オリジナルビーダマン物語 第39話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第39話「決勝トーナメント開催!巌流島の戦い!!」




 源氏タワー。
 タケルとシュウの潜入後、源氏派のビーダー達はタワーの設備の復旧に手を焼いていた。
 追い返す事には成功したものの、使用したドラゴンビットのメンテや破壊された設備の数は膨大で、一日や二日でどうにかなるものではなかった。
 この復旧の作業とタクマの『もう必要ない』と言う指示によって、源氏派ビーダーが表で問題を起こす事はしばらくなくなっていた。
 そして、一週間かけてようやく全ての設備を元に戻し、源氏派達はようやく通常営業に戻る事が出来るのだった。
 
「ふぅ、ようやっとコンピュータ関連の復旧も完了やなぁ」
 全設備を統括しているスーパーコンピューターの前で作業していたクウが一息ついた。
「メアシも、ご苦労やったな。ワイの作業を手伝ってくれて、ほんまおおきに」
 クウは隣にいるメアシへ労いの言葉をかけた。
 が、当のメアシは何か考え事をしているのか、呆けていた。
「……」
「どないしたんや?メアシ」
 怪訝な顔をするクウがメアシの目の前で軽く手を振ってみると、ようやくメアシが我に返った。
「あ、あぁ、すまない。少し考え事をしていた」
「大丈夫か?まぁ、ここの所復旧作業が続いとったから疲れたんやろ」
「……かもしれない」
「あとはワイがやっとくさかい。あんさんは少し休んできぃ」
「そうだな。そうさせてもらう」
 そう言って、メアシはコンピュータルームから出て行った。
 部屋から出て、扉にもたれ掛るとメアシは再び宙を仰いで思案した。
(期待できると思っていたが……)
 メアシが考えていたのは、シュウ達とタクマのバトルだった。
 コンフターティスドライグのパワーの前にシュウ達は全く歯が立たなかった。
(あれでは、な……。やはり私がすべてを救済する必要があるようだ)
 メアシは懐からルシファーを取り出した。
(使命を果たすためには、甘い考えは捨てなければ……それが出来るのは、私のみなのだ)
 ルシファーを持つ手に力を込めながら、メアシは決意を固めるのだった。
 
 それから数日後の仲良しファイトクラブ。
 学校はもう夏休みに入っており、シュウとタケルは朝から晩までクラブで練習に励んでいるようだった。
 
 息を乱し、汗を迸らせながら、シュウとタケルがビーダマンを撃ち合っている。
 練習場内は、ビー玉がぶつかり合う音と気合いの声だけが響いていた。
「はぁ、はぁ……!」
「くっ、ふぅ……!」
 数時間経ち、さすがに体力の限界に達したのか、シュウとタケルの動きが止まった。
「は、あ……!」
 動きが止まったまま、二人同時に仰向けにブッ倒れた。
「さ、さすがに4時間ブッ通しでこのペースはキツイぜ……!」
「あ、あぁ……しかもこの炎天下だからな……!」
 そう、今は夏真っ盛り。
 場内は一応冷房効いているとはいえ、それでも二人の熱気で熱が篭って作用していないも同然だった。
 
