オリジナルビーダマン物語 第72話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第72話「タケルVS劉洸!意外な戦術」



 インドのとあるホテルの一室。
 アジア予選を突破したシュウとタケルは、翌日にブロック決勝が行われるインドへと飛んだ。
 
「明日のブロック決勝で勝った2人が、ワールドチャンピオンシップ決勝に進出できるんだよな」
 タケルとシュウの部屋にメンバー全員が集まり、作戦会議を開いていた。
「そうね。Aブロックはタケル君と劉洸君。Bブロックはシュウ君とタクマ君」
「タケルと当たらないで良かったぜ。ジャパンビーダマンカップの借りは、きっちり本戦で返したいって思ってたからな!」
 シュウは能天気にそんな事を言う。
「そうだな。組み合わせによっては一人しか本戦に出られなくなっちまうからな」
 タケルもシュウの言葉に頷いた。が、彩音は少し複雑そうな顔をする。
「二人とも決勝進出できれば、それがベストなんだけど……。二人が戦う相手はどっちもかなりの強敵よ。
劉洸君もタクマ君も、これまでの試合を全てワンサイドゲームで勝利しているの。楽な戦いにはならないわ」
「って事は、むしろシュウ先輩とタケル先輩がぶつかった方が、確実に一人は決勝に進出できるって事ですよね?」
「おいおい!俺達があんな奴らに負けると思ってんのかよ!」
 さすがにリカの発言は失礼だったから、シュウが憤慨した。
「そ、そういうわけじゃありませんけど……!」
「何にせよ、油断は禁物って事だな。なに、今から対策を練っていれば勝機はある。彩音さん、データは取ってるんですよね?」
 タケルに言われ、彩音は少し気まずそうにキーボードを叩いた。
「う、うん。まずはタケル君の対戦相手、劉洸君だけど……。彼はこれまでの試合を短時間で終わらせているから、ほとんどデータが取れていないの」
「えぇ?!」
 彩音に試合を撮影した動画を見せてもらう。
 彩音の言うとおり、これまでの二試合。劉洸は圧倒的な力で相手をねじ伏せていた。
「す、すげぇ……強いな、あいつ」
「いや、たまたま当たった相手が弱かったって可能性もあるし、相性の問題もある。とにかくこの試合じゃ何も分からないな」
「うん。唯一、まともな試合が見られたと言えば、予選でのレースだけど……」
「あれも、あいつは予選通過できればそれで良いって考えで、本気を出してなかっただろうしな」
 本戦でも予選でも、あいつの真の力は見られなかった。
「分かっているのは、彼の使っているビーダマン、射手兵(シェショウビン)がセンターグリップの片手撃ちをスタイルにしたビーダマンって事くらいね。
連射力、パワー、コントロール、具体的な数値は何一つ……」
「なんだよ、それじゃ対策の立てようがないじゃんか!」
「う~ん……」
 どうしたものかと、一同考え込んでしまった。
「あ、そうだ!確か、劉洸さんって、劉備の子孫だったんですよね?」
 リカが、不意に思いついたように言った。
「あぁ、そういえばそうだったな。でも、それがどうかしたのか?」
「劉備の事を調べれば、何か分かるんじゃないですか?彼も劉備を意識しているような事を言ってましたし」
 
 確かに、劉洸は劉備のように強くなりたいからとカンフーを学んだと言っていた。
 という事は、劉備の戦闘スタイルをリスペクトしている可能性は高い。
「ありえる、な。よし、早速劉備について調べてみよう!」
「ええ!」
 早速、インターネットを使って劉備について調べてみた。
 
「う~ん、諸説あるけど。彼について共通しているのは『誠実で温厚な人柄で人望が厚く、戦い方は勇猛果敢』って所ね。小細工なしで真正面から戦うのが特徴みたい」
「真正面からか!男らしいぜ!」
 戦い方の似ているシュウは共感した。
「でも、逆にそこを突かれてしまう事も多かったみたいで、多くの武将に『未熟者』扱いされていたの。
彼個人の戦闘能力は非常に高かったけれど、戦での戦術的な面では弱かったみたいね」
「だから、戦略家の諸葛孔明と手を組んだわけか」
 戦闘力に優れた劉備と戦略に優れた孔明。二人が手を組んで大活躍したらしい。
 
