オリジナルビーダマン物語 第33話

Pocket

爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第33話「ビーダーの解放者」



 シュウはいつものように源氏派ビーダーのパトロールをしていた。
 野を越え山を越え、普通のビーダーが源氏派に襲われていないか、警戒しながら歩いていく。
「難波クウと言い、源氏派もかなり力を付けてるみたいだからなぁ。俺も、本腰入れないと!あんな奴らに好き勝手させてたまるかよ!」
 あたりを見回しながらパトロールを続ける。
 そして、町はずれの小さな公園に向かったところで……。
 バキィ!!!
 と言う、ビーダマンが壊れるような音が聞こえてきた。
「源氏派かっ!」
 シュウは反射的に公園へと向かった。
 公園では、背の高い少年と小さい子が対峙しており、小さい子のビーダマンが破壊されていた。
「うぅ、僕のビーダマンが……」
「喜べ。これでお前は自由だ」
「え?」
「待て待て待てぇ!!」
 シュウが二人の間に割って入った。
「なんだ?」
「お前も源氏派か!」
「まぁ、一応は所属している」
「酷いじゃないか!この子のビーダマンを壊すなんて!!」
「酷い?私は、その子のために行った。むしろ感謝してほしいものだ」
「なにぃ!?」
 意味が分からない。
 なんでビーダマンを壊した奴に感謝しなければならないんだ。
「私の名は、救世メアシ。悪しきビーダマンからすべてのビーダーを解放する者だ。あなたも、解放してあげよう」
「わ、わけの分からない事を言うな!お前も源氏派だって言うなら、俺がブッ倒してやる!!」
「……正直こんな派閥争いには興味はないが。あなたのためだ、戦おう」
 言い分はわけが分からないのだが、相手が源氏派でビーダマンを破壊するというのならば戦うしかない。
 シュウはシャドウボムを互いにセットした。
「さぁ、勝負だ!行くぜ、ブレイグ!!」
 シュウはブレイグに魂を込める。
「可哀相に……」
 それを見て、メアシは嘆くようにつぶやいた。
「なにぃ?!」
「あなたは、完全にビーダマンに支配されているようだ。だが、私があなたを救う。必ず」
「???変な事ばっかいうな!とにかく行くぜ!!」
 ドンッ!!
 シュウの先制ショット。
「ほぅ」
 メアシは難なくそれをかわす。
「早いっ!」
「では、私も」
 メアシがビーダマンを構える。
「行きなさい、ルシファー!!」
 ルシファーと呼ばれた赤いビーダマンのトリガーを押す。
 ドンッ!!
 メアシのショット。
 しかし……!
「遅っ!」
 メアシのショットは信じられないほど遅かった。
「この程度の威力なら」
 と、軽いショットで撃ち落とそうとするシュウ。
 ガキンッ!!
 しかし、シュウのショットは速度で勝っていたにも関わらず弾かれてしまった。
「なにぃ!?」
 そして、メアシのショットがブレイグにヒットする。
 ガッ、ギュルルルルルルル!!!!
 メアシのショットは、ブレイグのヘッドに接触したまま猛回転した。
