オリジナルビーダマン物語 第45話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第45話「追い求めていた偶像」




 JBC準決勝会場。
 青森県、恐山。
「なんか、殺風景な山だなぁ。こんなところでバトルするのか?」
「恐山。死者の魂がさまよえると言われている、青森県で最も有名な山ね」
「死者の魂ねぇ。んなもん、ビー魂の前には何の意味もないぜ!」
「そうだな。土地柄の影響が少ないなら、バトルは純粋な能力差で決着がつくはずだ。俺達には丁度良い」
「ああ!この試合、絶対負けられないぜ!」
 と、歩いていると琴音とヒロトが二人並んでシュウ達の前に現れた。
「よぉ」
「……」
 琴音はシュウ達の姿を見るなりうつむいた。
「お前ら……!」
「自分のビーダマンにお別れは告げて来たか?」
 ヒロトはバカにするように言った。
「冗談じゃねぇ!そんな必要あるか!!」
 シュウが吼える。
「大した自信だなぁ。だが、お前らみたいなアマちゃんじゃ俺達には勝てないぜ」
 ヒロトの言葉に対して、タケルが反論した。
「それはどうかな?今日の俺達は今までの俺達とは違う!」
 言って、タケルはタイラントレックスを突き出した。
「そいつは……!」
 それを見て、ヒロトはハッとした。
 が、すぐに面白そうに笑みを浮かべた。
「なるほど。面白いバトルは出来そうだな」
 それだけ言うと、ヒロトは去って行く。
 琴音も、ヒロトの背中について歩いていった。
 
「くっそぉ、なんかムカつく奴だよなぁ!」
「クラブにいた頃はあんな人じゃなかったんだが……。とにかく、今日の試合で勝つしかないな!」
「あぁ、今の俺達に出来るのはそれだけだぜ!!」
 そして、シュウ達は受付を済ませて、待機した。
 しばらくすると、ビーダマスタージンが特設ステージの上に現れた。
『さぁ、白熱のバトルを繰り広げてきたジャパンビーダマンカップもいよいよ準決勝だ!!
今回の会場は、静岡県の恐山だ!死者の魂が彷徨えると言われているこの地で、ビー魂はどんな戦いを見せてくれるのか!?
ちなみに、今回の試合は、第一試合と第二試合で違うバトルフィールドを使用するぞ!
第一試合は、火山岩に覆われた通称『地獄』と呼ばれる地。
第二試合は、美しい宇曽利湖の通称『極楽浜』で行うぞ!!
真逆のフィールドゆえに、前の試合での戦いは参考に出来ない!
ぶっつけ本番の厳しいバトルとなるぞ!!』
 バトルフィールドを見るシュウ。
「っひゃ~、俺が戦うのは地獄の方かよ~!」
「地獄って言っても通称なだけだから」
 ぼやくシュウを彩音が宥めた。
「とはいえ、火山岩の路面はゴツゴツして動きづらい。機動力がかなり制限されるな」
「足元には気を付けてね」
「分かってるよ。動きづらいのは相手も同じ。だったらパワーでブッ飛ばせばいいんだ」
『競技は、お馴染みのアルティメットシャドウヒットバトル!ビーダー、ビーダマンに必要な全ての能力が試されるぞ!!
それでは、第一試合を戦う選手はバトルフィールドへ入ってくれ!!』
「おっしゃ、行ってくるぜ!」
「しっかりやれよ」
「頑張ってね」
「任せろ!!」
 シュウは意気揚々と地獄へ足を踏み入れた。
 離れたところで琴音もフィールドに入った。
「使わせてもらうぜ……!」
 シュウは、ブレイグに康成から貰ったスコープマガジンとショートバレル、そしてメタルスタッドを装着した
『対戦カードはシュウ君VS佐倉琴音君だ!! 
かつて、関東予選団体戦を共に戦ったチームメイト同士の対決!
互いに互いを知り尽くした間柄ゆえに小細工は通用しない!ガチンコ勝負が拝めそうだ!!』
 
