オリジナルビーダマン物語 第78話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第78話「ビーダピラミッドを攻略せよ!」




 ここはエジプトのサハラ砂漠。
 仲良しファイトクラブはガイドさんの案内でラクダに乗って移動していた。
「あぢぃ……もう秋だってのに、さすがはサハラ……!」
 長袖長ズボンのシュウが汗だくでラクダの上でグッタリしている。
「ってか、こんな暑いのに、なんで冬服みたいな格好しなきゃいけないんだよ~!」
「逆だ逆。露出多い方が直射日光当たるから暑いんだよ」
「そう言うもんかねぇ……」
 そんな会話をしながら、ラクダは進んでいく。
 そして……。
「へい、見えてきたぜ」
 ガイドのおじさんが前方を指さす。
 そこには、四角錐型の建造物が見えてきた。
「あれが、ビーダピラミッドか!」
 それは、本物よりもやや小型で比較的新しく出来たようなピラミッド型の建物だった。
 入り口と思われる門の横には小さなスフィンクス像がある。
「それじゃ、俺はここで。毎度あり!」
 ラクダの運転手(?)はタケルから代金を貰うと、颯爽とUターンして戻って行った。
「これがネットで見つけた難攻不落の迷宮……ビーダピラミッド!」
「まだ誰も攻略してないんだよね」
「せっかくエジプトに来たんだから、こいつを攻略していかないとな!」
 シュウ達は、次のアフリカ予選が行われる地、エジプトについて調べたのだが。
 そこで、最近新しく建てられた『ビーダピラミッド』と言うビーダマン用の迷宮型アトラクションの情報を得た。
 ピラミッド型のアトラクションをビーダマンを使って攻略していくと言うアトラクションなのだが、かなりの難易度らしく未だ誰も攻略できていないらしい。
 せっかくなので、決勝を見る前にシュウ達は修行としてビーダピラミッドを攻略してみる事にしたのだ。
 
「攻略情報によれば、内部は全部で七層に分かれているらしい。
そこで、ビーダーとしての知恵、技術、身体、勇気が試されるみたいだな。
最大五人一組で挑戦出来るらしい」
「皆で力を合せて頑張ろうぜ!」
「ふん、こんなもの俺一人で十分だがな」
「まぁまぁヒロ兄。せっかくのアトラクションなんだし、皆で楽しもうよ!」
 琴音がヒロトを宥める。
「協力性だが、一人一人にポイントが加算されるらしい。そのポイントでチーム内で競えるみたいだな」
「へぇ!皆で協力して攻略するのも大事だけど、そのチームの中で一番を目指す事も出来るのか!」
「ほぅ、それは面白い。協力しながら競えるのか」
 ただの仲良しこよしではないと知って、ヒロトがヤル気を出した。
「そうだ。せっかくだからお姉ちゃんもやろうよ!あたしの貸すから!」
「え、えぇ!?」
 琴音はゼンダグラップラーを取り出して彩音に差し出した。
「おっ、あやねぇもやるのか!」
「い、いや、私は……」
「いいじゃない!お姉ちゃんいっつも見てるだけなんだし」
「遊びみたいなものだし、メカニックとしてもいい経験になるんじゃないか?」
 渋っていた彩音だが、皆に言われて仕方なくゼンダグラップラーを受け取った。
「う~、でも役に立つかどうかは期待しないでね」
 彩音はゼンダグラップラーを手に取りながら、困ったような表情で言った。
「おっしゃ、今回はあやねぇもライバルだ!早速行こうぜ!!」
 シュウ達は早速ビーダピラミッドの受付ゲートへ足を運んだ。
「参加者の方はこのシャドウボムを付けてください。2回ヒットしたらそこでリタイヤとなります。
それから、このスピーカーも耳に取り付けてくださいね。それでは、ご健闘を祈ります」
 受付嬢からシャドウボムを渡され、シュウ達はピラミッドの門の前まで来た。
「さぁ、こっからが探検の始まりだぜ!」
「って、門しまってるじゃない。どうやって中に入るのよ?」
 ピラミッド内部に入るための扉は固く閉ざされている。
「何かのトラブルか?」
「これも仕掛けの一つかもしれないな。扉を開くために、ビーダマンで何かをしないといけないのかもしれない」
 ヒロトがそう言うと、辺りを見渡した。
 そして……。
「あれかっ!」
 隣に聳え立っているスフィンクスの首目掛けてショットを放った。
 ガキンッ!!
 ビー玉がヒットすると、ヒロトのシャドウボムにポイントが加算された。
「あっ、ヒロトのポイントが加算されてる!こうやってポイントを競うのか……」
「お前に呼び捨てされる筋合いはない」
「でもヒロトさん、どうしてスフィンクスの首に?」
「あそこまであからさまに立てられたオブジェに何も仕掛けが無いとは思えなかったからな。よく見たら一ヶ所だけ光を反射していた。ただそれだけの事だ」
 ヒロト自身、確証があったわけではないが、ただビー玉を撃つだけなら何も損は無い。
 このアトラクション、確証を得てから行動するよりも思いついたらなんでも試してみる方が良いようだ。
「とにかく、これで扉が開くね!」
 琴音がそう言うと、メンバー達はすぐにでも開くであろう扉の前で待った。
 が、扉は一向に動かない。
「あれ、何も起きないぞ?どうなってんだよヒロト!」
 シュウは何故かヒロトを責めた。
「俺が知るかっ!あと、呼び捨てにされる筋合いはない!」
「あのスフィンクスは、ただポイントが加算されるだけのブラフだったのか……?」
 タケルは扉とスフィンクスを交互に見たが、特に何も分からなかった。
 その時だった。
 ゴゴゴゴゴ……と重い石が動く音が聞こえたかと思ったら、スフィンクスの口がゆっくりと開いた。
『ようこそ、ビーダーの諸君。君たちはこれから死の迷宮ビーダピラミッドへと足を踏み入れる』
 スフィンクスの口から、しわがれた老人のような低い声が聞こえてきた。
「おわっ、スフィンクスが喋った!?」
「日本語に聞こえるのは、受付で渡されたスピーカーが翻訳機になってるからか」
 スフィンクスは話を続ける。
『君達が本当に力あるビーダーか、私がここで試してやろう。私の出すクイズに5分以内に正解出来なければ、ここで君たちは失格だ』
 