「ちょ、ちょっと二人とも大丈夫!?」
 たまたま奥の部屋から顔を出してきた彩音がブッ倒れている二人を見つけて慌てて駆け寄ってきた。
 
 濡れタオルを二人の額に当てて、スポーツドリンクの入った500mlペットボトルを渡した。
「んぐんぐんぐ!!ぷはーー!生き返るぅ~!」
 二人はスポーツドリンクを一気に飲み干して、一息ついた。
「気合い入れるのは良いけど、熱中症には注意してよ。大会前に体調崩したら元も子もないんだから」
 彩音が軽く叱ると、二人はバツが悪そうに肩を竦めた。
「いや、悪い……ちょっと入れ込み過ぎたな」
「休憩しようしようと思っても、なんかジッとしてらんなくてさ」
 二人の様子を見て彩音はため息をついた。
「まぁ、気持ちは分かるけど……あ、それよりちょっとこっちに来て」
 そう言って、彩音は練習場置くにあるテーブルの方へ歩いて行った。
 そこにはノートパソコンが設置されている。
 タケルとシュウは少し遅れて立ち上がり、彩音の方へと歩いて行った。
「何かあるの?」
「うん。やっとビーダマン公式委員会のサイトが更新されたの」
 彩音がモニターを二人の方へ向けながら言う。
「って言うと、今度の大会の情報か?」
「そう。案内書ももうすぐ郵送されるとは思うんだけど、予め大会スケジュールは確認しておきたいしね」
「で、決勝トーナメントはいつどこでどんな感じにやるんだ?!」
 シュウが情報の提示を急かす。
「ちょっと待って」
 彩音がマウスを動かしてサイトの中を移動する。
「えっと、開催時期は7月下旬から8月上旬。約2週間かけて行うみたいね」
「2週間……随分と長いな」
「オリンピックとかサッカーのワールドカップみたいだ」
「決勝トーナメントは、全国8ヶ所から各4人が代表として出るから、試合数も多いしね。1日や2日じゃ難しいよ」
「確かにな」
 64人でのトーナメントとなれば、全部で31試合もやる事になる。
 1試合1試合を手抜きせずに試合させるとなれば、2週間もかかるのは当然だ。
「場所は?」
「全国各地で行うみたいね。1回戦Aブロック、1回戦Bブロック、2回戦、3回戦、準決勝、決勝と全て違う場所で行うの」
「じゃあ、勝ち進めば全国各地を巡るってわけか。さすがは日本一を決める大会ってとこだな」
「試合は、基本的に2日に1回開催されるの。1日目はAブロックとBブロックが違う場所で同時開催されて、その後は1日休みを置いて2回戦、3回戦と開催していくんだって」
「なるほど、大会の期間が2週間なのは、1試合終わるごとに1日インターバルを挟むからなのか……」
 大会の形式は大体理解できた。
「で、肝心な対戦相手とか開催場所とかはどうなってんだ?」
「ちょっと待って」
 彩音は更にマウスを動かして別のページを開く。
「出たよ」
 タケルとシュウがモニターを覗きこむ。
「うわ、俺いきなりAブロックの一回戦か!」
「俺はBブロックか……」
「琴音ちゃんは……Aブロックね」
 参加ビーダーは64人と多いので、とりあえず自分の名前と琴音の名前のみを確認した。
「勝ち進めば準決勝でことねぇと当たるのか……」
「シュウ、しっかり頼むぞ」
「おう、任せとけ!ばっちり勝って、決勝でタケルと勝負だ!」
「ああ!」
 
「開催地は、Aブロックは山口県下関の巌流島。Bブロックは大阪城公園で行われるみたい」
「あ、そっか。同時開催って事は、最初は俺とタケルは別々の場所に行かなきゃいけないんだよな……」
「だな」
 シュウとタケルが分かれるのはさほど問題ないのだが。
「う~ん、私はどっちのサポートについた方がいいかな?」
 彩音がどっちの試合に行くのかは問題だ。
 メカニックやデータのサポートが出来る彩音がいるのはかなり心強いのだが。
「そうだな……」
 タケルは少し思案したのち、言った。
「ここは、シュウと一緒に行った方がいいな」
「えっ」
「でもタケル君、大丈夫?」
「なに。俺だって何年もビーダーやってるんだ。自分の機体のメンテくらいは出来る。それに……」
 タケルはジト目になってシュウを見た。
「こいつは、誰かついてやらないと会場間違えそうだからな」
「んなっ!どういう意味だよ!!」
「関東予選の団体部門、忘れたとは言わせないぞ」
 あの時シュウは会場を間違えて一回戦を遅刻したのだった。
「うぐ……!」
 痛いところを突かれてしまい、シュウは反論できなかった。
「ふふ、了解。じゃあ私はシュウ君と一緒に行くね」
 そんな二人の様子を見て、彩音はクスクス笑うのだった。
 
