オリジナルビーダマン物語 第67話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第67話「夢幻のバトル!ブレイグVSスパルナ!!」




 破壊されたバスターブレイグはビクトリーブレイグとして蘇った。
 しかし、その強大な力はビーダーが扱えるものではなかった。
 特訓もむなしく、シュウは何の進歩もないまま練習を終えた。
 その夜。
 シュウの夢の中に、佐倉ゆうじを名乗る少年が現れた……!
 
「お前が、あの佐倉ゆうじ……あやねぇとことねぇの兄貴……?」
 ゆうじは頷いた。
「ああ。妹たちが世話になってるね。それから、仲良しファイトクラブの事も君には感謝している」
「ふざけんなよ……」
 シュウはボソッと呟いた。
「え?」
「あんたが勝手に死んだせいで、どれだけの人が悲しんだと思ってんだ!あやねぇも、母さんも、ベルセルクも!!」
「おいおい、どっちかと言うと死んだ僕の方が可哀相なんじゃないの……?っていうか、ベルセルクって誰(汗)」
 なんで死んだ事で責められなきゃならないのか、ゆうじは少し焦った。
「そりゃ、そうだけどなぁ!」
「それに、君なら僕の気持ちが分かるでしょ?ビーダーとして、最後まで全力で戦いたいって気持ち」
「それは……」
 ゆうじにとっての世界大会決勝と自分にとってのヒンメルとのバトルを重ねてみる。
 もし、同じ立場だったら、シュウもゆうじと同じ選択をしているだろう。
「まぁ、な」
「ほら!僕と君は似た者同士なんだよ!あっはっは!」
 ゆうじは、シュウの答えを聞いて楽しそうに笑った。
「ってか、死人の癖に随分軽いな」
 恩田涼とは大違いだ。
「死者の皆が皆恨みを持ってるわけじゃないからね。彩音達に寂しい想いをさせてしまったのはすまなかったと思ってるけど、自分の選択に後悔はしていないから」
「そうか……」
 飄々と明るく、掴み所のない。でも、自分の意志はきちんと持っていてそこに揺らぎが無い。ゆうじとはそういう奴だった。
「それより、なんであんたが俺の夢の中に現れてんだよ!別に俺、あんたと関わりなんて無いぞ!」
「あぁ、それはね。なんか苦戦しているようだったからさ。僕なら手助けできるんじゃないかと思って、君に憑依して夢の中に入り込んだんだ」
「憑依って……」
 サラッと恐ろしい事を言う。
「大体、手助けってなんだよ!」
「君のビクトリーブレイグ。使いこなせるように僕が特訓を付けてあげるよ」
「なにっ!?」
 思いがけない申し出だった。
「ビクトリーブレイグは、僕のマッハスパルナとの融合体。君が使いこなせないのは、そのスパルナの部分だ。そこの使いこなしなら、僕は指導できる」
 確かに、マッハスパルナの使い手なら、これ以上ない先生となるだろう。
「だけど、なんで……!」
「言っただろ、世話になってるって。これはちょっとしたお礼のつもりさ」
「じゃなくて、なんでその事を知ってんだよ!」
 その場にいたわけじゃないゆうじが、なんでシュウがビクトリーブレイグの使いこなしに苦戦している事を知っているのか。そこが問題だ。
「だって、僕は幽霊だからさ。皆の事はいつも見守っているよ」
「げぇ……!」
 そこになんか変な意味も入ってそうで、シュウは引いた。
「あぁ、勘違いしないでくれよ!僕が見られるのはあくまでビーダマンバトルに強く関連している場面だから!プライベートは見られないようになっているんだ!」
「へぇ……」
 都合の良い設定だ。
「それよりも、僕の訓練。受けるかい?」
 ゆうじは試すようにシュウに聞いてきた。
