弾突バトル!フリックス・アレイ 第33話

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第33話「ステージを駆ける閃光!」
  
 
 突如公園に現れた織田ユウタ。
 そんなユウタへ、新型フリックスを引っ提げた剛志とレイジがリベンジマッチを申し込んだ。
 
「君達相手なら、二人がかりでも楽勝だよ」
「ずいぶんと舐められたもんじゃな……とは言え、このまま普通に2VS1じゃワシらが納得いかん」
「だからこうしよう。HPは僕と剛志二人で共有して3点。僕と剛志、どちらがダメージを受けてもHPは減るし、同時にダメージ受ければその分ダメージは増えるよ。
そして、ターンは僕と剛志で共通って事でどうかな?」
 レイジがそう提案するとユウタは不敵に笑った。
「へぇ、じゃあ同時にフリップアウトさせれば、一気に4ダメージで即死だね」
 それに対して、剛志は挑発的に返す。
「出来ればな?」
「あはは。まぁ君たちがそれでいいなら僕は構わないよ!どちらにしても壊しちゃうんだし!」HPもダメージも関係ないよ!
 笑いながらそう言って、ユウタは公園端に設置されているフィールドについた。
 ユウタを一睨みしたのち、剛志とレイジもフィールドの反対側についた。
 
「剛志、レイジ!負けんなよ!」
 バンが声援を飛ばす。
「……大丈夫かな」
 その隣のリサは心配そうにつぶやいた。
「へっ、剛志とレイジが二人がかりで戦うんだぜ!負けるわけねぇ!」
「でも、一見二人で戦う方が有利に思えるけど。このルールだと、的が増えてるのと同じだから」
「へ?どういう事だ?」
「アクティブバトルは、1ターン中、1台のフリックスに何回マインがヒットしても1ダメージなのは変わらないし。フリップアウトさせても、2ダメージしか与えられない」
 例え、剛志とレイジのターンは共有しているので、同時にマインをヒットさせても、1ダメージは1ダメージ。
 そして、フリップアウトさせた場合も2ダメージに変化はない。
 せめてターンが分かれていれば、二人連続でダメージを与える事が出来るのだが……。
「反対に相手は、同時に二人にダメージを与えた場合、その分ダメージは加算される」
 ユウタが剛志とレイジ両方にマインをヒットさせれば、ダメージは加算されて2ダメージになる。
 片方にマインをヒット、片方をフリップアウトさせれば、一気に3ダメージ与える事になり、その時点で試合終了だ。
「物理的な力なら二機で攻めた方が分有利だけど、一旦攻め込まれたら一気にHPを減らされちゃう」
「マジかよ……!でも、って事は攻められなきゃいいって事だろ!あいつらなら問題ないぜ!!」
 そもそもこのルールは剛志とレイジが提案した事だ。
 2VS1と言う状況でフリッカーとしてのプライドを守るためと言うのもあるだろうが、勝機が無ければわざわざ不利になる条件は提示しない。
 
 そんな話をしている間に、剛志たちはマインをセットしてアクティブシュートの構えに入っていた。
 
「「「3、2、1、アクティブシュート!!!」」」
 
 3体のフリックスがフィールド中央で激突。そして中央に集められていたマインも一気にはじけ飛んであらぬ方向へ飛んでいく。
 
 バーーーーン!!!
 直接激突したのは、グランドギガとタイダルボア。ファントムレイダーは船のように相手に乗り上げるような形状を利用して飛び上がった。
 その結果、ファントムレイダーが最もスタート位置から離れている。
「先攻は……ファントムレイダーか!」
「ファントムレイダー……ミラージュレイダーよりも洗練されてる……」
 リサは興味深げにファントムレイダーを観る。
 
「そ、そんな……!」
 ユウタは驚愕して目を見開いた。
 それは、先攻を取られたからではない。
 タイダルボアとグランドギガが、ほぼ同じ位置で止まっていたからだ。
 前回は、あっさり弾き飛ばせたはずなのに。

