オリジナルビーダマン物語 第11話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第11話「ビーダー幕府!チーム風林火山推参!!」




 ヒンメルカップ予選。
 シュウはあと少しで予選突破と言う所で、村居玄摩と言う少年に先を越されてしまった!
「そ、そんな、ここまで来て……」
 目の前でゴールターゲットを撃破され、シュウは愕然とする。
「ビーダマン武士道を極めるのは、某だ」
 玄摩は、それだけ言うと入り口の中に入っていった。
「……ぐ、くそおおおおお!!!!」
 シュウは、悔しさのあまり、人目も憚らずに慟哭するしかなかった。
 その時、ジンのアナウンスが響く。
『さぁ、全てのゴールターゲットが撃破されたぞ!ここで予選終了だ!
選手の皆は、一旦非常口から外に出て、ドーム内に集まってくれ!予選通過チームの発表があるぞ!!』
 ドーム内。
「はぁ……」
 シュウはガックリ項垂れながら、とりあえずこの人ごみの中タケルや琴音を探していた。
 虚ろな瞳できょろきょろと周りを探す。
「あ、いたいた」
「おーい、シュウ~!」
 見つけるまでも無く見つかったようだ。
 タケルと琴音が人ごみを分けてやってきた。
「あ、タケル、ことねぇ」
「よかった、無事で。フィールド内で全然合流できなかったから心配したぜ。あれから大丈夫だったのか?」
「まぁ、いろいろあったけど。大丈夫だよ」
 心配するタケルに対して、シュウの返答は沈んでいる。
「どうしたの、シュウ?元気無いじゃない」
「……俺さ、ゴール前で変な侍野郎に先を越されちまって、結局ゴール出来なかったんだ……」
「シュウ……」
「せっかく、ヒンメルと戦えるチャンスだったのに、チクショウ」
 気落ちするシュウ。しかし、そんなシュウに対してタケルはあっけらかんとしていた。
「なんだ、そんな事か」
「そんな事ってなんだよ!?」
「心配するな、ちゃんと……」
 タケルが何か言おうとしたときに、会場が暗くなり、ジンのアナウンスが響く。
『さて、予選会場の収束が終了したぞ!ここで、ヒンメルカップの予選通過チームの発表だ!!』
 会場が歓声で溢れる。
『まず、見事北ゲートを突破したのは、難関をチームプレイで突破したグレイトビーダーズ!』
 パッ!と会場の一箇所にスポットライトが照らされる。そこに立っている3人の少年達がグレイトビーダーズらしい。
『そして、次に西ゲートを突破したのは、チームマイスイートシスターズ!!』
 パッ!と会場の一箇所がスポットライトで照らされるが、シュウ達の位置からはよく見えなかった。
『そしてそして、南ゲートを突破したのは、仲良しファイトクラブ!!』
 シュウ達がスポットライトで照らされた。
「え、えぇ?!」
 てっきり負けた気でいたシュウは、吃驚する。
「だから心配するなって言っただろ。あの後ちゃんとゴールしといたんだよ」
「なんだよそれ……俺の苦労は一体……」
 気落ちするが、まぁ予選突破できたのでそれは喜ばしい事だろう。
『最後に、東ゲートを突破したのは、チーム風林火山!!』
 最後のチームが照らされる。
 そのチームは思っていたよりも近くにいた。
「あの侍野郎……!」
「あいつらがゴール前でシュウと戦った……って、あれ?」
 ゴールを決めた侍野郎に取り巻いている二人には見覚えがあった。
「あ~!!あの時の忍者野郎!!」
 シュウは、忍者二人を指差して叫ぶ。
「なんだよお前ら、俺たちがやっつけたのに!」
 忍者二人が仲良しファイトクラブの方に向く。
「ふん、元々我ら二人がゴールする気は無かったのだ。チームの内誰か一人でもゴールすれば予選突破できるルールだからな。
我が将軍様だけ先にゴールを目指してもらい、我々は障害になりそうなチームの足止めをする作戦だったのさ」
「そういう事でござるよ、ニンニン」
 忍者二人はイケシャアシャアとそんな事を言う。
「くっそー!」
 そして、玄摩もシュウを見て口を開く。
「ふん、まさか貴殿のチームが勝ちあがってきたとはな……本戦では、あそこで予選落ちしてればよかったと後悔させてやろう」
「うっせー!お前こそ、覚悟しとけよ!!」
『おおっと、エキサイトするのは試合が始まってからにしてくれぇ!とにかく、以上の四チームでトーナメントを戦ってもらう!!