「そうだな……幽霊の言う事なんか信用できないけど。でも、他に手はなさそうだ。良いぜ、受けてやるよ!」
「そうこなくっちゃね!それじゃあ」
 パチンッ!
 とゆうじが指を鳴らすと、辺り一面がトレーニング施設のように変わった。
「おおぅ、すげぇ……!」
「まっ、夢の中だからね」
「俺の夢、だけどな」
「気にしない気にしない。それじゃあ、あのターゲットに向かって撃ってみようか」
 ゆうじは、ダーツの的のようなターゲットを指さした。
「お、おう」
 シュウは、いつの間にか持っていたビクトリーブレイグを構えてターゲット目掛けて撃った。
 いや、撃とうとして、一瞬撃てなくて、それでもがんばって撃った。と言う感じだ。
 そして狙いは完全に逸れている。
「ぐっ!」
 ドーーーン!
 と的を外れて壁にビー玉がめり込んだ。
「あー、ダメダメ!やっぱりサスペンショントリガーの使い方が間違ってる」
「え?」
「ちょっと貸して」
 ゆうじはシュウからビクトリーブレイグを受け取り、軽く撃った。
 ドンッ!バゴォォ!!!
 見事的に命中し、砕いた。
「す、すげぇ……!」
「まっ、ザッとこんなもんかな」
 ゆうじはシュウにブレイグを返した。
「このトリガーパーツはスパルナのサスペンショントリガーを発展させているものだ。言ってみれば、ビクトリーブレイグのスパルナの部分って所かな」
 見ると、トリガー部分にX型のパーツが取り付けられている。
「なんか、バネがいっぱい付いてる」
「ツインクロスサスペンショントリガー。トリガーを押す事でX型のパーツが連動して、カウンターレバーを広げる機能さ」
「トリガーと連動してカウンターレバーを広げる?」
「そう。だから、ホールドパーツをシメる感覚が通常のパワー強化パーツと違うんだ」
「具体的に、どう違うんだよ?」
「普通のパワー強化パーツは、ビー玉を撃つ前からホールドパーツを固く矯正する。
でも、サスペンショントリガーは、ビー玉がホールドパーツを通過し、ホールドパーツがビー玉を圧出する瞬間に矯正するんだ。
だから、通常よりもより効率よくホールドパーツを矯正する」
 ホールドパーツの矯正に必要な瞬間は、ビー玉を発射する前ではなく、『ビー玉がホールドパーツを通過する瞬間のみ』なので、このパーツは非常に効率が良いと言える。
「え~っと、つまり、どういう事だ……?」
 しかし、シュウには理解しきれなかった。
「つまりね。君はいつもの癖で、最初からトリガーを全力で押そうとしているんだけど。それだと意味ないし、トリガーも必要以上に堅くなって撃ちづらくなるんだ」
「あ……!」
 それで、たまに撃ちづらい時があったのか。
「サスペンショントリガーはスプリングが多い分、トリガーの抵抗も強いからね。
最初はゆっくりトリガーを押して、ビー玉がホールドパーツを押し広げた瞬間に一気にトリガーを押し込むんだ!」
「最初はゆっくり、半分くらい押したら一気に速く押せばいいんだな」
「そう言う事」
 シュウはゆうじに言われた通りに撃ってみた。
「いっけぇ!!」
 バゴオォォォ!!
 今度は、一撃でターゲットを粉砕できた。
「や、やった……!」
「へぇ、一回教えただけで……」
 ゆうじは、シュウの呑み込みの早さに感心した。
「しかも、ビクトリーブレイグのコアはラバー無し五本爪のペンタコア。デルタコアを超えるパワーショットが可能。
アームはスプリングで締め付けをサポートする、キャノンサスアーム。完全なるパワー特化型ビーダマン。パワーだけなら、マッハスパルナを上回っているかもしれない」
 ゆうじは、ビクトリーブレイグの性能に戦慄しながらも、どこか楽しげだった。
 
