オリジナルビーダマン物語 第48話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第48話「決戦前夜 それぞれの想い」





 決勝を控えた前日。
 シュウとタケルは仲良しファイトクラブで、準備をしていた。
「えっと、それで彩音さん。決勝戦の舞台はどこなんだ?」
 タケルが聞くと、彩音はパソコンを操作しながら答えた。
「舞台は、山梨県にある富士ノ湖サーキットって言うサーキット場を貸しきって行うみたいね」
「富士って、富士山の富士か?」
 シュウが聞いた。
「うん。富士山のふもとにあるサーキットよ。日本一を決める決勝戦にはピッタリの舞台ね」
「確かにな」
 日本を象徴とする場所で決勝と言うのはまたスケールのデカい話だ。
「日本一の山で、日本一のビーダーが決まるのか!楽しみだぜ!!」
「決勝のルールやバトルフィールドについては、詳細が書かれてないわね……」
「まぁ、ここまで来たら当たって砕けろだ。条件は俺もシュウも同じなんだからな」
「おう!もう何も気にせずに、パーッとバトルが出来るぜ!!」 
「そうだな」
 そう言って、タケルは一人練習場隅にあるフィールドへ歩いて行って一人でビーダマンを撃ち始めた。
「な、なんだよ。一緒に練習しないのか?」
「当たり前だ。俺とお前は明日戦うんだ。今から戦ってどうするんだ」
「……まぁ、それもそうか」
 シュウは納得し、タケルとは別のフィールドへ歩んでいき、一人で練習を始めた。
「いくぜ、ブレイグ!!」
 ドンッ!ドンッ!!
 ブレイグのパワーショットが設置されたターゲットをどんどん倒していく。
「へへっ、俺もブレイグも絶好調だぜ!タケルのタイラントレックスなんかにゃ、負けねぇ!!」
 レックスを撃ちつつ、シュウの叫びを聞いているタケル。
「それはこっちも同じだ。性能はタイラントレックスもバスターブレイグには負けてない。勝つのは俺だ!」
 それを聞いたシュウは反応する。
「いいや!絶対俺だ!!」
 
「別々に撃ってるのに、まるで戦ってるみたいね」
 と、彩音は苦笑するのだった。
 一通り練習も終わり、タケルとシュウは家路に着いた。
 シュウの自宅では、食卓いっぱいに豪勢な料理が並べられていた。
「おぉぉ!!どうしたんだよ父ちゃん!この料理……!」
「決まってんだろ。せっかくの息子の晴れ舞台だ!明日、日本一を決める戦いに勝つための特製料理だ!しっかり食って、パワー付けろよ!」
「美味そう……!」
「俺は仕事で見てやれねぇからな。せめてこれくらいはしてやらねぇとな」
「父ちゃん……!」
「さ、食おうぜ!冷めちまうぞ!」
「うん、いただきます!!」
 早速シュウはガッツいた。
「うめぇぇ!!!父ちゃんの料理は最高だぜ!」
「なっはっは、そうだろそうだろ!父ちゃんの飯が一番に決まってるだろ!」
「あぁ!ガツガツガツ!!!」
「特にこいつが父ちゃんのおススメだ!ビフテキにロースカツで、敵に勝つってな!なっはっは!」
「……」
 料理は美味いが、オヤジギャグは寒かった。
 
 飯も食い終え、風呂も入ったシュウは自室でくつろいでいた。
「はぁ~~」
 ベッドの上に倒れこみ、大きく息を吐いた。
「いよいよ明日で決勝戦かぁ。なんかあっという間だったよなぁ」
 思えば、半年前爆球町に引っ越してきてから、本当にいろんな事があった。
「初めて仲良しファイトクラブのメンバーと会ったのは、確か引っ越した日だったな」
 
>「やいやい、待てよ!!」
> その時、威勢のいい少年の声が、上級生のセリフを遮った。
>「ん?」
> 振り向いたその先にいたのは、修司だった。
> 修司が、女上級生を睨みつけながら立っていた。
>「お前、何弱いものイジメしてんだ!!」
>「はぁ?」
> いきなり割り込んで怒鳴り込んできた修司に、女はあっけに取られた。
>「ビーバトルってのはなぁ!皆で楽しんでやるものなんだ!強い奴が弱い奴を一方的に倒すためにあるんじゃない!!」
> 修司は、とってもいい事を言っている。
> どんな悪人でも、必ず心を打たれるような良い事を。
> しかし、その悪人である女は……。
>「あのねぇ」
> 呆れたように後頭部を掻いていた。
>「別にあたしは、その子達を苛めてたわけじゃないの。特訓してただけなんだけど」
>「嘘付くな!いじめっ子がよく言う事だぜ!!」
「あの時、琴音と初めてバトルして、その後、あいつと……ヒンメルと戦ったんだ」
 
>「もう下手な小細工は通用しねぇぞ!最大パワーで決めてやる!!」

>「無駄だよ」
> 力を込めるシュウに対し、ヒンメルは冷酷に言い放つ。
>「なにぃ!ハッタリを言うな!」
>「空に、捕まってる……」
> ボソッと、ヒンメルは呟いた。
>「え、なんだって?」
>「君はもう、空に捕まってるから」
>「は、空?」
> ヒンメルのセリフの意味が分からず、首を傾げる。
>「シュウ!上を見て!!」
> 琴音の声にハッとして、シュウは空を見上げた。
>「なにっ!?」
> 先ほどヒンメルが連射したビー玉が空中で弾かれ、四方八方に散らばる。
> そして、散らばったビー玉がシュウの周りに落下していく。
> 落下し、地面に接地したビー玉には回転がかけられていたらしい、全てのビー玉が地面を蹴ってシュウの元へと集束していく。
>「なっ!」
> 全方位からの襲撃!これでは避けようがない!!
>「くそっ!」
> 必死に迎撃するシュウだが、全てを撃ち落せるわけがなく……!

