オリジナルビーダマン物語 第80話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第80話「狂人ベルセルク!無秩序のヨーロッパ予選!!」




 イタリア、ローマ。
 ヴェネツィア広場を仲良しファイトクラブが散策していた。
 
「ひっさしぶりだなぁ、ヨーロッパ!っても、イタリアに来たのは初めてだけど」
 シュウが大きく伸びをしながら言った。
「そういえば前の旅行ではイタリアには行かなかったからな」
「タケルは来た事あるのか?」
「小さい頃に2回くらいな」
「さすが……!」
 サラッと海外旅行できる金持ちは違う。
「あたしも一回連れてってもらった事があるんだけど、あまり覚えてないなぁ」
 琴音は昔の記憶を探っているのか、宙を仰ぎながら言った。
「前に行ったのは、まだ琴音ちゃんが3歳くらいの時だから、覚えてないのも無理はないよ。
確かあの時は、ヴェネツィアに行ったんだったかな」
「えぇ!?あの水の都の!う~、ローマじゃなくてそっちに行きたかったなぁ」
 琴音が唸ると、ヒロトが口を挟んだ。
「旅行に来たんじゃないだぞ。決勝が開かれるのはローマのコロッセオだ。寄り道している暇はない」
 ちょっと厳しめの口調のヒロトに、琴音は肩を窄めた。
「わ、分かってるよヒロ兄、ちょっと言ってみただけ」
 その会話を聞いて、シュウは首を傾げた。
「あれ、ヴェネツィアってここじゃないの?」
 シュウが疑問を口にした。自分がいる場所は『ヴェネツィア』と名前がついていたはずだが。
「ここはヴェネツィア広場。元々はイタリアと別の国だったヴェネツィア共和国の大使館として建てられた公園なのよ」
「へぇ~」
 彩音の説明に感心するが、シュウは大使館の意味を理解していない。
 広場は、観光地と言うだけあって、多くの人が通っている。
 しかし、今はコロッセオで決勝戦が開かれるという事もあってビーダー用の競技台が特設されていて、賑わっていた。
 
「盛り上がってんなぁ。先週のアフリカ予選と比べると規模が全然違うぜ」
「まぁ、ヨーロッパ大会は前年度の世界チャンプが参加するわけだしね。元々大会成績も良い地区だし」
「そうだよなぁ。へへっ、久しぶりにヒンメルのバトルが見られるんだ!ワクワクするぜ!!」
 ヒンメルとは前にドイツの黒い森で遭遇して以来目にしていない。
 久しぶりにヒンメルを見られることに、シュウは胸を躍らせた。
 
「さて、大会までまだ時間あるし、どっかで飯でも食おうぜ!」
「そうだな。イタリア料理を堪能するのも悪くない」
「おっしゃぁ!パスタとピザ喰いまくるぞぉ~!!!」
 シュウはレストラン目指して駆けだした。
「おい待てよシュウ!」
「全く、相変わらず落ち着きがない奴だ」
 他のメンバーもシュウの後に続いた。
 
 
 そして……。
 ヨーロッパ大陸予選決勝が行われるコロッセオの客席。
 満員の場内だが、仲良しファイトクラブはなんとか自分たちの席を確保して座っていた。
「うっぷ……ぎもぢわるい……!」
 その中でシュウは腹をいっぱいに膨らませて口を押えていた。
「こいつ、ほんとにピザとパスタ食いまくりやがって……誰の金だと思ってんだ」
 タケルがシュウを軽く睨みながら言った。
「腹の中がチーズで溢れてる……!」
「あんだけピザ食えば気持ち悪いに決まってんだろ」
「ほんと、バカね」
「だ、大丈夫、シュウ君?」
 皆がシュウに呆れる中、彩音だけは心配してくれた。
「あ、あぁ、なんとか……うっぷ!」
「吐くなよ」
 ヒロトが冷たく言った。
「シュウ君、トイレに行った方がいいんじゃない……?」
「い、いや……もうすぐ大会が始まるんだ……見逃すわけには……!」
 シュウは気合いを入れて胃からせり上がってくるものを抑えながら会場に視線を向けた。
 
