オリジナルビーダマン物語 第32話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第32話「実力VS愛情!頑張れ、田村&吉川!!」



 新たなビーダマン、エンビーとアバリスを手に入れた田村と吉川はシュウに挑戦した。
 しかし、ビーダマンへの愛情を忘れていた二人は結局エンビーとアバリスを使いこなせずに終わる。
 シュウの言葉で、愛機への想いを思い出した二人の前に、再び難波クウが現れた。
「「この勝負、俺達にやらせてほしい!」」
 難波クウへ戦いを挑もうとしたシュウを制止して田村と吉川が前に出た。
「ちょ、お前ら……!」
「悪い、シュウ」
「僕達じゃ、力不足なのは分かってる」
「でも、あんな奴らに利用されたまま黙ってるなんて、出来ない!」
「例え実力では劣っていても、ビーダマンへの愛情では負けてないって所を見せたいんだ!」
 田村と吉川の覚悟は本物だった。
「……分かったぜ!」
「あっはっは!これは面白い冗談やなぁ!あんさん達の実力は昼間よぉく見させてもらいましたわ!とてもワイには勝てまへんでぇ」
「うるさい!そんな事、やってみなくちゃ分からないだろ!!」
「まぁええやろ。新調したばかりのワイの機体、『ヴォラシティ』のテストショットにはなるか」
 クウの取り出したビーダマンは、ボディ自体はエンビーとアバリスの色違いのようだが、アームには筒がついておらず、コアが特殊なようだ。
「ルールはそっちで決めてええで。今日のワイの目的は破壊やないさいかいな」
 クウの適当な態度に内心腹を立てつつも、シュウが言う。
「分かった。じゃあシャドウボムがあるから、SHBでどうだ?」
「まぁ、一番ビーダーとしての力が見れるルールやな」
「俺達もそれでいいぜ」
「よし」
 シュウが、三人分のシャドウボムを用意する。
 シャドウボムがそれぞれの足元にセットされた。
「それじゃ、始めるぞ」
 三人が、程よく距離を取る。
「レディ、ビー・ファイトォ!!」
 シュウの合図とともに三人が一斉にビー玉を放った。
「いけぇ!シアナイト!!」
「マフラーイエロー!!」
 田村と吉川のパワーショットが同時にクウへと襲い掛かる。
「無駄や無駄や!」
 ドンッ!!
 クウが一発だけショットを放った。
 カカキンッ!!
 一発しか撃って無いにも関わらず、同時に田村と吉川のショットが弾かれてしまった。
「なにっ!?」
「俺達のショットを同時に弾いた……!」
「そんなバカな、あいつは一発しか撃ってないはずなのに」
「きっと、偶然だ!もう一度行くぞ!!」
「うん!!」
 ドンッ!ドンッ!!
 田村と吉川は再び同時に二方向からショットを放つ。
「無駄や言うとるやろ!」
 ドドンッ!!
 クウは機体をズラしながら、一発ショットを撃った。
 カカキンッ!!
 再び、田村と吉川のショットが同時に弾かれる。
「ま、まただ!?」
「どうして、こんな事が……!」
 奴のショットの秘密が分からない田村と吉川。
「くっくっく。これが新開発したワイのビーダマンの力や!」
「今のショット、どこかで……」
 一方のシュウはクウのショットに、何か既視感を覚えていた。
「今度はこっちからいくでぇ!!」
 ドドンッ!!
 クウが一発ショットを撃つ。
 が、同時に田村と吉川へとショットが向かってきた。
「いぃ!?」
「同時に狙ってきた?!」
 ババーーーン!!!
 咄嗟に対応できず、田村と吉川のシャドウボムにヒットしてしまう。
「そうか!」
 それを見て、シュウはクウのショットの正体に気づいた。
「田村、吉川!気を付けろ、あいつのビーダマンはダブルバーストが撃てるぞ!」
「ダブルバースト?」
「一回のショットで、ビー玉を二発同時に撃てるんだ!」
「二発同時に!?」
「シュヴァリエルと同じ、ダブルバーストが出来るビーダマンがほかにあったなんて……!」
「ご名答や!よぅ気づいたな。ヴォラシティとは『暴食』っちゅう意味や。ワイと同じくこいつの胃袋はデカいんや。コアの中にビー玉二発分入るくらいになぁ!!」
 ビーダマンにとっての胃袋はコア。その胃袋がデカいという事は、コアの内部が広いという事だ。
 なるほど、確かに暴食のビーダマンとはよく言った機能である。
「ダブルバーストによって、一発のショットで二回連射分の威力も持たせられるし、ズラして撃てば同時に二発のターゲットを狙える。
二人がかりでも、ワイに隙は無いでぇ!!」
 ドドンッ!!
 再びダブルバーストが田村と吉川に襲い掛かる。
「くっ!!」
 二人はなんとかその攻撃をかわした。
「ダブルバーストが出来るなんて、どうすれば……!」
「とにかく、撃つしかない!」
 田村と吉川は素早くビー玉を補給して連射を繰り出した。
「無駄や無駄や!!」
 クウもダブルバーストを連射して二人分の連射を全て防御している。
「くそっ!二発同時発射されたんじゃ、どんだけ連射しても意味がねぇ……!」
「いや、きっとチャンスはあるよ」
「え?」
「とにかく、撃ち続けよう!」
 田村と吉川はめげずに連射を続けた。
 ズドドドド!
「無駄や言うとるのに……むむっ!」
 カチャッ!カチャッ!!
 と、突如ヴォラシティからビー玉が発射されなくなった。
 その隙に、連射がヒットしていく。、
 バババーーーン!!
「あ、あかんっ!!
 クウは慌ててその場を離れてショットをかわした。
「やっぱり!二発同時発射できる分、玉切れは早いんだ!」
「なるほど、大喰らいだけに、すぐ腹が減るってわけか!」
「せやった。ワイとした事が、忘れとったわ」
 クウはゆっくりとヴォラシティにビー玉を装填した。
「ワイも腹減ったな」
 そういって、懐からおいしん棒を取り出して一口で食べた。
「ず、随分と余裕だな……!」
「当たり前や。このバトルはテストも兼ねとる。このくらいのミスは想定内や。それにあんさんらの力じゃ逆立ちしたってワイには到底勝てん」
「舐めやがって……!」
 バギューーーーン!!!
 田村がパワーショットを放つ。
「甘いわ!」
 ガキンッ!!
 クウがあっさりそれを迎撃する。
 しかもダブルバーストなので、後ろのショットが田村のボムに向かってブッ飛んでいく。
「うわあああ!!」
 バーーーーン!!
 ボムにヒットした。
「くそっ、こっちが攻撃したら二倍になって返ってくる……!」
「どや?このくらい実力の差があるんや。多少ミスした所でどうって事あらへんわ!」
「くっ!」
「悔しいけど、あいつの言う通り僕らの力じゃとても敵わない……!相手のミスを待つだけじゃとても勝ち目がない!」
「何か、俺達にもあいつに勝る何かが無いと……!」
「そんなもんどこにもあらへん!愛情や絆や言うても、実力差の前じゃなんの役にも立たんのや!!」
 ズドドドド!!!
「くっ、そぅ!!」
 必死に迎撃していくも、押されていく。
「僕たちが、あいつに勝ってるもの……!」
「何もないのかよ……!」
 