「ことねぇ!このバトルで全ての決着を付けてやるぜ!!」
「……シュウ」
 琴音は目を逸らしたまま、何も答えなかった。
 
『さぁ、いよいよ始めるぞ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
 
「うおおおお!!!」
 バトル開始。
 シュウはもう小細工抜きで素早く射程圏内まで駆け寄るとパワーショットを放った。
「くっ!」
 琴音の射程距離よりもシュウの射程距離の方が長い。
 この位置からでは狙えない上に動きづらい路面故、琴音はこのショットを甘んじて受けた。
 
 バーーーン!!
『初太刀はシュウ君が制した!琴音君のシャドウボムの残りHPは75だ!!』
 しかし、ただでやられた琴音ではない。
 ダメージ受ける事を覚悟で、琴音は自分の射程距離までシュウの所へ近づき、連射を放った。
 
「くっ!」
 必死に撃ち落とそうとするシュウだが、物量には敵わず、何発か撃ち逃してしまう。
 
 バーン!バーン!!バーーン!!!
 三発の玉がシュウのシャドウボムにヒットする。
『負けじと琴音君も立て続けに三連ヒット!やったらやり返す!凄まじいバトルだ!!』
 互いに動きづらいので、その場に留まって撃ち合いを続ける。
 ショットを防ぎながらも、撃ち漏らした玉がヒットしていき、互いに徐々にシャドウボムのHPが減っていく。
「うおおおおおお!!!」
 しかし、シュウの気合いが勝っているためか、ダメージレースはわずかにシュウの方が勝っている。
 
『凄まじい撃ち合いだ!!どんどん二人のシャドウボムのHPが減っていく!しかし僅かに琴音君のHPの減りの方が早いか!?』
「ことねぇ!これが俺のビー魂だ!!俺は絶対に負けねぇ!!」
「シュウ……!」
 
 凄まじい気迫を見せるシュウに大して、琴音の表情は浮かなかった。
(このバトルにあたしが勝てば、ブレイグを壊さなければいけなくなる。でも、負けれはあたしはヒロ兄に……どうすれば……!)
 琴音は苦渋の表情をしながらシュウと競り合っている。
 それが、シュウには気に入らなかった。
「ことねぇ……!」
 バキィィ!!
 ブレイグのショットがグルムの連射を一気に弾き飛ばした。
 と、同時にシュウは琴音に向かって駆け出した。
「うおおおおお!!!」
『のおっと!ここでシュウ君が動き出した!足場が悪いこのフィールドで下手に動くのは自殺行為だが、大丈夫か?!』
 
 シュウはどんどん琴音に迫っていく。
 琴音はそれに咄嗟に反応できない。
『シュウ君駆け寄りすぎではないか?!このままでは琴音君にぶつかってしまうぞ!?』
 だが、シュウは止まらない。
「ことねぇぇぇ!!!!」
「きゃっ!」
 シュウの気迫にビビッた琴音は咄嗟にビー玉を放つ。
 が、シュウはそれにも気にせずに突進した。
 そして、シュウは裏拳で、琴音の放ったビー玉ごとグルムを弾き飛ばした。
「あっ!!」
 ガシャンッ!!
 地に伏せる琴音のサンダーグルム。
『なんとぉ!シュウ君が、直接琴音君のサンダーグルムを叩き落としてしまった!?一体、何がどうなっているんだぁ?!』
 シュウの意外な行動に観客もざわめきだした。
「なんだ、あいつ。なんで殴りかかったんだ?!」
「これはビーダマンの試合だろ?ビーダマン以外で攻撃しちゃいけないんじゃないの?」
「あいつ、失格だろ、これ」
 