「言ったじゃろう、パワーアップしとるとな!」
 ユウタの驚愕の意味を察した剛志がニッと笑う。
「い、良いから早く撃てばいいでしょ!」
 ユウタはふてくされるように言った。
 ターンはチームごとで、二人ともシュートし終わればターン終了。剛志とレイジはどの順番でどんなタイミングで撃っても自由だ。
 
「じゃ、ワシから行くぞレイジ!」
「うん!」
「はぁぁぁぁ!!砕け、グランドギガ!!!」
 グランドギガの近距離シュートが、タイダルボアの真正面にヒットし、そのまま押し出していく。
「こ、堪えろ!タイダルボア!!!」
 ユウタも負けじと防御力を上げていくが、グランドギガの勢いは凄まじく、押されていく。
 
「すっげぇぜ剛志!ハンマーギガの時よりめちゃくちゃパワーアップしてる!!」
「うん!これならいけるかも……!」
 バンとリサが歓声を上げる。
 
 しかし、どうにかフィールド端で耐えきった。
「ふ、ふぅ……あはは。正面からぶつけたのは失敗だったね!ブレーキシステムは防御にも使えるんだよ!」
「ほう。じゃが、ファントムレイダーのアタックには耐えられるかな?」
「次は僕の番だよ!」
 レイジがファントムレイダーのシュート準備を始める。
「君の攻撃力は大した事なかったからね!この位置じゃマインも使えないし、これに耐えて、次のターンは君をフッ飛ばしてあげるよ!」
「それは、耐えてから言うんじゃな!」
「いけっ!ファントムレイダー!!」
 レイジのファントムレイダーがフィールド端にいるタイダルボアへ真正面から突っ込んでいく。
「ブレーキシステム発動!耐えるんだタイダルボア!!」
 
 ガッ!!
 ファントムレイダーのシュートがヒットする。
 それは大した勢いではなかった。
「この程度……!」
 しかし、タイダルボアはフワッと浮き上がり、ゆっくりとフィールドの外へ弾かれてしまった。
「そ、そんな!なんで?」
 ユウタはびっくりして、ファントムレイダーをよく見てみる。
「か、形が変わってる……!」
 ファントムレイダーは、先ほどまでの乗り上げ形状とは反対に、掬い上げるような形状になっていた。
「僕のファントムレイダーは、フロントとサイドのカウルをひっくり返して、乗り上げと掬い上げの両方を使いこなせるのさ!」
「自慢のブレーキシステムも、地面についてなかったら意味ないからの!!」
 どんなに弱い攻撃でも、踏ん張りが効かない状態でフィールド端で受けてしまえば場外してしまうのは仕方ないだろう。
 
「やった!」
「これでユウタのHPは1だ!剛志、レイジ!このまま決めてやれぇ!!」
 観客のバンとリサも快哉を叫ぶ。
 
「そんな……この僕が押されてるなんて……!」
 思わぬ劣勢に、ユウタは冷や汗を流す。
「うっ、嘘だ!こんなの嘘だ!!」
 ユウタは目をキツく瞑って頭を振ると、タイダルボアを拾った。
 場外したので、再びマインをセットし直してアクティブシュートから仕切り直しだ。
 
「僕の本当の力、見せてあげるよ……!」
 タイダルボアをスタート位置にセットしながら、ユウタは剛志とレイジを睨み付ける。
「気を付けろよ、レイジ。奴の雰囲気はさっきと違うぞ」
「うん。次はマインヒットを狙おう。僕と剛志で連携すれば出来るよ」
「そうじゃな。もう無理にフリップアウト狙う必要はないからな」
 ユウタのHPは残り1なので、マインをヒットさせればそれで終わりだ。
 
「許さないよ……この僕を本気にさせた事、後悔させてあげる……!このアクティブシュートで二機ともブッ壊してやる!!」
 今までにない気合いで、指に力を込めた。
「いくぞっ!!」
 
「「「アクティブシュート!!」」」
 
 バシュッ!!!
 スタート合図とともに三人がフィールド中央へ向かって自機を放つ。
 
 その時だった。
「行くんだな、ベノムエロシオン!」
 バシュッ!
 どこからか、一台の緑色をしたフリックスが飛んできてフィールド中央へ鎮座した。
「「「なにっ!?」」」
 驚く三人がそれへ反応する間もなく、三機が同時にそのフリックスへぶつかった。
 
