爆砕ショット!ビースピリッツ!!
第73話「激突!光と影の龍!!」
「バカな……。なんなんだ、今のは……!」
唖然とするタケルに対し、劉洸はクスッと笑った。
アジア予選決勝Aブロック。
タケルVS劉洸の戦いは、タケル有利の展開で進んでいた。
しかし、片手撃ちの連射型と思われた劉洸の射手兵が突如パワーショットを放ったのだ。
(今のは、シメ撃ち……?いや、奴のビーダマンは片手撃ち。姿勢を変えずにシメ撃ちが出来るわけがない。トリガーを早く押した程度であそこまでの威力の違いは出せない。
コンフターティスドライグのようにモードチェンジをした様子もなかった。じゃあ、今の片手パワーショットは一体なんなんだ……?)
必死に頭脳をフル回転させてさきほどの現象を分析しようとするのだが、処理しきれない。
「考えている暇はないよ!」
ズドドドド!!
劉洸は再び、先ほどのような単調な連射を繰り出した。
「っ!」
それを見て、タケルは我に返った。
(そうだ。何が起ころうと、今は試合に集中するんだ。さっきのはたまたまだ。今のところはそう片づけるしかない!)
タケルは理解できないものを無理矢理納得して目の前のショットに集中した。
(そこだっ!)
攻撃を見切り、タケルは躱すために動いた。
しかし……。
バーーーーン!!
劉洸のショットが2発命中した。
それでも、劉洸が撃ったショットの数を考えればかなり躱せた方なのだが……。
『劉洸君、見事ヒット!!タケル君全てを躱しきれなかった!!』
「な、に……!」
その事に動揺してしまい、タケルは反撃のチャンスを無にしてしまった。
(バカな……タイミングが、ズレてきてる……?)
状況が変化した。
徐々にだが、ペースが劉洸のものになっていく。
タケルの攻撃はミスが目立ち、そして劉洸の攻撃の命中率が徐々に上がっていく。
それを見ていたシュウ達。
「なんか、タケルの様子がおかしくないか?」
「だんだん差を詰められてますよ?!」
「ど、どうなってんだよ!?」
困惑するシュウ達。
「劉洸君の、さっきのパワーショットはビックリしたけど、それ以降はずっと同じ単調な連射しかしてないのに、劉洸君の攻撃にタケル君が乱されている……」
「タケルらしくねぇぜ、一体どうしちまったんだよ」
「分からない……でも、厭な予感がする」
彩音が緊張気味に言う。
「まさか、タケル先輩が負けるかもって事ですか!?」
「な、そんな事あるわけねぇよ!!」
「私も、そう思いたいけど。今のタケル君は、本来の力を出し切れていない。しかも、気付いているのに原因が分からないの。この状況を打破するのは並大抵じゃないわ」
「その並大抵じゃない事を今まだってやってきたんだ!タケルー!!絶対負けんなーーー!!」
どうする事も出来ないが、とにかくジッとしてられない。
シュウはありったけの力で応援した。
『少しずつだが、劉洸君がタケル君に追いついている!現在のHPは29VS23!差はほとんどないぞ!!』
「くっ!」
「はぁぁぁぁ!!!」
劉洸の連射攻撃。
単調に見えるこの攻撃に、タケルは翻弄されていた。
躱してもすべては躱しきれず、何発かヒットしてしまう。
その事でバランスを狂わされ、自分の攻撃に力が入らない。
「くっそぉ!!」
ずっとそんな事を繰り返している。
『ヒット!!これで、HPは13VS15!ついに、劉洸君がタケル君を抜いた!いよいよバトルも終盤戦!あと何発かで決着が着くぞ!!』
「くっ!」
抜かれた事で完全にタケルの精神は焦燥感に蝕まれてしまった。
「こうなったら、一気に決めるしかない!」
タケルはメタル弾とドライブ弾をレックスに装填した。
「最終奥義……!」
それに気づいた彩音が慌てて叫ぶ。
「ダメ!今は必殺技を使うタイミングじゃない!!」
しかし、その声はタケルには届かない。
「うおおおおお!!!」
ドンッ!!
メタル弾とドライブ弾でグランドプレッシャーを放ち、メタル弾をドライブ弾で弾き飛ばす。
「へヴィダイノクラッシャー!!!!」
バシュウウウウウウ!!!
メタル弾がものすごい勢いでブッ飛んでいく。
『ここで、タケル君の最終奥義が発動!!一気に勝負を決めてしまうかぁ?!劉洸君、絶体絶命だぁ!!』
バーーーーーン!!!
