オリジナルビーダマン物語 第26話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第26話「盗まれたブレイグ」



 ギリシャのホテル。
 観光を終えて部屋に戻ったシュウ達だが、シュウはブレイグが無い事に気づいた。
「ブレイグが、ないいいいいいいいい!!!」
 シュウの叫び声は隣りの部屋にまで聞こえたのか、彩音と琴音が扉をノックしてきた。
「ちょっとシュウ、うるさいわよ!何時だと思ってるのよ!!」
「何かあったの?」
 タケルがドアを開いて彩音と琴音を招き入れた。
「なんかシュウの奴、ブレイグ無くしたみたいなんだ」
「えぇ!?」
「ちょ、シュウ何やってんのよ!」
 シュウは頭を抱えてうろたえている。
「あぁぁぁ!どこいっちまったんだよブレイグ~!!あ、やっぱりあの落とし穴に落ちた時かなぁ!どーしよどーしよ~!!」
 あたふたしてるシュウに彩音が声をかけた。
「落ち着いてシュウ君。大丈夫、ブレイグはきっと見つかるから」
「へっ?」
 と言って彩音は懐から小型のケータイのような機械を取り出した。
「それは?」
「GPS。こんな事もあろうかと、皆のビーダマンには発信機をつけておいたの」
「へぇ~!じゃあすぐ見つかるな、よかったぁ」
 用意周到な彩音の言葉に、シュウはホッと一安心する。
「しかしいつの間にこんなものを……」
 タケルも琴音もこの事は知らなかったらしい。
「ごめんなさい、伝え忘れてて。関東予選が終わった後に皆のビーダマンを一斉にメンテナンスしたでしょ。その時に」
 そう言いつつ、彩音はGPSの電源を入れた。
 のだが。
「あら?」
 画面は真っ暗なままだ。
「どうしたんだ?故障か?!」
 シュウは不安になる。
「う~ん……」
 彩音はカチャカチャと機械をいじる。
「……充電切れね」
「えぇぇ!?!?」
 ここまで用意周到なのに、それは詰めが甘いだろう。
「ごめんなさい、まさかこんなに早く使う事になるとは思ってなくて……」
「今から充電すると、どのくらいかかるの?」
 琴音が聞いた。
「今からだと……ちょうど明日の朝くらいかな?」
「えぇ~、じゃあそれまで何も出来ないの!?」
 今から明日の朝までにブレイグの身に何かがあったら……。
「落ち着けシュウ。どっち道今ブレイグの場所が分かったところでこの時間じゃもう動けないんだ。今日の所は休んで明日に備えよう」
 タケルの言う事はもっともだ。
 今からブレイグを探しにいけるわけではない。
「まぁ、それもそうね」
 琴音は納得した。
「ごめんね、シュウ君」
 彩音はもう一度謝りながら立ち上がった。
「うぅ、分かったけど……これじゃ気になって眠れねぇよ」
 シュウも一応は納得した。
 彩音と琴音は部屋を出て、シュウとタケルも就寝する事になった。
「ぐおーーーがごーーーーー!!」
 シュウは、ベッドに入った途端大いびきをかきはじめた。
「何が気になって眠れねぇだよ……これじゃ俺の方が眠れねぇ……」
 タケルは両耳を押さえながら眠りにつこうと努めた。
 そして、翌朝。
 朝食を終えたシュウ達は、ロビーに集まった。
「さぁ、あやねぇ!もう充電は完了しただろ!?早く調べてくれよ!!」
「うん、すぐ調べるね」
 言って、彩音は発信機の電源を入れた。
 モニターに簡易地図と受信機のある場所を示すポイントが映し出された。
「ここは……アテネね」
「あれ、てっきり昨日行ったなんちゃらポリスって所に落としたと思ったのに」
「誰かが拾ったんじゃないのか?ほら、なんか動いてるっぽいし」
 タケルが言った通り、受信機を示すポイントは微妙に動いていた。
「あ、ここってアテネオリンピックスポーツコンプレックスがある場所じゃない?」
 琴音が、パンフレットと発信機の画面を見比べながら言った。
「なにそれ?」
「アテネオリンピック用に建設された、総合スポーツ施設よ」
「なんでそんな所に、ブレイグが?」
「さぁな。もしかしたらそこでビーダマンのイベントが開かれてるのかもしれない。とにかく行ってみよう!」
「おう!!」
 