試合順は、今紹介したチーム順にトーナメントを戦ってもらう!
一回戦は、グレイトビーダーズVSチームマイスイートシスターズ、そして仲良しファイトクラブVSチーム風林火山だ!!
会場に二つのフィールドを用意して、二試合同時進行するぞ!
30分のインターバル後に始まるから、選手たちは一旦控え室へ向かって準備してくれ!!』
 仲良しファイトクラブは彩音と合流し、用意されていた控え室に入った。
「はぁぁ~、しっかし予選から大変だったぜぇ……うっ、いててて……」
 シュウは、ぐったりと座り込み、疲労した足を抑える。
「どうしたのシュウ君、ビショビショのボロボロじゃない……!?」
 彩音がシュウの様子を見て目を丸くする。
「え、あはは……ちょっといろいろあったからな」
「ちょっと見せて」
 彩音は、苦笑いするシュウに近づく。
「あぁ、所々怪我してる……!すぐ手当てするね」
 吐息が掛かるくらい顔を近づかれてシュウはなんとなく焦った。
「あ、いや、いいよ!別にこのくらい!!」
「ダメ。この後すぐに試合があるんだから」
 言って、彩音は救急箱を持ってきて手際良く治療を進めた。
「……」
 シュウは、なんとなくむず痒さを感じながらも成すがままになっていた。
「これで、少しは楽になったと思うんだけど」
 手当て終了。シュウは足を軽く動かしてみる。
「ほんとだ……うん、全然楽なった」
「よかった」
 彩音は安堵すると、今度は全員に向かって言う。
「あとは、みんなの機体を見せて。多分かなり消耗してるはずだから、試合が始まるまでに出来るだけ回復させなきゃ」
「あぁ、頼んだ」
「お願いね、お姉ちゃん」
 三人から機体を受け取ると、彩音は早速メンテナンス作業に没頭した。
 三人は、試合に備え体力温存に努める事にする。
「しっかし、まさかいきなりアイツらと戦う事になるなんてなぁ」
「あの侍の格好をしていた人が、シュウが負けたビーダーなの?」
 琴音は早速シュウが絡んだビーダーについて聞いてみた。
「ま、負けてねぇ!ちょっと他の奴らに邪魔されて、先越されちまっただけだ!」
「要するに、負けたんでしょ」
「そうじゃねぇ~!!直接対決してたら、絶対俺が勝ってた!!」
「まぁ、その直接対決する機会が早くも訪れてくれたんだ。しかも忍者ビーダーの戦い方は予選でバッチリ見ている。少しは戦いやすいだろうな」
 タケルの言う事は最もだ。
 逆に、こっちの手の内もある程度知られているとも言えるが
 仲良しファイトクラブは比較的ストレートな戦い方をするので、スペックが知られた所でどうという事は無いだろう。
「強いて言うなら、あのリーダー格の侍の戦い方が気になるが。シュウ、アイツはどんなビーダーだった?」
 タケルに問われて、シュウは少し考える。
「ん~……ビー玉撃たずに戦ってたなぁ」
「「はぁぁ!?」」
 シュウのセリフに、二人は驚倒の声を上げた。
「いや、お前それは無いだろ。これビーダマンの大会だぞ?ビー玉撃たないでどうするんだよ」
「俺だって知らねーよ!ただ、ほんとにあいつは一発も玉を撃ってなかった。なのに、あいつに向かって撃った奴が逆にやられてたんだ」
「撃った奴が逆にやられるか……」
「仕掛けが分かるまで、迂闊に手を出さない方が良さそうね」
「そうだな。まずは、手の内が分かってる忍者ビーダーを主に攻めつつ、侍のギミックを探るんだ。対策はそれから考えよう」
「そうね」
 ビー!ビー!
