オリジナルビーダマン小説 第13話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!



第13話「お兄ちゃんの事なんかぜんぜんきらい!」



 決勝戦第一バトル。仲良しファイトクラブは相手チームの戦術とパワーによって敗れてしまった。
 第二バトルが始まるまで20分のインターバルがあるので、控え室に戻って休憩と作戦の練り直しをする事にしたのだ。
「ああああくっそぉ、あんなあっさり負けるなんてよぉ~!!」
「悔しがってる暇があったら、次のバトルに備えろ、シュウ」
「分かってるよぉ」
「彩音さん、機体の方はどう?」
 三機のメンテをしている彩音が顔を上げた。
「うん、今回はあまり消耗してないみたい。すぐに直ったよ」
 そう言って、三人に機体を返す。
「よし、あとは作戦だな……」
 レックスを受け取ったタケルは、皆に向き直る。
「とにかく、まずは相手のチームプレイを崩す事。そして崩した後に出現するジェムオリファルコンのパワーをどうにかする事だ」
「あのイングリッシュボールでの奇襲は、初見だときついけど。一回見てしまえばそれほど脅威ではないのよね」
 奇襲と言うものは往々にして初見殺しではあるが、初見でなければどうという事は無いものだ。
「あぁ。三本勝負ってのは俺達にとっては都合がいいな。第二バトル以降は相手の手の内がある程度分かった上でバトルが出来る」
「うん、奇襲戦法は二度は通じないもんね」
 脅威でなくなった、と言うわけではないが、ルビークとサファイドルのスピンコンビネーションには第一バトルほど苦戦はしないはずだ。
「だが、それは相手も重々承知の上だろう。まだ何か隠し玉がある可能性がある」
「あったらあったでそん時だぜ!ブレイグのパワーでぶっ飛ばすだけだ!」
 警戒するタケルに対して、相変わらず単純能天気なシュウ。
「その隠し玉の合体ショットにやられたのはどこのどいつだ?」
 タケルがジト目で突っ込むと、シュウはバツの悪そうな顔をする。
「うっ、あの時は油断しちまっただけだ!次はメテオールバスターで真っ向勝負してやる!!」
「まぁ、そうだな。こっちだってまだ手の内の全てを明かしたわけじゃない。力の上では、十分勝機がある」
「おう!」
 ガタッ。
 シュウが気合いを入れたと同時に、物音がした。
 彩音が席を立ったのだ。
「あやねぇ、どうしたの?」
「あ、ごめんなさい。ちょっとお手洗いに」
 言って、彩音は部屋を出て行った。
「手なら飯の前に洗えばいいのに。キレイ好きだなぁ、あやねぇは」
「……」
 シュウのバカ発言にタケルと琴音は言葉も出なかった。
 一方のマイスイートシスターズ控え室。
「第一バトルは案外楽に勝てたわね~」
「これも、僕と赤鈴の愛の力の賜物だよね!」
「なわけないでしょ……」
 第一バトルに勝利した事で、すっかり楽勝ムードな小鳥遊兄妹だ。
「でも、この調子ならあたし達の優勝は決まったも同然ね」
 しかし、縁だけは気を引き締めたままだ。
「いや、そうとも言えませんよ。勝利はしたものの、我々は手の内の殆どを相手に明かしてしまいました。
次の試合ではほぼ対策されてしまうでしょう。こちらも何か戦法を変えなければ……って」
「赤鈴タンぺろぺろ~!!」
「だぁ!もうやめろクソ兄貴!!」
 またいつものケンカをおっぱじめていた。
「はぁ……」
 まともに作戦会議も出来んのかこいつらは、と。縁はため息をついた。
「だって、赤鈴ケガしてるじゃないか!ペロペロして消毒しないと~!」
「こんな擦り傷くらい大丈夫よ!それに、兄貴に舐められたら消毒どころか化膿しちゃうわ!」
「ひ、ヒドイ……!でもちょっと嬉しい。じゃあせめて応急処置しようよ!!救急箱持ってくるから!」
「ま、まぁちゃんとした治療なら……」
 と、言いつつ、藍人が取り出したのは大袈裟な包帯とドデカイ注射だった。
「って、何取り出してんのよ!?応急処置ってレベルじゃないでしょそれ!!」
「だって、治療は完璧にしなきゃね!」
 じりじりと藍人が迫る。赤鈴もそれにあわせてジリジリと扉へと後ずさる。
「じょ、冗談じゃないわ!たかが擦り傷にそんな包帯巻けるわけないでしょ……!」