 と、言うわけで仲良しファイトクラブはアテネオリンピックスポーツコンプレックスへと急いだ。
 タケルの言った通り、そこのオリンピックスタジオは多くの人で盛況していた。
 そして、垂れ幕にはギリシャ語で『ビーダマン大会』と書かれている。
「思った通りだ。なんか大会が開かれてるらしいぞ」
「発信源は完全にここで止まってるね」
 彩音がモニターを確認しながら言う。
「って事は、ブレイグを拾った人間がこの大会に参加しようとしている可能性が高いな。観客としてか、選手としてかは不明だが」
「よし、俺も大会に出るぜ!ブレイグを取り戻すんだ!!……って」
 意気込んだシュウだったが。
「俺、ビーダマン無いんだった」
 そもそも、だからこそここに来たのだ。
「はぁ、仕方ないわね」
 琴音はあきれたようにため息をついて、懐から赤いビーダマンを取り出した。
「はい、これ使いなさい」
「これって、前にことねぇが使ってた……」
「そ、ゼンダグラップラーよ。グルムに何かあった時用の予備のビーダマン」
 ゼンダグラップラーは大きいお友達用の扱いやすいビーダマンだ。
「サンキュ、ことねぇ!」
 シュウはそれを受け取った。
「自分で蒔いた種なんだから、しっかりやりなさい」
「ああ!絶対優勝してくるぜ!」
 そう言って、シュウは受付へと駆けて行った。
「優勝は目的じゃないだろうが」
 タケルは苦笑しながら突っ込んだ。
「さぁ、私たちは手分けして観客の方を探しましょう。大会に参加してないとしたら、探すのが困難になると思うから」
「そうだな」
「うん」
 タケル達三人は手分けして観客たちがブレイグを持ってないか探すことにした。
 そして、大会が始まる。
『さぁ、ビーダマンアテネ大会を始めるぞ!!一回戦の対戦カードは、アネモス君VSアラストール君だ!!』
「アラストール!?」
 その実況に、控えのシュウと観客席をうろついていたタケル達は反応した。
「あいつも、参加してたのか……」
 それだけじゃなかった。
 アラストールとアネモスがフィールドにつく。
 そして、そのアラストールが持っていたビーダマンは……。
「いけぇ!バスターブレイグ!!」
 バキィ!!!
『決まったぁ!圧倒的な強さ!!アラストール君の完勝だ!!』
 対戦が終了し、アラストールがフィールドから離れる。
「すげぇ、本当にすげぇぜ、このビーダマン……!わざわざあのトラップを消費してまで奪ってよかったな」
 アラストールはバスターブレイグを見ながらほくそ笑んだ。
「てめぇぇ!!」
「ん?」
 そこへシュウが駆け込んできた。
「あぁ、あの時のか。よく嗅ぎつけたな」
「お前がブレイグをとったのか!?」
「そうさ。昨日案内した場所は、俺の庭でもある。そこら中に罠が仕掛けてあるのさ。それを使って、バカな観光客を騙して所持品を奪ってるってわけさ」
「俺は、お前の事、良い奴だって思ってたのに……!」
「騙される方が悪いのさ。とにかく、今はこのビーダマンは俺のものだ」
 アラストールは全く悪びれる様子がない。
「なんでだ!なんでわざわざ人のビーダマンをとるんだ!そんなんで勝って、何の意味があるんだよ!!」
「意味?」
「自分の力で手に入れたビーダマンで、愛機で勝つから意味があるんじゃねぇか!」
「関係ないね。盗もうが何をしようが、俺は強いビーダマンが必要なんだ。復讐のためにな」
「なにぃ……!」
「それに、どんな手段だろうと、こいつは俺の力で手に入れたビーダマンに代わりはない」
 そう言って、アラストールは去っていこうとする。
「だったら、俺も自分の力でブレイグを取り戻す!この大会でお前に勝って、優勝してな!!」
 シュウはアラストールの背中に向かって叫んだ。
「あぁ、俺とこのビーダマンに勝てるんならな。はっはっは!」
 アラストールはシュウの提示した条件を受け入れ、そのまま去って行った。
「くっそぉ……」
「シュウ!」
 そこへタケル達が駆け寄ってきた。
「バスターブレイグは」
「ああ、あいつが持ってた」
「やっぱりな、どっか怪しいと思ってたんだ」
「とにかく、この大会であいつに勝って取り戻すしかねぇぜ」
 シュウは拳を握りしめた。
「だが、あいつもなかなかの使い手だぞ。一回戦のバトル、完勝だった」
「でもそれはバスターブレイグの性能あってのものじゃないの?」
「そのバスターブレイグを使えている時点で、相当な使い手って事だ」
「バスターブレイグは、使い手に相当な負担がかかるもんね」
「それでも、やるしかねぇぜ!ブレイグは、俺の相棒なんだ!!」
 シュウは、大会優勝へ気合いを込めた。
 
