オリジナルビーダマン物語 第74話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第74話「決着!アジア予選」




『アジア予選ブロック決勝!シュウ君とタクマ君のドラゴン対決はますます激しさを増しているぞ!!』
「うおおおおお!!!!」
「はぁぁぁあぁぁ!!!!」
 
 ズバババババ!!
 試合開始時と同様に二人の間でビー玉が激しく飛び散っている。
『バトルは再び膠着状態!互角の撃ち合いで、スタミナ勝負だ!先にバテた方が攻撃を受けてしまうぞ!!』
 
(くそ、悔しいけどスタミナは向こうの方が上だ。なんとかしねぇと……!)
 シュウは、ブレイグにやや濃い色の玉を込めた。
「いっけぇぇ!!!」
 ドンッ!!
 そのショットは今までのショットよりも格段に速い。
「なにっ!」
 ショットのスピードに反応しきれず、タクマのボムは撃ちぬかれてしまった。
 バーーーーン!
『ヒット!素早いショットだったが、ダメージは小さい!タクマ君のHPは残り75!!』
 
「っ!」
「ストライクショット、インパクト弾!スピード弾とビー玉の中間の重量があるスピード型のストライクショットだぜ!」
 スピードの違う玉を撃つ事で、迎撃されないようにしたのだ。
 そして、その隙にシュウは素早くタクマの横へ回り込んだ。
「なにっ!」
「うおおおおおお!!!」
 ドンッ!!
 横っ腹を撃ちぬくべく、シュウはパワーショットを放った。
「っ!」
 タクマはそのショットに素早く対応して動いたが、肝心のシャドウボムが動かない。
「シャドウボムは、一撃喰らったら一瞬動きが鈍るんだ!」
 いくらビーダーが動けても、ボムが動けないんじゃ意味がない。
 なすすべなく、シュウのパワーショットがまともにヒットする。
 バーーーーーン!!!!
『再びヒット!これでHPはシュウ君が逆転!タクマ君の残りHPは62だ!!』
 
 応援している仲良しファイトクラブ面々。
「よし、いいぞシュウ!」
「さすがです、シュウ先輩!!」
「でも、深追いは危険かも。ビクトリーブレイグのショットは負担が大きすぎるから……」
「確かに、だがここで攻めなければ攻め時がない!シュウ!怯まずいけぇ!!」
 
 タケルの声援を受けたからか、シュウの攻撃は続く。
「まだまだいくぜぇ!!」
 シュウは攻撃の手を緩めようとはしない。
 連続でヒットさせ続ければ、相手は躱す事は出来ない。
「ならば、受け切るまで!」
「何!?」
 タクマはギュッ!と踏ん張り、脚を止めた。
 ババーーーン!!
 シュウの攻撃がヒットしていく。
 
『タクマ君の動きが止まったぁ!!ここぞとばかりにシュウ君のショットが次々とヒットしていく!!』
 
 ビクトリーブレイグのパワーショットをいくつも受けてしまい、タクマのHPは37まで下がってしまった。
「このまま決めるぜ!!」
 トドメを指そうと、シュウは更に力を込める。
 しかし。
「ぐっ!」
 シュウは顔を顰め、腕が止まった。
「調子に乗りすぎたようだな」
「くっ!」
 ビクトリーブレイグのパワーショットを乱射しすぎたために、腕に相当な負担がかかってしまったようだ。
「くそっ!」
「もう回復はさせん!!」
 今度はタクマのターンだ。
「はぁぁぁ!!」
 タクマが動きの止まったシュウへパワー連射を放つ。
 ズバババババーーーーーン!!
「うわああああ!!!」
 逃げる隙も与えず、どんどん攻撃をブチ込んでいく。
『タクマ君の激しい反撃!なすすべなくシュウ君のHPは削られていく!!』
「くそっ!」
 容赦ない攻撃で、シュウのHPは50を切ってしまった。
 ガクガクガク!!
 コンフターティスドライグのヘッドが激しく振動を始める。
「こ、この技は……!」
 シュバァァァ!!!
 ドライグのヘッドからエアロチューブが伸びて、シュウのボムに当たった。
「もう逃れられん。ドラゴニックブレス!!!」
 ズババババババ!!!
 ドライグのパワー連射がエアロチューブ内を通ってまっすぐシュウのボムにヒットしていく。
「うわああああ!!!!」
 