 部屋に備え付けられていたサイレンが鳴る。
『そろそろ試合開始時間です。選手の皆様はドームにお集まりください』
「時間か」
 三人が立ち上がる。
「よかった、なんとかメンテナンスは間に合ったよ。三機とも万全の状態で戦えるはず」
 彩音が三人に機体を渡す。
「サンキュ、あやねぇ!」
「うん、頑張ってね、みんな!」
「「「おう!!」」」
 そして、試合時間になる。
 各チームは、ドームに集まった。
『さぁ、そろそろ第一試合が始まるぞ!選手の皆は集まってくれたかな!?そんじゃ、早速ルールの説明だ!!
ルールは、SHB!各選手それぞれに備え付けられたシャドウボムを全員撃破したチームの勝利だ!シャドウボムは一発のヒットで爆発する!
そして、今回のフィールドは……これだぁ!!』
 ゴゴゴゴゴ!
 と地響きが鳴り、地面から巨大な和風の城が出現した。
「な、なんだぁ!?」
「城……!?」
『名付けて『江戸城フィールド』!数年前に再建された江戸城をモチーフにしたフィールドだ!
選手の皆は、この中で戦ってもらう!ただし、中はさまざまなからくりが用意されているから注意してくれ!!』
「城かぁ……」
「って、ある意味相手チームのホームグラウンドなんじゃないの!?」
 忍者に侍……どう考えても江戸城との相性はバッチリだ。
「モチーフ的に考えれば確かにそうだが、まぁ中がどういう構造になっているのかが分からないのは皆同じ条件なはずだ」
『そんじゃ、そろそろおっぱじめるぞぉ!皆、準備はいいかぁ!?レディ・ビーファイト!!』
 ジンのスタートの合図とともに各チームが一斉に駆け出して城の中に入る。
「うわぁ、ほんとに中は江戸時代のお城みたい」
 琴音の言うとおり、入り口から続く廊下は江戸時代の城を髣髴とさせるものだった。
「見惚れてる場合じゃないぞ。とにかく進むんだ」
「ああ」
 三人は、三角フォーメーションで歩みを進める。
「しっかしなぁ。なんでこうトロトロ進むんだよ。一気に駆け抜けようぜ」
 周囲を警戒しながら進む仲良しファイトクラブの歩みは遅い。
「アホ。こういう入り組んだ地形のフィールドはいつ敵と遭遇するか分かったもんじゃない。
しかもビーダマスターの口から『からくりが用意してある』って公言もされてるんだ。迂闊に急ぐのは自殺行為だ」
「ちぇ、なんか性にあわないんだよなぁこういうの。早くあいつらと遭遇したいぜ」
 ブツクサ言いながらもシュウはタケルの指示に従う。
『各チーム、敵との遭遇や仕掛けを警戒してゆっくり進んでいるようだ!なるべく三人で固まって隙の無いフォーメーションを組んでいる!
その中でチーム風林火山の姿が見えないぞ!スタート早々モニターから姿を消している!!』
「なにっ、あいつら一体何処に……?」
「気にするな、シュウ。俺たちは俺たちのペースで行けばいいんだ」
「ほんと、あんたってせっかちよね」
「あああ~!早く戦いたい!!」
 ダダこねるシュウ。
 カチッ!