 そして、試合は進み。シュウとアラストールは決勝まで進出した。
『さぁ、大会もいよいよ決勝戦だ!!勝ち進んだのは、日本からの特別参加のシュウ君に今大会を圧倒的な力で勝ち進んだアラストール君だ!良いバトルを期待しているぞ!!』
「ここまで勝ち進んだぜ、アラストール!!絶対にブレイグを取り戻す!!」
「へぇ、そんなビーダマンでよくここまでこれたな」
「バトルは、ビーダマンの性能だけで決まるんじゃない!ビーダーの腕と想いで決まるんだ!!」
「だが、そんなものは圧倒的な性能差の前では無意味だぜ」
『それじゃあ、今回のルール説明だ!ルールは、単純なアルティメットSHB!先に相手のシャドウボムを撃破した方の勝ちだ!!
そして、フィールドは、これだぁ!!』
 会場にフィールドが出現する。
 それは、古代の神殿を思わせるものだった。
『パルテノン神殿を模したフィールド!神聖なるこのフィールドを制覇するのは果たしてどっちだ!?』
 シュウとアラストールがそれぞれスタート位置について、ビーダマンを構える。
『両者とも準備はOKだな!そんじゃ、始めるぞ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
 
 司会者の合図とともに二人は駆け出した。
 神殿内は長方形の単純な構造になっており、比較的走りやすい。
 だが、ところどころにそびえたつ柱が、障害物となっていた。
 
 ドギュッ!ドギュッ!!
 早くもアラストールの攻撃が襲ってきた。
「くっ!」
 シュウは身をひるがえして柱に隠れる。
 ドゴォ!ドゴォ!!
 バスターブレイグのショットが地面をえぐる。
「さ、さすがバスターブレイグ。すごい威力だ……」
「どうした?隠れてないで出てこいよ」
 アラストールは隠れる気は全くないようで、堂々と身をさらして立っている。
「くっ!」
 シュウは咄嗟に柱から飛び出してアラストールのシャドウボムに向かって撃つ。
「ふん」
 が、あっさりと迎撃されてしまう。
「はぁぁぁ!!」
 そして、アラストールのショット。
「ちっ!」
 迎撃しようとするシュウだが、まったく止まらない。
 
 バキィ!!
 アラストールのショットがヒットする。
 シュウの残りHPはあと65だ。
『おおっと!先手を取ったのはアラストール君だ!しかも大きなダメージを与えたぞ!!』
「くっ、やっぱダメージデカいな……!」
 シュウはまともにぶつかり合うのは避けて再び柱に身を隠した。
「おいおい、もう逃げるのかよ。だったら引きずり出すだけだな」
 バキュウウウウウン!!
 アラストールがシュウが隠れている柱に向かって撃った。
 