 会場のステージにビーダマスタージンが出てくる。
『さぁ、長らく続いた世界選手権大陸予選!一週間後に開催される敗者復活の南極予選を除いたら、これが最後の戦いだ!
ヨーロッパ大陸予選の決勝!世界へ羽ばたくビーダー達を、一瞬たりとも見逃すんじゃないぞ!!』
 ワーーーー!と歓声。
『会場の盛り上がりは抜群だ!それでは、勝ち上がった四人を紹介するぜ!
まずは、Aブロック!陽気なバトルスタイルはお国柄か?イタリア代表!ロマーノ・ルナトーレ君!』
 
 ステージモニターにロマーノの顔が映し出される。
 金色の短髪で、ソバカスがチャームポイントな明るそうな少年だ。
『対するは、凶悪な連射で他を圧倒!手数なら今大会ナンバーワンか!?ノルウェー代表、ベルセルク君!!』
 
 ステージモニターにベルセルクが映された。
「ベルセルク!?」
「あいつ、参加していたのか……!」
 シュウとタケルが驚愕した。
「あ、あんな常識知らずな奴に、大会に参加するってノウハウがあったのね……」
 琴音は妙な事に感心した。
「ベルセルク……あいつ、どこかで見た事があるな」
 ヒロトが呟く。
「ベルセルクは、本名トール・グリーグ。昔お兄ちゃんと世界選手権決勝で戦ったビーダーよ」
 彩音がヒロトに説明した。
「なるほど。あいつか……だが、容貌がかなり変わっているな」
 若干面影は残っているものの、ヒロトの記憶にあるトールとはかなり見た目が変わっている。
 あれから数年経っているわけだから成長しているのは当然だが、それだけでは説明がつかないほどの変貌だった。
「彼は、お兄ちゃんが死んだ事で変わってしまった。お兄ちゃんにリベンジするために、ずっとお兄ちゃんの影を追っているの……。
きっと、この大会もそのために参加したんだ……!」
 大会に参加するためには受付手続きが必要だ。
 今まで見てきたベルセルクの行動を見る限り、それが出来るような人間には思えないのだが……。
「目的達成のためなら、凶暴さを抑える冷静さも持ち合わせているって事か」
 タケルが感心するように呟いた。
 確かに、ゆうじの影を追いかけてノルウェーから日本に来たり、シュウを襲った後にちゃっかりノルウェーに帰国していたので、公共の交通機関を使う程度の社会性は保っているようだ。
「多分。彼が凶暴になるのはお兄ちゃんが関わっている時……シュウ君を目にした時だけだと思う。それ以外は普通に生活出来てるんじゃないかな……?」
 彩音がチラッとシュウを見た。
「……」
 シュウは顔を顰めながら唇を噛んでいた。
「なるほど、似ていなくはないか」
 その反応を見て、ヒロトはシュウとゆうじが似ているという事を察した。
「だが、倒すべき相手を見つけるためなら鬼にもなり、それを達成するために自ら生み出した鬼すらも抑える。狂気も冷静さも全て目的のために持ち合わせる、か。嫌いじゃないな、そういうのは」
 ヒロトは面白そうに口元を緩ませた。
 仲良しファイトクラブが話している間にもビーダマスタージンは紹介を続ける。
『さぁ、続いてはBブロックだ!脅威のダブルバースト連射が冴える!ギリシャ代表のアラストール君!!』
 
 ステージモニターにアラストールの姿が映し出された。
「アラストール……!あいつ、参加してたのか!」
「初めて手にしたバスターブレイグをある程度使いこなせるほどの実力者だ。ここまで勝ち上がっても不思議じゃないな」
 タケルの言うとおり、アラストールは盗人戸言うだけでビーダーとしての実力は高い。
「あいつ、また誰かのビーダマン盗んでるんじゃないだろうなぁ……」
 シュウは疑いの眼差しをアラストールに向けた。
 
『そして最後は、皆お待ちかね!前年度の優勝者!ドイツ代表のヒンメル・フリューゲル君だ!!『無傷の大天使』の異名の如く、今大会もダメージゼロで圧倒的な力で勝ち進んで来た!優勝候補ナンバーワンだ!!』
 
