オリジナルビーダマン物語 第31話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第31話「醜きビー魂」


 練習と源氏派警戒のパトロールを繰り返す日々が続く。

 忙しい毎日だが、それでも学校生活は変わらない。

 学校がある日はきちんと登校して授業を受けているのだ。

 
 そして、そんなある日のHR前。
 シュウは田村と吉川と駄弁っていた。
「最近、なんか物騒みたいだよな」
 田村が言う。
「うん、源氏派って名乗ってる凶暴なビーダーが無理矢理バトルを仕掛けてきて、ビーダマンを壊したり、奪ったりしてるらしいね」
 なんと、源氏派の話は田村達の耳にも入っているくらいに広まっているよだ。
「お前ら、源氏派の事知ってるんだ?」
「うん、僕らは遭遇した事ないけど」
「今、ビーダー達の間で話題になってるぜ」
 そんな大事になっていたとは。
「シュウは、遭遇した事あるのか?」
「遭遇したどころか、俺パトロールしてあいつらと戦ってるんだ」
「へぇ、なんか正義のヒーローみたいだな」
「はっはっは!まぁね~!」
 正義のヒーローって言葉が気に入ったのか、シュウは胸を張る。
「俺達も協力したいんだけどさ」
「逆に返り討ちになりそうだよなぁ……」
 田村と吉川は消極的な事を言う。
「まぁ、あんまり関わらない方がいいと思う。自分のも人のもビーダマンを平気で壊すような奴らだから」
「そうだよな……」
 田村と吉川はシアナイトとマフラーイエローを取り出す。
「こいつらが壊されるのはいやだな」
「うん」
 二人は本当にビーダマンが大事なようだ。
 昼休み。
 三人は中庭に集まって、ビーダマンでバトルする事にした。
「いけぇ!シアナイト!!」
「マフラーイエロー!!」
 ズドドドド!!
 田村と吉川が連射でターゲットを次々と倒していく。
「ブッ飛ばせ!バスターブレイグ!!」
 
