オリジナルビーダマン物語 第52話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第52話「目指せ!ビーダマンワールドチャンピオンシップ」






 ジャパンビーダマンカップ表彰式。
 表彰台の一番高い壇にタケルが、二番目にシュウ、三番目に琴音が立っている。
 
『それでは、表彰式を始めるぞ!栄えあるジャパンビーダマンカップを制したのは、大接戦の末に守野タケル君だ!
二位には竜崎修司君、三位は高橋ヒロト君と佐倉琴音君が入った!なお、ヒロト君は表彰式を欠席だそうだ!』
 タケルの首に金メダルがかけられた。
『優勝のタケル君、おめでとう!今の気分はどうでしょう?』
 ビーダマスタージンがタケルにマイクを向けた。
「優勝できたのは、俺の力だけじゃない。チームメイトやライバル達、そして何よりもレックスの力があってのものだった。まずはその感謝の気持ちが強いです」
 タケルは、小学生とは思えない堂々としたコメントをした。
『なるほど、素晴らしいコメントをありがとう!それでは、次にシュウ君!惜しくも二位だけど、大健闘だったね!』
 ジンは今度はシュウにマイクを向けた。
「う……」
 マイクを向けられたシュウだが、うつむいていたままロクにしゃべらない。
『う?』
 
「うがあああああああああああああ!!!!」
 と、いきなり吼えた。
 キーーーンとマイクから音割れが響いた。
 会場の皆が耳を塞ぐ。
「なんで俺が二位なんだ!納得できるかああああああああ!!!!」
 ……
 ………。
「うるせぇぞ、修司!!」
 バタンッ!
 急に部屋の扉が開かれて、父ちゃんが枕をシュウの顔に投げつけた。
「どふっ!」
「ったく、明日も早いってのに」
 父はぷんぷんしながら扉を閉めて自室へと戻って行った。
 その事で、シュウはぼんやりしながらも目が覚めて来た。
 薄暗い自室の中で、ベッドの上で上半身を起こしているパジャマを着た自分……。
「夢、か……」
 さっきまで、表彰式をしていた時の夢を見ていたらしい。
 それで、寝言で叫んでしまったようだ。
「……」
 でも。
 シュウは机の上に目をやった。
 そこには、銀メダルと銀のトロフィーが置いてあった。
 それは、ジャパンビーダマンカップ二位に与えられるものだった。
「二位、なんだよなぁ……」
 二位なのは夢じゃない。
 シュウはガックリと項垂れた。
 
 翌日。
 シュウは一人、クラブまでの道のりを歩いていた。
「はぁ~あ、今さら決勝戦のやり直しなんて出来ないし。どうにかなんないもんかなぁ」
 二位だった事が納得できないシュウはまだブツクサ言っていた。
 クラブの近くまで行ったところで、シュウは違和感を覚えた。
 なんだか騒がしいのだ。心なしか人通りも多い。
「何か、イベントでもあるのかな?」
 そう思いながらクラブの前まで来た時、その違和感の正体に気付いた。
「んなっ!!」
 クラブに、たくさんの人が押し寄せているのだ。
 いつもは、たった四人のメンバーしかこないような、閑古鳥が鳴いているクラブに。
「なんだ、この人だかりは……!」
 そして、その人だかりをタケル達が捌いていた。
「あ~、入会希望者は列を離れないで!順番!順番に!!」
 列整理をタケルはシュウを見つけると駆け寄ってきた。
「シュウ、遅かったじゃないか!早く手伝ってくれ!!」
「タケル、これって……?」
「入部希望者だよ!ジャパンビーダマンカップが終了してからドッと押し寄せて来たんだ!」
「えぇぇ!?」
「まぁ、全国大会のワンツーフィニッシュがいるクラブだから、ネームバリューとしては申し分ない」
 話し込んでいると、奥から琴音の声が聞こえてきた。
「ちょっとタケルー!持ち場離れないでよー!!」
「あぁ、すまん!シュウ、お前も列整理を手伝ってくれ。受け付けは琴音と彩音さんにやってもらってるから」
「お、おう!」
 シュウは慌ててクラブの方へ駆け出した。
 