「擦り傷は万病の元だよ!大怪我につながるかもしれないんだからね!」
「それ、違う!何かが違う!!もう、いい加減にして~!」
 赤鈴は悲鳴を上げながら扉を開けて部屋を出た。
「あ、ダメだよ!走ったら、危ないよ!!」
 と、藍人もその後を追いかけた。
「……」
 一人取り残された縁。
「あれでバトルになると強いんだから、不思議なものですよね……」
 廊下。赤鈴は藍人から逃げていた。
「はぁ、はぁ……!」
「赤鈴~!待ちなさい~!!」
 後ろから藍人が追いかけてくる。赤鈴は素早く女子トイレに入って藍人から身を隠す。
「赤鈴~!!」
 藍人は、トイレに入った赤鈴に気付かなかったのか、そのまま去っていった。どうやら上手く撒けたようだ。
「ふぅ、助かった……」
 赤鈴は、洗面所の前でため息をついた。
 と、その時、誰かに声をかけられた。
「あら、あなた……?」
 それは、彩音だった。丁度手を洗っている所だったらしい。
「あ、確か仲良しファイトクラブの……」
「メカニックを担当している佐倉彩音よ。あなたは、チームマイスイートシスターズの……赤鈴ちゃんだったわね?どうしたの、そんなに息を切らせて……」
「ちょ、ちょっといろいろありまして……」
 赤鈴は苦笑いする。
 それを見てなんとなく状況を察したのか、彩音はフッと柔らかく笑った。
「少し、お話しない?試合までにはまだ時間あるし」
「え、えぇ。そうですね」
 彩音と赤鈴は、ベンチのある休憩所へと足を運んだ。
「はい、どうぞ」
 彩音が自販機で二つの缶ジュースを購入し、一つを赤鈴に渡す。
「あ、すみません。いただきます」
 赤鈴は基本礼儀正しい子のようだ。ただ兄に迫られると、兄を拒絶する事に気を取られて他者への配慮が欠けてしまうらしい。
「ふふふ、面白いお兄さんね」
 彩音が微笑みながら言うと、赤鈴は心底嫌そうな顔をした。
「あんなの、ただの変態ですよ。もう、いつもいつもあたしの事構ってばっかりで。いい迷惑です」
「確かに、あそこまで行くとちょっと大変かもね」
「えぇ、もう勘弁して欲しいです」
 うんざりしながらも、どこか楽しげな様子の赤鈴。そんな赤鈴を見ながら、彩音は神妙な顔になる。
「……でも、ちょっと羨ましいかも」
「え?」
「私は、良いお兄さんだと思うな」
「えぇ~、そうですかぁ?」
「うん、だってお兄さんの行動って、いつもあなたを想っての事ばかりで、そこに見返りを求める事って無いでしょう?」
「それは、そうですけど……」
「お兄さんってそういうものなのよ。
いつも妹の事ばかり考えて、妹の気持ちなんて無視して、思い込みで行動して、それが迷惑だなんてちっとも考えなくて、でも何よりも妹のためを思って動いてる……」
 赤鈴は、彩音の言葉に少しだけ悲しみが混じっているのを感じた。
「佐倉……さん?」
「兄妹ってね、親子以上に近い存在だけど。でも、いつかは絶対に離れてしまうものなの。離れてしまうまで、その事には気付けない。だから……仲良くね」
 そう言って赤鈴に向けた彩音の顔は、何故か悲壮感に満ちていた。
「……」
 赤鈴には、彩音がどんな気持ちで話しかけてきたのかなんて想像もつかない。
 だけど、それを見て何か心が動かされるのを感じた。
「あ、もうこんな時間!ごめんね、そろそろ戻らないと次の試合が始まっちゃう!」
 時計を見ると、試合開始まであと5分前になっていた。
「ほんとだ!あたしも早くバカ兄貴連れ戻して控え室行かないと、縁に怒られちゃう!!」
 赤鈴と彩音が慌てて立ち上がり、別々の方向へ歩こうとする。
「あの!」
 歩き出す前に、赤鈴が彩音に声をかけた。
「?」
「あ、いえ……よかったら、またお話しましょう」
 その言葉に深い意味はなかった。ただ、なんとなく、もう一度一緒に話がしたい。そう思ったのだ。
「えぇ」
 彩音は笑顔で頷くと、それぞれ控え室へと戻っていった。
 そして、第二バトル開始の時間になり、両チームが会場のスタート位置についた。
『さぁ、いよいよ第二バトル開始だ!ルールは第一バトルと同じ、この大都会フィールドで先に相手チームのシャドウボムを全滅させた方の勝利だ!