「な、なんだ、この回転力は……!」
「ルシファーのコアはドライブフォースコア。四本爪の下側二本爪をラバーにする事で、発射速度を犠牲にして高回転を得られる」
「なるほど、それがあの威力の秘密か……!」
 メアシが再びショットの構えをとった。
 ドンッ!
 超回転の威圧感でビー玉が向かってくる。
「どんなに威力が強くても、速度が無いなら避ければ良い!」
 シュウがサッと身を翻す。
「なるほど」
「んでもって!」
 ドンッ!!
 かわしざまにパワーショットを放つ。
「いっけぇ!!」
 バーーーーン!!!
 シャドウボムにヒット。残りHPは67だ。
「どうだ!!」
「パワーではそちらが上か。ならばっ!」
 メアシは、小型のパーツをコア下部に取り付けた。
「なんだ?」
「いきなさい、ルシファー!!」
 ドンッ!!
 ショットを放つ。
「っ!」
 そのショットは、さっきまでとは比べ物にならないほどに速かった。
 バキンッ!!!
 全く回転していない分、威力はさっきと比べて若干落ちているのだが、速度が段違いだ。
「そ、んな……!なんでこんなにスピードが……!」
「コア下部に取り付けたラバーレールが、ビー玉の回転をそのまま速度に変換している。威力は下がるが、その分スピードは上がる!」
 ドンッ!!
 再びスピードショットが襲い掛かる。
「くっ!」
 反応できずにヒットする。
「くそっ!」
 ヒットした事で怯んでしまった。
「喰らいなさい!」
 ドンッ!!
 今度はレールを外してのショット。
 遅いのだが、一瞬怯んだシュウはあっさりヒットしてしまった。
 ガッ、ギュルルルルルル!!!!
「うわあああ!!!!」
 ビー玉の回転によってブレイグのボディが削れていく。
「くっ、くそ……!」
 ルシファーの攻撃により、ブレイグのボディはボロボロだ。
「さぁ、もう少しだ。もう少しであなたを解放してあげられる」
「なんなんだよ、解放って……!」
「救いの手は私が差し伸べる!!」
 ドンッ!!
 シュウの疑問には答えず、メアシは攻撃を続ける。
「くっそ!なんか自分本位な奴だな……!」
 メアシは人の意見は聞かず、自分の考えを押しつけるタイプのようだ。
「わけのわからない理由でビーダマン壊されてたまるかっ!」
「すぐに分かる」
 ドンッ!!
 メアシのスピードショットがシュウに襲い掛かる。
「くっ!!」
 一瞬反応が遅れてしまう。
 ガキッ!!
 ヒットしてしまい、ボディの一部が欠ける。
「はぁ……はぁ……!負けてたまるかっ!」
 ドギュッ!!
 ブレイグのパワーショット。しかし、機体が破損しているため、威力は低い。
「はぁぁ!!」
 メアシが超回転ショットでそれを止める。
 いや、止めるどころか弾き飛ばしてそのまま突っ込んできた。
「う、うわああああ!!!」
 超回転ショットがブレイグに迫ってくる……!
 その時だった。
 どこからか、音も無く一発のショットが飛んできて、メアシのショットを弾き飛ばした。
「なにっ!」
「なんだぁ?!」
 そしてバッ!と数人の人影がシュウの前に現れる。
 