 その時、シュウが踏んだ床が凹んだ。
 かと思ったら、突然壁に無数の穴が空き、そこからビー玉が発射されてきた。
「な、なんだぁ!?」
「これが仕掛けって奴か!」
 タケルと琴音が咄嗟に反応してビー玉を全て撃ち落とした。
「ひゅ~!あっぶねぇ~……」
 危うく戦う前に仕掛けで脱落するところだったシュウは冷や汗かいた。
「だから言っただろ、慎重に行ったほうが良いって」
「分かったよぉ」
 そうこうしているうちに小さな襖が見えた。
「部屋があるぞ!」
「とにかく入ってみるか。だが奴らが潜んでる可能性もある。十分注意して踏み込むぞ」
 三人が襖を開ける。
 中は13畳程度の和室だった。中央には囲炉裏がある。
「ちょっとした茶室みたいだな」
 周囲を警戒するが、特に異常は無い。
「人が入ったような形跡もないし、ここには来てないみたいね」
「だな、別の場所に行くか」
 タケルが茶室を出る。前に、後ろからドゴォ!と言う音が聞こえた。
「どうした?!」
 反射的に振り返るとそこには、囲炉裏に埋まっているシュウの姿があった。
「いててて……」
「な、何やってんだお前は」
「いやぁ、こういうのなんか珍しいなって思って覗いてたら、急に穴が空いて落ちちゃって……」
「はぁ……」
 さすがに呆れて物も言えない。
「ここに敵がいなくてほんとよかったわね」
「居たら一発でアウトだっただろうな」
 不幸中の幸いと言う奴だろうか、なんとなく二人はホッと胸をなでおろしていた。
「いいから助けてくれよ~!!」
 囲炉裏にハマって動けないシュウは、胸をなでおろしている二人に助けを求めた。
「へいへい」
 タケルと琴音は呆れながらも囲炉裏にハマったシュウを引っ張り出した。
 そして、茶室を出て再び廊下を歩く。
 しばらくして見えてきたのは、階段だった。
「階段か」
「奴らが上に行ったって確証は無いけど」
「だが、こういう地形は先に上に登った方が有利ってのが定石だ。敵がいるにしても居ないにしても上に上がった方が良いだろう」
「よっしゃ!」
 シュウは高いところが好きなので喜んだ。
 階段を登るとすぐに大きな襖にぶつかった。
「大広間か」
 早速その中に入ってみる。
 中は広々とした殺風景な和室で、特に何も無いし誰も居ない。
「ここにもいないか」
「こんな大広間じゃ隠れる場所も無いしね。違う場所に行った方がいいかも」
 その時だった。
 音も無く一発のビー玉がシュウの頬を掠めたかと思ったら、前にいる琴音のシャドウボムへと向かっていった。
「ことねぇ危ない!!」
「え?」
 シュウが咄嗟にそのショットを撃ち落す。
「い、いつの間にショットが!?」
「また罠か!?」
 さっきみたいな罠が発動したと思い、あたりを警戒する。
 しかし、どこにも罠が発動したような形跡が無い。
「あれは……?」
 その中でタケルは壁の一部がクルクル回転しているのを見つけた。
「まさかっ、気をつけろシュウ!琴音!!」
「え?」
 タケルが叫んだ瞬間、その回転している壁の一部から無数のビー玉が発射されてきた。
 しかもその全てが無音だ。
「うわわ!!」
 タケルのおかげで反応が出来たシュウと琴音はそのショットを全てかわすことが出来た。
「あそこが罠の発生源か!!」
「いや、これは罠じゃない!的確に俺たちを狙って撃っていた!あの奥に敵がいるんだ!」
 ドンッ!!
 タケルが回転している壁に向かってショットを放つ。
 タケルのショットが壁の奥へと消えていく。
 すると、壁越しに声が聞こえてきた。
「フフフ。よく見破ったな!」
 バッ!
 壁が回転し、そこからシノブが現れた。
 と、同時に床も回転して藩屏が飛び出す。
「なかなか鋭い読みだったでござるな、ニンニン!」
「回転式の隠し扉か、こりゃ江戸城って言うよりも忍者屋敷だな……!」
「フフフ、ここは我らにとって地の利を得たも同然!お前たちが慎重に進んでいる間に、この城のからくりは全て把握させてもらった!」
「拙者たちの動きについてこれるかな、ニンニン!」
 シュンッ!と二人の忍者が再び隠し扉を利用して身を隠す。
「なっ!消えた!」
「くっそー、待ちやがれ!!」
 消えた方向に向かって我武者羅に連射するシュウだが、意味が無い。
 そして、壁から連射と無音のショットが襲い掛かる。
「うわわ!」
 シュウ達はかわすので精一杯だ。
 ビー玉が出た場所を目掛けてショットするのだが、すぐその後に別の場所からビー玉が出てくる。
「くっそー!狙いが全然定まらねぇ!!」
「ちぃ、ここじゃ不利だ!一旦部屋を出るぞ!!」
「お、おう!」
 シュウ達は慌てて部屋を出た。
「逃げたか」
「逃がさないでござるよ、ニンニン!」
 シノブと藩屏もそれに気付いて追いかけてくる。
「げぇ!来た!」
「階段に向かうぞ!上に行けば多少はこっちに分がある!」
 タケルの指示に従って三人は階段を登る。
「ここは、最上階か?」
 そして、目の前に今までで一番大きな襖が現れた。
 タタタタ!