「うおおおおおお!!!!!」
 ドギューーーーーン!!!
 シュウはかなりビクトリーブレイグを使いこなせるようになっていった。
「うん、いい感じだね」
「おう!ゆうじのおかげだぜ!!」
 シュウはガッツポーズして礼を言った。
「ほんと、ありがとな。これで世界選手権はばっちりだ!」
「ならよかった。それじゃあ、早速……」
「早速?まだなんかあんのか?」
「僕がただ稽古付けただけで終わると思った?」
「?」
 ゆうじはマッハスパルナを取り出して、シュウに突きつけた。
「っ!」
「勝負だ!せっかく使いこなせるようになったんだ。バトルしなきゃ損だからね!」
「へっ、随分と元気の良い幽霊だぜ!」
 ゆうじの申し出に、一瞬面食らうがシュウもすぐにやる気を出す。
「決まりだね」
 ゆうじはパチンッ!と指を鳴らす。
 すると、シャドウボムが出現した。
「ルールはシャドウヒットバトルで良いね?先に二回当てた方が勝ちだ」
「おお!!」
 二人は少し距離を取った。
 
「「レディ、ビー・ファイトォ!!」」
 合図と同時に二人は撃ち合った。
 ズバババババ!!!!
 二人のパワーショットが拮抗する。
 パワーではわずかにシュウの方が勝っているが、ゆうじはコントロールと連射でそれをカバーしている。
「くっ!」
「総合力は互角か……だったら!」
 ダッ!!
 ゆうじはせめぎ合ってる中ダッシュして、シュウに近づきながら撃ち続けた。
「何!?」
「うおおおおおお!!!!」
 徐々に、シュウが押されている。
「お、おれのショットが押されてる!」
「走ってる分、こっちの方が威力が強い!!」
 ガキンッ!!
 ついに、ゆうじのショットがシュウのショットを弾き飛ばし、シャドウボムを撃破する。
「くっ!」
「よし!」
 もう一発!とばかりにゆうじはシャドウボムを狙う。
「負けるかぁ!」
 バーーーン!!!
 シュウは地面に向かってショットを放ち、その反動で大ジャンプした。
「飛んだ……!」
「うおおおおお!!メテオールバスター!!!」
 ドーーーーン!!!
 空中からの必殺ショットだ。
「このくらい!!」
 ゆうじは迎撃しようとする。が、全て弾かれてしまい、シャドウボムにヒットした。
「くっ!」
「おっしゃ、どうだ!!」
 これで、五分五分だ。
「ふ、ふふふ……面白い!燃えてきたぁ!!」
 突如、ゆうじは叫んだ。
「バトルはこうじゃないとね!絶対に負けない!!」
 ゆうじはありったけの気合いをシュウへぶつける。
「……!」
 その姿を見て、シュウは気付いた。
(そっか、ゆうじが俺に似てるのって、姿形だけじゃなくて……)
「うおおおおおお!!!!」
 
(バトルに賭ける想いが同じなんだ!)
 ゆうじが気合いを込めると、マッハスパルナのヘッドの羽根が振動する。
「だったら俺も!!!」
 シュウもコアを思いっきりしめつけてパワーショットを放った。
「いっけぇ!スパルナー!!!」
 ゆうじもパワーショットを放った。
 バーーーーーン!!!
 二つのショットがぶつかり、弾け飛ぶ。
 ガクガクガクガク!!!
 その衝撃で、ブレイグの光の刃。スパルナの風の翼が激しく振動する。
 ビュオオオオオオオオ!!!!
 そして、その振動が頂点に達したとき、二人の周りに風が吹いた。
「うおおおおおお!!!いっけぇ、フェイタルストーーーーム!!!!」
 ドゴオオオオオオオオ!!!!
 ビクトリーブレイグから、空気の膜を纏ったショットが発射された。
「エアリアルバイザーはこっちの方が上だ!!カッ飛べぇ!!ジャターユジェット!!!」
 バシュウウウウウウウウウ!!!!!!!
 マッハスパルナから、突風をブースターにした超スピードショットが放たれた。
「速いっ!」
「君のフェイタルストームは空気の膜で威力を上げる技。でも僕のジャターユジェットは突風で純粋にショットのスピードを上げる技!」
 シュンッ!!
 二つのショットがすれ違う。
「っ!」
「ぶつかり合わなければ、スピードが速い方が勝つ!」
 ボムに近づくスピードはゆうじのショットの方が断然早い。このままでいけば確実にゆうじの勝ちだ。
「くっ、そおおお!」
 シュウは咄嗟に斜め前方にパワーショットを放った。
 その衝撃で後ろへフッ飛ぶ。
 バーーーーーーン!!!
 二つのボムが同時に爆破した。引き分けだ。
「くっそぉぉ、引き分けかよぉぉ!!!」
 勝利できなかったことを悔しがるシュウ。
「まさか、メテオールバスターの応用で後ろに飛ぶ事で、ジャターユジェットがボムにぶつかるタイミングをズラすなんて……」
 ゆうじはシュウの咄嗟の機転に驚いていた。
「良いバトルだったよ」
 ゆうじは手を差し出して握手を求めた。
「お、おう!お前も、さすがだぜ!」
 シュウは快くその手を握った。
「君みたいなビーダーがいるんなら、ビーダマン界は安泰だな」
「へへっ、でも次は絶対に勝つからな」
「こっちこそ。またバトルしよう!」
「おう!!」
 二人は再戦を誓い、拳をぶつけ合った。
 
