひょっひょ!」
 婆さんが下品に笑うと、琴音がムッとした表情でさりげなくヒロトの袖を掴んだ。
「ムッ」
 琴音の鋭い視線に気付いた婆さんはまたもケラケラ笑い出した。
「うっひょっひょ!若いってえぇのぅ!!あー、そじゃそじゃ。賞品を渡さんとな」
 婆さんはヨロヨロと奥へ入って行った。
 そして、両手いっぱいにお菓子の袋を持ってくる。
「よっこらせっと」
 大量のお菓子を、仕切り台の上にドサッと置いた。
「この中から好きなの一個持ってくと良い」
「えー、一個だけかよ~」
 500円でチャレンジして菓子の袋一つだけとは割に合わない。
「うるさいうるさい。こっちも商売なんじゃ。文句言うなら別に持ってかんでもええんじゃぞ」
「あー、いるいる!」
 シュウは、慌ててポテチの袋を一つ取った。ポテチとは、ポテチトップスと言うお菓子の略である。薄切りにしたジャガイモを素揚げして味付けした大人気のスナックだ。
「あ、でもクリアしたのはヒロトだから、ヒロトの方が選ぶべきか?」
 袋を掴んでから、一応ヒロトへ目配せする。
「ふん。そんなものに興味は無い。それと、お前に呼び捨てにされる筋合いはない」
「そっか。じゃあうすしおもーらいっ!」
 シュウはポテチうすしお味を手に取った。
「しかし、あの程度クリアできないとは。本戦出場を決めたと言っても、お前もまだまだだな」
 ヒロトの言葉に、シュウはムッとした。
「ムッ!ボットルとビーダマンは関係ないだろ!」
「投擲も射撃も、根本は同じだ。集中力さえ研ぎ澄ませば、あの程度は造作もない」
「ちぇ、たまたま当たったからって偉そうに……!俺だってあのくらい、ボール投げるんじゃなくてビーダマンでブッ飛ばすんだったら楽勝だぜ!!」
 ヒロトとシュウの会話を聞いて、婆さんが反応する。
「お前達、ビーダマンをやるのか?」
「え、うん」
 シュウが頷く。
「じゃったら、丁度いい。特別にビーダマンボットルをやらせてやろう」
「え、ボットルってビーダマンでも出来るの!?」
「この店だけの特別仕様じゃ!準備するから待っとれ!」
 そう言って、婆さんは舞台をセッティングし始めた。
「あ、ビーダマンボットルは特別料金で800円じゃからな!」
 準備しながら、婆さんが言った。ちゃっかりしている。
「さっきより割高だなぁ……」
 タケルがぼやく。
「ワシが直接用意してやるんじゃから、文句言うな!それに、賞品はもっともっと豪華じゃからな!!」
 口を動かしながらも、婆さんは手際よく準備を進めている。
「まっ、ビーダマンで出来るってんならやらないわけにはいかないぜ!しかも豪華賞品かぁ……何貰えるんだろう?BIGサイズのうすしおポテチかなぁ……?」
 ポテチを頭に思い浮かべて涎を垂らす。
「発想がショボいな……ってかどんだけポテチ好きなんだよ」
 呆れるタケルへシュウは反論した。
「俺が好きなのはうすしおだ!」
「あ、そう……」
 そんなくだらない会話をしているうちに、準備が終了したようだ。

「よし、できたぞぃ!」
 さきほどの台に、さっきよりも大きく重そうな素材で出来たブロックが、積み上げられていた。
「おっしゃぁ!さっきのリベンジだ!良く見とけよ、ヒロト!!」
「呼び捨てにするな」
 シュウが張り切ってビーダマンを構える。
「シュウ、気を付けろよ!さっきよりもターゲットが重くなってる!」
 タケルがさっきとの違いに気付いてアドバイスを送る。
「ビーダマンで狙うんだから、ターゲットが強くなってるのは当然だぜ!うおおおおお!!!」
 ドンッ!!!
 凄まじいパワーショットが積みブロックへ向かってブッ飛ぶ。
 ガコンッ!!
 ショットは見事積み木の中心を撃ちぬいた。
 しかし、勢いが強すぎたのか、真ん中だけがぽっかりと空いた状態になった。
「あ、あれぇ!?なんで崩れないんだ……?」
「シュウ君のショットが強すぎたのよ。ダルマ落としと同じ原理で、当たった部分だけが撃ちぬかれたようになったのね」
 彩音が解析する。
「そんなぁ」
「ひょっひょっひょ!ビーダマンボットルはそんなに甘くないぞぉ!」
 婆さんが意地悪そうに笑う。
「くっそぉ!だったら……!」
 ガクガクガクガク!!!
 ブレイグのエアリアルバイザーが激しく振動する。と同時にシュウの周りに風が吹き荒れた。
「なんじゃ!?隙間風か!?」
 フェイタルストームの事を知らない婆さんは、建付けの悪い店故の隙間風と勘違いしていた。
「いっけぇ、フェイタルストーム!!」
 ドンッ!!