 ステージモニターにヒンメルが映し出された。
 
「ヒンメルキター!!けど、無傷って言ってもこの俺が一回ダメージ与えた事あるんだけどな!」
 ヒンメルの登場でシュウのテンションが一気に上がる。
「結局、あのバトルは無効試合で、ダメージもなかった事になってるけどな」
「くっそぉ!でも、フェイタルストームを完璧にマスターして、ビクトリーブレイグも手にした俺ならいつだってヒンメルのボムに傷をつけてやれるぜ!むしろ、今度こそ俺の勝ちだ!!」
 興奮のあまり、シュウは立ち上がって拳を振り上げた。
「はいはい、分かったから座りなさい」
 周りに迷惑なので、琴音が諌めた。
 
『以上の四名が、今大会を戦い、世界へと羽ばたく可能性のあるビー玉戦士だ!
そして、戦いの舞台は古代のローマで戦士たちが激しい戦いを繰り広げたこの場所!ローマのコロッセオだ!!
古代のチャリオットに負けない熱きバトルを見せてくれよぉぉ!!』
 再び歓声が沸き上がる。
 
『それでは、そろそろAブロックの試合を始めよう!選手の二人は、バトルフィールドへ来てくれ!!』
 ロマーノとベルセルクが戦場へ足を踏み入れた。
「はぁ~あ、僕の相手はまた男か。出来れば女の子と遊びたかったなぁ」
 ロマーノは見た目同様かなり軟派な男だ。
「キャーーー!」
「ロマーノ、頑張ってぇ~!!」
 客席では、複数の女の子が大弾幕を掲げてロマーノへ黄色い声援を送っている。
「まっ、このバトルで女の子に僕のカッコよさを見せ付けちゃうんだけどね!」
 客席でロマーノを応援している女の子達へ、キラッと白い歯を見せ付けた。
「へい、セニョリータ!僕の戦い、ちゃんと見ててよねぇ~!」
 女の子達へ手を振る。
 
「なんか軽い奴だなぁ、あいつ」
 その様子を見ていたシュウがぼやいた。
「凄い人気だね」
 彩音は苦笑した。
「あんなののどこがいいんだろ?」
 ロマーノへ声援を送る女の子を少し軽蔑気味に見る琴音。
「だが、ここまで勝ち抜いてきた猛者である事に代わりは無い。どんな戦いをするのか……」
 ヒロトはあくまでビーダーとしてロマーノを見ている。
 全試合を見られれば、ロマーノの戦いも見られたのだが……。
「平日は学校があるから、週末の決勝戦しか見に来られないのはちょっとネックですね」
 タケルは苦笑しながら言った。
 学校さえなければ各大陸予選を予選ヒートから全部観戦したい所なのだが、学生には無理なスケジュールだ。
「さぁ、がんばっちゃうぞぉ!」
 女の子の応援を受けて、ロマーノはやる気満々だ。
 それに対してベルセルクは無表情、無感情な表情でロマーノを見ている。
 対戦相手にも、このバトルにも、興味が無いと言う顔だ。
「ちぇ、でも相手があんな冴えない奴じゃなぁ。まっ、僕の引き立て役としてはピッタリか」
 
『そんじゃ、ルールの説明だ!今回のバトルは加算式のシャドウヒットバトル!制限時間10分内に多く相手のシャドウボムに攻撃をヒットさせた方の勝ちだ!』
 ビーダマスタージンの説明を聞いてシュウが反応する。
「あ、それって、俺とタケルが戦ったジャパンビーダマンカップ決勝のルールか!?」
「いや、あの時は威力でダメージが変わるアルティメットシャドウヒットバトルだった。今回のはあくまでヒットした回数が加算される。連射型が若干有利か……?」
「となると、クレイジーバイパーは有利ね」
「いくら連射力があっても、パワーが無ければ射程距離が短くなる上に、迎撃されれば撃ち落とされる。あくまで必要なのは総合力だ」
 
『ルール説明は以上だ!もう準備はOKだよな?そろそろおっぱじめるぞ!』
 ロマーノとベルセルクがビーダマンを構えた。
『レディ、ビー・ファイトォ!!』
 
 ダッ!二人が同時に駆け出す。
 コロッセオは広いものの、障害物が特に無いので見晴らしが良い。
 
「このくらいで届くかな」
 先に足を止めたのはロマーノの方だ。
「さぁ踊れ!ソルダートフレッチャ!」
 ソルダートフレッチャと呼ばれたビーダマンからパワーショットが放たれた。
 持ち方に特徴があり、拳を握る事で発射している。
 