 と、同時にシュウの視界がぼやけだした。
「あ、あれ。なんだぁ?」
「そろそろ朝か……じゃあね、シュウ君。仲良しファイトクラブの皆によろしく」
 ゆうじは片手を上げて姿を消した。
 
 そして、シュウの意識も徐々に薄れて……。
「う……ん……」
 気が付くと、シュウはベッドの中にいた。
 朝日が差し込む窓からは、チュンチュンと小鳥のさえずりが聞こえる。
「朝、か……」
 シュウは寝ぼけた頭で、机の上にあるビクトリーブレイグを手に取った。
「さっきまでのは、夢……だよな……」
 でも、記憶にしっかり残っている。ビクトリーブレイグを使いこなせたあの感覚が。
「サンキュー、ゆうじ」
 シュウは立ち上がって、身支度を始めた。
 
 
 仲良しファイトクラブ練習場。
 パワープッシュを挟んでシュウとタケルが対峙している。
「タケル!今日こそビクトリーブレイグを使いこなして見せるぜ!」
「随分な自信だな。根拠はあるのか?」
「ああ!特別コーチに稽古つけてもらったからな!」
「特別コーチ?」
 シュウの言葉に、タケルは怪訝な顔をする。
「とにかくいくぜ!」
 
「「レディ、ビー・ファイトォ!!」」
 バシュッ!!ドーーーン!!!
 ビクトリーブレイグのショットが、右端のバーを一撃で押し込んだ。
「こいつ!」
 その間にタケルは真ん中のバーに一撃当てていたが、8割くらい押し込んだだけで完全に押し込み切れない。
「いっけぇ!!」
 シュウは今度は押し込まれたバーに一撃当てる。
 ズジャアアア!!!
 一気にタケル側に半分押し込まれる。
「くっ!」
「まだまだ!」
 ダメ押しと更にショットを放つ。
「なに、連射だと……!」
 完全に押し込んだ。
「シュウの奴、正確性が昨日とは比べ物にならないくらい上がっている。一体何をしたんだ……?」
「いっけぇ!!!」
 バーーーーン!!!
 3本目のバーも一撃で押し込んだ。
 3VS0。完全なワンサイドゲームでシュウの勝利だ。
「おっしゃあ!!」
 シュウはガッツポーズを決めた。
「ふぅ、まいった……一晩でここまで出来るとは、一体どんな訓練をしたんだ?」
「へへへ~、内緒内緒!」
 シュウは後頭部に腕を組みながらニカッと笑う。
「でも、ビクトリーブレイグはすげぇぜ!あのタケルを完封できちまうなんて!これで世界選手権は楽勝だぜ!!」
 完全楽勝モードのシュウに、タケルは不敵に笑いながら言った。
「おいおい、舐めるなよ。これが俺の本気なわけじゃない」
「へっ?」
「タイラントレックスはまだまだお前の知らない力が秘められている」
「な、なになに!?どんなの!?」
 シュウはタケルに迫ってその秘密を聴こうとする。
「言うわけないだろ、アホ!お前はライバルなんだからな!」
「ちぇ、ケチ……」
 タケルに拒否られて、シュウはふてくされながらもあっさりと引き下がった。
「まぁいいや、じゃないと面白くないぜ!
待ってろよ!世界!!ビクトリーブレイグで、優勝してやるぜ!!!」
 シュウはビクトリーブレイグを掲げて、勝利宣言するのだった。
 
 
 
     つづく
 
 次回予告
 
「さぁ、いよいよ始まるぞ!世界選手権アジア予選!開催地は中国だ!!
って、あれ?なんかいきなり迷子になっちまったぁ!なんか周り怖い奴らがいっぱいいるし、どうすんだよ~!!
 
 次回!『新たなる戦場、中国!』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
 

 


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