『必殺のドラゴニックブレス炸裂!!シュウ君のHPがどんどん削られていくぞ!!!』
 
 真空による空気抵抗軽減で威力アップ。
 さらにエアロチューブによる正確無比な攻撃を連続で受けてしまえば、50のHPなどあっという間になくなってしまう。
「こうなりゃ俺も!!」
 シュウは逃げずにタクマのボムへ銃口を向けた。
「無駄だ!貴様の腕は回復しきっていないはず!!」
「ぐっ!」
 ズキッ!
 力を入れると腕に鈍い痛みが走る。
「この、くらいっ!!」
 シュウはブレイグへメタル弾を挿入した。
「うおおおおお!メタルショット!!!」
 ドンッ!!!
 痛みをこらえ、シュウはメタル弾を撃った。
 スピードは遅いが、タクマは必殺技でボムを狙っているので躱す気はないようだ。
 
 バーーーン!!
『シュウ君!渾身のストライクショット!メタル弾によって一気にタクマ君のHPを削った!!』
 
「貴様……!」
「へへっ、このくらいの痛み!根性でどうにかなるぜ!!」
「根性か。だが、それももう終わり!」
「まだだああ!!!」
 そして、先ほどのショットによりブレイグのヘッドが振動し、風が吹く。
「貴様っ、その腕でエアリアルバイザーを発動する気か……!」
「こうでもしなきゃお前に勝てねぇからな!!お前の望み通り、こっからは智蔵の孫としてのショットをブチかましてやるぜ!!」
 一ビーダーとして自分を見てくれたお礼として、なのか。シュウは自分を智蔵の孫として戦う事を宣言した。
「ふっ、面白い!祖父様のエアリアルバイザーが勝るか、智蔵のエアリアルバイザーが勝るか!」
 タクマも、シュウの考えを察し、その挑戦を受けた。
「「これが、最後の勝負!!」」
 
「うおおおおおお!!!!!スーパーフェイタルストーーム!!」
 メタル弾を装填した、現時点のシュウの最大威力のショットが放たれた。
 
「はぁぁぁぁ!!!」
 タクマもドラゴニックブレイカーの連射速度を上げた。
『タクマ君のドラゴニックブレイカーに対抗してか、シュウ君も究極奥義、スーパーフェイタルストームを繰り出したぁ!!
連射で削っていくタクマ君に対し、このショット一撃でボムを破壊できなければシュウ君は負けてしまうぞ!?』
「絶対に負けねぇ!!!」
 ズバァァァ!!!
 空気の膜を纏ったメタル弾が真っ直ぐにタクマのボムへと向かっていく。
 ただでさえ重いメタル弾が、空気を纏う事によってその威圧感は凄まじい。
 
 そして、シュウのショットとタクマのショットが互いのボムに同時に着弾した瞬間。
 二つのボムは同時に爆発した。
 
 一方の日本。
 ヒロトが入院している病院では、ベッドに寝ているヒロトの隣に琴音が座っていた。
「ヒロ兄……」
 琴音が心配そうな目でヒロトの手を握っている。
「ん……」
 その時、ヒロトの顔が微かに動いた。
「っ!」
 アジアでの激闘を感じ取ったのか、一瞬だがヒロトは何かに反応したのだ。
「ヒロ兄……!」
 もうすぐ、ヒロトの目が覚める。そう感じた琴音は表情を綻ばせた。
 そして、アジア大会の方は……。
『決まったぁぁぁ!!ついにシャドウボムが撃破された!しかし、撃破されたボムは二つ!ほぼ同時だったように見えたが……!』
 
