オリジナルビーダマン物語 第65話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第65話「忘れえぬ想いを乗り越えて」





 日本選抜戦を終えたシュウ達は、爆球町へ戻り彩音の工房へ来ていた。
 壊れたブレイグを修理するためだ。
「どうだ、あやねぇ。ブレイグは……」
 壊れたブレイグをコンピューターで分析してる彩音に、シュウは心配そうに尋ねた。
「……」
 カタカタとコンピューターを弄っていた彩音だが、しばらくして顔を上げて一息ついた。
「ふぅ……」
 そして、言いにくそうにシュウへ口を開いた。
「ここまで壊れているとなると、もう私じゃ手に終えないわ」
「そ、そんな……!」
「くそっ、彩音さんでも無理か」
 シュウ達の反応を見て、彩音も悔しそうに言った。
「うん、ブレイグは元々師匠の機体だから……さすがに私じゃ、設計図も無しには」
「えぇ!?彩音先輩はメカニックなんですよね?なんとかしてくださいよ!じゃないとシュウ先輩が可哀相です!!!」
「リカやめろ。あやねぇだって、精一杯やってんだ」
 彩音を責めようとするリカをシュウが止めた。
「ごめんね、シュウ君」
 彩音はシュウへ申し訳なさそうに謝った。
「大丈夫だって!きっとなんとかなる!あやねぇが気にする事じゃねぇよ!」
「う~ん。こうなりゃ、ブレイグを作った当の本人に頼むのが一番だが……」
「それなんだけどね。ちょっと前から連絡取ってるのに、応答が無いの。完全に音信不通なのよ」
「えぇ~、なんだよいらねぇ時は頼んでもねぇのに出て来る癖に、肝心な時にはいないのかよ!」
「万事休すか……」
「可能性があるとすれば……」
 彩音が何かを言いかける。
「え?」
「ううん、やっぱりなんでもない」
 彩音は首を振った。
「とにかく、出来る限りの修復はしてみるよ。なんとかアジア予選に間に合うように」
「あぁ、頼むぜあやねぇ!」
「ところで、琴音の奴はどうしたんだ?帰りからずっと見掛けなかったが」
 タケルは、今更な質問をした。
「あぁ、琴音ちゃんなら、ヒロト君の付き添いで総合中央病院に行ってるわ。少しでも一緒にいたいからって」
「そうか……ヒロトさん、結局目が覚めなかったんだな」
「あれだけの衝撃を受けたんだもんね。聞いた話だと、命に別状はないけど、しばらくは目を覚まさないかもしれないって」
「そっか、そっちも心配だな」
 シュウが心配そうにしていると、タケルが口を開いた。
「まぁ、そこは琴音に任せておけ。こっちはこっちでシュウのビーダマンの事を考えないとな」
 『ブレイグ』でなく『シュウのビーダマン』と言ったのは、ブレイグはもう使えないかもしれないと言う最悪の事態を想定として言ったのだろう。
 シュウもそれを理解したうえでうなずいた。
「そうだな……俺も念のために、他のビーダマンで練習しておくよ」
「だな。最悪ブレイグ以外の機体を使わないといけなくなるかもしれないしな。俺も付き合うぞ、シュウ」
「おう!!」
 タケルの申し出に、シュウは素直に頷いた。
 
 その頃。中央総合病院の一室。
 クリーム色の個室の窓際のベッドで、ヒロトが眠っていた。
 腕には点滴が繋がれている。
 その横のイスに琴音が座って、ヒロトの手を取っていた。
「ヒロ兄……」
 ヒロトは安らかに眠っている。まるで死んでいるかのように。
「バカだよ……」
 琴音は呟いた。
「どうして、ここまでして……人の気も知らないで、そうまでして強くなることに意味があるの……?」
 ヒロトの腕を握る手が強くなる。
「ヒロ兄……!」
 琴音は人知れず、静かに涙をこぼした。
 