「い、いきなりスタートで失格の可能性があるのか!?」
「噂通りの厳しさだな……」
「お前達、少し黙ってろ!問題が始まるぞ!」
 イチイチ騒ぐシュウとタケルに、ヒロトが怒鳴った。
『頭から好物の飴玉を食べ、腹から出す者。これは何か?答えよ!』
 
 今のが問題だったようだ。
 それ以降、スフィンクスは口を噤んでいる。
「えぇ!頭から食べて、腹から出す?」
「そんな生き物なんて、いるかぁ?」
「う~ん、普通は口から食べて尻から出すよなぁ……」
「シュウ、汚い!」
 琴音が下ネタを注意する。
「しょうがないだろ!」
 
「クリオネは、頭が割れて、そこから口を出すけど……でも飴玉食べるわけじゃないし……」
 クリオネの食事はトラウマものだ。
「飴玉は、もしかしたら何かの比喩なのかもしれないな」
 ヒロトも思案するが、なかなか答えに辿り着けない。
「食べるっつったら、難波クウだよなぁ。あいつは、何でも食うとか言って、相手のビー玉を吸収してリロードする機能も食事に例えてたが……」
 タケルはクウとのバトルを思い出しながら呟いた。
 それを聞いて、彩音はハッとした。
「そっか、それよ!」
「え?」
「これはあくまで、ビーダーの試練!だったら、その問題の答えもビーダーに関係するもののはず!」
「あやねぇ、分かったのか!?」
「うん、答えはすっごく単純だったの」
 彩音はスフィンクスへ向かってこう答えた。
「答えは、『ビーダマン』よ!」
 その答えを聞いて、スフィンクスは口を動かした。
『正解だ!』
 ゴゴゴゴゴ……!と扉が開く。
「あ、開いた!」
『残り時間3分12秒。その分のポイントを、回答者に与えよう』
 彩音のシャドウボムにポイントが追加された。
『さぁ、先へ進むがいい!ビーダー達よ!!』
「やったぁ、すっげぇぜあやねぇ!」
「でも、どうしてビーダマンなの?」
 琴音が彩音に答えを聞いた。
「うん。飴玉はビー玉の比喩だったんだよ。だったら、後頭部からビー玉を入れて、お腹からビー玉を出すといったら、ビーダマンしかないでしょ?」
「あ、なるほど」
「なんだ。思ったより簡単だったんだな」
「なぞなぞの答えは当たり前のものが多いからな。難しく考えすぎると逆に分からなくなる」
「タケル君がヒントを出してくれたおかげだけどね」
 ポイントではヒロトよりも彩音の方が多い。
 ビーダーとしての実力ではないとはいえ、彩音にリードを取られてしまった。
「ちぇ、あやねぇに先越されちまったな。早く中入ろうぜ!」
 シュウは待ちきれないと行った感じに皆を中へ促した。
 