 バゴーーーーーン!!
 シュウのパワーショットがターゲットを一気に吹き飛ばした。
「へへっ、やったぜ!!」
「「……」」
 その迫力に、二人は呆然とした。
「なんか、いつの間にか凄い強くなったなぁ、シュウ……」
「うん。僕達二人掛かりで戦っても全然勝てないや……」
「へへっ!なんたって、ビーダマン大会の関東予選に優勝して、全国大会の出場権も持ってるからな!関東ではもう、向かうところ敵なしだぜ!」
 シュウは得意になった。
「それに、新しいビーダマン、バスターブレイグの性能もすげぇからな。こいつがいれば、もう負ける気しないぜ」
「「……」」
 その姿見てを、二人は複雑そうな表情になる。
「って、やべ!そろそろ時間だ!」
 あと数分で休み時間が終了してしまう。
 シュウはメンテツールを取り出してバスターブレイグのメンテを始めた。
「あれ、お前らメンテナンスしないの?」
「え、あ、あぁ……そうだな」
 シュウに促されて、田村と吉川もメンテを始めた。
「???」
 二人の手つきは、どこかおぼつかなかった。
 放課後。
 田村と吉川は二人で家路についていた。
「なんかさぁ」
「うん」
 田村が口を開く。
「つまんねぇよなぁ」
「……うん」
「確かにシュウは強いけどさ、でもあそこまで差が出るのは絶対ビーダマンの性能が大きいって」
「そうだよね。でも、さすがに俺達が高性能のビーダマンを手に入れるなんて、難しいし」
「ちぇ、あ~あ。誰かに強いビーダマン託されないかなぁ」
「そんな、都合のいい話」
 そんな事をぼやきながら歩いている時だった。
 目の前に、ブクブクと太った男が現れた。男はくちゃくちゃと下品にスナック菓子を食べている。
「あんさん達、あんさん達」
 男は、田村と吉川に手招きをする。
「???」
「ええ話がおまんのや。ちょいと付き合ってもらいまへんか?」
 男は、ゴマをすりながら二人を誘った。
「え?」
 あまりにも怪しすぎる。
 二人は警戒心を露骨に表情に出した。
「あぁ、ワイは怪しいものはおまへん!ただの通りすがりのビーダーや!」
 と言って、怪しくない奴はいない。
「すいません、俺達急いでるんで」
 そう言って、二人はその横をすり抜けようとする。
「強いビーダマン、欲しくありまへんか?」
 すれ違いざま、男はそんな事を言った。
「え?」
 二人は、その言葉に反応して振り返った。
 男はニタニタと笑っている。
「ワイの名前は、難波クウ。浪速のビーダー兼技術者や」
「技術者……」
「あんさんらのバトル、陰でこっそり見てたで~。お二人とも、なかなかの才能の持ち主や」
「でも俺達は……」
 シュウには敵わなかった。
「せやけど、つこうてるビーダマンがよろしくないな。せっかくの才能もそれじゃ宝の持ち腐れや」
「……」
「お二人の腕を見込んで、お願いしたいんや。ワイの開発したビーダマンを、つこうてくれんか?」
「あなたの作った?」
「そうや。作ったはええが、誰も扱えるビーダーがおらへんでな。全国を巡って、才能のあるビーダーを探しとったんや」
「あなたもビーダーじゃないんですか?」
「ワイはもう自分のビーダマンがあるさかい。必要あらへんのや」
「……」
「あぁ、お金やったらいりまへん!ワイのビーダマンをつこうてくれるだけで結構や!!」
 クウは今だ警戒心を解かない田村と吉川に対して、慌てて取り繕うように言った。
「どや?悪い話や、ないと思うんやけどなぁ……」
 クウは意味深な笑みを浮かべながら、スナック菓子の最後の一切れを口に入れた。
 仲良しファイトクラブ練習場。
 今日は、タケルがパトロールに出かけており、シュウと琴音が練習をしていた。
「いっけぇ!バスターブレイグ!!」
 バゴオオオオン!!
 バスターブレイグの超パワーが練習用ターゲットを撃破していく。
 ガチャ……!
 その時、練習場の扉が遠慮がちに開かれた。
「あれ、田村に吉川?」
 そこに現れたのは田村と吉川だった。
「知り合い?」
 琴音が聞く。
「うん。クラスメイトなんだ」
 琴音にそう言って、シュウは二人に近づいた。
「どうしたんだ?珍しいじゃんか、クラブに来るなんて」
「シュウ……」
 二人は神妙な顔つきでシュウを見つめる。
「???」
 そして、意を決したように叫んだ。
「「お前に挑戦をする!俺達と勝負しろ!!」」
「え……?」
 思わぬ挑戦に、シュウは面食らった。
「あ、あぁ、いいぜ」
 が、すぐに我に返り、その挑戦を受けた。
「ことねぇ!ちょっとバトルしてくる!」
「え、ちょ!」
 琴音が何か言う前に、シュウ達はさっさと外に出て行ってしまった。
「まったくもう、勝手なんだから……」
 三人は公園に赴いた。
「さぁ、早速始めようぜ!ルールはSHBで良いよな?」
「あ、あぁ……」
 頷きつつ、田村は吉川に耳打ちした。
(なぁ、吉川。ほんとに、大丈夫だよな……?)
(分からないよ。でも、やってみるしかないよ)
(そ、そうだな)
「何、コソコソ話してるんだ?」
「い、いや、なんでもない!とにかく始めようぜ!」
「ああ」
 シュウは怪訝な顔をしながらもシャドウボムを三人にセットした。
「「「レディ、ビー・ファイトォ!!」」」
 バトルスタート。
「いっけぇ!バスターブレイグ!!」
 バゴォォォ!!!
 バスターブレイグのパワーショットが炸裂する。
 が、二人はバラけてそれをかわした。
「いくぞ!エンビー!!」
「頼むよ、アバリス!!」
 エンビーは、英語で『嫉妬』を意味する。
 アバリスは英語で『強欲』を意味する名称だ。
 二機とも、片腕にマガジンのような筒が装備されている。
 ドガァァ!!
 二機のビーダマンから強烈なショットが放たれた。
「は、早い!?」
 シュウは慌ててそのショットを撃ち落とした。
「す、すげぇな二人とも……!昼間とは大違いだ!いつの間にこんなに強くなったんだ?」
 驚いているのはシュウだけではなかった。
「つ、強い……!」
「まさか、こんなに強くなれるなんて……!」
「いけるぜ、吉川!俺達、強くなったんだ!!」
「うん!」
 田村と吉川は再びシュウに向かってショットを放つ。
 