 その翌日。
 仲良しファイトクラブ練習場。
「いっけぇ!シフトレックス!!」
 シュウはタケルからシフトレックスを借りて練習していた。
 台について、複数並べられたターゲットへ向かってショットを放つ。
「うおおおお!!!」
 カンッ!カンッ!カンッ!と次々にターゲットを撃破していく。
「あと、一個!」
 シュンッ!
 しかし、あと一つを外してしまった。
「あっ、くそー!」
 惜しかった。
 シュウは集中を解いて一息ついた。
「ふぅ……」
 額に滲み出た汗を拭う。
「どうだ、シュウ?シフトレックスは」
 そこにタケルがやってきた。
「う~ん、扱いやすいけど。やっぱりなんかしっくりこないんだよなぁ」
 シュウは手に持ったレックスを眺めながら、不満げに言った。
「そうか。同じパワー型だから、比較的相性はいいと思ったが。元々は俺専用にチューンされた機体だからな。
それに、バスターブレイグと比べれば性能も劣るからな」
「悪くは無いんだけどな。ま、でも俺の使いこなし次第って所もあるし、もう少し頑張ってみるぜ」
「ああ。ある程度慣れてきたら、次は対人戦だからな。その時は俺が相手になる」
「おう!」
 そう言って、タケルは自分の練習に戻って行った。
 シュウもフィールドを設定してターゲットシューティングの練習を再開する。
「おっしゃあ、やるぜぇ!!」
 シュウは気合いを入れて再びターゲットに向かって撃ち始めた。
 
 その頃。彩音の工房では。
「……」
 彩音が必死にブレイグを修理しようと作業をしている。
「なんとか、形にはなったけど……」
 作業机の上には、どうにかバスターブレイグの原形を取り戻したビーダマンがある。
 彩音はそのビーダマンにビー玉を入れて、トリガーを押してみた。、
 ヒョロ……。
 そのビーダマンから放たれたショットは、ブレイグには程遠いショボイ威力のものだった。
「外見は取り繕えても、性能は戻りそうもないな……」
 彩音はため息をついた。
「もし、出来るすれば……」
 彩音は、チラッと部屋の端にある棚に目を向けた。
 そこには、青いビーダマンが一台だけ置いてあった。
「だけど、私は……」
 
 仲良しファイトクラブ練習場。
「うおおおお!!いっけぇ、レックス!!」
 シュウは相変わらずレックスを使いこなすための特訓をしていた。
 レックスのショットがフィールド上のターゲットを全て倒した。
「よしっ!」
「良い調子だな、シュウ」
「ああ。これで最悪事態にはどうにかなりそうだ。あとは」
 シュウはレックスを仕舞って、筋力トレーニングを始めた。
「おい、休憩しないのか?」
「んな暇ねぇって!今度は復活するブレイグのための特訓だ!ブレイグが無くたって、俺自身は特訓できるからな」
 シュウはダンベルを持って、上下に動かす。
「全く、大した奴だ。俺達はちょっと休憩するぜ」
「おう。俺もキリの良い所で休む……」
 と、シュウが言った所で彩音が練習場に入ってきた。
「あ、あやねぇ!」
 シュウは顔を綻ばせて彩音の所へ駆けつけた。
「どうだった?治った?」
 彩音は微妙な顔をする。
「出来る限りの事はしたんだけど……」
 彩音が控えめにブレイグをシュウへ差し出した。
「あ、なんだ治ってんじゃん!さっすがあやねぇ!!」
 見た目元通りになったバスターブレイグを手に、シュウはフィールドについた。
「いっくぞぉ!」
 ターゲット目掛けてパワーショットを放つ。
 しかし……。
「あ、あれ?」
 放たれたショットはヒョロヒョロとした弱いショットの上、シメ撃ちしたせいでホールドパーツの一部が砕けてしまった。
「見た目は元通りには出来たけど、性能までは無理だったの」
「そ、そっか……」
 シュウは落胆した。
「でもね、一つだけ可能性はある。完全に元通りのバスターブレイグにはならないけど、ブレイグを蘇らせる方法が」
「え?なにそれ?!」
「工房にあるマッハスパルナの設計思想をベースに、ブレイグと融合させる……。元々思想の似てる二台だし、スパルナは私が過去に設計したものだから、不可能じゃない」
「あやねぇの最高傑作とブレイグが、融合……!」
「バスターブレイグには戻らないけど、間違いなくブレイグを受け継ぐビーダマンになるわ。どうかな、シュウ君?」
 彩音が練習場に来たのは、ブレイグの改造許可を得るためなのだろう。
「俺は、構わないぜ。ブレイグは、次の段階に進むんだ!」
「そっか、よかった」
 彩音は力の無い笑顔を見せた。
「だけど、あやねぇは……」
「それじゃあ、早速作業に戻るね」
 彩音はシュウからブレイグを受け取り、練習場を出て行った。
「あやねぇ……」
「シュウ」
 いつの間にかタケルがそばにいた。
 その表情は、シュウに何か言いたげだ。
「分かってるよ」
 それを察したシュウは彩音を追って練習場を出て行った。
 