第一バトルで先手を取ったのは、チームマイスイートシスターズだが、このまま一気に優勝を決めてしまうのか!?
はたまた、仲良しファイトクラブが待ったをかけるのか!
注目の第二バトル!そろそろおっぱじめるぜ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
 ジンの合図で両チームが一斉に駆け出す。
「とにかく、先に相手チームを見つけて先手を取った方が有利だ」
「そうね、また見えない所からイングリッシュボールを喰らったらたまらないし」
「よし、三手に分かれよう!相手がチームプレーを基本戦術とする以上、分散しているとは考えられない。
だったら、分散して探した方が先に見つけて先攻できる確率は高い!」
「えぇ!で、でもいくら先手を取れたとしても、それで一人が集中砲火を浴びたらどうするの!?」
「大丈夫だ。見た感じ、火力面では俺達の方が上だ。一人でもある程度なら持ちこたえられる。
先に奴らを発見したら、なるべくビー玉を撃って他のメンバーに知らせて、すぐに合流できるようにするんだ!」
「おう、分かったぜ!」
「ちょっと不安だけど、了解!」
 ダッ!
 仲良しファイトクラブは三手に分かれて探索を開始した。
 タッタッタ!
 それぞれ、ビルとビルをすり抜けながらスイートシスターズを探す。
「あ、見つけた!」
 そして、シュウが縁を発見した。
「喰らえっ!」
 見つけ頭、パワーショットを放つ。
「っ!」
 縁が咄嗟に反応してそれをかわす。
「見つかってしまいましたか!」
「おっしゃ、タケルの言うとおりにして正解だぜ!」
「なるほど、分散して探索する範囲を広めて、先に我々を見つけてしまおうと言う作戦ですか。ですが、たった一人で三人を相手に出来るんですか?」
 姿を見せているのは縁だけだ。しかし、赤鈴と藍人もどこかに身を隠しているのだろう。
「やってやるぜ!」
 ドンッ!カンッ、カンッ!!
 ビルの隙間から、反射してきたビー玉が飛んでくる。
「ブレイグッ!!」
 シュウは素早くこれを撃ち落した。
「へーんだ!反射してる分威力が落ちてるんだ!ブレイグの敵じゃねぇぜ!」
 シュウが得意気にそういうと、壁の向こう側から赤鈴の声が聞こえてきた。
「さすがにもうイングリッシュボールでの不意打ちは通用しないみたいね」
 今度は、反対側の壁の向こう側から藍人の声が聞こえてきた。
「だったら、ツイン・ダイビング・ラプターで行こう、赤鈴!」
「そうね!」
 バッ!
 赤鈴と藍人が路地から飛び出してきた。
「愛の連結合体……!」
 ルビークとサファイドルが左右で連結した。
「今度こそ、負けねぇからな!」
 シュウは、第一バトルの雪辱を果たすために気合いを込めた。
「ツイン・ダイビング・ラプター!!」
 ドギュンッ!!
 必殺の強力ショットが襲い掛かる。
「うおおおおお!!!」
 バギュンッ!!!
 シュウが地面に向かってショットを放ち、その反動で飛び上がる。
「と、跳んだ!?」
「メテオールバスター!!!」
 シュウの必殺ショットが炸裂!!空中から重力を利用しての強力パワーショットだ!
 バゴーーーーン!!
 二つのパワーショットが激突!
 勝っていたのは、メテオールバスターだった。ツイン・ダイビング・ラプターを弾き飛ばして、真っ直ぐブッ飛んでいく。
「うっ!」
「ちぃ!!」
 咄嗟に、縁が連射して、シュウのショットを弾き落とす。ツイン・ダイビング・ラプターとのぶつかり合いでパワーが落ちていたのでエメラホークでも撃ち落せたのだ。
 だが、シュウがルビークとサファイドルの左右連結合体に押し勝ったのは紛れもない事実だ。
「どうだぁ!これが俺の必殺ショットだぜ!!」
「そんな……ツイン・ダイビング・ラプターが力負けするなんて……」
「僕と赤鈴の愛の力が……」
 タッタッタ!