「何言ってんだ二人とも!!毎日やってきた事を思い出せ!!」
 絶望する二人に、シュウが活を入れた。
「え?」
「俺達が、毎日やってきた事……」
 ずっと愛機と一緒にいて、一緒に練習して、消耗したらメンテナンスして、大事にしてきた……。
「そうか、俺達……」
「ずっと、ビーダマンを大事にしてきたんだ……」
 それだけは例え実力が劣っていても、誰にも負けないと自信が持てる。
「さぁ、そろそろ終わりにしてまうでぇ!!」
 ズドドドド!……カチャッ、カチャッ!
 突如、ヴォラシティの球威がガクッと下がる。
「な、なんやっ?!どうしたんや!?」
 焦るクウ。
 原因が分からない。
「どうしたんやヴォラシティ!!なんでそんな威力しか出せんのや!!」
「うおおおおお!!!」
「いっけぇ!!」
 その隙をついて、田村と吉川がクウのボムを狙った。
 バーーーーーン!!!
「んなっ!くっ!はよ原因を解明せんと……!」
 クウは田村と吉川のショットを避けながら、ヴォラシティを観察する。
「どこが悪いんや?トリガーか?コアか?ボディか?」
 しかし、見当たらない。
「くっ、ひとまず避ける事に集中するんや!奴らの玉切れのタイミングで即修理するでぇ!」
 クウは一旦作業をやめて、ショットをかわしはじめた。
「逃がすか!シアナイトは、小型ボディで機動性が高い!いっけぇ!!」
 バシューーーーン!!
 田村のショットがヒットする。
「んなっ!」
「マフラーイエローは、さまざまな持ち方が出来るから、どんな状態からでもパワーショットが撃てる!」
 バシューーーーン!!
 吉川のショットもヒットする。
「ぐぅ!!」
「「いっけぇ!!!」」
 二人のショットがどんどんクウのボムにヒットしていく。
「あ、あほな……!急に二人のショットが強く……!」
「俺達は、ずっとこのビーダマンと一緒に特訓してきた!」
「だから、どうすれば最適な戦い方が出来るか、身体にしみついてるんだ!」
「っ!」
「対するお前は、ビーダマンとの絆を育てていない!だからちょっとしたトラブルにも対応できないんだ!!」
「どんなに性能が高くても、実力に差があっても、ビーダマンの力を活かせなければバトルには勝てない!!」
「「これが、実力に勝るビーダマンへの愛情だぁ!!!」」
「あ、あ、あ、アホなああああああああ!!!!!」
 バーーーーーーーン!!!
 田村と吉川の猛攻によって、ついにクウのボムは爆破してしまった。
「ぐぅ……!」
「やったぁ!!」
「僕たちの勝ちだぁぁ!!!」
 明らかに格上の相手に勝利した事に二人は歓喜した。
「やったな、田村!吉川!」
「あぁ、シュウのおかげだぜ!!」
「うん!!」
 三人は肩を組み合って、喜びを分かち合った。
「ま、負けてしもうた。まだまだワイもヴォラシティも未完成やったっちゅう事やな」
 クウは悔しげにつぶやいた。
「どうだ!まいったか!!」
「まぁ、ええ。今回のバトルはワイにとって勝とうが負けようがどうでもよかったんや」
「負け惜しみか!?」
「どうとってももろうてもかまへん。このバトルで得たものもある。感謝するでぇ」
 そういって、クウは懐からおいしん棒を取り出すと、ボリボリとかじりながら去って行った。
「なんだよ、あいつ……」
「変な奴だったな」
「でも、ただビーダマンを奪ったり、破壊するだけじゃなくて、こうやって敵に取り入ったりもするなんて、源氏派ビーダーって恐ろしいんだね……」
「そうだな。あいつも、これでおとなしく引き下がるとは思えないし。より一層気を引き締めないと……」
 シュウは、改めて源氏派への警戒心を強めるのだった。

     つづく
 
 次回予告

「ある日出会った源氏派ビーダー。だけど、そいつは今まであった奴とはどこか違っていた。
ビーダマンを破壊していくところは同じなんだけど、なんだか、その目的が……。
 次回!『ビーダーの解放者』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 




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