 バギュゥゥ!!!
「うっ!」
 ついにかわしきれず、シュウのシャドウボムにヒットする
 バーーーーン!!!
 シュウのシャドウボムの残りHPは78だ。
「や、やるな……!でも、今度はこっちから行くぜ!!」
 ドンッ!ドンッ!!
 シュウが二人に向かってパワーショットを放つ。
「羨ましい……その強いショットが羨ましい……!」
「え?」
 すると、田村の持っているビーダマンの片腕に装備された筒が怪しく光り、そこへシュウのショットが吸い込まれていく。
「な、なんだぁ!?」
「欲しい……その強さが、欲しい……!」
 吉川の持っているビーダマンの片腕に装備された筒も、シュウのショットを吸い込んだ。
「お前もか!?」
 吸い込んだビー玉は、そのままコアへと装填されて発射した。
 バーーーン!!
 
「くっ、俺のショットを吸収した……?」
「俺のビーダマンは、嫉妬のビーダマン『エンビー』。相手の強いショットに嫉妬して、片腕のパーツに吸収してそのままコアに装填する事が出来る」
「僕のビーダマンは、強欲の『アバリス』。同じように、相手のショットを吸収して装填出来るんだ」
「エンビーに、アバリス……?」
「どうだ!いつまでも自分だけが強いと思ったら大間違いだぜ!!」
「ビーダマンの性能さえ上がれば、僕達だって……!」
「ビーダマンの性能……?」
 その言葉を聞いて、シュウは二人が持っているビーダマンを良く見てみた。
 二人がもっているのは、いつも大事に使っていたシアナイトとマフラーイエローではない。
「お前ら、いつものビーダマンどうしたんだよ……?」
「え、あんな弱いビーダマン使ってられるかよ!」
「このビーダマンは、僕達の腕を見込んでくれたある技術者が特別にくれたんだ!」
「ああ!今まで勝てなかったのは、ビーダマンの性能の差だけだったのさ!実力だったら俺達だって……!」
 二人の言葉に、シュウは違和感を覚えた。
「え、なんだよ、それ……!あんなに大事にしてたじゃないか。なのに、そんな言い方ないだろ……!」
「う、うるさい!最初から強いビーダマン持ってたお前に、俺達の気持ちが分かるか!!」
 ドンッ!
「うおおおおお!!」
 バキィ!!
 シュウのショットが田村のショットをはじき、そしてシャドウボムにヒットする。
 バーーーン!!
 田村のHPは一気に72になる。
「くっ!」
「絶対に負けられない!!」
 もう一度、今度は吉川へパワーショットを放つ。
「ぐっ!」
 止めようと連射するのだが、敵わずにシャドウボムにヒット。
 バーーーーン!!!
 吉川のHPは残り69だ。
「くっそぉ!油断した!!」
「でも、ビーダマンの性能は確実に上がってるんだ!絶対に負けないはず!!」
「おう!一気にいくぜ!!」
 ズドドドド!!
 田村と吉川が二人がかりで連射する。
「そんなものに負けるもんか!!」
 バシューーーーーン!!!
 シュウがパワーショットでその連射を全て弾き飛ばす。
「「なにぃ!?」」
「いっけぇ!!」
 そして、またも二つのシャドウボムにヒット。
 バーーーーン!!
 田村のHPは残り50。吉川は46だ。
「うぅ……!」
「な、なんでだ……!」
「まだまだ行くぜ!俺は、ブレイグをとことん信じてるぜ!!」
 バシュウウウウウウ!!!
 再びパワーショットを放つ。
「吉川!吸収だ!もう一度あいつのショットを吸収するぞ!」
「うん!」
 田村と吉川が、腕についた筒にシュウのショットを吸引しようとする。
 しかし……。
「な、なんでだ!?なんで作動しないんだよ!!」
 バーーーーン!!!
 またもヒット。
 田村の残りHPは14。吉川は11だ。
「なんで、なんでだよ……!」
「強いビーダマンを使ってるはずなのに、また勝てないのか……!」
「そんなの、当たり前だ!」
「なにっ!?」