 ステージモニターに、爆破瞬間に映像がスローで映し出された。
 
『これは、完全に同時だ!!寸分のズレもない!!この勝負は、まさかまさかの引き分けだ!!』
「な、にぃ……!」
 痛む腕に顔を顰めながら、シュウは呻いた。
「……」
 一方のタクマは表情を変えない。
 
『だが、これは世界へと羽ばたくアジア予選!引き分けで終れるわけがない!よって、ここからサドンデスに突入だぁぁ!!!』
 ビーダマスターのアナウンスを受けて驚いたのは観戦していた仲良しファイトクラブの面々だ。
「えっ、えっ?引き分け!?シュウ先輩の勝ちじゃないんですかぁ?!」
「サドンデスだと……!まずいな、今のシュウに延長戦を戦える体力は残ってないぞ!?」
「シュウ君……!」
 
 シュウとタクマの元に新しいシャドウボムが渡された。
『さぁ、シャドウボムの用意が出来たぞ!
ルールは簡単!先に相手のシャドウボムに一撃でもビー玉を当てた方の勝利だ!!』
「決着をつけるぞ」
 チャキ……!とタクマがシュウへ銃口を向けた。
「くっ……!」
 シュウも痛みを堪えながらブレイグを構えた。
 
『サドンデスバトル!ビー・ファイトォ!!』
 
 ジンの合図とともに発射音が聞こえた。
 しかし、その音は一つだけだった。
「むっ!」
「くっ!」
 ガシャンッ……!
 シュウは、発射しようとした瞬間に腕の激痛に襲われ、ビクトリーブレイグを落としてしまった。
 そして、タクマのショットはそのままシュウのシャドウボムへ……!
 バーーーーン!!
 
『決着!!接戦になるかと思われたサドンデスは、あっさりと終わってしまった!!勝者はタクマ君だ!!』
 
 当然とも言える結果だが、落胆する仲良しファイトクラブ達。
「くっ、やはり無理だったか……!」
「シュウ先輩……!」
「あのタクマ君相手によく頑張ったけど」
「くそっ!二人とも予選落ちしちまうとは!!」
 悔しさに任せてタケルは地面に拳を撃ちつけた。
 
「はぁ……はぁ……」
 負けたシュウは、呆然とした表情で地に堕ちたブレイグを眺めている。
「終わった……負けた、のか……俺……」
 精彩の欠けた瞳でぼそぼそと呟く。
 
「……」
 そんなシュウのブレイグへ、タクマはゆっくりとドライグの銃口を向けた。
(バトルは我の勝ち。この公の場で、祖父様が智蔵に勝る事が完全に証明された。ここで奴のビーダマンを潰せば、我が悲願達成に大きく近づく……!)
 タクマはゴクリと生唾を呑んだ。
 その時だった。
 シュウがゆっくりと顔を上げた。
「強いな、タクマ」
 そう言ったシュウの表情は晴れ晴れとしていた。
「っ!」
 それを見たタクマの胸に得体のしれない衝撃が走った。
「……」
 説明のつかない心の衝動に身を任せ、タクマはゆっくりとドライグを下げて踵を返し、歩いて行った。
 シュウはその遠ざかる背中をどこかスッキリとした表情で眺めていた。
(我は勝った。そして、奴は負けた。ただそれだけの結果のはず。だが、我の心に何かが引っかかっている)
 タクマは自分の胸に手を当ててみた。
 そして、驚愕した。
(心が、燃えて、いるのか……?)
 いや、とタクマは頭を振った。
(少し焦りすぎていたようだ。ここで奴のビーダマンを破壊するのは得策ではない。今はこの大会を制圧する事に集中するのみ)
 今の段階でブレイグを破壊する事は不利益しかない。
 破壊をとどまったのは、作戦として正解だった。
 タクマはそう納得して、自分の中に湧き上がった感情を抑え込んだ。
 