 この行動に一番驚いたのは琴音自身だろう。
「な、なにを……!」
「俺は、こんなことねぇと戦いたくねぇ!!」
 シュウは琴音を睨み付けて叫んだ。
「ど、どういう意味よ……?」
「今のことねぇは、ことねぇじゃねぇ!ことねぇは、そんなんじゃないだろ!?」
「あたしは、あたしよ。ヒロ兄に憧れてビーダマンを始めた。ずっとヒロ兄の元でビーダマンすることを望んでいるの」
「違うだろ!それは、ことねぇが自分で決めた事じゃない!」
 シュウに言われ、琴音はハッとした。
「自分で……?」
「本当にそうなのか!?本当にそれがことねぇのやりたかったことなのか!?なんでことねぇは、ビーダマンやってんだよ!なんでことねぇは、ヒロトに憧れたんだ!?」
「あたしが、ヒロ兄に憧れたのは……」
「こんな事がやりたかったからじゃないだろ?ビーダマンが楽しそうだったからだろ!?ビーダマンやってるヒロトが、すげぇ格好良かったからだろ!?」
「っ!」
 シュウの言葉で何かに気づく琴音。
 しかし無情にもビーダマスターはシュウに対してこう告げた。
『シュウ君!失格!!』
 思いもよらぬ宣言を受けて、シュウは吃驚した。
「えぇ!?」
『対戦相手に直接危害を加えるような真似は反則だ!さっきのシュウ君の行為は、ルール違反になる!』
「そ、そんな……」
『よってこのバトル……』
「待ってください!」
 ビーダマスタージンが審判を下す前に琴音が遮った。
「お願いします。シュウを失格にしないでください。最後まで、戦わせてください!」
「ことねぇ…?」
 
『い、いや、しかしだねぇ……ルールはルールだから……』
 琴音の言葉に、ビーダマスタージンは困ったように言のだが、琴音がさらに続ける。
「だったら、あたしはこのバトル降参します!!」
「こ、ことねぇ!?」
『こ、降参……!?』
 ビーダマスタージンは完全に困惑してしまった。
「シュウは失格で、あたしは降参。つまり、これで引き分けですよね?」
『……まぁ、それは、そうだが……。仕方無い。引き分けということで、このバトルは一旦仕切り直しだ!!』
 琴音の強い意志に押されたのか、ビーダマスタージンは折れた。
 この試合は誰のためでもない二人のためのもの。
 その本人がそれで良いと言う以上、それを否定する事は出来ない。 
「ことねぇ、どうして……?」
 疑問を抱くシュウに対して、琴音はまっすぐな瞳でシュウを見て言った。
「シュウ。あたしはね、優しくて強くて格好良かったあの頃のヒロ兄に憧れてビーダマンを始めたの。
だからこそ、あたしは、あの頃のヒロ兄の意志を守るために、ビーダマンをする。
例えヒロ兄が今どんな風に変わっても、あたしにとってのヒロ兄はあの頃のヒロ兄だけだから。
それが、あたしが今自分で決めた事よ」
「……そっか!」
 その言葉に、琴音のビー魂を感じたシュウは大きく頷いた。
 
「それじゃ、行くぜ、ことねぇ!」
「えぇ!」
 
「「レディ、ビー・ファイトォ!!」」
 二人のバトルが再開した。
 バトルの展開は先ほどと同様。
 大きく動くことが出来ない以上、位置を固定して撃ち合うしかない。
 弾け飛ぶビー玉。
 徐々に減っていく互いのHP。
 
 バトルは互角だ。
『再開したバトルは更に激しさを増している!!
だが、バトルは徐々に終盤へと近づいているぞ!!
シュウ君の残りHPは13!琴音君は15!そろそろ決めに入る頃か!?』
「いくよ、シュウ!これで決める!」
「おお!最後の勝負だ!!」
 
 琴音は、光のテーブルを出現させ、スタンドモードにしたサンダーグルムを接地させた。
「いくわよ!雷光一閃!!!」
 ズドドドド!!!
 位置を固定されたグルムから、凄まじい量の連射が放たれ、まるで光の線のように一直線に向かってきた。
 
『琴音君の必殺ショット炸裂!!安定した機体から放たれた超速連射は、まさしくビー玉のレーザーだ!!』
 一直線に向かってくる玉は、パワーショットで迎撃しやすい。
「うおおおおおおお!!!」
 バシュウウウウ!!!
 シュウはシメ撃ちでそのショットを次々と撃ち落としていく。
『シュウ君はパワーショット一発で琴音君の連射を次々と弾き飛ばしていく!!しかし、琴音君の連射は途切れない!まだまだ続くぞ!!』
 