 一時間後。
 全ての入部希望者の受付を終え、簡単な説明会をしたのち、ようやく落ち着いた。
「ふぃ~、なんとか捌けたな~」
「ああ。だが、今日入部した人間は明日から練習に参加する。また忙しくなるぞ」
 と言いつつ、タケルはなんだか嬉しそうだ。
「タケル君、嬉しそうね」
 彩音が言う。
「これで、俺の夢とゆうじさんとの約束に一歩近づきますからね」
 タケルの言う、ジャパンビーダマンカップに勝つ事は通過地点で目標ではないと言うのはこういう事だったのだ。
「ふ~ん」
 と、シュウはなんだか面白くなさそうな顔でタケルを眺めた。
「なによシュウ。ふくれっ面して」
 琴音が突っ込んだ。
「タケルは良いさ。優勝できたし、クラブに人も集まるし」
「シュウ君だって、頑張ったじゃない。二位だって凄い事だよ。それにクラブに入部する人が増えて嬉しくないの?」
 彩音が聞くと、シュウはそっぽを向きながら答えた。
「別に俺はクラブのためにビーダマンやってたわけじゃないし。俺は、世界一強いヒンメルをブッ倒さないといけないんだ!その俺が、日本で二番目じゃ、なんかなぁ……」
 ぼやくシュウに、タケルが言った。
「二位が納得出来ないんだったら、世界一になればいいだけだろ」
「え?」
「全国大会が終わったからってノンビリは出来ない。一か月後にはビーダマンワールドチャンピオンシップの日本選抜戦が始まるんだからな!」
 タケルが言うと、彩音も頷いた。
「そう言えば、もうそんな時期ね」
「タケルは良いわよね。一位だから選抜戦免除でアジア予選に行けるんだから」
「ちょ、ちょっと待って!ビーダマンワールドチャンピオンシップって何?」
 勝手に話が進むので、シュウが慌てて質問した。
「読んで字の如く、ビーダマンの世界大会さ。ヒンメルだって、去年その大会で優勝したんだからな」
「ヒンメルが……!」
 ヒンメルと言う言葉にシュウは反応した。
「ヒンメル君と戦う事が目標のシュウ君にとって、この大会こそその願いを叶えるものになるね」
「……ワールドチャンピオンシップ」
 熱に浮かされたような気持ちでその大会名を呟いた。
 そこに出れば、ヒンメルがいる。
 戦える……。
「出るぜ……!そこに、ヒンメルがいるなら!!」
 シュウは拳を握りしめて言った。
「まぁ、当然だな。ビーダーである以上、出ない理由は無い!」
「おう!……で、どうやったら出られるんだ!?」
「さっき言っただろ。一か月後にやる日本選抜戦。そこでアジア予選に出られるビーダーが二人決定する」
「おお!絶対に選ばれてやるぜ!タケルも、また選抜戦でワンツーフィニッシュして二人で日本代表になろうぜ!」
「あ~、俺は選抜戦に出る必要ないんだ。ジャパンビーダマンカップで優勝したからな」
「え、ドゆこと?」
「ジャパンビーダマンカップでの優勝者は特典として、ワールドチャンピオンシップの出場権を得られるんだ。
日本大会の優勝者と選抜戦で勝ち抜いた2名。計3人が日本代表になる」
 それを聞いてシュウがブー垂れた。
「えー、なんだよそれ!日本からはあと2人出られるんだったら、2位と3位にも出場権くれればいいのに!」
「落ち着け。ジャパンビーダマンカップはあくまで『日本一を決める事』が目的の大会で、世界大会出場権はオマケだ。
2位3位にも出場権を与えたら、1位の価値が薄くなるだろうが」
 ジャパンビーダマンカップの運営としてはやはり全員に優勝を目指して欲しと思うものだ。