 忍者達の足音が聞こえてきた。
 ここで立ち往生しても仕方が無いので、三人はその襖を開けた
 中は、さっきの大広間よりも広く、その部屋の中央に玄摩が腕組をして正座していた。
「あいつは……!」
「村居玄摩……!」
 玄摩は、シュウ達の姿を確認するとニヤリと笑った。
「ようこそ。最上階、玉座の間へ」
「玉座の間……?」
「ここは将軍が君臨する拠点とも言える場所だ。ここまで辿り着いたことだけは褒めてやろう。だが、貴殿達はここで終わりだ!」
「ふざけんな!予選での決着はここでつけてやるぜ!!」
 玄摩に向かってビーダマンを構えるシュウ。
 対する玄摩は腕組をしているだけで構えていない。
「あいつ、ビーダマンを構えてないわよ!」
「どんなギミックを持っているか知らないが、倒すなら今がチャンスだ!」
 相手のショットを跳ね返す玄摩のギミックは警戒していたが、ビーダマンを構えていない今ならなんとかなると思ったのだろう。
 三人が同時に玄摩に向かってショットを放つ。
「「「いけええええ!!!!」」」
「ふんっ、くだらない」
 玄摩は、素早く立ち上がってビーダマンを鞘から抜き出すと、刀のように薙いだ。
 すると三つのビー玉が跳ね返るようにシュウ達の方に向かってきた。
「うわあああ!!!」
 間一髪、そのショットは当たらなかった。
「い、今のは……居合い斬り!?」
「いあい?」
「座った状態から立ち上がり、刀を抜いた瞬間に標的を斬る剣術だ。だが、射撃競技のビーダマンで抜刀術だと!?そんなバカな……!」
 タケルは一人で分かって、一人で驚愕している。
「某は侍だ。火縄銃よりも刀の方が扱いに長けているのでな」
「くっ……こいつは、厄介な敵だぜ!」
「なぁタケル。一人で分かってないで説明してくれよ?」
「あいつのビーダマンは、アームパーツの刀を振ることで、相手のショットを撃ち返しているんだ」
「それであたし達のショットを打ち返したの!?でも、ビーダマンのショットを本体で打ち返すなんて物理的に可能なの!?」
「普通だったら不可能だし、そもそもあいてのショットをショット以外で故意に防御するのはルールに反する。
だが、奴の場合は、可動アームの刀についたビー玉をコアにセットして、それを撃ち出す事で刀を薙いでいるんだ!」
「そうか…!それだったら、アーム自体にショットと同じだけの威力が宿るし、一応ショットで打ち返している事になるから、ルールにも反しないのか!」
 ガラッ!
 襖が開き、忍者二人が入ってくる。
「遅かったな」
「申し訳ありません、将軍様!」
 二人はすぐに玄摩の元に駆けつける。
「これで全員集合ってわけか……!」
「我らが揃った時、お前たちの負けが決まる!」
「疾き連射、風の如し!インビジハリアー、服部藩屏!」
「静かなる奇襲、林の如し!インビジライヤ、隠忍シノブ!」
「熱き斬撃、火の如し!凱旋刃、村居玄摩!」
「「「我らが勝利揺るがざる事山の如し、チーム風林火山!!」」」
 三人は、まるで戦隊ヒーローのような名乗りをした。
「か、かっこいい……!」
 シュウにはそれが魅力的に見えたらしい。
「見惚れてる場合か!奴らはかなり厄介だぞ!気を引き締めて掛かるんだ!」
「布陣を組むぞ!総員配置に付けぃ!」
「「御意」」
 玄摩の一声でシノブと藩屏の姿が消える。再びからくりを利用して身を隠したのだろう。
「ま、また隠れやがった!」
「この部屋もからくりだらけって事か!!」
 ズドドドド!!