 ガッ!
 三体のフリックスは突如現れた緑色のフリックスへめり込み、その運動エネルギーを全て吸収されて止まってしまった。
「そんなっ……!」
「なんじゃ、こいつは……!」
 いきなり現れたフリックスへ驚きを隠せない剛志とレイジ。
「あ、あのフリックスは!!」
 バンはそのフリックスに見覚えがあった。
 その場にいた全員が状況を整理するより先に、気色の悪い笑い声が聞こえてくる。
「デュフッ!このバトルはここまでなんだなぁ」
 声がした方を見ると、そこにいたのは徳川ゲンゴだった。
 
「ゲ、ゲンゴ……!どういうつもり!?」
 ユウタがゲンゴへ怒りをあらわにして睨み付けるが、ゲンゴは意に返さずに口を開く。
「ユウタ。そろそろスクールの定例会議の時間なんだな。遅刻すれば減点されるんだな」
「え?」
 ゲンゴに言われるまま、ユウタはおもむろに公園に備えられている柱時計を見上げた。
「あぁ!マズイ!!もうこんな時間なのか!!!」
 時刻を確認すると、ユウタは血相を変えて慌ててタイダルボアを回収した。
「デュフッ、分かったら早く行くんだな」
 ゲンゴはそれだけ言うと、ユウタを置いてトコトコと歩いて行った。
「あわわ、待ってよゲンゴ!!」
 ユウタも急いでその後を追いかけていく。
「あ、待ちやがれ!逃げるなんて卑怯だぞ!!」
 我に返ったバンが、駆けていくユウタへ叫ぶ。
「ふ、ふんだ!今日の所は見逃してあげる!感謝するんだね!!」
 ユウタはそう捨て台詞を残して去って行った。
 