「なるほどなぁ。ってもこれってビーダマンに関係あるのか?」
「う~ん、『誠実で温厚』っていうのは劉洸さんにも言えますよね。あたし達助けてくれましたし!」
「真正面からの戦いって言うのも、前にシュウと戦っていた時もそうだったな。あの競技内容じゃしょうがないが、あまりにも動きが単調過ぎた」
 劉備と劉洸。二人には確かに共通するところがあるようだ。
「って事は、相手の単調な動きに合わせてカウンターすればばっちりじゃねぇか!劉備もそれで未熟者扱いされてたんだろ?」
「あ、あぁ。そうだな……だが、それで本当に前の二試合をワンサイドゲームで勝てたのか……?」
「そんだけ力の差があったって事だろ?でも、タケルとレックスなら能力的には互角なはずだ!カウンター戦術で行けるって!」
 シュウは軽くそう言った。
「三国志では優秀な参謀がいたけど、ビーダマンバトルで戦えるのは1人だけだもんね」
「そうそう!1vs1なら負けねぇぜ!」
「……そうだな。他に情報は無いし、それに賭けるか」
 タケルも一応は納得した。
「おっしゃ、じゃあ次は俺の番だな!」
「えぇ。シュウ君の戦うタクマ君だけど……」
 それから、タクマについての対策を練ってから、仲良しファイトクラブは就寝した。
 
 
 翌日。
『さぁ、ここインドはタージ・マハルで行われるのは、ビーダマンワールドチャンピオンシップアジア予選のブロック決勝だ!
この戦いに勝った2名が本戦へ出場できるぞ!心して戦ってくれぇ!!』
 ワーーーーー!!!!
 タージ・マハルに特設された会場で観客達が盛り上がる。
 
『ルールは、アルティメットシャドウヒットバトル!!もうお馴染みのルールだね!先に相手のシャドウボムを撃破した方の勝ちだ!!
ここまでのバトルを勝ち上がったのは、Aブロック!日本代表の守野タケル君!中国代表の劉洸君!Bブロックは日本代表の竜崎修司君と大原タクマ君だ!
決勝へ勝ち上がった4人のうち、3人が日本人だ!さすがはビーダマン発祥の地と言えるぞ!しかし、勝ち上がれるのは2名だけ!
果たして、誰が決勝進出を決めるのか?!』
 
「ムッキー!!ビーダマン発祥の地はK国ニダーーーー!!!」
 一方のK国では、中継を見ながらキム・ヨンジュンが唸っていた。
 
『それでは、早速第一試合を始めよう!タケル君と劉洸君は前に出てきてくれ!』
 
 タケルと劉洸がバトルフィールドに足を踏み入れて対峙する。
「かつてインドは天竺と言われ、中国人にとっては聖地と言われる場所だった。だからこそ、この地で負けるわけにはいかない!」
「おいおい、それは西遊記の話だろ。お前のご先祖様は三国志の人物だろうが」
「ははは、そうだったね。とにかく良い試合をしよう、タケル!」
 劉洸はさわやかなにそう言った。
「ああ。望むところだ!」
 タケルと劉洸はビーダマンを構えた。
『両選手、準備はOKだな?そんじゃいくぜぃ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
「うおおおおお!!!」
 開始早々、劉洸が連射を放ってきた。
「むっ!」
 いきなりのラッシュに多少吃驚したが、すぐに冷静になってその軌道を読み、タケルは身を翻した。
「はぁぁ!!」
 ドンッ!!
 かわしざま、タケルもパワーショットを放つ。
「うっ!」
 攻撃に集中しすぎていたのか、劉洸は躱しきれずにタケルのショットを受けてしまう。
 
 バーーーン!!!
『ヒット!初太刀を制したのはタケル君のレックスだ!!』
 劉洸のHPが87になる。
「くそっ、やるなぁ……!」
「……」
 あまりにもあっさりと攻撃がヒットしてしまい、タケルは少々拍子抜けした。
(連射力、パワー、ともに優れているが、あまりにも動きが単純すぎる……どうやら、戦闘力は高いが戦略がなってないってのは本当らしいな)
 タケルは、ホテルで立てた作戦に確信を持った。
 
「だけどっ!」
 ズドドドド!!
 再び劉洸が単調な連射を放つ。
「甘いっ!」
 タケルはそれを全て躱し、相手の隙を突いてボムを狙う。
「くっ!」
 劉洸はそれを避けようとも迎撃しようともせず、甘んじて受ける。
 バーーーン!!
 