 2位3位にも同じ特典を与えたら、無理に1位目指さなくても良いと言う空気になる可能性がある。
 かと言って、ジャパンビーダマンカップをやらずに最初から日本選抜戦で3人出場者を決めたら日本一が決まらないし。
 ジャパンビーダマンカップの優勝者が世界大会に出場できないと言うのも体裁が悪いのだろう。
「そりゃそうだけどさぁ」
 納得はするが、面白くは無い。
「そんな顔するな。2位3位にもちゃんと特典はある。日本選抜戦のトーナメントに予選なしでシード選手として出場できるんだ」
「あそっか。当然選抜戦も予選からスタートするんだもんね」
 琴音が言った。
「そりゃそうだ。しかも地方予選と違って、いきなり全国のビーダーが集まってトーナメントの出場権を賭けて予選をするんだ。倍率はその比じゃない。
地方予選程度の倍率なら、実力さえあれば確実に出場できるが。この倍率じゃ、いくら実力があっても、運悪く落とされる可能性が高い」
「それは、確かに困るかもなぁ……」
 実力には自信あるものの、運が絡むとなると厄介だ。
「日本選抜戦は、AブロックとBブロックに分かれて各8人でトーナメントをする。各ブロックの優勝者がワールドチャンピオンシップへの出場資格を得るんだ。
ジャパンビーダマンカップで2位になった者は、Bブロックに予選なしで参加出来る。同率3位の2人はAブロックに参加する事になる」
「シード選手が2人押し込まれる分、3位よりも2位の方が競争率は低いわけね」
 Bブロックはそのままシード選手が一人で勝ち上がれるが、Aブロックはシード選手同士で優勝のイスを争う事になる。
 当然、3位の人間の方が競争率は激しい。
「まぁ、2位と3位でそのくらいの差は付けないとな。どうだ、シュウ。公平に出来てるだろ?」
 タケルに言われ、シュウはしぶしぶ頷いた。
「まぁ、な。そうだな。勝つしかないなら勝てばいいんだ。ヒンメルへの道に、近道はないぜ!」
 シュウは打倒ヒンメルへのやる気を取り戻した。
「で、ジャパンビーダマンカップの優勝者と選抜で選ばれた2人が代表って事は、各国3人が代表って事よね?
世界大会はいきなりその国の代表者で戦うの?それ凄い数にならない……?」
 琴音が訪ねた。
「あ、そうか。お前はワールドチャンピオンシップに出た事ないもんな。各国の代表になったビーダーは、今度は大陸予選に出るんだ」
「大陸予選?」
「そうだ。アジア大陸、アフリカ大陸、ヨーロッパ大陸、アメリカ大陸、南極大陸の各5つの大陸で、それぞれ2人が選ばれ。計10人で決勝リーグを戦う」
「な、南極って……!?」
「そ、そこは俺もよく分からんのだが、とにかく資料に書いてあるんだよ。最終的には勝ち上がった10人でリーグ戦を各一戦ずつして勝ち数の多いビーダーが優勝だ」
「なんだかややこしいなぁ」
 シュウは頭を抱えてしまった。
「そうか?シュウ的にはまず日本選抜のトーナメントで勝って、アジア予選で勝って、決勝リーグ戦で計9勝すれば確実に優勝だ。ほら、簡単だろ?」
「あ、確かに」
 それは順当に勝ち進められればの話なのだが、単純なシュウはあっさりと納得した。
「オセアニアとロシアって、どこの大陸に組まれるんだっけ?」
 彩音が聞いた。
「オセアニアはアジア。ロシアはヨーロッパですね。あ、さっきの大陸予選、各2名ずつってあったけど。
 アメリカ大陸だけは例外で、北アメリカ、南アメリカに分かれて、それぞれ各1名ずつ選出するみたいですね」
「ふ~ん」
 どちらにせよ出場人数は変わらないわけだし、シュウには関係ない話だ。
 