 そして、そうこうしているうちにシュウの後ろから二つの足音が迫ってきた。
「シュウ~!」
「見つかったのか!?」
 タケルと琴音だ。
「タケル!ことねぇ!!」
「よく持ちこたえたな」
 仲良しファイトクラブが合流し、三角フォーメーションでガードを固めた。
「ちっ、合流されてしまいましたか」
「確実に行くぞ!フォーメーションケットル!目標、エメラホーク!!」
 タケルの合図とともに、仲良しファイトクラブが素早く移動する。
 そして、縁を取り囲むような位置についた。
「なにっ!」
「これなら対処できないだろう!いけぇ!!」
 三方向からの同時ショット!縁のエメラホークでは対応できない。
 バーーーン!!
『おおっと!開始早々、縁君のシャドウボムが爆発!今回先手を取ったのは、仲良しファイトクラブのようだ!!』
「隙ありっ!」
 しかし、仲良しファイトクラブ三人が一斉に一人を狙ってしまったせいで、その隙を突かれてツイン・ダイビング・ラプターがタケルのシャドウボムを撃破する。
 バーーーン!!
『なんと!やられたらやり返すとばかりに、今度はタケル君のシャドウボムが爆発!これは面白くなってきたぞ!!』
「やったね、赤鈴!これで五分五分だよ!!」
「ふふ、油断してるからよ!」
 しかし、タケルは何も動じていない。
「このフォーメーションで、誰か一人くらいやられることは想定済みだ!」
「なにっ!」
 しかも、赤鈴と藍人は現在連結してるので、仲良しファイトクラブが三人とも無防備だとしても一人しか狙えないのだ。
「うおおおおおお!!!」
 ドギュッ!!
 シュウのショットが赤鈴に向かう。
「はっ!」
「隙が出来たのは、俺を撃ったお前らも同じだって事だ!」
 バシュウウウウウ!!!
 シュウのショットがうねりをあげながら、赤鈴のシャドウボムにグングン迫る……!
「きゃ、きゃあああああ!!!」
 赤鈴はその恐怖に思わず目を瞑ってしまった。
「赤鈴ーー!!!」
 その時だった!
 藍人が咄嗟に飛び出して、赤鈴のシャドウボムを庇って……!
 バーーーーン!!!
『ヒット!!やられたのは赤鈴君を庇った藍人君だ!なんと言う麗しい兄弟愛!!感動的だ!!!』
「あ、兄貴……」
「か、赤鈴……無事で、よかった……!」
 藍人は赤鈴の無事を確認すると、満足気にそのまま息を引きと……。
「こんの……バカーーー!!!」
 る前に赤鈴に無茶苦茶怒鳴られて涙目になりました。
「もう!兄貴の方が強いんだから、あたし庇うよりも兄貴が生き残った方が有利に決まってんでしょ!何考えてんのよ!!」
「だ、だって、赤鈴の危機は見逃せないよ……!」
「そういう問題じゃないでしょ!もう、ほんとにバカなんだから……!」
 怒り心頭な様子の赤鈴に、さすがに藍人はしょげてしまった。
 しかし、赤鈴はそっぽを向いて、ボソッと小声で。
「でも……ありがと。少しだけ、嬉しかった」
 と、呟いた。
「赤鈴……」
 その一言を聞いて、藍人は意外そうに顔を上げた。
「さ、さぁ、早くサファイドルを!ジェムオリファルコンで逆転してやるんだから!!」
 赤鈴は少しだけ顔を赤らめながら、サファイドルのパーツを催促した。
「う、うん!頼んだよ赤鈴!」
 赤鈴は素早くサファイドルとルビークを合体させてジェムオリファルコンを作り上げた。
『早くも残り一人となってしまったシスターズだが、このまま決まってしまうのか?はたまた、大逆転なるか!?』
「さぁ、勝負はこれからよ!」
「望むところだぜ!」
「2VS1だけど、手は抜かないわよ!!」
「「「いっけええええ!!!!」」」
 三人が、全力で真正面からビー玉を撃ち合った。
 しかし、さすがに総合的な火力では仲良しファイトクラブの方が上だ。
 バーーーン!!!