 そして、試合当日。
 シュウは彩音に連れられて、山口県下関市の巌流島へ向かう船に揺られていた。
「バリバリバリ……このフグ煎餅うめぇ!」
 下関駅で買ったフグ煎餅を食べながら、シュウは彩音と二人で海を眺めていた。
「フグなら前に父ちゃんが捌いてくれた刺身を食った事あるけど、煎餅にしても美味いんだなぁ!」
「へぇ、シュウ君のお父さんって凄いんだね。フグを捌くのって難しい免許を取らないといけなかったはずだけど」
「おう。なんかそういうの持ってるって聞いた事ある。でも、家で食ったフグよりこっちの方が美味いぜ」
 せっかく捌いた刺身よりも煎餅の方が美味いと言われる父ちゃんも不憫だ。
「まぁ、フグは山口の名産品だからね。ちなみに、こっちの方ではフグじゃなくて『フク』って発音するの」
「ふく?なんか力抜ける言い方だなぁ」
「フグだと、『不遇』みたいに聞こえて縁起が悪いけど、フクだと『幸福』に繋がるからなんだって」
「そうなのか……フクが福か。帰ったら父ちゃんに教えてやろう!」
 そんな会話をしつつ、船は巌流島の港に到着した。
「うわぁ!ここが巌流島かぁ!!」
 巌流島海上公園に降り立ったシュウは感嘆の声を上げた。
「あ、この像なんだ?!二人で戦ってるぞ!」
 早速、二人の侍が戦っている様子を現した銅像を発見した。
「それは宮本武蔵と佐々木小次郎像ね。この巌流島は、かの有名な剣豪の武蔵と小次郎が決戦した場所だから」
「あ、それ聞いた事ある!確か、武蔵が勝ったんだっけ?」
 シュウの持っている情報はそれくらいしかない。
「そう。元々は舟島って言う名前の島だったんだけど、武蔵が倒した小次郎が『岩流』と名乗った事から、この島の名前が『巌流島』になったの」
「ふ~ん。舟島より巌流島の方が断然強そうだし、二人がこの島で決闘して良かったな!」
 と、いろいろ見て回っているうちに港から他の参加者や観客の皆が続々と現れ、島全体が賑わってきた。
「シュウ君、そろそろ時間みたいだし。会場に向かおう」
「うん」
 彩音に言われ、会場の設置されている海上公園へと向かおうとするシュウ達の目の前に、よく見知った女の子が現れた。
「あっ!」
 その女の子はシュウと彩音の姿を認識すると、身体を強張らせた。
「こ、ことねぇ……!」
「琴音ちゃん……」
「……」
 琴音は、バツが悪そうに顔をそむけている。
 話す言葉が見つからず、黙っていると、琴音はそのまま去って行こうとした。
「あ、待てよ!」
 シュウに呼びかけられ、琴音の動きが一瞬止まる。
「……何?」
 琴音は振り返りもせず、素っ気なく答えた。
「いや、えっと……ことねぇが源氏派だろうがなんだろうが、大会は大会だ。良いバトルしようぜ」
 特に考えなしに呼びかけたものだから、当たり障りのない事を言うしかなかった。
「……それだけ?」
「あ、あぁ……」
「そう」
 琴音は拒絶のオーラを発しながら足早にシュウ達から離れて行った。
「……」
 さすがにあの態度はショックだったのか、さっきまで楽しげだったシュウは黙りこくってしまった。
「シュウ君……」
 心配そうにする彩音を見て、シュウは無理矢理声を発した。
「ちぇ、くそぉ、なんだよ態度。絶対バトルで目を覚まさせてやる!あやねぇ、俺絶対勝つからな!」
「うん。がんばって」
 強がっているのは彩音にも分かったが、それ以上は何も言わず、ただ見守るのだった。
 