 中は薄暗いが、所々に淡い照明が設置されていて、なんとか視界は確保できている。
 入ってからすぐ、人間3人分の幅のターゲットも仕掛けもない狭い廊下が続いていた。
 しばらく進むと、開け放たれた空間に出た。
 
 しかし、すぐ目の前が崖になっており、向こう岸に行くにはまたも3人分の幅しかない柵の無い一本橋。
 1立方メートルくらいのブロックが繋がってできているようで、1mごとに切れ目がある。
 が、その橋を渡った先にある扉は閉ざされている。
「うわぁ、いきなり崖……」
「この橋を渡ればいいのか?」
「でも、その先にある扉は閉まっているよ」
「ここに説明書きがある。
 橋の横に掲示板があり、そこにルールが記されている。
『第2の間、【崩れ行くブロック橋】。人が乗ると10秒で落ちるブロックが並べられた橋を渡り、扉を潜り抜ければクリアとなる。
ただし、扉はビーダマンで攻撃し、一定以上のダメージを与えないと開かない』
 
 とある。
「ブロックに乗ると10秒で落ちるのか……」
「ここから扉まで、ブロックは20個……。渡りきる前に扉に一定以上のダメージを与えないといけないのか」
 
 よく見ると、扉の上には液晶で【500】と書かれている。
 アルティメットシャドウヒットバトルと同じHP制のようだ。
「とにかく、行くしかないぜ!」
 シュウが一個目のブロックに乗った。
「あ、待てよシュウ!」
 他の四人もブロックに乗る。そこからカウントがスタートする。
「10秒で今乗ったブロックは落ちる。それまでに次のブロックに移らないといけないな」
「ちょっと遠いけど、今のうちにこっからでも撃とうぜ!!」
 ドンッ!
 シュウが扉へ攻撃する。
 しかし、あまり大したダメージにならない。
「ここからじゃ遠すぎるな」
「だが、ブロックが落ちるまで10秒の猶予がある。時間いっぱいまで使った方が良い」
 ズドドドド!!
 ヒロトも連射で扉を攻撃していく。
 タケル、琴音、彩音も扉へショットを放って行った。
 ブロックが落ちる前に先のブロックに移り、再び扉へ攻撃。
 これを繰り返していき、いよいよ最後のブロックに移った。
 目の前の扉のHPはあと30。10秒以内にこれを削らなければならない。
「結構堅かったな、この扉!」
「だが、これだけ近ければダメージも通る!」
 至近距離からのタケルとシュウのパワーショットを受け、扉のHPはあっけなく0になった。
 
「おっしゃ!第二関門突破だ!」
 扉が開き、シュウ達はそこを通る。
 
 それぞれのシャドウボムには、扉に与えたダメージに応じた得点が加算された。
 
「次はどんな場所だ!?」
 この部屋は殺風景なスクエアだった。
 明るさは先ほどと同じだが、天井だけが異様に暗い。
 
「目の前の視界は良好だが、天井が見えないのが気になるな」
 ヒロトが天井を見上げながら呟いた。
「えっと、ここにも掲示板があるな」
『第3の間【闇より舞い降りる使者】天井から降ってくるターゲットを5分以内に1000体撃破すれば次の間へ進める。
ただし、ターゲットにシャドウボムを体当たりされれば1ダメージ』
 