 ズドドドド、バキィ!!!
 何発の連射を受け、シュウのパワーショットはついに撃ち落とされてしまった。
「くっ!」
「やった!」
 が、琴音の連射もそこで途切れてしまった。
 シュウが撃ち落とし損ねた琴音のショット2発がシュウのシャドウボムにヒットする。
 ババーーン!!
『ヒット!!しかし、シュウ君のHPは残り3!僅かに届かなかった!!』
「しまった!あと一発当たってれば……!」
「うおおおおおお!!!」
 気づくと、ブレイグのヘッドの刃が振動していた。
 特殊な風がシュウを纏う。
「フェイタルストーム!!」
 バシュウウウウウウウウウウ!!!!
 
『今度はシュウ君の必殺ショットだ!!空気の膜を纏ったパワーショットが一直線にブッ飛ぶ!!』
 
「くっ!雷光一閃!!」
 負けじと琴音は再び必殺ショットを放って迎撃しようとする。しかし……。
 
『琴音君、再び必殺ショットを放つが、フェイタルストームの前には全て弾かれてしまう!!』
 フェイタルストームが、どんどん琴音のシャドウボムへ迫ってくる。
「うっ!」
 
 バーーーーーン!!
 そしてついに、琴音のシャドウボムを撃破してしまった。
 
『決まったぁ!!激しい必殺ショットの撃ち合いを制したのはシュウ君のバスターブレイグだぁぁぁ!!!』
 
「か、勝った……勝ったぜぇぇぇ!!!!」
 シュウはブレイグを掲げて飛び上がった。
「……負けちゃった。でも、良いバトルだったね、サンダーグルム」
 琴音は肩を落としながらも慈しむ目でサンダーグルムを見た。
 そして、シュウの近くへ歩み寄った。
「シュウ、良いバトルだったよ。ありがとう」
「おう!ことねぇも、ビー魂がビンビン伝わってきたぜ!」
 琴音はフッと笑った。
「ほんと、あんたって変な奴」
「へっ?」
 シュウがキョトンとするのだが、琴音はそれ以上は何も言わず、歩いて行こうとした。
「あ、ことねぇ!」
 その背中に向かって呼びかけるシュウだが、琴音の足は止まらない。
「ことねぇ……」
 しかし、シュウの心に不安はなかった。
 琴音は確かに自分のビー魂を取り戻した。その確信があるからだ。
 だからシュウは、それ以上琴音に構おうとはせず、踵を返して仲間たちの元へ歩いて行った。
 
 そして琴音はヒロトの元へやってきた。
「ヒロ兄……」
 ヒロトは厳しい目で琴音を見ているだけで、何も言わない。
「あの、あたし……」
「お前が戻ってくる場所は、ここじゃないだろ」
「っ!」
 ヒロトの冷たい一言を聞いて、琴音は息を呑んだ。
「行けよ。お前がそれを選ぶなら、俺は止めはしない」
 ヒロトは元々無理強いして琴音を仲間に引き入れたわけではない。
 琴音の意志が自分にないのなら、それ以上深追いする気はないようだ。
「ヒロ兄……ごめんなさい、ありがとう」
 琴音はヒロトに一礼して、その場を去った。
「ちっ」
 琴音の足音が遠ざかった後、ヒロトは小さく舌打ちをした。
 それは心変わりした琴音に対してなのか。
 それとも、あっさりと琴音を手放した自分に対してなのか……。
 
『さぁ、準決勝第一試合は凄まじい撃ち合いだった!続く第二試合は、どんな展開を見せてくれるのか?!』
 
     つづく
  
 次回予告
 
「さぁ、次の試合はタケルVSヒロトだ!4年前からの因縁に今こそ決着をつける時だぜ!
タイラントレックスとライジングヴェルディル!二つのビーダマンの激突がより激しさを増した時、二人の前に不思議な現象が起こった!
 
 次回!『タケルVSヒロト!過去への決着!!』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 




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