 バキィィ!!
 そのショットで柱はあっさりと破壊されて、シュウの身が晒された。
「いぃ!?」
「見つけたぜ」
「ぐっ、我がビーダマンながら、凄いショットだ……!」
「くらえぇ!!」
 ドギュッ!ドギュッ!!
 アラストールがシュウに向かって乱射する。
「うぉ!」
 シュウは必死にそれをかわしまくった。
「どうした?逃げ惑う事しかできないのか!?」
「あったり前だ!まともにやってブレイグに勝てるわけねぇだろ!!」
 ドギュッ!ドギュッ!!
 アラストールの猛攻はさらに激しさを増していく。
「とはいえ、逃げ続けても勝てるわけじゃねぇ。どうすりゃいいんだ……!」
「無駄無駄ぁ!おとなしくやられるんだな!!」
「冗談じゃねぇ!絶対に諦めねぇぞ!!」
『アラストール君の圧倒的な力に、シュウ君は逃げる事しかできない!これは、一方的な展開だぞぉ!!』
 そして、シュウは、周りに壁に囲まれた所に追い詰められてしまった。
「もう逃げ場はないな」
「しまっ!」
『シュウ君、ついに追い詰められてしまった!完全に袋の鼠だ!!』
「これで終わりだな」
「ぐぐ……!」
 アラストールがゆっくりとシュウのシャドウボムへと照準を合わせた。
「喰らえ!!」
 そして、アラストールがバスターブレイグのトリガーを押そうとした瞬間。
「ぐっ!」
 突如、アラストールの腕に激痛が走り、顔をゆがめた。
「?……今だ!!」
 その隙に、シュウはアラストールのシャドウボムへショットをぶつける。
 バキィ!!
 アラストールのHPは残り87だ。
『ここで、ようやくシュウ君のショットがヒット!!形勢逆転なるか!?』
「ど、どう言う事だ!言う事を聞け、バスターブレイグ!!」
 アラストールが、必死にバスターブレイグを使いこなそうと奮闘する。
 のだが。
「ぐあああああああ!!!」
 トリガーを押そうとするたびに激痛が走り、アラストールはついにブレイグを落としてしまった。
『のおっと!?どうした事だ!!アラストール君は突如ビーダマンを落としてしまった!手が滑ったのか?』
「なぜだ……なぜだああああ!!!」
 叫ぶアラストールだが、どうしようもない。
「当たり前だ!」
「なにっ!?」
「ブレイグは、俺の想いを込めて、必死に特訓してやっと使いこなせたビーダマンなんだ!お前みたいな奴が、長い時間使い続けられるわけがないんだ!!」
 バスターブレイグは、短時間の使用ならある程度腕に覚えのあるビーダーなら大丈夫だが、長時間の使用になると、シュウのように慣れたビーダーでなければダメなのだ。
「くっ!」
「ビーダマンは、ビーダーと心を通わせて初めて使いこなせるんだ!想いを込めようともせず、ただビーダマンの強さだけを追い求めたお前の負けだ!!」
 シュウはそう言って、アラストールのシャドウボムへと連射を叩き込んだ。
『シュウ君!怒涛のラッシュ!!アラストール君のシャドウボムのHPがどんどん削られていくぞ!!』
 そして……。
 バーーーーン!!
 ついに、アラストールのシャドウボムが爆発した。
『決まったぁ!!勝者、シュウ君だ!!』
 大会が終了し、シュウはアラストールへと詰め寄った。
「さぁ、約束だ。ブレイグを返せ!」
「……」
 アラストールはしばらく黙っていたが、舌打ちをするとシュウにブレイグを投げよこした。
「ちっ、おらよ」
「おっと!」
 シュウはそれをキャッチする。
「どっち道、使いこなせないんじゃ意味がねぇ。また強いビーダマンを探さねぇとな。あばよ」
 アラストールはそう言って去って行った。
「シュウ!!」
 シュウの所へ三人がやってきた。
「ブレイグ取り戻せたのか?」
「おう!」
 シュウはブレイグを三人に見せた。
「やったね、シュウ」
「よかったね、シュウ君」
「ああ。一時はどうなるかと思ったぜ」
 シュウはホッと胸をなでおろした。
「まっ、これからは無くさないように十分注意するんだな。大事な愛機なんだから」
「うん。ごめんな、ブレイグ。もう二度と、お前を手放さないからな」
 シュウはそう言って、大事そうにブレイグを抱きしめるのだった。
 
 
 
     つづく

 次回予告

「さぁ、次に俺達が向かったのは、ヒンメルの出身地ドイツだ!!もしかしたら、ヒンメルに会えるかも!?そんな期待を胸に俺達は黒い森に赴いた!
なんと!そこではヒンメルが……!?
 次回!『ヒンメルの禁断』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 

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