 空気の膜によって攻撃範囲が広がったショットが積みブロックを全て吹き飛ばした。
「どぉだ!やったぜぇ!!」
 シュウがガッツポーズを取る。
「ものすげぇ、力技……」
「フェイタルストームで吹き飛ばせば、命中する場所はあまり関係ないもんね」
 タケルと彩音が苦笑した。
「どうだ、ヒロト!クリアしたぜぇ~!!」
 シュウはヒロトへ歩み寄って得意気になる。
「クリア出来て当たり前だ。この程度で威張るな。それと呼び捨てヤメロ」
 ヒロトは相変わらずな反応だ。
「おぉぉ!これは見事じゃ!このボットルをクリア出来たビーダーはお前さんが初めて!!これは、店主を呼ばねばならんな!」
 ボットルをクリアしたシュウに対して、婆さんはやや興奮気味に声を荒げる。
「店主?あれ、婆ちゃんが店長じゃないの?」
「何を言うとる。ワシはただのキャピキャピの看板娘じゃっ☆」
 婆さんは、皺だらけの頬に両人差し指を押し当てて首を傾げて見せた。
「……」
(看板娘と言うか、岩盤娘だな)
 しわがれて岩肌のようになっている顔を見て、タケルはポソッと呟いた。
(タケルッ、シッ!)
 思ったより声が大きかったのか、琴音は慌ててタケルを小突いた。
「まぁとにかく、ちょっと待っとれ!!おーーい、じいさんやーーーい!!」
 幸いにも聞こえてなかったらしい。婆さんはまたも店の奥へと駆けて行った。

 暫くして、店の奥から店主らしい老人の声が聞こえてきた。
「おー、ビーダマンボットルをクリアしたって言うのはお前達か~ぃ?」
 何故か、その声には聞き覚えがあった。
 声の主が気怠そうにゆっくりと姿を現した。
 それを見たシュウ達。そして店主本人は声を荒げた。
「「「あーーーーー!!!」」」
「な、なな、なんでお主らがいるんじゃ!?」
「それは、こっちのセリフだぜ、じいちゃん!!」
 店主は、シュウの祖父。智蔵だった。
 智蔵はバツの悪そうな顔をすると、コソコソと店の奥に引っ込もうとした。
「待てよじいちゃん!ってか、今までどこ行ってたんだよ!!急にいなくなりやがって!!!」
 シュウに怒鳴られて、智蔵は委縮しながらも苦笑いしながら口を開いた。
「いやぁ、それは、その……わしにも、いろいろと用事があってじゃなぁ……」
 しどろもどろになりながら必死に言い訳を探している。と言う感じだ。
「シュ、シュウ君。もういいんじゃない?こうしてまた会えたんだし……」
 ちょっと智蔵が不憫になったのか、彩音がシュウを宥める。
「う~」
 彩音に言われては、それ以上強く言えないのか。シュウはまだ言い足りなそうに小さく唸っている。
「それより、御師匠が店主って事は、賞品もビーダマンに関わるものなんですか?」
 彩音が話を戻して智蔵に尋ねると、智蔵は大きく頷いた。
「もちろんじゃ!このビーダマンボットルをクリアできる強いビーダーにこそふさわしいと思って秘蔵しておったとっておきじゃ!
まさかお主らがクリアするとは、これも運命じゃな」
 そう言って、得意げに賞品を取り出した。
「これは、ビーダマン?」
 智蔵が出してきたのは、銀色のビーダマンだった。
 しかし、フォーマットが違うのか。プロト01のようなボディにジョイント用?と思われる穴がヘッド、アーム、フットにそれぞれ空いていた。
 銀一色に輝くボディは、まるで見ていると吸い込まれるかのように神々しかった。
「見た事ないビーダマンだなぁ。新型?」
 シュウが問うと、智蔵は何故か意味深に首を振った。
「どちらかというと、旧型じゃな。それも遥か昔の」
 それを聞いて、シュウはがっかりしたように肩を落とした。
「なんだよ旧型って。そんな古いビーダマンを豪華賞品にしてたの?」
「アホ!新しいものにばかり価値があるわけでは無い!古いものにこそ、真の価値があるんじゃ!!分からんか、このビーダマンからあふれ出る歴史的ロマンが……!」
 智蔵は、銀のビーダマンを掲げて熱く語っている。
「まぁ、キレイなのは分かるけどさ……」
 シュウが智蔵の熱き語りにウンザリしていた時だった。

 ポワァァ……!