 そして、海上公園に開設された会場で受け付けをして、大会開始を待つことにした。
『皆!ジャパンビーダマンカップ決勝トーナメントAブロックへようこそ!
僕は、今大会の司会進行を務めさせていただく、ビーダマスターユウだ!よろしく!!』
「ユウ?ジンじゃないの??」
 いつも司会進行をしているのは、ジンだったはずだが……。
『あぁ、ジンはBブロックの会場に行っている!その代わりに、ジンの影武者であるこの僕が熱い実況をするぜ!』
「影武者って、自分で言うのか……!」
『オホン。それでは今大会のルール説明だ。今大会は前情報の通り、回戦ごとに全国各地で試合を行うぞ!
ホームグラウンドだけじゃなく、日本各地で勝ち抜いてこそ、真の日本一と言えるだろう!
そして、一回戦Aブロックの開催地はかの有名な武蔵と小次郎が決闘したとされる舞台!巌流島だ!!
武蔵と小次郎に負けないビー魂で熱いバトルを繰り広げてくれよな!!』
 ワーーーーー!と会場が盛り上がる。
『そして、今回のバトルのルールは『クイックドロウ』だ!
この島の中を、二人一緒に決められた順路で進んで貰う。そして、二人がチェックラインを通過した瞬間にターゲットが出現する仕組みになっているんだ!
二人目が通過しないとターゲットは出現しないし、どこに出現するかも分からないから、相手より先に進んだ所で有利にはならない。
そして、チェックラインも目には見えないから、常に五感を研ぎ澄ます必要があるぞ!
先にターゲットを撃破すれば1ポイントゲット!島に仕掛けられたチェックラインは合計5ヶ所!つまり、先に3ポイントゲットした方が勝ちってルールだ!』
「いつ、どこに出現するか分からないターゲットの撃破……。名前の通り早撃ち競技みたいね」
「ブレイグのショットは初速が速いんだ。多少反応が遅れてもパワーショットでブチ抜いてやる!」
 早撃ちが苦手なシュウではあるが、ターゲットからの距離が離れていれば、パワーで挽回できるだろう。
『それでは、第一試合のカードを紹介するぞ!
まずは、東京都出身!関東大会の団体部門では新型ビーダマンバスターブレイグの驚異のパワーを見せ付けてくれた、竜崎修司君!エントリーネームはシュウ君だ!!』
「おっしゃあ!」
 ユウに呼ばれて、シュウはバトルフィールドへと駆け上がった。
『対するは、山口県出身!今回はホームグラウンドとなるか、藤原辨助(ふじわらべんのすけ)君!
……って、あれ?バトルフィールドにシュウ君はいるものの、辨助君がまだ来ない!おーい、早く来ないと不戦敗になっちゃうぞ~!!』
 シュウの目の前に対峙するであろう対戦相手は遅刻しているのか、まだ姿を現さない。
『おっと、今情報が入ってきたぞ。辨助君は直前にお腹を壊してしまいトイレに行っちゃったので少し遅れるそうだ!
まぁ、事前に遅れるとの連絡は入ったし、生理現象は不測の事態ではあるので、今回の遅刻は大目に見ようと思う!』
 この事態は、琴音を連れ戻すための大事な大会の第一回戦として気合いを入れていたシュウをイラつかせるには十分だった。
「なんだよなんだよ。こんな大事な試合にトイレに行って遅刻なんて、ふざけんなよ!」
 シュウは小さく足踏みしながら、辨助の到着を待った。
 
 5分後。ようやくバトルフィールドに辨助らしき人物が現れた。
「あ~、サーセン。急に腹が痛くなって遅刻しましたー」
 辨助は、シュウよりも年上だろうか高い背丈にジャラジャラとネックレスやらのアクセサリを付けており、髪も染めている。見るからにチャラ男だ。
「ふぁ~あ。あー、だりっ、さっさと終わらせるかー」
 そんな辨助は全く悪びれる様子もなく大あくびした。
 その態度に、シュウは完全にブチ切れた。
「て、てめぇ!なんだよその態度は!!大事な試合に遅刻しやがって、それでもビーダーか!!」
「んー、るっせぇなぁ……あ、そうか。不戦勝にならなかったからイラついてんのか」
「な、なにぃ……!」
「そりゃそうだよな。ビーダマスターユウ!俺、遅刻しちゃったわけだけど何かペナルティとかあるの?」
 辨助は、口をクチャクチャさせながらユウに問いかけた。
『ん、そうだな……不戦敗は大目に見るが、遅刻は遅刻。何かペナルティが無いと不公平だねぇ。よし、じゃあ、シュウ君に予め1ポイント与えよう。これがペナルティだ』
 