 数々の隠し扉から、連射が襲い掛かる。
「くっ!」
 三人はなんとかそれをかわしつづける。
「はぁぁぁ!」
 襲い掛かるのは忍者二人の連射だけではない。
 玄摩はなんと、忍者二人のショットを弾き飛ばし、更に威力を強化してシュウ達にぶつけてくる。
「なっ!あいつの斬撃は、味方のショットの軌道を変えて更に威力を増す効果もあるのか!?」
「破壊力の低い矢も、炎を加えることで城をも燃やし尽くす威力を得る!これが凱旋刃が炎たる由縁だ!」
 敵の攻撃を反射するだけでなく、味方の攻撃までも反射してしまう。この侍に隙は無いのか?
「くっそぉ!シュウ、回り込むぞ!挟み撃ちにすれば、斬撃による防御は反応できない!琴音は連射で防御に専念してくれ!」
「おう!」
「分かったわ!」
 ダッ!
 シュウとタケルが玄摩を挟み撃ちにする。
 その間飛び交うビー玉は全て琴音が撃ち落す。
「いっけぇ、ブレイグ!」
「レックス!!」
 ドギュッ!!
 二人のパワーショットが二方向から同時に玄摩に襲い掛かる。
「どうだ!いくら抜刀術を極めても、同時に複数を斬る事は……!」
「甘いわっ!!」
 玄摩はカッ!と目を見開き、凱旋刃を薙いだ。
「村居流剣術、最大奥義……ツバメ返し!!」
 シュパパパーーー!!!!
 玄摩は、二方向から来たビー玉を同時に返してしまった。
「な、なにっ!?」
「同時にビー玉を……!」
「一方を斬っている間はもう一方は斬れない。だが、斬った直後の刀返しを瞬時に行えば、ほぼ同時に複数の対象を斬る事が出来る。それがツバメ返しだ!」
「言葉では単純だが、相当な鍛錬を積まないと出来ない芸当だ……こいつに技で対抗するのは無理だな」
「どうすりゃいいんだよ……!」
「タ、タケル!そろそろこっちの防御も手伝って!そろそろ限界!!」
 ずっと防御し続けている琴音が悲鳴を上げる。
「あぁ、すまない!」
 タケルとシュウは琴音の元に駆け寄って、三角フォーメーションになる。
「隠れられたんじゃどうしようもねぇ!俺も隠し扉の中に入って追いかけるぜ!」
「いや、それこそ奴らの思うツボだ。自分からネズミ捕りの中に入ってくようなもんだ」
「くっそぉ、なんであいつらはあんな所を自由自在に動けるんだよ!」
「多分、あの特殊な持ち方に秘密があるんだろうな。腕とボディを左手で掴むような保持の仕方が取り回しを良くし、どんな場所でも俊敏に動けるようになっているんだ!」
「この三角フォーメーションなら防御は硬いけど、それが崩れるのも時間の問題よ!」
「分かってる!……待てよ、防御が硬いか。それは、相手にも周知だよな……」
 と、タケルが何か思いついたようだ。
「どうした?」
「いや、シュウ、琴音。一旦俺はフォーメーションを抜ける」
「えぇ!?」
「ちょっと、そんな事したら集中砲火でやられるわよ!?」
「いいんだ。その代わり、お前らは撃つ事よりも相手がどこから撃ってくるかだけに集中してくれ。そして、撃ってきた瞬間にその場所に向かって攻撃するんだ」
「??んな事したら、俺達の防御も手薄になるんじゃ」
「いいから、言うとおりにしろ」
 言って、タケルがバッと飛び出して孤立する。
「あ、タケル!」
 からくりの中に隠れている忍者二人。
「おっ、一人飛び出したでござるな、ニンニン」
「ふん、この状況に我慢できなくなったのだろう。だが、これはチャンスだ!行くぞ藩屏!」
「御意でござる!!」
 ズドドドド!!!
