オリジナルビーダマン物語 第70話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第70話「ビーダマン発祥の地はK国?」




 オーストラリア、エアーズロック。
巨大な一枚岩の上に設置された特設会場に多くのビーダー達が集まっていた。

『さぁ、いよいよアジア予選の開幕だぁ!!
その第一回戦の舞台となるのは、オーストラリア!世界最大級の一枚岩、エアーズロックの上だ!!
地球のヘソと呼ばれるこの地で、一体どんな戦いが繰り広げられるのか!?』
選手は観客たちはヘリで岩の上に運ばれるようで、仲良しファイトクラブのメンバー達も何の苦労もせずにエアーズロックの頂上へ登りついた。
「まさか、アジア予選第一回戦の舞台がいきなりアジアじゃないとはなぁ……」
「オーストラリアもアジア予選参加国だから間違っては無いけどな」
シュウの言葉にタケルが答えた。
「そうですよ。それに、こんな素敵な所で試合が出来るなんて、なんだかお得じゃないですかぁ!」
リカが大きく伸びをする。
「まぁな」
シュウも周りの雄大な景色を眺めた。
「ここが世界最大の一枚岩かぁ」
「正確には、世界第二位だけどね」
彩音が言う。
「そなの?ここに来る前に読んだ本では世界一って書いてあったぞ」
シュウは安物の旅行雑誌を取り出した。
「実際はマウントオーガスタスって言う西オーストラリア州にある一枚岩の方が倍以上も大きいんだよ」
「ば、倍以上……!」
「うん。でも、エアーズロックの方が有名だから本とかでは世界一って書かれることが多いみたいね」
「へぇ……。さっすが、あやねぇはいろんな事詳しいなぁ」
彩音は相変わらず博識だった。
シュウが感心していると、近くで怒声のようなものが聞こえてきた。
「ふざけんじゃねぇニダ!ったくよぉ!!」
見ると、日本人顔……に似ているが、顔のパーツがやや中央に寄っているような、そんな少年が地団駄を踏みながら怒鳴っていた。
ガンガンッ!と貴重な世界遺産を足蹴にしている。民度が低いとかそういうレベルではない。
「なんだ、どうしたんだ?」
周りが騒然としている中で、シュウがその少年に話しかけた。
「あぁん?」
少年が話かけてきたシュウを睨み付ける。
「ちっ、決まってんだろ!なんでアジア予選の開催国にアジアじゃない国が混じってて、俺様のK国が入ってないのかって話ニダよ!!」
少年はK国人のようだ。
アジア予選は試合ごとに舞台を変える。その開催国にK国が入っていない事が不満らしい。
「それは、しょうがないような……」
「お前、日本人ニダか?」
K国少年はシュウの顔をジロジロと見た。
「あ、ああ」
「頭の悪いクソ日本人に教えてやるけどニダ!ビーダマンの起源はK国ニダ!K国に古くから伝わる水晶転がしって遊びが発展したのがビーダマンニダ!!
そんなビーダマン発祥の地を開催国にしないなんておかしいつってんだニダ!」
K国少年はご丁寧にシュウにビーダマンの起源について教えてくれた。
「へぇ、お前詳しいんだなぁ……って」
シュウは一瞬納得しかけて止まった。
いや、ビーダマン作ったのは自分のじいちゃんだ。
「いやいや!ビーダマン作ったのは俺のじいちゃんだから!!」
「はぁ?何言ってるニダ?じゃあお前、ビーダマンの起源は日本だって言うのニダ?」
「あ、あぁ!そうだろ!K国なんて国、俺聞いた事もねぇし!!」
「こ、これだから日本人は悪魔ニダ!!じゃあ、ここにいる皆に聞いてみるニダ!!」
K国少年は、騒然として周りに集まってきた参加者達へ向かって叫んだ。
「お前ら!このクソ日本人が、ビーダマンを作ったのは自分のジジイだから、ビーダマンの起源が日本だって嘘を言ってるニダ!
でも、本当のビーダマンの起源はK国ニダ!そう思うニダ?」
K国少年の主張に、周りの外国人たちはみな首を振った。
「え、ビーダマンって日本製だよな?」
「そいつのじーさんがどうとかってのは知らないけど、俺も日本が発祥って聞いたぜ」
「いや、そう言えば日本のトモゾウって奴が作ったとかそうじゃないとか」
「俺は日本のゲンジって聞いたぜ!」
「少なくともK国じゃねぇよな~」
皆口々にK国発祥説を否定している。

