オリジナルビーダマン物語 第51話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第51話「激闘!紅き閃光VS蒼き爆風!!」




 ドンッ!ドンッ!!ガキンッ!!
『さぁ、若干のトラブルもあったが、第3ラウンドもそろそろ大詰め!残りあと1分になったぞ!!
現在のダメージは、シュウ君が217!タケル君は179!!』
 
「ラストスパートだな、タイラントレックス!!」
「こっちも行くぜ、バスターブレイグ!!!」
 ズドドドドドド!!
 シュウとタケルの撃ち合いの勢いが増す。
『残り一分と聞いて、二人の勢いが更に増した!ラストスパートだ!!』
 そして……。
『終了!!ここで第3ラウンドは終了だ!!ここまででシュウ君のダメージは232!タケル君は207!
少し差が付いてしまったが、最終ラウンドで逆転はあるのか?!それとも、タケル君がこのまま逃げ切るか?!運命の戦いは、10分後にスタートするぞ!!』
「ふぅ……」
 第3ラウンドが終了し、シュウは一息ついた。
「うっ!」
 ベキィ!!
 タケルの方から何かの断裂音が聞こえた。
「タケル?」
「……」
 見ると、タケルの持っているタイラントレックスのアームパーツの一部が欠けていた。
「そ、それ……!」
「まぁ、何年もほったらかしにしたビーダマンをいきなり酷使したんだ。ガタがきてもおかしくない」
「……」
「心配するな。このくらい、インターバルで十分修理できる。それに、怪我しようが何しようが、手加減はしないんだろ?」
 タケルはからかう様に笑みを浮かべた。
「お、おぉ!これで条件は五分だからな!ビーダマンが壊れたって言い訳はできねぇぜ!」
「それはこっちのセリフだ」
 言って、タケルは控室へ歩いて行き、シュウもそれに続いた。
  
 客席の彩音と琴音。
「お姉ちゃんお姉ちゃん、この試合どっちが勝つと思う?」
 琴音が身を乗り出し気味に彩音に話しかけた。
「う~ん、そうね……。最大威力ではシュウ君の方が上だけど。総合力ではタケル君に分があるし。
ただ、タケル君はタイラントレックスを使ってから間もないし、シュウ君も本調子じゃないし……」
「なんだか要領得ないわね」
「つまり、戦ってみないと分からないって事☆」
 てへぺろと、彩音は舌を出してごまかした。
「やっぱり……」
 
『さぁ、10分のインターバルも終わり、いよいよ最終の第4ラウンドへ突入だ!!
シュウ君とタケル君は、冬のステージへ入ってくれ!!』
 シュウとタケルが冬のステージに入った。
「うおっ、さみぃ……!」
 入った瞬間、冷気が二人を襲った。
「やはり、と言うか。冬と言えばこれだよな」
 ステージは一面の銀景色だった。
『冬のステージは雪と氷の織り成すコントラストが美しい湖のステージだ!!
ステージ中央の湖は凍っていて上に乗る事が出来る!周りは大雪原になっているぞ!!
泣いても笑っても、これが最後の戦いだ!このラウンドで全ての決着がつく!!
それじゃ、二人とも準備は良いな?レディ、ビー・ファイトォ!!!』
 
 ズボッ!
 合図とともに駆け出そうとする二人だが、足が雪にハマってしまい、動けない。
「ぐっ、雪が深い……!」
「この状態じゃ、まともに動けないな……!」
『バトルは既にスタートしているが、二人に動きは無い!……いや、動けないのだ!
湖の周りの雪は思った以上に厚く柔らかい!歩こうとしても足が埋もれて進めないのだ!!』
 
 それでも、二人はえっちらおっちら突き進む。
「これじゃ、動くので精いっぱいでまともにバトルなんか……!」
「仕方ない、中央の湖目指すしかないな」
 二人は雪をかきながら湖目指して進みだした。
 
 その様子を、ガード・イズ・ストロンガーが見ていた。
「ふっ、あの程度の雪我々ならば造作もなく進めるな」
「まったく、日本トップクラスの癖に軟弱な奴らだな」
「だが、あの過酷な雪のステージ、トレーニングにはピッタリだ」
「確かに……!」
「よし、次の我々のトレーニングは雪国だ!雪国でトレーニングするぞ!!」
「「おおーーー!!!」」
 ガード・イズ・ストロンガーの三人は新たな目標を見つけて会場を出ていくのだった。
 