 会場内に設置されたモニターに、『シュウ選手、1ポイントゲット』との文字が表示された。
「これで文句ねぇだろ。まぁ、これで負けちまったら大恥だけどなw」
 辨助は小バカにするように言った。
「な、舐めやがって……!」
 シュウの神経は完全に逆撫でされてしまった。
「シュウ君……」
 そんなシュウの様子を見て、彩音は観客席から心配そうに呟いた。
『それでは、バトルを始めるぞ!両選手ともスタート位置にスタンバイしてくれ!!』
 シュウと辨助は白線の引かれたスタートラインに着いた。
『行くぞ、レディ・ビーファイトォ!!』
 合図とともに二人は歩き出した。
 横に並んで付かず離れず、パラレルな状態を維持しながら辺りを警戒して進んでいく。
 ゴツゴツした岩場の道は歩きづらく、時々足を捻りそうになるが、それでも集中力は途切れさせないようにした。
 と、しばらく進んだのち
 ビーッ!
 と言うサイレンがなったかと思ったら二人の10mほど先の路面にバッとターゲットが出現した。
「出たっ!」
 シュウがブレイグを構える。
「遅い!」
 それよりも早く、辨助がビーダマンを構えて撃った。
 そのビーダマンは、センターグリップの片手撃ちで、ヘッドには斧を彷彿とさせる鶏冠が付いていた。
「負けるかぁ!!」
 ドンッ!!
 一瞬遅れて、ブレイグからパワーショットが放たれた。
 二つの玉が真っ直ぐにターゲットへブッ飛んでいく。
 最初リードしていた辨助のショットだが、徐々にシュウのショットが追い付いてくる。
「抜けぇぇ!!」
 ターゲットにヒットする直前、シュウのショットが追い抜き、ターゲットを撃破した。
 
 パコンッ!!
 
『ゲット!!最初のターゲットを撃破したのは、シュウ君だ!見事なパワーショットだったぞ!これで2ポイントだ!
早くも勝利へとリーチをかけた!!』
「どうだ!お前みたいないい加減な奴、ペナルティなんかなくったって俺の敵じゃねぇんだよ!」
「プッ!」
 息がるシュウに対して、辨助は小さく笑った。
「何がおかしい!」
「いや、なんでもない」
 2ポイントも負けているのに、辨助は余裕だった。
 そして、二人は再び歩き出した。
 岩場を抜けて、散歩道を歩く。
 左にシュウ、右に辨助。左には森林があり、右には海が広がっている。
 
 ビーッ!
 2回目のサイレン。二人が辺りを見回す。
 ターゲットを見つけた。森林の中の木の枝にターゲットが出現していた。
「よし、これなら俺の方が近い!またパワーショットでブッちぎってやる!!」
 シュウがブレイグを構えて気合いを込めた。
「ダメ、シュウ君!動きが大振りすぎる!!」
 観客席から見ていた彩音がシュウへ叫ぶ。
 しかし、それも間に合わず……。 
 シュンッ!!
 シュウの横をビー玉が掠めたかと思ったら、ターゲットにヒットしていた。
『ゲット!二つ目のターゲットは辨助君の見事な反応でゲットだ!!』
「な、なに……!」
 びっくりして辨助を見た。
 辨助は姿勢を変えず、左手に持ったビーダマンでターゲットを狙っていた。
 そのビーダマンは、さっき使っていたビーダマンとは違う。
「お前、そのビーダマンは……!」
「いつから俺のビーダマンが一機だけだと錯覚していた?」
 右手にはさっき使っていた、斧が特徴的なセンターグリップの灰色のビーダマン。
 左手には、左アームに槍のようなグリップが付いているサイドグリップのオレンジ色のビーダマンを持っていた。
「2丁流だったのか……!」
「ああ、ロックアックスにストリームランサー。左右どちらにターゲットが出現しても、俺には関係ない」
「ケッ、それがどうしたってんだ!真正面にターゲットが出現すれば、また俺のパワーショットでブチ抜いてやる」
「そう上手く行けばいいな?」
「なにぃ……!」
『ビックリ驚きの辨助君はまさかの2丁流のビーダーだった!それこそ、かの宮本武蔵の二刀流と同じ!巌流島に相応しいビーダーだぞ!』
「負けねぇ!お前みたいなビーダマンバトルをいい加減に考えている奴なんかに、俺は絶対に負けねぇ!!」
 シュウは辨助を睨み付けた。
 それに対しても辨助は小ばかにするような笑みをするだけだった。
 その様子を見た彩音は心配そうに呟いた。
「シュウ君……」
 そして、辨助の表情を見たとき、ある事に気付いた。
「もしかして、彼は……!だとしたら、シュウ君は勝てない!」
 ダッ!
 と立ち上がり、彩音は駆け出した。
 
「俺は負けねぇ!ことねぇにも、こんな奴にも……!」
 シュウの表情はますます険しくなっていった。

     つづく

 次回予告

「決勝トーナメントは熾烈を極めた!
さまざまな強敵達がそれぞれのバトルをしている中で、ことねぇは……!
 次回!『悲しき破壊魔』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 




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