「ビーダマンは、相棒と一緒に戦って、初めて強くなれるんだ!お前らは、そいつらを相棒として使ってない!!」
「ぐ……!」
「俺は、強いからブレイグを相棒にしたんじゃねぇ!ブレイグの相棒として一緒に頑張ってきたから強くなれたんだ!!」
「一緒に、強くなった……?」
「強力なブレイグの力を使いこなすために特訓して、自分のものにして、欠点があったら自分で改良して、それでやっと強くなれたんだ!!」
「練習して……」
 シュウの言葉を聞いて、田村と吉川はビーダマンを初めて手にした時の事を思い出した。
 お小遣いをためてやっと手に入れて、嬉しくて、ずっとずっと練習して、消耗したらメンテナンスして……。
 そうやって、大事にしてきたのに、弱いからってだけで、強いビーダマンを手に入れたからってだけで、簡単に捨てて良いのか?
「ビー魂は愛機と一緒に育てて、強くなっていくものなんだ!ただビーダマンの性能が上がればいいってわけじゃねぇ!
今のお前らにビーダマンとの魂の絆があるのか!?どうなんだよ!!」
「愛機と育てていくもの……」
「ビーダマンとの、絆……」
「そうだ、俺達、ビーダマンの性能ばっかり嘆いてて……」
「一緒に強くなっていこうとしなかった」
 田村と吉川は自分の行いが、シアナイトやマフラーイエローに大してすごく失礼だったという事に気づいた。
 カシャ……。
 田村と吉川は呆然とし、エンビーとアバリスを落とした。
「シアナイト」
「マフラーイエロー」
 二人は懐からそれぞれの愛機を取り出す。
「ごめんよ、俺達……!」
「ちゃんと向き合ってなかった……!!」
 二人はビーダマンを抱きしめて涙した。
「田村……吉川……」
 シュウはそんな二人を見て、ビーダマンの構えを解いた。
 その時だった。
 ババーーーン!!!
 田村と吉川のシャドウボムが同時に爆発した。
「な、なんだ!?」
「あ~あ、茶番はそれでおわりでっか?まぁ、ええ仕事してくれたからこっちとしては大助かりでっけど」
 と言いながら現れたのは、難波クウだった。相変わらずスナック菓子をクチャクチャと食べている。
「お、お前は……?」
「俺達に、ビーダマンをくれた人だよ」
(今の、同時に二つのシャドウボムを撃ったように見えたけど、一体どうやったんだ……?)
 連射と言うレベルではなかった、ほぼ同時に二つのターゲットを撃つなんて、そんな芸当出来るのか?
「シュウはんとはお初やったな。ワイの名前は難波クウ。源氏派ビーダーの一人や」
「な、なに!?」
「お二人には、新型ビーダマンのテストプレイヤーとして存分に役に立ってもらえたで」
「なんだと!?」
「俺達を利用したのか……!」
「そうや。今度作るビーダマンは、ザコのプレイデータがあった方が効率がよかったんでな。そいでちょうどいいカモやったというわけや」
「そんな……僕たちは、源氏派に手を貸してしまったなんて……」
「感謝するでぇ!これでますます智蔵派の粛清に勢いがつくはずや!はっはっは!!」
 クウは馬鹿笑いした。
「ふざけるな!よくも俺の友達を利用したな!今ここでお前を倒す!!」
 シュウが啖呵を切る。
「ん?別にかまへんで。せやけど、ビーダマンが壊れるだけとちゃうか?」
「やってみなくちゃ、分からないぜ!」
「待ってくれ、シュウ」
 戦闘態勢に入ったシュウを、田村が止める。
「ん?」
「この勝負……」
「僕たちにやらせて欲しい!」

             つづく

 次回予告

「浪速の源氏派ビーダー、難波クウ。こいつの力は未知数だ!そんなクウに田村と吉川がシアナイトとマフラーイエローで挑戦した!
 次回!『実力VS愛情!頑張れ、田村&吉川!!』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 



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