『決まったぁ!!赤鈴君のシャドウボムが爆発!!よって、勝者仲良しファイトクラブ!!』
「おっしゃあああ!!」
『さぁ、これは面白くなってきたぞ!優勝の行方は、ファイナルバトルにもつれ込んだ!そしてなんと!第3バトルは、フィールドを少し変更するようだ!!
どんなフィールドになるかは、バトルが始まってみてのお楽しみ!
両チームともそれまで20分のインターバルだ!バトルに備えてゆっくり休んでくれ!!』
 インターバルに入り、両チームがフィールドから出て控え室へと向かう。
 仲良しファイトクラブ。
「おっしゃぁ、勝ったぜ!」
「相手の手の内さえ分かってれば、こんなもんよね」
「次はフィールド変えるって言ってたけど、どんなフィールドなんだろうな?」
「さぁな。まっ、どんなフィールドになろうと、とにかく今みたいに力を出し切るだけだ。優勝まであと一歩!気合い入れていこうぜ!」
「「おう!!」」
 チームマイスイートシスターズ。
「赤鈴、ごめんよ……せっかくの優勝のチャンスを」
 その途中、藍人は申し訳なさそうに赤鈴に謝罪する。
「なぁに言ってんのよ、兄貴。まだ終わったわけじゃないでしょ。次勝てばいいのよ!頼りにしてるわよ、兄貴」
「赤鈴……!うん、任せてよ!!絶対に赤鈴の事を守って、優勝してみせるから!!」
 なんとなく、雰囲気が柔らかくなった兄妹の仲に縁は少しだけ首をかしげながらも微笑んだ。
(何があったかは知りませんが、この敗北は無駄ではなかったようですね)
 そして、第3バトルの時間になった。
『さてさて、第3バトルの時間がやってきたぞ!両チームとも、休憩はバッチリ取ったかな?
さぁ、さっきも言ったとおり、第3バトルはフィールドを少し変えてのバトルだ!』
 ジンが何かのスイッチを押すと、あれだけいっぱいあったビル群が地面の中に消えていく。
 そして、会場の真ん中に、巨大なビルが聳え立った!
『名付けて、「摩天楼フィールド」!両チームは、このビルを上がってもらい、屋上でバトルしてもらうぞ!!』
 両チームがビルを上って、屋上に行く。
「うわっ、たっけぇ~!」
 シュウは高いところが好きだ。
「随分殺風景ね」
 ビルの屋上は、さっきよりもフィールド面積が狭くなっただけでなく、障害物も何も無いシンプルな設計になっていた。
 端にいる相手チームが見えるくらいに何も無い。
『そう、このフィールドは、先ほどの入り組んだフィールドと違って、非常にシンプルな構造になっている!
それゆえ、両チームのポテンシャルがモロに影響してくるんだ!!
さぁ、ヒンメルカップ決勝戦!ファイナルバトル、いよいよ運命のスタートだ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
 バトルスタート!
「シンプルなフィールドか。障害物が少ないって事は、奴らお得意のイングリッシュボールには向かないって事だな」
「って事は、俺達が圧倒的に有利!」
「シュウ、琴音!横列フォーメーションで行くぞ!火力を一箇所に固めて、真正面の敵を撃破だ!!」
「「おう!」」
 仲良しファイトクラブが横一列に並んで、真正面に居るチームマイスイートシスターズへと突進した。
「なるほど、火力を一点に集める作戦ですね。ならば我々は!」
 チームマイスイートシスターズは、縁を先頭にして縦一列に並んだ。
 そのフォーメーションを見て、仲良しファイトクラブは首を傾げる。
「縦一列に?」
「あれじゃ、前の奴しか攻撃できないんじゃ?」
 そして、両チームとも射程圏内ギリギリのところで立ち止まり、射撃戦の構えをとった。
「うおおおおお!!!」
 仲良しファイトクラブが、縁のシャドウボムに向かって、弾幕を放つ。
「ふっ」
 縁は、一直線に連射してそれを迎撃する。が、全ての玉は落とせない。
「へっ!やっぱり火力ではこっちの方が上だ!!このまま決めろ!!」
 しかし、撃ち落せなかった玉は、全く見当違いの場所に飛んでいってる。
「あ、あれ?」
「ふふふ、こちらは的を一点に絞っていますからね。その一点だけを集中的に守ってしまえば、どんなに数で攻めてこられてもある程度は対処可能です」
 仲良しファイトクラブが狙うのは、縁のシャドウボムの一点だけ。ならば、そこを守る事だけに集中すれば、火力差があっても防御だけなら十分出来る。
「なるほどな。だが、その状態じゃ攻撃できないぜ!」
 そう、このままでは、防御は出来ても攻撃が出来ない。それに、いくら防御に集中したとしてもこの火力差では防御が崩れるのも時間の問題だ。
「それはどうかな!」
「いくわよ!!」
 ドギュッ!ドギュッ!!