「んなっ!このクソどもニダ!お前ら皆右翼ニダ!!」
K国少年君は気分を害したのか、プンスカしながら去って行った。
「なんだったんだ、あいつ……」
シュウは唖然としながら去っていくK国少年の背中を眺めた。

そんな中で、タクマは少し離れた場所で意味深な表情をしながらシュウを見ていた。
「やはり、奴は……」

『それでは、いよいよアジア予選の本トーナメントを開始するぞ!
第一試合の対戦カードを発表しよう!
最初に対戦するのは日本代表!守野タケル君VSマレーシア代表!シアナ君だ!』

タケルとマレーシアの少年が対峙する。
『ルールは、巨大ブレイクボール!通常の10倍の数のブレイクボールを先に全て弾き飛ばした方の勝ちだ!
それじゃ良いぜ、ビーファイトォ!!』
バトルは白熱し、タケルが勝利した。
そして、試合は進み……。
『次に対戦するのは、日本代表!竜崎修司君VSK国代表!キム・ヨンジュン選手!!』
シュウとキムが、会場に設置された競技台に付いて対峙した。
「あ、お前!!」
「最初はお前が相手か……!」
キム・ヨンジュンは先ほどシュウと言い合いをしたあのK国人だった。
「ここは勝ってビーダマン発祥はK国だって事を証明してやるニダ!」
「どっちが勝っても発祥は変わらないけど、絶対まけねぇ!」

『今回のルールはDXブレイクボンバー7だ!
通常のブレイクボンバーと違って、緑ボムを4つ先に相手の陣地に押し込んだ方の勝ちだ!更に、ボムが左右に動いて狙いが付けづらいぞ!』

真ん中の5列は通常のブレイクボンバーと同じだが、両端の列は3段だけで、左右に動くたびに壁に隠れて狙いづらい仕様になっている。
「ブレイクボンバーかぁ。ビクトリーブレイグだとちょっと不利だな」
パワー型は相手との押し合いになった時勝てるとは言え、どんなにパワーショットを撃っても一個か二個しかボムを撃ちぬけないのはメリットが薄い。
パワー特化型のシュウには苦手な競技だ。
「でも、やってやるぜ!!」
「ふん、楽勝ニダ!K国の技術が生み出したこのキムチファイターがあいつをボコボコにするニダ!」
と言って取り出したキムのビーダマンはどう見ても赤い色をしたシアナイトだった。
「それ、シアナイトの色違いじゃ……?」
「これだから日本人は困るニダ。こいつは正真正銘、メイドインコリアのビーダマンニダ!」
「あ、そう……」
めんどくさいのでこれ以上突っ込むのはやめておいた。

『それでは、そろそろ始めるぞ!両者とも準備は良いかな?
レディ、ビー・ファイトォ!!』

バトル開始の合図とともに両者一斉にビーダマンを撃つ。
「うおおおお!!」
「ニダあああああ!!」
どんどん撃っているものの、命中率は悪い。
『のおっと!さすがに動くブレイクボンバーは狙いづらいのか!二人とも、かなり苦戦しているようだ!
だが、シュウ君は少しずつだが、着実にキム君側へボムを押し込んでいる!!』
「いっけぇ!!」
「くっ!卑怯ニダ!こんなにブロックを押し込まれたら、邪魔で狙えないニダ!!」
キムは、向かってくる青ブロックに疎外されてビー玉が弾かれてしまっていた。
「いや、そういう競技だから……」
『キム君はかなり苦戦している!未だに一つもボムを押し込めていない!!!』

「やっぱり日本人はビーダーの風上にも置けないニダ!」
「なんだかなぁ……」
やりづらい相手だ。
ドンッ!ドンッ!バキィ!!
『ここで、シュウ君が緑ボムを押し込んだ!1ポイント!!』

「よし!あと3点!!」
「むぅぅぅ!!」
『一方のキム君は、まだ一つのボムも撃ち込めていない!力の差があるのか、このままワンサイドゲームで終わってしまうのか!?』