 一方のタケルとシュウはようやく凍った湖に辿り着いた。
 端と端に二人は立っている。
『二人は中央の湖へと足を踏み入れた!路面は凍っているが、雪の道よりは戦いやすいと判断したのか!?』
「おっしゃ行くぜ!!」
 距離はあるが、遮断物が何もない場所だ。
 シュウはパワーショットで一気に湖の端にいるタケル目掛けて撃った。
 のだが……。
「おわぁ!!」
 ツルンッ!と滑ってしまった。
 
『シュウ君!秋のステージに続いて冬のステージでも滑ってしまった!!受験生には見せられないバトルだぞ!!』
「いてて……くそっ、パワーショット撃とうとして足を踏ん張ると滑っちまう」
「なるほどな」
 と、タケルはその場に寝そべった。
 そして、まるでスナイパーのように横になったままシュウのボムに狙いを定めた。
『おおっと!いきなりタケル君がうつぶせに!まるでスナイパーの体制だ!!』
「いくぞ、レックス!スタンドモード!!」
 タケルはレックスのアームにパーツを取り付けた。
 それがスタンドとなり、レックスを氷の上で安定させている。
「いぃ、なんだアレ……!」
「レックスのシフトパーツは、グリップだけじゃないんでな!」
 レックスが氷を掴んでくれているおかげで、タケル自身も氷の上で安定する事が出来るみたいだ。
「いけぇ!!」
 ドンッ!!!
 しかも寝そべって撃っているおかげで、狙いが二次元的な物になって安定している。
 
「くそっ!」
 ツルンッ!
 慌てて逃げようとしても氷で滑って上手く動けない。
『タケル君のショットが次々にヒットしていく!シュウ君成す術無しか!?』
「負けるかよ!!」
 シュウも気合いで何発か撃つ。
 運よくそのショットはいくつかタケルのボムにヒットした。
「くっ!」
「くっそぉ!滑りやすい地面なら、地面に関係ないショットを撃つだけだ!!」
「なにっ!?」
「うおおおおおおお!!!!」
 ドーーーーーーン!!!!
 シュウは地面に向かってパワーショットを放った。
 その反動で宙に飛び上がる。
『なんとぉ!!シュウ君が宙に飛び上がった!!』
「ここなら凍ってようが関係ないぜ!!」
 シュウは空中からタケルのボムを狙った。
「メテオールバスター!!」
 ドギュウウウウウ!!!
 空中から、落下の速度によって威力アップしたパワーショットが襲い掛かる。
「そうか、シュウにはその技があったか!!」
 
 バーーーン!!
『シュウ君の必殺技がヒット!!これは大ダメージだぞぉ!!』
 前田誠も、この試合を見ていた。
「さすがだね、シュウ君」
 シュウと戦った事のある誠はシュウの破天荒な機転に感心した。
 
「しかもその体制じゃ、飛んでる俺を狙えないだろ!!」
「確かにな。だが、それはお前が飛び続けていればの話だ!」
 重力に従って、シュウの体が地面に近づいていく。
「お前の体が地に堕ちた瞬間に合わせて狙えばいい!!」
「そうはいくかっての!!」
 ドンッ!!
 落下し、地面に着いた瞬間、シュウは再び地面にパワーショットを放って飛び上がった。
「なにっ!?」
「着地したら狙われるなら、すぐに飛び上がればいいだけだ!メテオールバスター!!!」
 
 ドーーーーン!!!!
 シュウは再びメテオールバスターを放った。
『す、すごーい!!シュウ君、二連続のメテオールバスターだ!!タケル君はこれでかなりのダメージを受けてしまった!!
現在、シュウ君とタケル君のダメージは、240VS231!シュウ君、追いついてきたぁぁぁ!!!』
「うおおおおお!!!」
 もう一度メテオールバスターをしようとするのだが、あの技は身体にかかる負担も大きい。
 三発目は不発に終わった。
「あれ、飛ばない……?」
「何度も出来るほど都合のいい技じゃないだろ!」
 ドンッ!!
 今度はタケルのショットがヒットした。
「くそっ!早く飛ばないと!!」
 ドーーーンッ!!!
 シュウは急いで飛び上がった。
「っひゃー!!一瞬でも地面でジッとしてるとタケルに襲われちまう。でも、連続メテオールなんてそうそう成功するもんじゃないぞ……!」
 とはいえ、今はメテオールバスターに賭けるしかない。
 シュウは空中からタケルのボムを狙った。
『ヒット!これで251VS245!!ポイント差は僅か6!!勝負の行方はまだまだ分からない!!』
 