 赤鈴と藍人が、真横に向かってショットを放った。
「なにっ!」
 その玉は、ステージ端の壁にぶつかり、反射して仲良しファイトクラブへと襲い掛かった。
「「「っ!!」」」
 咄嗟の攻撃に反応が少し遅れたが、ギリギリそれをかわす。
「そうかっ、スピンボールで隠れながら攻撃が出来るのか……!」
「そういう事です。私は防御に集中し、後ろの二人は攻撃に集中する。入り組んだフィールドでなくても、作戦の立てようはあるんですよ」
「ちっ、このままじゃ攻撃が通らないばかりか、奴らは悠々と俺たちを攻撃してきやがる……!」
「俺達も反射させて狙うか?」
「スピンボールを使えない俺達が奴らの真似をしたって、勝てるわけがない。このままパワーで押すんだ!」
 ビーダマンを構えなおすタケルに、琴音が声をかけた。
「待ってタケル!」
「ん?」
「反射なら、何もスピンボールが撃てなくたって出来るわ」
「なに?」
 ゴニョゴニョと、琴音がタケルに耳打ちする。
「あ、あれか……だが、即興で出来るか?」
「あいつほど上手くは出来ないかもしれないけど、でも威嚇にはなるはず」
「そうだな、やってみるか!」
「??」
 作戦を聞かされてないシュウは首を傾げたが、今はそれどこではないので、とりあえず撃つ事に集中しておいた。
「シフトチェンジ!!」
 タケルが、レックスをグリップモードにする。
「いくわよ、グルム!!」
 ドンッ!!
 グルムが、全く見当違いの方向へと弱めのショットを放つ。
「なんですか?動揺してミスショットですか」
「いくぜ、レックス!!」
 グルムが撃ったビー玉に向かって、レックスがショットを放つ。
「そろいも揃ってミス……いや、これは!」
 ガキンッ!!
 グルムの玉とレックスの玉がぶつかった瞬間、反射して軌道を変えて、赤鈴のシャドウボムに向かっていった。
「「即席、ブレーキ・リフレクション!!」」
「えっ!」
 自分のシャドウボムを守る事に集中していた縁、攻撃に集中していた小鳥遊兄妹。このとっさの事にはチームの誰も反応できず、そのまま赤鈴のシャドウボムは爆発する。
 バーーーン!!!
『おおっと!凄い機転だ仲良しファイトクラブ!まさかのチームプレーで赤鈴君のシャドウボムを撃破!!』
「やったっ!」
「い、意外と上手くいったな……」
「今の、ジャンの技かよ……」
 シュウはなんとなくゲンナリした。
「とにかく、これでチームプレイは出来なくなったぜ!」
「兄貴、ごめん。私の分まで頑張って」
 そう言って、赤鈴が藍人にルビークのパーツを献上する。
「赤鈴……分かった!あとはお兄ちゃんに任せて!」
 藍人がサファイドルにルビークのパーツを取り付ける。
「ジェムオリファルコン!!」
 そして、ジェムオリファルコンで仲良しファイトクラブに攻撃を仕掛ける。
「よくも、愛しの赤鈴を……!許さない!!」
 ドンッ!ドンッ!!
 藍人の怒涛の連射は凄まじく、仲良しファイトクラブ三人の火力を押し返すほどのものだ。
「なっ、すげぇパワーだ!」
「妹をやられて、本気になったみたいだな……!!」
 藍人は鬼気迫るパワーで猛攻を仕掛けてくる。
「うおおおおお!!!」
 必死に迎撃する仲良しファイトクラブだが……。
「きゃああああ!!!」
 耐え切れず、琴音のシャドウボムが撃破される。
『ヒット!藍人君の怒涛の一撃で、琴音君が脱落だ!!』
「な、なんなのよアイツ。いきなりパワーアップしたみたい……!」
「よく分からんが、兄妹愛ってのは凄まじいらしいな。だが、今の奴は少々冷静さを失っている。これなら……!」
 ダッ!とタケルが藍人に向かって駆け出す。
「あ、タケル!」
「あとは任せたぜ、シュウ!!」
「うおおおおお!!!」
「はあああああ!!!」
 ドギュンッ!!!