 彩音は工房に戻って、作業の続きをしていた。
 マッハスパルナとバスターブレイグを机の上に置き、それぞれの設計データをまとめている。
(これで、シュウ君のブレイグは蘇る。ううん、スパルナと融合する分、もっと強いビーダマンが出来る。新しい、ビーダマンが……)
 新しいビーダマンを作るのは、あの時以来だ。
 あの時……。
 ふいに、ゆうじの顔が脳裏に浮かぶ。
「っ!」
 彩音は首を振った。
「お兄ちゃん……!」
 バンッ!
 机に両手を付いて俯き、涙がとめどなく溢れた。
「ごめんなさい、お兄ちゃん…!お兄ちゃん……!やっぱり、私には出来ない……!」
 ガチャ……!
 その時、部屋の扉がゆっくりと開けられた。
「あやねぇ……」
 シュウが神妙な面持ちで部屋に入る。
「え?」
 その音に気付いて顔を上げる彩音。
「お兄……ちゃ……」
 涙でぼやけたその瞳にはシュウの姿が兄のゆうじそのものに見えたのだ。
「お兄ちゃん!!」
 涙目のままシュウに駆け寄って抱きついた。
「っ!」
 驚いたものの、シュウは抵抗しなかった。
「私、やっぱり、出来ない…!私がビーダマンを作ったせいでお兄ちゃんが死んだのに!私がお兄ちゃんを殺したのに、なのに、今更作れないよぉ!
でも、でもシュウ君の力にもなりたい……!だけどまたシュウ君も私のせいで失ってしまうんじゃないかって……!私は、私はどうすれば……!」
 涙声で必死に兄と勘違いしているシュウに訴えかける彩音。
「あやねぇ。俺は、あやねぇの兄貴じゃないよ」
 そんな彩音をソッと引きはがし、シュウは静かにそう言った。
「え」
 涙でグチャグチャになった呆けた顔で、彩音はシュウを見上げた。
「だから、消えない。何があっても」
 シュウは凛とした表情で彩音を見つめた。
「シュウ……君……」
 彩音はようやく、今目の前にいる人物がゆうじではなく修司だという事を認識した。
「俺はゆうじじゃない。修司だ。だから消えない!絶対に!」
「シュウ君は、お兄ちゃんじゃない……」
 呆けた頭で、彩音はシュウの言った言葉を少しずつ理解しようとする。
「それにさ。もし、俺がゆうじの立場だったら、絶対に後悔してないと思うんだ。むしろ、感謝してるよ」
「本当……?」
「あぁ、きっと『ありがとう、彩音』って天国で言っ」
 言い切る前に、彩音がシュウに顔を埋めてきた。
「お兄ちゃん……!おにいちゃああああん!!!」
「ちょっ、だから、違うって(汗)」
「ごめんね。ちょっとでいいから……今だけ、私のお兄ちゃんでいてください」
 
      つづく
 
 次回予告

「ついに、ついに完成した!俺の新しいブレイグ!
マッハスパルナと融合したブレイグのパワーはもう無敵だぜ!これで世界選手権は俺が優勝だ!!
 
 次回!『ビクトリーブレイグ』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 



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