 そのビーダマンを見て驚く仲良しファイトクラブ。
「なんだぁ、あのビーダマン……!」
「片手持ちだが、ヒロトさんや琴音とも違う持ち方だ」
「トリガーに秘密があるみたいね……。マジックハンドと同じ機構で、拳を握る事で発射するみたい。そのおかげで取り回しが良いんだわ」
「面白いギミックだな」
 
 ドンッ!ドンッ!!
 ロマーノは陽気に踊りながらも正確にベルセルクのボムへショットを放っている。
『これは愉快だ!ロマーノ君は軽快な動きで正確にショットを繰り出す!一方のベルセルク君はまだ射程圏内ではないのか、ロマーノ君へ向かって足を止めない!!』
 
「近づきながら僕の攻撃が避けられると思うのかい?」
「……」
 しかし、ベルセルクは最少の動きで向かってくるビー玉を全て躱しつつ距離を詰めている。
『これは凄い!見事なフットワークでロマーノ君の攻撃を躱している!!』
「なにっ!?」
 そしてついにベルセルクの動きがとまった。
『ベルセルク君が足を止めた!ついに射程圏内に到達したのか!』
「くっ!」
 ロマーノがその場を離れつつショットを放つが、ベルセルクはそれを躱しながら距離を詰める。
「遅い」
 ズババババババ!!!
 ベルセルクは凄まじい勢いで連射を放った。
 無数のビー玉がロマーノへ襲い掛かる。
「くそっ!」
 防御しようとするものの、手数の多さにどうしようもない。
 
 ガンガンガン!!!
 撃ち落とし損ねた玉が、どんどんシャドウボムにヒットしていく。
『多段ヒット!!ベルセルク君は一気に12発ものショットを命中させた!!』
 
「く、そぉ!!」
 ドギュンッ!!!
 ロマーノは起死回生のパワーショットでベルセルクのボムを狙い撃った。
 パワーショットは向かってくるベルセルクの連射をものともせずに突進し、ボムにヒットする。
『ロマーノ君も負けじとパワーショットを当ててきた!しかし、このルールではいかに強いショットを当ててもポイントは1だ!!』
「くっ!」
 これで、12VS1。かなり差を広げられてしまった。
『さぁ、早くも大きな差が付けられてしまったが、バトルはまだ序盤!何が起こるか分からないぞ!!』
 追い詰められたロマーノを見て、女の子達もシンとしている。
「ふ、ふふ……ちょっとカッコ悪い所を見せちゃったかな」
 動揺しつつも、周りの視線を気にしてロマーノは必死に平静を保とうとする。
「全く、やってくれるよ……」
 表面上は平静だが、ベルセルクを見る目つきは鋭い。
「まぁでも、少しはやられておかないと、バトルが盛り上がらないからね」
 ブツブツと独り言を言う。
「そうさ。君はあくまで引き立て役。これも、逆転して僕をカッコよく見せるための演出。そうさ……」
 そして、ターン、ターン、とステップを踏み始めた。
「だけど、ちょっとやりすぎたみたいだね」
 ターン、ターンッ!ステップは徐々に大きくなる。
「この報いはしっかり受けてもらうよ」
 
『おおっと?ロマーノ君の動きが変化した!まるでダンサーのようにリズムよくステップを踏んでいるようだが……?』
 
「まだ誰にも見せた事が無い僕の必殺技……特別に君に味わわせてあげるよ!」
 バッ!
 ロマーノは反復横跳びの如く、大きく何度も真横に飛びまくりながらベルセルクのボムへ向かって連射を放った。
「踊るぞ!エレガンテダンツァー!!」
 激しく動いているにも関わらず、そのショットは全て一点に集中している。
 これならさすがのベルセルクも全て防ぎきる事は出来ない。
 しかもロマーノ自身が激しく動いているので、攻撃も当たらない。
「はぁぁぁぁぁ!!!!」
 ガガガガガ!!!
 いくつものショットがベルセルクのボムに命中していく。
『ロマーノ君の逆襲!必殺のエレガンテダンツァーで次々とヒットさせていく!!』
 