 シュウは仲良しファイトクラブの待つ場所へ戻ってきた。
「ごめん、皆。負けちまった……」
 シュウはメンバーへ頭を下げた。
「ううん。シュウ君はよく頑張ったよ。サドンデスまで持ち込めたんだもん」
「そうですよ、シュウ先輩はかっこよかったです!」
 メンバーは口々に慰めの言葉をかける。
 しかし、シュウはそれを聞いてるのか聞いてないのか、口元を緩ませていた。
「へへ……」
「シュウ、お前あんま悔しそうじゃないな?」
 タケルはそれに気づいた。
「ん、いや。滅茶苦茶悔しいぜ。でもさ、なんかスッキリしたって言うか、すっげぇ楽しかったなぁって」
 その言葉を聴き、タケルは脱力した。
「あのなぁお前。これで世界大会への望みは消えて、しかも源氏派の奴に好き勝手されるかもしれないんだぞ。分かってんのか?」
「んな事分かってるよ!でももうどうしようもねぇだろ。次に向けて頑張るしかねぇよ。源氏派も、何かしてきたらまた戦えばいいんだ!」
 シュウの言う事は最もだ。
 負けてしまった以上、出来る事は次に向かう事だけ。
「まぁな」
 タケルもその事は十分に分かっているので、それ以上は追及しなかった。
 と、メンバーが世界大会敗退から気持ちを切り替えようとしていた所へ、ビーダマスタージンの声が聞こえてきた。
 
『白熱したアジア予選だったが、世界大会への出場を決めたのは劉洸君とタクマ君の二名だ!
だが、惜しくも敗れてしまったビーダー達もまだチャンスはあるぞぉ!!』
 その言葉を聞いて、メンバー達が顔をジンの方へ向けた。
「なんだ?」
 
『Aブロック2位の守野タケル君とBブロック2位の竜崎修司君!
そして、この後行われるブロック3位決定戦で勝利した3位のビーダーの計4人は、6週間後に開催される敗者復活戦、南極大陸予選への出場資格を得た!
この予選に通過すれば、南極大陸代表として世界選手権本戦へ出場できるぞぉ!!』
 
 その言葉を聞いて、メンバーの顔に光が戻った。
「は、敗者復活戦だってぇ!?」
「南極大陸って、やっぱりそういう事だったのね……」
「やったじゃないですか、シュウ先輩!これで本戦に出られますよ!」
「あぁ!タケルっ!絶対に予選突破して二人で本戦に出ようぜ!」
「ああ、当然だ!!」
 と、喜ぶ仲良しファイトクラブへ背後から声をかける者がいた。
「これで、あなたと再び戦えるわけですね」
 振り向くと、そこにはマハラジャがいた。
「マハラジャッ!」
「私はBブロックの準決勝で敗退しました。この後の3位決定戦で勝てば……」
「そっか、お前ともまたやれるんだよな!」
「えぇ、楽しみにしています」
「おう!絶対に勝ち上がってこいよ!」
「では、試合の準備がありますので、失礼します」
 マハラジャは一礼してその場を去って行った。
「へへへっ!そっかぁ、まだ世界のいろんな奴らと戦えるんだよなぁ……!くぅぅ、なんかワクワクしてきたぜ!!」
 シュウはテンションを上げながらブレイグを天に掲げた。
「うおおおお!!待ってろよぉ、世界!!絶対に這い上がってやるぜぇ!!!」
 
            つづく
 
 次回予告
 
「アジア予選を終えて、日本に帰ってきた俺達を待っていたのは、ことねぇとヒロトだった!
なんとヒロトとことねぇは仲良しファイトクラブの練習場で決闘をするって言うんだ!
帰ってきて早々、何やってんだよ!?
 
 次回!『極めるべき強さ』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
 

 



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