そのショットは、劉洸のボムを掠め、地面にぶつかり、土煙を上げた。
「あ……」
『痛恨のミス!!なんと、起死回生の必殺ショットを外してしまった!!もうストライクショットは使えない!今度はタケル君がピンチか!?』
「そんな、躱された……」
「違うよ」
タケルの呆然の呟きを劉洸は否定した。
「ただ、君が勝手に外しただけ」
「な、に……!」
今度は劉洸がメタル弾を機体に装填した。
「これで、終わりだ」
ドンッ!!
メタル弾の鈍足な攻撃が迫る。
しかし、呆然としているタケルに当てるのは容易だった。
バーーーーーン!!!
『決まったぁ!!タケル君のボムが撃破され、勝ったのは劉洸君だ!!』
「……」
全身の力が抜け、無言になるタケル。
「良いバトルだったよ」
そんなタケルに握手を求める劉洸だが、タケルはその手を受け取れなかった。
「それどころじゃないか」
劉洸はクスッと笑い、そのまま踵を返して歩いて行った。
タケルはフラフラと仲良しファイトクラブのいる控え席へとやってきた。
「タケル!」
シュウ達が心配そうにタケルを迎え入れる。
「……すまん、俺とした事が」
タケルは悔しげに、静かにそう言った。
「な、なんでだよ!なんでタケルが負けちまうんだよ!作戦は完璧だったはずなのに!!」
納得のいかないシュウは、タケルの気持ちも考えずに喚き散らした。
「分からない。間違いなく、勝てると思っていた。
なのに、俺も気付かないうちにペースを乱されて……いや、ペースを乱されたと気付いているのに原因が全く分からなかったんだ」
タケルは震える声でそう言った。
「タケル……」
ただ力で負けたのとは違い、悔しさも大きいのだ。
「彩音さん、データは取れましたか?」
タケルが彩音に問う。
「う、うん……。でも、私にも分からなかった。あのパワーショットの秘密も、単調な連射にタケル君が乱された原因も……」
片手撃ちにも関わらず、モーションを全く変えずに放ったパワーショット。
最初は攻略できていた単調な連射が途中から攻略できなくなった理由。
何もかもが分からない。
「そうですか……」
タケルは諦めて俯いた。
「やっぱ納得できねぇぜ!あやねぇ、もう一回詳しく分析してくれよ!!」
シュウが食い下がるのを、タケルは止めた。
「もういい。結果は出たんだ。負けたのは、俺が力不足だっただけだ」
タケルは潔くそう言って、それ以上の原因究明はしようとはしなかった。
「だけどさ……」
本人がそう言っている以上、もう何も言えないが、シュウはまだ納得していない様子である。
「それより、次はお前の試合だ。自分の戦いにだけ集中しろ」
「タケル……」
悔しさはあるだろう。納得できない気持ちはまだ持っているだろう。
それでも、タケルは次を戦うシュウのために平静を装い、シュウの背中を押した。
「あ、あぁ!絶対勝ってやるぜ!!」
シュウは、そんなタケルのためにも今はタケルの心配はやめて自分の試合に集中する事にした。
『さぁ、長きに渡り繰り広げられたアジア予選もいよいよこれが最後の戦いだ!
アジア代表として世界へと羽ばたくのは、白青の龍に不死鳥の翼を身に着けた竜崎修司君か!?それとも、暗黒龍の息吹が吼える大原タクマ君か!?』
シュウとタクマがバトルフィールドへ足を踏み入れて、対峙した。
「智蔵の孫よ。貴様に引導を渡す時が来たな」
タクマがにたりと笑う。
「俺は、ビーダー・竜崎修司だ!じいちゃんは関係ねぇ!!」
シュウはまっすぐな瞳でそう断言した。
「ふん」
タクマはそれを鼻で笑い、それ以上は何もしゃべらなかった。
『それでは、そろそろおっぱじめるぞ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
「「うおおおおおお!!!!」」
ダッ!!!
合図とともに、二人は互いの射程位置まで駆け出し、そして力の限り撃ち合った。
ガキンッ!ガキンッ!!