「うおおおおおおお!!!!」
 成す術もなく、ベルセルクは攻撃を受け続ける。
『ついに逆転!!ロマーノ君のヒット数がベルセルク君を上回った!そしてなおも攻撃は続く続く!!』
 
 客席で見ている仲良しファイトクラブ達。
「すっげぇ、あんな技があったなんて!」
「さすがのベルセルクも対処しきれてないみたいだな」
「あのベルセルクをここまで追い詰めるなんて、すげぇぜ!!」
 ロマーノの必殺技にシュウは興奮する。
「確かに、大した技だ。俺のジャンブルワルツに通ずるものがある。だが、これで勝負は決まったな」
 ヒロトが悟ったように言う。
「だな!あんなすげぇ技の前にはベルセルクも……」
「バカ、逆だ」
「へっ?」
「試合終了までまだ長い。このタイミングであんな激しい技を撃ち続けて、体力が持つわけがない。
このバトルが減点方式だったらよかったんだろうが、ルール上いくら攻撃を加えた所で試合は終わらない。
体力が尽きるまでに、最後まで逃げ切れるほどのリードを稼げれば良いが、相手はそこまで甘くないだろうからな」
 ヒロトの指摘通り、ロマーノの動きがどんどん鈍ってきた。
「はぁ、はぁ……くっ、まだ終わらないのか……!」
 必殺技を続行しながら、ロマーノは時計を見た。
 試合終了まで、あと4分。だが、そろそろ体力の限界だ。もう技の続行は不可能だ。
「ちっ、頭に血が昇って、技使うタイミングをミスったか!」
 ロマーノは足を止めた。
『ここで、ロマーノ君の怒涛の攻撃が終わった!しかし、この得点差は大きい!ベルセルク君が12点から変動してないのに対して、ロマーノ君は45点も稼いでいる!このリードを守りきれるか!?』
 
「もう技は使えないけど、33点の差は大きいよな?え、ベルセルクさんよ!」
 息切れしながらベルセルクを見るロマーノ。
「……」
 そして、ベルセルクが静かに動いた。
 ズババババババ!!!!
 怒涛の連射でロマーノを攻撃する。
「はぁ、はぁ!」
 体力の消耗で素早く動けない。
 それでも必死に迎撃して連射を防ぐ。
 
『今度はベルセルク君のターンだ!徐々に徐々に点差を縮めていく!しかし、残り時間はあと2分!このペースでは逆転は難しいか?!』
 
「大丈夫だ……逃げ切れる……!確実に防いでいけば……!」
 女の子達も必死でロマーノを応援している。
「あの子たちのためにも、負けるわけには……!」
 ベルセルクは無表情で連射を続けている。
 そして、ふと客席を見上げた。
「っ!」
 そこに、シュウの姿を見つけた。
 その瞬間、ベルセルクの口元が吊り上った。
「ゆう……じ……!」
 ギンッ!!
 今までの無表情が嘘のように、鋭い目でロマーノを睨み付けた。
「っ!」
 ロマーノはそれに臆する。
 しかし、ベルセルクはそれに構わず、指を素早く動かした。
 ズババババババ!!
 先ほどとは比べ物にならないほどの連射がロマーノへ襲い掛かった。
『のおっと!ベルセルク君のペースが激増!!凄まじい連射がロマーノ君へ襲い掛かる!!』
「な、そんな!まだこんな力を……!」
 ババババ!!!
 ショットを防ぎきれず、どんどん攻撃がヒットしていく。
『ここでついに逆転!!ベルセルク君がロマーノ君の得点を上回った!!』
 
 だが、ベルセルクの攻撃はなおも続く。
「う、うわあああああ!!!」
『ベルセルク君の攻撃は止まらない!安全圏内まで差を広げたと言うのに、試合終了までこの容赦ない攻撃を続けると言うのか!?』
 
 ベルセルクの異常な攻撃性に、会場がざわめきだした。
「なんだ、あいつ、ちょっと激しすぎないか?」
「そこまで、やんなくてもいいのになぁ」
 
 ズババババババ!
「う、うわぁぁぁぁ!!!!」
 ロマーノは、あまりの恐怖に恥も外聞もなくへたり込み、よつんばになりながらその場から後ずさる。
「うがあああああ!!!!」
 バババババ!!!
 