「1000体って、相当な数よね……」
 琴音がうんざりしながら言う。
「単純計算で一人200か。一分もかからんな」
「ヒロトさんや琴音の連射力があれば可能でしょうけど……」
 タケルやシュウにはちとキツイ。
「でも、上から降ってくるってどういう事だ?しかもシャドウボムに体当たりしてくるって……」
 と、言っている間に、天井からバサバサと何かが羽ばたくような音が聞こえてきた。
「っ!上から来るぞ、気を付けろ!!」
 暗闇から、無数のコウモリが舞い降りてきた。
「キャッ!」
 一瞬怯む琴音と彩音。
「なんだあのコウモリは!?」
「とにかく撃ってみようぜ!」
 シュウがコウモリへショットを放った。
 命中したコウモリはヘナヘナと落下した。
 そして、シュウのシャドウボムに得点が加算される。
「あれがターゲットか!」
 ヒロトも素早く照準を合わせてコウモリを狙い撃った。
 バシュッ!!
 コウモリは威力に関係なく、一撃で撃破された。
「おっしゃ、倒したぜ!」
「まだだ。合計1000体か。連射型が有利だな。琴音、いつまで怯んでる!集中砲火を浴びせるぞ!」
 ヒロトが琴音に活を入れた。
「う、うん……!」
 ヒロトに言われたとあっては、いつまでも怯えていられない。
 琴音はヒロトと並んで銃口をコウモリへ向けた。
「ジャンブルワルツ!!」
 ズドドドドドド!!!!
 ヒロトは必殺の乱射で次々とコウモリを撃退していく。
「手数勝負なら、このストライクショットね」
 琴音は黒いストライクショットをビーダマンに入れた。
「分身ショット!!」
 分身弾を三連射。一発のショットで単純に二回分の攻撃が出来る。
 シュウとタケルと彩音も応戦した。
 
 そして、ものの一分足らずで全てのコウモリを倒してしまった。
「案外あっさりだったな」
「ほとんどヒロ兄のおかげだけどね……」
「一人で400匹は倒してましたね……」
「大したことは無い。お前達の連射が遅いだけだ」
 
 ちなみに、ヒロトが425匹。琴音が298匹。タケルが123匹。シュウが93匹。彩音は61匹撃破している。
 それぞれの得点も撃破数に合わせて加算されている。
 
 そして、シュウ達は上へ上がり次の間へと進んだ。
 辿り着いた部屋は、今までの部屋よりも吹き抜けており、空気が冷えていた。
 間取りは、第2の間のようにいきなり崖があり、中央に細い一本橋が掛けられていた。
 しかし、その橋はビー玉一個分ほどの幅しかなく、人間が渡るのはほぼ不可能だ。
「うわ、また崖!?」
「しかも今回の橋は、人間が渡るのは無理そうだな……」
「あ、見て!橋の向こうにボタンみたいなものがある」
 彩音が橋の先を指さした。
 そこには、丸くて赤いボタンのようなものが設置されている。
「あれを狙えばいいのか……?とりあえず、ルール説明を見てみるか」
 タケルは、傍にあった掲示板の文字を読んでみる事にした。
『第4の間【風の縫い目】。ビーダマンで目の前にある一本橋にビー玉を通し、奥のボタンを押せば道が開かれる。
ただし、持ち玉は1人2発まで』
 