「いっけぇ!!」
バキィ!!
シュウが二つ目の緑ボムを撃ち込んだ。
「ぐぐ……!」
『シュウ君2ポイント!!苦戦しながらもリードを広げている!!』

「うおおおお!!!」
バーーーン!!
ついに3つ目の緑ボムも撃ち込んだ。
「がびょーーん!?」
『さぁ、リーチをかけたぞ、シュウ君!このまま決めてしまうのか!?』
「よし、いけるぜ!」
勝利を確信するシュウ。それに対してキムは露骨に焦っている。
「ううううこんなクソみたいな日本人に負けるなんて、ありえないニダ!こうなったら……!」
キムは、自分の陣地にある緑ボム目掛けてショットを放った。
バキィ!!
そのボムは宙を舞い、シュウの陣地に堕ちた。
「な、なに!?」
『のおっと!ミスショットか?キム君、自分の陣地に入ったボムを撃ち始めた!!』
「これで勝てるニダ!!」
バーーーン!!
残り二つの緑ボムもシュウの陣地に飛ばした。
「え、えぇ……!」
さすがにこの行為はシュウも引いた。
「行くニダ!!」
ズドドドド!
その隙に、渾身の力で緑ボムを撃ちぬいた。
「や、やったニダ!3つの緑ボムを撃ち込んだニダ!!勝ちニダ!!」
勝利を決めたと確信したキムはガッツポーズをした。
『い、いやぁ、そういうルールじゃ、ないんだけどなぁ……』
ビーダマスタージンはキムの行動に困惑している。しかも勝つには一つボムが足りない。
「……」
シュウは呆れながらもビーダマンを撃ち、残りの青ボムを撃ち込んだ。
「あぁ、何するニダ!もう勝負はついたのにニダ!!」

『バトル終了!4VS0で、勝ったのはシュウ君だ!圧倒的なワンサイドゲームだったぞ!』
「よし」
シュウは小さくガッツポーズを取ったが、あまり勝利の喜びは無かった。
「ちょ、ちょっと待つニダ!勝ったのはこっちニダ!お前の陣地に4つボムが入ってるニダ!!」
キムがいちゃもんをつけてきた。
『い、いや、だからね。既に撃ち込まれたボムを弾いたところで得点にはならないんだよ……』
「ふざけんなニダ!こんなの無効試合ニダ!!」
キムは判定に納得がいかないのか、暴れ出した。
『ちょ、ちょっと!落ち着きたまえキム君!』
「うるさいニダ!やり直せニダ!!」
『け、警備班!彼を取り押さえてくれ!!』
ジンが警備班を呼んだ。
すると正義率いるオフィシャル警備が現れてキムを取り囲んだ。
「な、なにニダか!やるニダか!!」
ドンッ!!
キムが正義目掛けてショットを放った。
「サイレンヴォリス!!」
正義はサイレンヴォリスでそのショットを弾き落とす。
「くっ、強いニダ……!」
「キム君。君は正々堂々戦うと言うビーダー精神に反した上に、人を狙った。君はもうビーダーとは言えない」
「う、うるさいニダ!日本人の癖に!それ以上しゃべると許さないニダ!!」
なおもいきがるキムに、正義達はキムを取り押さえるために飛びかかった。
「や、やめろニダ!暴力反対ニダ!この野蛮人どもーーーー!!!」
暴れまくるキムを取り押さえ、正義達はキムを連れ去って行った。
結局この事件で、キムはビーダマン界を追放される事になる。
「は、はは……正義も大変だなぁ……」
素直に勝利を喜べないシュウは、乾いた笑いを浮かべた。

そして、タケル達の待つ観客側へ戻る途中。シュウは呼び止められた。
「竜崎修司」
「え?」
振り返ると、そこにタクマがいた。
「タクマ……!」
タクマは腕組みをしたまま、シュウへ話しかけてきた。
「貴様は、智蔵の孫のようだな」
「あ、あぁ……」
タクマは、先ほどのキムとシュウとの会話を聞いていたのだ。
「なるほど。エアリアルバイザーを搭載している時点で、貴様のビーダマンはいずれ潰す気ではいたが……まさか、貴様自身も智蔵の孫だったとはな。
どおりで、他のビーダーとは何かが違っていたわけだ」
「だ、だからなんだよ!!」
「我にとって、智蔵は最も憎むべき相手。それは孫である貴様も同じ。覚悟しておけ。貴様も、貴様のビーダマンも、無事では済まさん」
「……!」
今まで以上のタクマの威圧的な雰囲気に、シュウは思わず身構えてしまった。
が、タクマはそれ以上は何も言わず、シュウの横を通りぬけて去って行った。
「智蔵の孫、か……」
源氏派は敵。ずっとそう思っていたけど、それは自分が智蔵の孫だからとか、そんな事は一切考えていなかった。
しかし、いざ目の前でそんな事を言われると……。
シュウは複雑な気分だった。

つづく

次回予告

「さぁ、アジア予選第二回戦の舞台は、シンガポールのマーライオン広場!
そこに特別設置されたジャングルジムで戦うんだけど、俺の対戦相手はヨガの達人!
凄まじい身体能力を見せ付けてきた!!
次回!『柔軟戦士!ヨガビーダー登場!!』

熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
 



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