 タケルが藍人に向かってショットを放つ。
 藍人もそれを撃ち落そうと迎撃する。
 が、そのショットはすれ違う。
「なっ!」
「どんなに力が強くなっても、こうなっちまったらどうしようもないよな!」
 バーーーーン!!!
『のおおっと!相打ち!タケル君、捨て身で藍人君を撃破!二人とも脱落だ!!!』
「タケル!!」
「シュウ、ヒンメルへの道はお前が切り開け!」
 タケルにそう言われ、シュウはハッとして、気を引き締めた。
「おう!」
 そして、縁に向かって啖呵を切る。
「あとはお前だけだな!縁!!」
 シュウからの啖呵を受けた縁は、自嘲気味に笑う。
「ふふ……まさか、ここまで追い詰められるとは。ですが、我々は負けませんよ!」
 そこに、藍人がやってくる。
「縁すまない、油断した」
「いえ、藍人はよくやってくれましたよ」
 縁は、藍人からジェムオリファルコンを受け取る。
 そして、ジェムオリファルコンのパーツを……エメラホークに取り付けた!
「なにっ!三機のパーツを合わせた合体だって?!」
「そう、これがジェムオリファルコンの真の姿です!!」
 ルビーク、サファイドル、エメラホーク。赤青緑の猛禽ビーダマンを合体させた真のジェムオリファルコンの威圧感は半端ではない。
「くっ、俺だって、負けてたまるか!!」
 ドンッ!
 シュウがシメ撃ちをする。
 しかし、ジェムオリファルコンがこれを撃ち落す。
「っ!パワーが上がってる!!」
「当然です。ルビークやサファイドルをベースにしたジェムオリファルコンはスピンコアを装備しています。
なので多少パワーが落ちてしまうのですが、エメラホークをベースにしたジェムオリファルコンはノーマルのコア。つまりパワーのロスは無い!」
「そういう事かよ……!」
「これで、あなた方の負けです」
 縁がジェムオリファルコンでシュウのシャドウボムに狙いを定める。
「へへへ……」
 シュウは結構ピンチだ。しかし、何故かシュウの口元から笑いが零れた。
「なにが、おかしいんですか?」
「いや、なんかさ、楽しいなってさ。へへへ……!」
「?」
「俺、ヒンメルと戦いたくってこの大会に出たんだけどさ。ヒンメルと戦う前から、こんなにすげぇ奴らと戦えて……なんか、目的忘れちまうくらい楽しくなってさ!」
 元々シュウにとって、この大会の価値はヒンメルと戦える事だけだった。しかし、今はそれ以外の事にも価値を見出せている。そんな自分がたまらなくおかしいのだ。
「そうですか。私も、楽しかったですよ。ですが、これで終わりです」
「終わらねぇよ!だって、この楽しいバトルの先には、本当に楽しみにしてた目的が待ってんだからよ!!」
 シュウも、ブレイグを構える。
「決着をつけましょう!」
「おう!!」
「「うおおおおおお!!!!」」
 ドギュンッ!!
 二つのビーダマンから強力なショットがぶっ放された!
 ガキーーーン!!!
 フィールド中央で、二つのショットが激突する。
 そして、一方のショットがもう一方のショットを弾き飛ばし、相手のシャドウボムへとブッ飛んで行く……。
 バーーーーン!!!!!
『決まったーーー!!!ビーダマン東京都大会、ヒンメルカップを制したのは……仲良しファイトクラブだあああああああ!!!!!』

   つづく

 次回予告

「おっしゃあ!ついにやったぜ!!これで、ついに、念願のヒンメルへの挑戦権をゲットだ!!!
そのヒンメルとのバトルは、3VS1の変則ハンディキャップマッチで行われるらしい。へんっ、どんなルールだろうと関係ねぇ!ヒンメルを倒すのはこの俺だ!
しかし、その試合の途中、トンでもない事が……!
 次回!『激突!ヒンメルVS仲良しファイトクラブ!!』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 



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