 その様子を見ているシュウ達。
「やるじゃんタケル!カウンター作戦、正解みたいだな!」
「そうみたいね。劉洸君はかなりのテクニックを持っているし、射手兵もタイラントレックスに負けない性能みたいだけど、あの動きは単純すぎるね」
「この調子で行けば、タケル先輩の優勝間違いなしですね!」
「あったりまえだぜ!いっけぇ、タケルーーー!!」
 シュウは力の限りタケルを応援した。
 
『さぁ、バトルは早くも一方的な展開だぞ!!現在、HPは85VS42でタケル君が大幅リード!
両者ともに戦闘力は互角だが、戦術に差が出ている感じだ!
単純な攻撃ばかり仕掛けている劉洸君に対して、タケル君はそれを躱しざまに攻めるカウンター攻撃でジワジワと差を広げているぞ!!』
 
 タケルも多少攻撃は受けているものの、やはりカウンター戦術によって大きくリードを広げていた。
「すごいね、さすがは日本のチャンピオンだ」
「ああ。お前も悪くは無い」
 だが、ペースは完全にタケルのものだ。
(悪くはないが……買いかぶりすぎだったようだな。とっとと終わらせてしまおう)
 タケルももう勝利した気満々だ。
 余裕で劉洸の動きを見据えている。
「私も、簡単には負けない!」
 ズドドドド!
 再び単調な連射攻撃が襲い掛かる。
(その程度……)
 ドンッ!
 その連射の中に、一発強い威力のショットが混じっているような気がした。
「むっ!」
 少し気を取られたが、タケルはなんとか躱し、反撃の体制を取る。
 ドンッ!!
 しかし、そのショットは外れてしまった。
「くっ!」
「射手兵!!」
 タケルが一瞬怯んだ隙を突いて、劉洸がボムを狙った。
『逆襲!今度は劉洸君がタケル君へカウンターだ!!』
「油断大敵だよ!」
「ちっ!」
 と、そんな危なげな事もあったが、基本はタケルのペースだ。
 
「はぁぁぁぁ!!!」
 劉洸は単調な連射を繰り返している。
 単調で、単純な……しかし。
(奴の連射は、確かに単純だ。だが、時々妙な違和感を覚える。これは一体……?)
 タケルは疑問を抱きつつも劉洸の攻撃を躱しつつのカウンターを続ける。
 しかし、徐々にタケルのミスが目立ち始めた。
 
 基本的な展開は同じなのだが、タケルの攻撃がたまに外れてしまうのだ。
 
 その様子に気付くシュウ達。
「なんだぁ?タケルの奴、ミスショットし始めたな」
「相手が単調過ぎて、気が緩んできたんじゃないですかぁ?」
「まっ、相手が相手だしな」
「タケル君は、そんな事で気を緩ませるようなビーダーじゃ無いはずだけど……」
「タケル!油断するんじゃねぇぞ!絶対に勝てよー!!」
 タケルに活を入れるべく、シュウは叫んだ。
『おおっと徐々にだが、劉洸君が追い上げてきたぞ!現在68VS37!タケル君は激しい攻撃でスタミナ切れか、最初と比べて攻撃にキレが無くなってきている!!』
 
(スタミナ切れ……?冗談じゃない。体力に問題は無い。だが……!)
 少しずつ、調子が狂ってきた。
 タケルはそれに気付くのだが、それがなぜなのかが分からない。
 状況は理解できるのに、原因が分からない。
「ぐっ……!」
 歯痒さを感じ、タケルは唇をかみしめた。
「さて、と」
 劉洸の目つきが変わった。
(少し揺さぶるか)
 射撃のスタイルは変えずに、そのままグッと力を込めてタケルのボムに狙いを定める。
「はぁぁぁぁ!!!!」
 ドンッ!!
 射出兵から先ほどとは比べものにならないほどのパワーショットが放たれてタケルのボム目掛けてブッ飛んだ。
「な、なにぃ?!」
 今までに見た事のない射出兵のパワーショットに一同度肝を抜いた。
『のおっと!劉洸君は、今までにないパワーショットを放った!!その力を隠し持っていたのか!?』
 バーーーーン!!
 そのショットは呆然としているタケルのボムに難なくヒットした。
「バカな……。なんなんだ、今のは……!」
 唖然とするタケルに対し、劉洸はクスッと笑った。
 
 
 
 
     つづく
 
 次回予告
 
「単純で楽勝だと思われた劉洸の予想外の戦い方に苦戦するタケル。一体どうなっちまうんだ!?
そして、Bブロックの俺とタクマの試合も激しい戦いとなった!
 
 次回!『激突!光と影の龍!!』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!』
 
 

 



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