 シュウのポケット。そして彩音のバッグから淡い光が漏れだした。
「え?」
「なんだぁ!?」
 その光の正体を確かめようと、二人は光っているものを取り出した。
「これって……!」
 それは、彩音がビーダピラミッドで手に入れた謎の金色のパーツとシュウが南極で拾ったパーツだった。
「なんで、これが?」
「もしかして、このビーダマンに反応しているのかも……!」
 半信半疑で、二人は謎のパーツをビーダマンに近づけると……それらは惹かれあう様にそのビーダマンの両腕に鎧のように装着された。
「このパーツって、このビーダマンのアーマーだったのか!?」
 と、その様子を見て、智蔵が素っ頓狂な声を上げた。
「お主たち!!どこでそれを手に入れた?!もしや、アルティメットレジェンダーを知っておるのか!!!」
 いきなりの奇声にビックリしつつ、シュウは智蔵に尋ねた。
「あるてぃめっとれじぇんだー……?」
「あぁ、いや、名前はワシが便宜上適当に付けただけなんじゃが……オホン。これもまた運命じゃな。全てを話そう」
「最初から話せよ」
「いいから黙って聞かんかい!!」
 とりあえず仕切り直して智蔵が話始める。
「世界選手権の日本選抜戦の後。ワシは大会から離れ、世界を飛び回ってあるビーダマンの発掘をしておったんじゃ」
「ある、ビーダマン」
「それが、これじゃ。世界最古のビーダマン。アルティメットレジェンダー(ワシ命名)」
 智蔵が自慢げに銀色のビーダマンを掲げる。
「世界最古って、ビーダマンを作ったのはじいちゃんだろ?って事は、これもじいちゃんが作ったんじゃないの?」
「確かに、ビーダマンを生み出したのはこのワシじゃ。じゃがこのワシとて、無からビーダマンを発明したわけではない。ちゃんと元ネタが存在するんじゃ」
「それが、このビーダマンって事ですか?」
 タケルがそう聞いた。
「そうじゃ!大昔に滅びたとある文明の言い伝えなんじゃが……『古来より、玉には魂が宿ると言われる。
それゆえ魂を飛ばし、戦う事の出来る神器を人々は守護神として崇めた』
ワシはこの言い伝えを元に、ビーダマンを開発したんじゃ」
「古来の神器……これが?」
「発掘には苦労したぞ……しかも、その神器はまだ未完成らしくてな。何故かバラバラに分解されて世界中に封印されておるらしいんじゃ。
本体を発掘した後、日本のグンマーにパーツが眠っていると言う情報を得てな。早速ここまで飛んだ良いが、ワシはそこで体力と資金を使い果たしてな。
慰安と資金調達を兼ねて、この伊香保温泉街で店を開いたわけじゃ。
ついでに、優秀なビーダーをとっつかまえてパーツ集めの手伝いでもさせようかなとか!ふぁっふぁっふぁ!」
 智蔵は下品に笑う。
「……つまり、ビーダマンボットルの設備や豪華賞品と言うのは、その神器のパーツ集めに協力するビーダーを探すための茶番って事か」
 ヒロトが呆れながら言った。
「えげつねぇじいちゃんだな」
 シュウも軽蔑の眼差しを智蔵に送った。
「まぁ、そう言うな!どこで入手したかは知らんが、こうしてお前達もパーツを発見してきたわけじゃ!これは偶然とは言えん!
それに免じて、アルティメットレジェンダーのパーツ集めをしてくれんか?」
「どこを免じるのか分からないが……」
 タケルも呆れながらツッコンだ。
「でも、なんか面白そうだな!」
 シュウが言った。
「えぇ?シュウ今の話本気にしてんの?」
「ああ!ことねぇだって見ただろ!エジプトで手に入れたパーツと南極で手に入れたパーツが引き合ったって事は、世界中にパーツが散らばってるってのは本当っぽいし。
世界最初のビーダマンってどんなのか気になるじゃん!!」
「そりゃ、そうだけど……」
「ここにパーツがあるって情報が確かなら、旅行のついでに探そうぜ!!」
「うわぁ、面白そうですね!私も微力ながら協力しますよ!!」
 リカは目を輝かせながら賛同してくれた。
「おう、頼むぜリカ!」
「ったく、どこに行っても休息は取れないんだな……。だが、俺も世界最古のビーダマンは気になる。逃す手は無いな」
 タケルがグッとサムズアップして、シュウの意見に賛成した。
「タケル……!」
「俺も賛成だ。古来の神器……どれほどの強さを持つのか、完成させて試してみたい」
 ヒロトがニヤリと笑った。
「だろ?面白そうだろ!?」
「ふふ、そうね。せっかく手に入れたパーツの謎が解けたんだから、ここまできたら最後までやり通したいよね」
 彩音は優しげに笑いながらシュウに同意してくれた。
「皆がそういうなら、あたしは別に構わないけど……」
 琴音もしぶしぶながら拒否する気は無いようだった。
「おっしゃ、決まりだな!」
「ふぉっふぉっふぉ!頼もしい限りじゃ!!まぁ、大会に支障が出ん程度で構わんよ。暇があるときに協力してくれればええ。
一先ずアルティメットレジェンダーはお前達に託す。ワシはこの店におるから、何かあったら連絡するといい」
 そう言って、智蔵は店の電話番号が書いてある紙を彩音に渡した。
「分かりました。何か情報が入ったらすぐにお知らせします」
「頼んだぞ!」

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