「次で決めてやるぜ」
 着地したシュウは再び地面に向かってパワーショットを放って飛び上がった。
 が、その瞬間。
 パキッ!ベッギッィィィィ!!!!
 不吉な音を立てて、湖の氷にヒビが入り出した。
『なんとぉ!シュウ君のパワーショットを何度も受けて来た湖の氷が!ついに崩壊してしまった!
急いで上がらないと、二人とも氷水の中に沈んでしまうぞ!!』
「いぃ!?」
「げっ!」
 タケルは慌てて起き上がり、急いで湖から雪道へ上がった。
「やばっ!」
 シュウも着地した瞬間再びビー玉を撃ち、タケルが向かった雪道の方へと飛んで行った。
 
 ドサッ!!
 タケルのいる近くの雪の上にシュウが落っこちた。
「ってて、間一髪……!」
「ったく、ほんと無茶する奴だ。だが、だからこそお前のバトルは面白い!」
 タケルはレックスをグリップモードに付け替えてシュウへ照準を合わせた。
「まだまだ勝負はこれからだぜ!」
 シュウも立ち上がってタケルと対峙した。
 身動きは取れないが、これだけ近ければそもそも動く必要はない。
 真正面からガチンコするだけだ。
「うおおおおおお!!!」
「はああああああ!!!」
 バギュバギュバギュ!!!!
 二つのビーダマンから放たれたビー玉が、二人の間で火花を散らしながら激突していく。
 
『ガチンコォォォ!!!雪原での燃え上がるようなガチンコだぁぁあ!!動きづらい雪道だが、むしろ動く必要が無いのか?!
二人の放つビー玉が炎を上げながら飛び散っている!!』
「うおおおおおおお!!!!!」
「はあああああああ!!!!!」
 だが、ビー玉同士がぶつかるだけで、ボムには一切ヒットしていない。
 240VS231のまま動かない。
 このまま時間切れになれば、シュウの負けだ。
 
『バトルは激しさを増すが!数値は動かない!!このまま幕切れを迎えてしまうのか!?残り1分だ!!!』
 
「うおおお……ぐぅぅぅ!!!」
 突如、シュウが顔を顰めた。
「はあああああ……っ!!」
 バキィィ!!
 タイラントレックスの一部のパーツが砕けた。
 
『のおっと!!タイラントレックスのパーツが砕けた!?そして、シュウ君のあの表情、痛みがぶり返したのか?!二人とも、大丈夫か!?』
「まだ、だよなぁ、タケル!!」
「ああ!」
「「俺達の戦いは終わらない!!」」
 雪原の中で二人の声が響いた。
「うおおおおおお!!!行くぞブレイグ!!俺の最大パワーを引き出せ!!!!」
 シュウが思いっきりブレイグのホールドパーツを締め付けて、最大パワーでシメ撃ちをする。
「はああああああ!!!持ち堪えろ、タイラントレックス!お前の根性を見せてやれ!!!!」
 タケルは、光のテーブルを出現させ、そこにレックスを叩き付けながらショットを放った。
「いっけぇ!バスターブレイグ!!」
「グランドプレッシャーーーー!!!」
 バシュウウウウウウ!!!!
 バスターブレイグの最大シメ撃ちとタイラントレックスのグランドプレッシャーがブッ飛んでいく。
 
 バーーーーーン!!!!!!
 そして、二人の間で激突した。
 衝撃で雪が舞い上がる。
 
『激突!!!二人の最大ショットが激突した!!!しかし、威力は互角だったのか、決着つかず!!!』
 
「まだだぁぁ!!!!」
 ドンッ!!
 レックスは更にその後からもう一度グランドプレッシャーを放っていた。
「喰らえ、最大奥義!」
 そのグランドプレッシャーは、失速しつつもいまだ振動を続ける最初に撃ったグランドプレッシャーに追突。
「ダイノクラッシャーーーーー!!!!」
 それによって振動が伝染、倍増し、更に威力を増してシュウのボムへブッ飛んでいく。
「うおおおおおおおおおおお!!!!!」
 ガクガクガクガク!!!!
 さきほどのパワーショットによってバスターブレイグの光の刃が激しく振動している。
 その振動が周囲の風を巻き込み、シュウの周りに纏わりついた。
「カッ飛べぇぇ!!!フェイタルストーーーーーム!!!!!!」
 
 ドギュウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!
 バスターブレイグから、空気の膜を纏ったショットがブッ飛んだ。
 
 
『これこそが真打!!二人の最大奥義!!ダイノクラッシャーとフェイタルストームが炸裂ぅぅぅぅ!!!!
互いに向かってブッ飛んでいくぞぉぉぉぉ!!!』
 
 だが、この二つのショットは激突しなかった。
 途中でクロスし、互いのボムへと向かっていく。
 ダイノクラッシャーの軌跡は紅き閃光となり、フェイタルストームは蒼き爆風を纏った。
 赤と青のクロスした光は輝きを増し……ボムの爆発音とともに、跡形もなく消えた。
 
『終了~~~!!!!!互いの必殺ショットがボムにヒットした瞬間にタイムアップだ!!!
さぁ、得点を見てみよう!!!』
 二人のダメージ得点がモニターにアップで表示される。
『シュウ君のダメージは265ポイント!一方のタケル君は、26……4ポイント!!
よって、僅か1ポイント差で、優勝は守野タケル君!タイラントレックスだぁぁぁぁ!!!』
 
 ワーーーーーーー!!!!!
 優勝が決まり、割れんばかりの歓声が湧き上がった
 
 彩音と琴音もその結果を見て感動していた。
「お姉ちゃん、凄かった……!スゴイバトルだったね……!」
 琴音は彩音に抱き着いて涙を流している。
「うん。本当、よく頑張ったね、二人とも」
 彩音は慈愛に満ちた表情でバトルフィールドにいる二人を眺めた。 
 大盛り上がりの観客とは対照的に、二人は完全に燃え尽きていた。
「はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ……」
 必殺ショットを放った瞬間、二人ともその場に倒れこんでいた。
「つか、れた……!」
 ここまでの疲労は半端ではない。
 まともに起き上がれないほどに二人の体は消耗していたのだ。
「決着、ついたみたいだな」
「だな……」
 バトルが終わったのは分かる。が、身体が動かず、五感も上手く働かない二人は、結果が分からない。
「結局、どっちが勝ったんだ?」
 タケルが疑問を口にする。
「どうでも良いぜ、もう……」
 シュウはもうバトルが終わった事以外どうでもよかった。
「確かにな……」
 タケルも頷き、空を仰いで、目を瞑った。
 このまま、眠ってしまうのも悪くないかもしれない。
 二人は、そう思った。
 
 
 その頃。
 ドイツのとある都市にある城の中。
「……」
 ヒンメルが、自室のテレビでこの試合の中継を見ていた。
 テレビには、タケルとシュウの戦う姿が映し出されている。
「……」
 これだけの熱い戦いを見ても、相変わらずヒンメルの表情には感情が無かった。
 
 と、控えめにヒンメルの部屋の扉がノックされた。
「失礼いたします」
 入ってきたのは、ヒンメルの執事のルドルフだ。
「ヒンメル様、トレーニングの時間でございま……っ!」
 テレビ画面にJBCの様子が映し出されている事に気付いたルドルフは慌ててテレビの電源を切った。
「ヒンメル様!このような低俗なものを見てはならぬと、何度言ったら分かるのです!!」
「ごめんルドルフ。でも……」
 小さくあやまるヒンメルに、ルドルフは有無も言わさずに背中を押して外へ追いやろうとする。
「さぁ、行きますよ!ヒンメル様!!」
 ルドルフに押されながらも、ヒンメルは小さく呟いた。
「低俗では、ないよ」
 そう呟いたヒンメルの口元には、笑みが浮かんでいた。
 
 
 
 
       つづく
 
 次回予告

「ジャパンビーダマンカップも終わりかぁ……って俺二位なの?!日本一じゃないの?!
俺が倒したいのは世界一のビーダーだってのに、その俺が日本二位って……!
まぁいいや!だったらこれから世界一になればいいってだけの話!
そうさ、次の舞台は世界だ!!
 
 次回!『目指せ!ビーダマンワールドチャンピオンシップ』
 
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 



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