> バーーーン!!!
> シュウの紙風船は無情にも割られてしまった。
 
「ヒンメルをブッ倒したい。俺は、それを目標にして、ここまで頑張ってきたんだ」
 
 その頃、タケルも自室で想いに耽っていた。
「シュウがウチのクラブに入ってから、もう半年か。それで全国大会の決勝まで進む事になるとは、大したもんだ。
最初は、自分の事しか頭にない単細胞だったあいつが……」
 タケルは、シュウが初めてクラブに来た時の事を思い出した。
>「俺が、さっき負けたからか……弱いから、いらないってのかよ……!」
> 拳を握り締めてタケルを睨みつける。
>「……」
> しかし、タケルは何も応えない。
>「さっきのバトルは俺の本気じゃない!お前だって分かってるだろ!?ブレイグがあそこで壊れなけりゃ……!」
>「そういう事じゃねぇ!!!」
> 突然、タケルが怒鳴り、シュウの胸倉を掴んだ。
>「っ!?」
>「お前の戦い方。セッティング。あれはなんだ?」
>「なに……って……」
「だがあいつは、バトルを通じて、ビーダーとしても人間としても成長していった」
 今度は、ヒンメルカップ決勝の事を思い出した。
>「俺、ヒンメルと戦いたくってこの大会に出たんだけどさ。ヒンメルと戦う前から、こんなにすげぇ奴らと戦えて……なんか、目的忘れちまうくらい楽しくなってさ!」
> 元々シュウにとって、この大会の価値はヒンメルと戦える事だけだった。しかし、今はそれ以外の事にも価値を見出せている。そんな自分がたまらなくおかしいのだ。
>「そうですか。私も、楽しかったですよ。ですが、これで終わりです」
>「終わらねぇよ!だって、この楽しいバトルの先には、本当に楽しみにしてた目的が待ってんだからよ!!」
> シュウも、ブレイグを構える。
>「決着をつけましょう!」
>「おう!!」

>「「うおおおおおお!!!!」」
「いつの間にか俺は、あいつを頼もしい仲間として。そしてそれ以上に脅威となるライバルとして見ていたのかもしれないな」
 タケルがそう感じているように、シュウも同じような事を自室で考えていた。
「そういや、タケルがいたから、俺は戦っていられたんだよな」
 シュウが思い出すのもヒンメルカップでの事だった。
>「シュウ、技で対抗するな!力で対抗するんだ!」
> バトルでは失格になったものの、リーダーであるタケルは指示を出す。
>「パワーショット撃てって事か?」
>「いや違う。琴音、まずは一発相手に向かって撃つんだ。その後にシュウ、俺のタイミングでパワーショットをぶち込め!」
>「「わ、分かった!」」
 ヒンメルカップの時だけじゃない。
 関東予選の時も、ヨーロッパ旅行の時も、いつだってタケルはシュウ達を引っ張ってくれていた。
「あいつは、いつでも俺達の頼りになるリーダーだった。だけど、俺はそんなタケルと大会で戦ってみたかった」
 思えば、シュウとタケルは一度も公式の舞台で本気のバトルをした事が無い。
 一度戦った事はあるが、あの時のブレイグは本調子ではなかった。
 ヒンメルと違って、仲間として知り合って、どこか兄貴分的な雰囲気のタケルはライバルと言うには身近な存在過ぎて……。
「そんなあいつと、明日ついに戦うんだ……でも」
 
 タケルも同じことを考えていた。
「まさか、日本一を決める大舞台であいつと戦う事になるとはな……だが」
 
 シュウの自宅。
「俺の最終目標はもっともっと先にある!」
 タケルの自宅。
「日本一が俺のゴールじゃない!」
 
 互いにライバル視はしているが、互いに本当の目標はもっと高い。
 シュウはヒンメルと戦い勝利する事。
 タケルは仲良しファイトクラブを世界一のクラブにする事。
 だから、日本一を決める明日の大会での優勝は、目標にはほど遠い。
 お互いがお互いを『通過点』として見ているからこそ、絶対に負けるわけにはいかないのだ。
 
「「だからこそ、俺は明日勝つ!!!」」
 場所は離れているが、シュウとタケルのセリフはシンクロした。
 
 
      つづく
 
 次回予告

「ついに、日本一を決める大会、ジャパンビーダマンカップの決勝戦が始まった!
身近にいながら、一度も大会で戦ったことが無い俺とタケル。
でも、互いの強さは、一番良く分かってる!日本の中じゃお前が一番の強敵だ!!
さぁ勝負だ、タケル!!
 次回!『決勝スタート!激熱の春夏秋冬バトル!!』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」
 

 

 




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