 そんな頃、源氏派のアジトではちょっとした問題が起きていた。
「た、大変やタクマはん!ヒロトはんが組織を裏切ったでぇ!!」
 クウが、トレーニング中のタクマへ駆け寄った。
「ほぅ……」
 それだけ言うと、タクマはトレーニングに集中した。
「って、何も無しかいな!裏切ったんやで!!なんとかせな、組織にとって問題ちゃうか?!」
「元々奴は源氏派に陶酔していたわけではない。それに、コンフターティスドライグが完成した今、そのような事は些末な事だ」
「せやけど……」
「今の我等の照準はビーダマンワールドチャンピオンシップのみ。そこでの優勝こそ、我が悲願への最短距離と言える。他の連中にも伝えておけ。
これから大会終了までは余計な事はせず、我のワールドチャンピオンシップ優勝のみに焦点を合わせるようにな。大会の外で下手な事をして不利益をこうむられては敵わない」
「りょ、了解や……。せやけど、ヒロトはんの処遇はどうするんや?このまま何も無しやと他のメンバーに示しがつかんで!」
「問題は無い。奴もビーダーなら、いずれまみえる事もあるだろう。その時で十分だ」
 タクマはコンフターティスドライグを手に取って言った。
 ドライグはガンメタの鈍い光を放っていた。
 その様子を陰から見ているのは、メアシだ。
「ワールドチャンピオンシップ……全てのビーダーを解放するのには打ってつけか。必ず、救ってみせる」
 メアシも並々ならぬ決意を固めていた。
 一方のヒロトは、日本のどこかにある荒野を一人歩いていた。
「これでお膳立ては全て整ったな。あとはワールドチャンピオンシップで奴が出場し、俺とぶつかれば完璧だ。フッ」
 ヒロトはにたりと笑った。
 ところ変わってノルウェーの町外れの路地。
「……」
 ベルセルクが浮浪者のような恰好でブラついていた。
 バサッ!
 足元に風で飛ばされた紙が貼りついた。
 それを拾い上げる。
 それはビーダマンワールドチャンピオンシップの広告だった。
「……ゆうじ……戦える……」
 ベルセルクはその広告を見て、気持ち悪いくらい口元をつり上げて笑い出した。
 更に変わって、ギリシャのとある公園。
「やれぇ!シュヴァリエル!!!」
 ドドドドド!!!
 シュヴァリエル操るアラストールが子供たち相手に無双していた。
「うわあああ!!」
 連戦連勝。全く大人げないバトルである。
 アラストールの強さにビビッて子供たちが逃げていく。
「へへへ、こいつもだいぶ使いこなせるようになってきたな。もうすぐワールドチャンピオンシップが始まる……今度こそ、復讐出来るぜ……覚悟しろよ、ウラノス!」
 アラストールはドイツの方角へ向いて、拳を振り上げた。
 
 その頃のドイツのヒンメルの城。
「ワールドチャンピオンシップ……竜崎、修司、シュウ……ブレイグ……」
 ヒンメルは、自室へワールドチャンピオンシップの資料を眺めながらブツブツ言っていた。
 その様子を傍から見ているルドルフはある事を危惧した。
「ヒンメル様……!」
 焦燥感のある表情をするものの、それ以上は何もできない。
 ルドルフは自分の無力さに唇をかみしめるのだった。
 
 それぞれの思惑が渦巻き、ビーダマンワールドチャンピオンシップへの開催が近づいていた。
 
「うおおおお、いっけぇブレイグ!!」
 シュウ達もワールドチャンピオンシップへ向けて猛特訓をしている。
「絶対に!絶対にヒンメルに勝って、優勝するんだーーー!!!」
 
        つづく
 
 次回予告

「メンバーもたくさん入部して、盛り上がりを見せる仲良しファイトクラブに一人の女の子が訪ねてきた!
え、ビーダーじゃなくて、マネージャー志望?って、俺のファンだってぇ!?
 
 次回!『お騒がせマネージャー、リカ登場!』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
 
 

 

 



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