ありったけの力でパワーショットを連発する。
「いっけぇぇぇ!!!」
「はぁぁぁぁぁ!!!」
二人の間で、激しい火花が散るのだが、力は拮抗しているのか、ビー玉が弾け飛ぶだけでボムには一切攻撃が届かない。
『開始早々凄まじい撃ち合い!!ドラゴン対決に相応しい幕開けだ!!しかし、力は互角なのか、攻撃は届いていないぞ!!』
試合を見ているタケル達。
「あのビクトリーブレイグと力比べで互角とは、化け物かあいつは……!」
「最大パワーではブレイグが勝っているけど、総合的に見ればコンフターティスドライグの方が上だからね。パワーの差を他の性能で補っているみたい」
「でも、パワーでシュウ先輩が負けるわけありませんよ!」
「そうだな、シュウの最大の武器はパワーだ!このまま正面から押し切るしかない!いけーー、シュウ!!」
「頑張ってください、シュウせんぱーーい!!」
タケルとリカは精一杯シュウへ声援を送った。
「くっ!ビクトリーブレイグの攻撃が届かない!?」
「よもや、我と互角に撃ち合うとは、多少は力を付けてきたようだ」
互いに勝てると思っていたからか、互角に撃ち合えている事に驚いている。
「くっそぉ、もっとパワーを上げるぞ!ビクトリーブレイグ!!」
ホールドパーツをシメつける力を上げるシュウ。
「パワーウィング、もう一段階上昇だ!」
タクマもパワーウィングのパワー強制力を上げた。
『撃ち合いは激しさを増しているものの戦況は動かない!先に攻撃をヒットさせるのは、果たしてどっちだ!?』
この状態が何分も続いている。
「このままじゃ、いつまでも試合が動かねぇ……!」
「だが、鍔迫り合いで我に勝てると思うな」
「なにっ!?」
段々、シュウのショットが鈍ってきた。
「ぐっ!」
今までのバトルと違い、いきなり全開で何分も撃ち続けていたから、シュウ自身のスタミナが切れてきたのだ。
(くそっ!)
シュンッ!!
シュウが、タクマのショットを一発撃ち損じた。
バーーーーン!!!
『ヒットォ!!先に攻撃をヒットさせたのは、タクマ君の方だ!これでシュウ君のHPは87!!』
「しまった……っ!」
「パワーは見事だが、体力の消費が激しいようだ」
「ちっ!」
ダッ!
シュウはタクマとは逆方向へ駆け出した。
「むっ、敵前逃亡とはな!見損なったぞ、智蔵の孫よ!」
タクマもすぐにシュウを追いかける。
「うっせ!ちょっと腕の疲れを取るだけだ!これも戦略のうちだぜ!!」
「させん!」
ドンッ!ドンッ!!
タクマが後ろから撃ってくる。
「当たるかよ!!」
シュウは素早く動いてその攻撃を躱す。
「むっ!」
「どうだぁ!!」
逃げながらの相手には早々当たるものではない。
「ならばっ!」
タクマはドライグを片手撃ちモードにして連射した。
ズドドドド!!
それでも、ほとんどのショットが躱されてしまうものの、手数で攻めていたので何発かはヒットした。
「くぅっ、さすがに全部は避けきれないかっ!」
『ヒット!タクマ君、数撃ちゃ当たる作戦で逃げ惑うシュウ君へ攻撃を当てている!シュウ君のHPは残り75!』
「結構当たっちまったなぁ……!」
逃げながら、シュウはぼやく。
「逃げているばかりでは、ジリ貧だぞ」
「うっせ、もう手は回復したぜ!」
シュウは逃げながら言う。
「だが、その状態で立て直せるか!」
ズドドドド!!
タクマが再びシュウのボムへ連射を放った。逃げている状態から攻撃に転じるのは難しいだろう。
「うおおおお!!」
しかしシュウは、逃げ惑う体制のまま地面に向かってパワーショットを放った。
ズドーーーーン!!!
その反動で宙を舞う。
「っ!」
『でたぁ!シュウ君の得意技!ショットの反動を利用しての大ジャンプだ!あの技が出るかぁ!?』
「うおおおおおお!!!」
シュウは空中反転してタクマのボムへ照準を定めた。
「メテオールバスター!!!」
ドーーーーーン!!!!
重力を利用しての必殺ショットがタクマを襲う。
「くっ!」
連射重視の今のタクマのショットではメテオールバスターを止める事は出来ない。
バーーーーン!!
『ヒット!!必殺ショットが通じ、シュウ君もようやく攻撃が届いた!タクマ君のHPは残り82!!』
「へへっ、どうだ!」
タッ!と着地して、シュウはドヤ顔する。
「……」
何故か、タクマは何か思案しているような顔をしている。
「どったの?」
シュウが首を傾げると、タクマがゆっくりと口を開いた。
「今の技は、エアリアルバイザーとは関係ないな」
「ああ!昔即興で考えた技だぜ!俺とブレイグのパワーが無いと出来ないけどな!」
「即興……そうか」
その言葉を聞いて、タクマは何かが腑に落ちたように頷いた。
「竜崎修司よ。智蔵の孫としても、一ビーダーとしても、貴様を潰すぞ」
タクマが、ようやく修司を一人のビーダーとして見てきた。その顔は、どこか嬉しそうだった。
「っ!おお!望むところだ!!」
そんなタクマに、シュウは全力で応えた。
つづく
次回予告
「ブレイグVSドライグ!光と影のぶつかり合いはついにクライマックスを迎えた!
アジア代表として世界へ羽ばたくのは一体どっちだ!?
次回!『決着!アジア予選』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!』