「コントロールが必要な競技か」
「だったらあたしね」
 琴音はサンダーグルムを変形させてコントロールモードにした。
 そして、一本橋の先にあるボタンを目掛けて構える。
「いっけぇ!」
 ドンッ!!
 狙いを定めてショットを放つ。
 放たれたビー玉は、真っ直ぐに橋の上を転がっていった。
「よし、いける!」
「今回は楽勝だな!」
 その時だった。
 ビュウウウウウウウウ!!!
 突如、突風が吹き、それに煽られて琴音のビー玉の軌道が変わった。
「あぁ!」
 風に流されるままにビー玉は奈落へと落ちてしまった。
「か、風が!」
「この風の中を狙えってのかよ……!」
「も、もう一回!」」
 琴音はもう一回チャレンジするものの、失敗してしまった。
「そんな……。あたしのショットじゃ勢いが弱すぎて風に流されちゃう……」 
 肩を落とす琴音に代わって、タケルが前に出た。
「次は俺だ。パワードライブショットなら、この風の中でも突っ切れる!」
 タケルが構えて、狙いを定めた。
 ドンッ!!
 ドライブショットが橋の上を走る。
 風を受けてもビクともしないタケルのショットだったが、そもそも狙いが僅かに逸れており、橋を渡る事は出来たものの、ボタンから外れてしまった。
「くそっ!このコントロール競技はかなり難易度が高いぞ……!」
 タケルも二回ミスってしまった。
 あと残っているのは、コントロールが苦手なシュウとヒロト……。
「ちょっと、私に任せて」
 いや、あともう一人。彩音がいた。
 彩音はペロッと自分の人差し指を舐めて、風が当たるように立てた。
「ターゲットまでの距離、風向きと風速、私のショットの威力……それらを計算すれば……」
 頭の中で瞬時に分析し、狙いを定めた。
「うっ!」
 ドンッ!!
 発射時のリコイルに負け、僅かに発射口がズレてしまった。
 発射されたビー玉は橋を外れて奈落へと落ちていく。
「あぁ!」
「狙いは完璧だったのに……!」
 彩音の分析ですら攻略できなかったことに、一同落胆した。
「ベストな狙いは分かるのに、私のテクニックじゃ……」
 その時、スッと彩音の肩に誰かが手を置いた。
「え、……ヒロト君?」
「反動くらいは俺が抑えてやる。お前は狙う事だけを考えろ」
 狙いは完璧なら、あとは反動を無くせばいい。
 ヒロトは彩音の身体を抑える事で、ブレを無くそうと考えたのだ。
「そっか!考えたな、ヒロト!よーし、俺も!」
 シュウもヒロトに習って反対側の肩を抑えた。
「シュウ君……」
「お前に呼び捨てにされる筋合いはない」
「へへっ、二人掛かりなら確実だろ!」
 シュウはニカッと笑った。
「あ、だったらあたし達も!いこう、タケル!」
「おう!」
 琴音とタケルも彩音の背中を支えた。
「これで完璧でしょ!」
「もう後がないからな。頼みますよ、彩音さん!」
「皆……!」
 皆に支えられる安心感に包まれながら、彩音はターゲットに集中した。
(絶対に、外せない!)
 先ほど行った計算に則って、彩音はショットを放った。
 ドンッ!!
 再び体中に襲いくる反動。
 しかし、それを皆が支えてくれたおかげで、発射口からは寸分狂わぬショットが発射された。
 そのショットは、風向きによって軌道を変えられながらも、吸い込まれるように橋の向こうのボタンへと向かっていく。、
 バゴンッ!!
 見事にボタンにヒットした。
 すると、ゴゴゴゴゴ!と言う地響きとともに、崖の下から地面がせり上がってきた。
 これによって向こう側に渡る事が出来る。
「おっしゃぁ、やったぜ!!」
「ふぅ、ここで終わるかと思った……彩音さんが参加してくれたよかったな」
「俺じゃ、絶対無理だったもんなぁ」
「さっすがお姉ちゃん!」
 シュウ達が次々に彩音を賞賛する。
「そんな事ないよ。皆のおかげだよ」
 彩音は少し照れつつ謙遜した。
「……」
 そんな中、ヒロトは彩音を抑えていた手を眺めながら物思いに耽っていた。
(今の関門、俺では絶対にクリア出来なかった。突破できたのは、彩音の分析力の賜物だ……。
だが、その彩音も俺が手を貸さなければクリア出来なかった……。
サッカーの時はチーム戦が前提だった。カルロスは俺にとって鬱憤を晴らすために利用したに過ぎない。
しかし今回は、互いにポイントを競う個人戦の要素も含んでいる。さっき手を貸した事で彩音に多くの得点が入った。
それでも、俺に後悔はない。そうか、こう言う事か……!)
 
 ヒロトは密かに口元を緩ませた。
「何やってんだ、ヒロト?さっさと行こうぜ!」
「考え事でもしてるの、ヒロ兄?」
 既に次のセクションへ進む気満々のシュウ達がヒロトを急かす。
「……いや。何でもない。それと、お前に呼び捨てされる筋合いはない」
「分かった分かった!」
 適当に返事をするシュウに対して、フンと鼻を鳴らしつつもヒロトはゆっくりと足を進めた。
 
(俺も、手に入れつつあるようだ……)
 
 他人を利用するのでも、貸しを作るのでも、蹴落とすのでもなく。
 『仲間と協力する』
 その事に、ヒロトは確かな手応えを感じていた。

     つづく
 
 次回予告

「さぁ、ビーダピラミッドもいよいよ終盤戦だ!最後の難関は、ピラミッドキングと呼ばれるビーダーと戦って倒す事だった!!
って、なんだぁあの動きは!これが、噂のピラミッドパワー!?
 
 次回!『神秘のピラミッドパワー!』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
 

 

 



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