 タケルに向かって壁のからくり扉から猛連射が放たれる。
「いっけぇ!!」
 と、同時にシュウと琴音がそこに向かってショットを放つ。
「「な、なにぃ!?」」
 シュウと琴音のショットがからくりを通り、シノブと藩屏を襲う。
 タケルを倒す事に集中していたので、反撃を想定としてなかった二人は反応できない。
 バーーーーーン!!!
 二つのシャドウボムが爆発する。
『のおおっと!シノブ君のショットがタケル君のシャドウボムを撃破!と、同時に琴音君のショットが隠忍シノブ君のシャドウボムを撃破!!』
「くっ、無念……!」
「作戦が崩れたでござる!」
 藩屏はなんとか難を逃れたようだが、作戦が崩れたのでバッと表に表れた。
「よくもシノブを!敵討ちでござる!!」
 真正面からシュウ達に向かって連射する藩屏。
「よせ、藩屏!」
 玄摩は止めるのだが、藩屏は聞かない。
「うおおおお!!!」
 藩屏は一人でも物凄い連射を繰り出してくる。
「な、なんて連射だ!連射速度だけならグルムよりも上かもしれない!」
「あの手裏剣みたいな動きがトリガーを一瞬で発射待機位置まで戻せるのね。でも、あの動きは長時間は続かないはず……!」
「はぁ、はぁ……!」
 手裏剣のような動きはかなり体力を消耗するのか、藩屏の動きが鈍くなってきた。
「よし、今だ決めるぞ!!」
 ドギュンッ!!
 シュウのパワーショットが藩屏のシャドウボムを撃破する。
 バーーーン!
『藩屏君、ここでリタイヤ!!』
「ちっ、うつけ者が……!」
「あとはお前だけだぜ、玄摩!」
「破れるかな、某のツバメ返しを」
「破ってやる!」
 しかし、対策なんてものは無い。
「シュウ、技で対抗するな!力で対抗するんだ!」
 バトルでは失格になったものの、リーダーであるタケルは指示を出す。
「パワーショット撃てって事か?」
「いや違う。琴音、まずは一発相手に向かって撃つんだ。その後にシュウ、俺のタイミングでパワーショットをぶち込め!」
「「わ、分かった!」」
 タケルに言われたとおり、琴音が玄摩に向かって撃つ。
「無駄な事を!」
 玄摩がそれを斬ろうとする。
「今だシュウ!!」
「おう!!」
 ドギュッ!!
 シュウがショットをぶっ放す。
「な、なに!?」
 そのショットは、凱旋刃が丁度琴音のショットを打ち返すために接触した瞬間に、琴音のショットの後押しをする形でぶつかった。
「ぐっ!」
 バキィ!!!
 たまらず、玄摩は凱旋刃を手放してしまう。
「バカなっ!」
「複数の方向には対応できても、一方からの複数の力加減には対応できなかったようだな!
お前はショットを打ち返す時に力加減も調整して薙いでいる。だが、薙いだ瞬間に違う力が加わってしまったら咄嗟に反応できない!」
「くっ!」
「いっけぇ!!」
 ビーダマンを手放して完全に隙ができてしまった玄摩のシャドウボムにシュウのショットが炸裂した。
 バーーーーーン!!!
『玄摩君のシャドウボムが撃破だ!これで、チーム風林火山は全滅してしまったようだ!よって、勝者は仲良しファイトクラブだああああ!!!』
「やったぜ!!」

     つづく

 次回予告

「チーム風林火山、強敵だったけどなんとか一回戦突破!次の決勝に勝てばヒンメルと戦えるぜ!
そして決勝の相手は、とんでもないチームだった!……性格的に
 次回!『俺の妹がこんなに可愛いと決まってる!』
熱き魂で、ビーファイトォ!!」

 




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