 ビーーーーー!とサイレンが鳴る。
『ここで試合終了!!勝者は、圧倒的な差でベルセルク君だぁぁ!ロマーノ君の華麗な動きも凄かったが、それを連射力だけで圧倒してしまった!!だが、どちらも良いバトルを見せてもらったぞぉ……って、あれ?』
 
 ズバババババ!!!
『お、おーーい、もう試合、終わったんだけど……』
 ズババババババ!!!!
『べ、ベルセルクくーん!もう撃たなくていいんだよ~』
 ズババババババ!!!!
 
 ビーダマスターの呼びかけも聞こえていないのか、ベルセルクはビー玉を撃つ手を止めない。
『ど、どうした事か!?バトルは終了したと言うのに、ベルセルク君は攻撃の手を緩めない!緊急事態発生だ!オフィシャル警備!事態の収拾を!!』
「うがあああああああ!!!!ゆうじいいいいいい!!!!!!」
 
 その叫び声にシュウが反応した。
「っ!」
「あいつ、また……!」
「なんで、対戦相手はシュウじゃないのに!?」
「目に入ったんだ……客席にいるシュウの姿が……それで!」
「くそっ!」
 シュウは立ち上がって駆け出した。
「シュウ!!」
 
 フィールドでは、ベルセルクの攻撃を受けながら、ロマーノは座り込んで両手で頭を庇っている。
「ひぃぃぃ!!もうやめて!僕の負け!僕の負けだからぁぁぁ!!!」
 情けなく泣き叫んでいるロマーノを無視し、ベルセルクは連射を続ける。
「やめろぉぉ!!!」
 そこへ割り込んだのは、シュウだった。
 ベルセルクはゆっくりとシュウの方へ振り向く。
「ゆう、じ……!」
 ニタリと笑って、銃口をシュウへと向けた。
「くっ!」
 たじろぎながらも、シュウはビクトリーブレイグを構えた。
「はぁぁぁぁ!!!」
 ズバババババ!!!
 怒涛の連射がシュウへと襲い掛かる。
 かつて、ストライクブレイグを破壊したあの連射が……。
「もうあの頃の俺じゃないぜ!壊せるもんなら壊してみろぉぉ!!!」
 シュウはパワーショットでそれらを撃ち落としていく。
 力は互角だ。
 だが、互いにターゲットの無い状態なので、ビー玉を撃ち落としあうだけで膠着状態が続く。
 
「うおおおおお!!!」
「うがああああ!!!」
 激しい撃ち合いが続く。
 
「よし、今だ!麻酔弾を!!」
 ドシュッ!!
 正義が、横から麻酔弾を発射してベルセルクに命中した。
「ぐ……!」
 それを受けたベルセルクは力尽きて眠ってしまった。
「ふぅ……救護班。彼を医務室へ」
 正義の指示で担架を持った男がベルセルクを運ぶ。
 
「ありがとう、シュウ君。君のおかげで事態が収拾出来た」
「あ、あぁ。いや、半分、俺のせいでもあるし……」
 シュウの言葉に、正義は首をかしげた。
「なんでもない。それより、正義ってこの大会でも仕事やってんだな」
「まぁね。警備部門はどこも人手不足だから……」
「へぇ、大変だな」
「……そうでもないよ。好きでやってることだから。あ、じゃあ後処理があるからこれで」
「おう!」
 正義は片手を上げて去って行った。
 シュウも、いつまでもその場にいても仕方ないので客席に戻った。
 
(ベルセルク……あいつも本戦に出るのか……)
 シュウは、ベルセルクが勝ち上がった事に若干の恐怖を覚えていた。 
 
 
 
 
 
        つづく
 
 次回予告
 
「波乱のスタートだった、ヨーロッパ予選決勝だけど、次はいよいよヒンメルの試合だ!
対するアラストールは、並々ならぬ気迫でヒンメルに立ち向かっている!?一体、お前とヒンメルに何があったってんだよ!
 
 次回!『復讐鬼アラストール 憎しみのバトル』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 

 



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