「疾き連射、風の如し!インビジハリアー、服部藩屏!」
「静かなる奇襲、林の如し!インビジライヤ、隠忍シノブ!」
「熱き斬撃、火の如し!凱旋刃、村居玄摩!」
「「「我らが勝利揺るがざる事山の如し、チーム風林火山!!」」」
 現れたのはチーム風林火山だ。
 
「お、お前ら……!」
「危なかったでござるな!」
「我らが来たからにはもう安心だ」
「守りは某に任せろ。貴殿は攻撃に集中せぃ!!」
 ボムを装備していない以上攻撃は出来ない。が、敵のショットを防ぐ事は出来るのだ。
「た、助かったぜ!」
「ちっ!」
 メアシがスピードショットを放つ。
「いくでござる!インビジハリアー!!」
 連射でそのスピードショットを迎撃する。
「ならっ、その連射を全て弾く!!」
 ドンッ!
 今度は超回転ショットだ。
「むむ、でござる!」
 インビジハリアーの連射はことごとく弾かれてしまう。
「甘いわっ!」
 今度は玄摩が前に出て、凱旋刃でメアシのショットを弾き返した。
「打ち返した!?」
「某の剣術の前には、どんなショットも通用せぬっ!!」
 その隙にシュウがパワーショットを放つ。
「うおおおおおお!!!」
 バシュウウウウウ!!!
 そのパワーショットを撃ったおかげで、ブレイグの周りに風が巻き起こる。
「いっけぇ!フェイタルストーーム!!!!」
 フェイタルストーム発動!
 ルシファーのショットを全て吹き飛ばす。
「っ!」
 メアシは間一髪でそのショットをかわした。
「かわされた!!」
「……この威力は」
 メアシはフェイタルストームの威力を見て、思案する。
 そして、ルシファーをしまった。
「な、なんだ?もう戦わないのか?」
「……あなたはなぜ自ら私に戦いを挑んだ?」
「俺は、お前らみたいに人のビーダマンを壊したり、奪ったりするような源氏派ビーダーを止めるためにパトロールしてるんだ!」
「ほぅ……あなたが組織でも連絡のあったビーダーか」
 そうつぶやくと、メアシは踵を返した。
「お、おい!」
 慌てて止めようとするのだが、別に止める理由もない事に気づくシュウ。
「安心なさい、いずれあなたも救います。が、その威力と目的……今は救うべきではないのかもしれない」
 そう言って、メアシは歩いて行った。
「……」
 相手の行動が理解できず、シュウはしばらく呆然と突っ立るしかなかった。
 と、シュウは助けに来てくれた風林火山に向き直った。
「そだ。助かったぜ、ありがとう」
「気にするなでござるよ、ニンニン」
「困った時はお互い様という奴だ」
「それにしても、お前らどうしてここに……?」
 聞くと、玄摩が答えた。
「最近、源氏派を名乗る危険な集団が動き出していてな。我々も警戒に当たっていたのだが……調べたところどうもこの地域での活動が激しい事が分かった」
「それで、行ってみたら、お主が戦っていたのだ」
「なるほど、そうだったのか……」
 過去に戦ったライバルも、一緒になって源氏派と戦ってくれる。
 とても心強いのだが、一つ不安になった。
(ここだけじゃなく、他の地域にも蔓延ってるのか……あいつらの活動範囲は一体……?)
 全国に広まっているとしたら、もうシュウ達だけでどうにかなるレベルではない。
 シュウは少し身震いした。 
 
 源氏派ビーダーのアジトらしき場所。
 その、研究室のような所にメアシは足を運んでいた。
「ん、メアシか。珍しいやないか。あんさんがここに来るなんて」
 そこでは、難波クウが作業をしていた。
「あぁ、少々手こずってしまってね。ルシファーのメンテをしにきたんだ」
「さよか。せやったらワイがやっとくわ。ルシファーはそこに置いとき」
「すまない」
 メアシはクウに言われた通りにルシファーを置いた。
 そして、メアシが現在行っている研究に目を向ける。
 メアシが向かっているコンピュータのモニターには黒いドラゴンのようなビーダマンが映っていた。
「いよいよ、完成するのか?」
「せやな、ええデータを提供してくれる奴らがいてな。こいつも9割方完成や。あとは最終調整だけ」
「そうか……」
 それを聞いてメアシは、複雑そうな表情をする。
「どないしたんや?ワイらの組織がますます力をつけるんや。もっと喜ばんかい」
「……私には関係ない。元々源氏派は馴れ合いの組織ではないはずだ」
「まっ、そやけどな。ワイかて、自分のビーダマン開発が一番やしな。こいつが終わったらはよ自分のビーダマンに取り掛からんと」
 クウが喋り終わる前に、メアシはとっとと部屋を出て行ってしまった。
「おっ、なんや相変わらずけったいなやっちゃなぁ。まぁええか」
 クウはあまり気にせずに作業に没頭した。
 
 部屋を出たメアシは、扉横の壁にもたれかけて、思案した。
「あのビーダマンは、恐らく最強の力を持つだろう……悔しいが、今の私では力不足だ」
 メアシは、先ほどのシュウとのバトルを思い返す。
「あの威力、利用できる……」
 そして、背中を壁から離し、振り返る。
「必ず、全て私が救って見せる……」

      つづく

 次回予告

「ある日、パトロールに出たことねぇの様子がどこかおかしい。
グルムは壊されてるし、何か思いつめてるし、一体、何があったんだ?
 次回!『愛しきあの人 哀しみの再会』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 




コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

JPEG,PNG,GIF形式の画像を投稿できます(投稿時はコメント入力必須)