「……なんだ、あいつ。勝手な事言いやがって!」
 せっかく剛志たちがリードしていたのに、バトルを中断して逃げていったユウタへ、バンは悪態をついた。
「まっ、奴らの破壊活動は中断できたんじゃ。それだけでもええじゃろ」
 剛志は気にしていないようだ。
「うん。それに新型機のテストも出来たしね!」
 レイジも今回のバトルで収穫はあったようで、ユウタを逃がした事に関してはもう不問にするつもりのようだ。
「お前らがそういうならいいけどよ」
 当人が気にしてないなら、バンはこれ以上何も言えない。
「だけど、さっきのあの緑色のフリックスは一体なんだったんだろう」
「ワシら3人のシュートを受けてもビクともせんかった。なんちゅう防御力じゃ」
「俺も、前にあいつと会った事があるんだ。まともにバトルした事はねぇけど、ディフィートヴィクターの攻撃も受け止めやがった……」
「あのゲンゴってフリッカーは、ベノムエロシオンって言ってた……どんな機能なんだろう……」
 一同考え込むが、情報が少なすぎて何もわからない。
「まぁ、あいつともいつか戦うだろうし、対策はその時に考えるしかねぇか」
「うん。そうだね。それに、グランドギガとファントムレイダーも凄かったし」
 リサが興味深げに二つのフリックスを見つめる。
「そうじゃろう!なんせ、レイジが藤堂家の総力を結集して開発したんじゃからな!」
 剛志が胸を張って、リサへグランドギガを見せる。
「……これって、バンのディフィートヴィクターと似てる」
「うん。この二機は、バンのディフィートヴィクターを徹底的に分析して、ミラージュレイダーとハンマーギガにフィードバックして設計したんだ」
「ディフィートヴィクターの……」
 それを聞いて、リサは少し複雑な表情で視線を落とし、手の中にあるフレイムウェイバーを見つめた。
「な、なんだよ!勝手にパクるなよ!!」
 自分の機体の能力をライバルに奪われてしまったような気分になって、バンが文句を言う。
「フリックスバトルは開発の段階から始まってるからね!機体開発は情報戦。機能を隠さない方が悪いんだよ」
 レイジがいけしゃあしゃあと言う。
「ぐぐ……!」
「はっはっは!まぁ、そうケチくさい事を言うなぃ。ワシらはなにも、お前らと敵対するつもりでこいつを作ったわけじゃないんじゃからな」
「え、どゆこと?」
 剛志とレイジは、敵と言うほどではないが、フリックスバトルにおいてはライバルだ。決して味方と言うわけではない。
 剛志の言葉が理解できず、バンは首を傾げた。
「バン、リサ。お前たち二人に提案がある」
 剛志は改まって真面目な表情で言った。
「なんだよ?」
「提案って?」
「ワシらとお前たちは、フリックスバトルではライバルじゃ。大会での借りはいずれ返すつもりではおる。そのためにも、本来なら互いに手の内は明かさないように大会まで接触は避けた方がええ。じゃが、ここは一旦休戦協定を結ばんか?」
「きゅうせんきょうてい?」
 バンがたどたどしく繰り返すと、リサが補足してくれた。
「休戦協定。敵同士が一旦戦いを休止して、協力し合う事だよ」
「う、うるせっ!意味くらい知ってらぁ!!」
 バンは顔を真っ赤にして喚くが、リサはそれを無視して剛志達と話を進める。
「つまり、最近のスクールの破壊活動を阻止するために私たちと協力するって事?」
「そうじゃ。やはりお前らの所でもスクールの魔の手が伸びておったようじゃな。嬉しくはないが、話が早くて助かる。お前たちにとっても、奴らの破壊活動は黙ってみておれんはずじゃ」
「そりゃ、まぁそうだけど……」
「僕達がバラバラになるよりも、一ヶ所に固まって一致団結した方が戦力になると思うんだ!」
「でも、一ヶ所に固まってると、広い範囲に対応できなくなるんじゃ……」
 リサが遠慮がちにレイジの言葉へ反論する。
「その点は問題ないぞ。藤堂家の情報網と機動力は甘くみん方がええ」
「うん。何か事件が発生すれば、リアルタイムでその情報が僕の元へ来るようにしてあるんだ。そしてすぐに藤堂家のスーパーカーを手配して現場へ急行できるようにもね!」
「つまり、皆で固まった方がええというよりも、レイジの所に固まった方がええって事じゃな」
「なるほどなぁ。でも、お前らって住んでる町が違うじゃん。俺達引っ越しなんて出来ねぇぞ」
 さすがにフリックスの事で親に引っ越しを頼む事は、バンの家庭事情的には難しい。
「その点は問題ない。引っ越すのはワシらじゃ!」
「近くのマンションを買ったから、僕と剛志はそこに住む事にしたんだ。これから案内するよ」
 レイジはさも当然のように言う。
「マ、マンションって、そんな簡単に買えるのか……?」
 バンが戦々恐々と呟くと、レイジは苦笑いした。
「簡単じゃないよ。親からお小遣い2ヶ月分も前借して、やっと買えたんだから」
「お、おう……」
 さすがのレイジも即座にマンションを買うのには苦労したようだが、それでも2ヶ月分の小遣いでどうにかなってしまったのか。
 ちょっと金銭感覚が狂ってしまいそうだった。
 
 そして、一方のユウタとゲンゴは、スクールまでの道のりを慌てて走っていた。
「あ~も~、間に合うかなぁ~!ゲンゴももうちょっと早く教えてよね!!」
「デュフッ!せっかく教えたのにその言いぐさは酷いんだな」
「わ、悪かったよ!う~、でも惜しいなぁ。あとちょっとであの新型をボコボコに出来たのに~!!」
 ユウタが息を切らしながら悔しそうに言うと、ゲンゴは真顔になって呟いた。
「あのバトル。オデが止めなかったらユウタが負けてたんだな」
 ゲンゴの声は小さかったが、ユウタの耳にはしっかり届いたようで。ユウタはムッとして反論した。
「そ、そんな事ないよ!あと1ターン続いてたら僕が……!!」
「どちらにしても、あのまま続けてたら遅刻確定だったんだな」
「そ、それはそうだけど……!!」
 ユウタは納得できず、悔しそうに歯ぎしりをつづけた。
 
「……あの四人は油断できそうにないんだな」
 悔しそうに唸るユウタをよそに、ゲンゴは意味深に思案していた。
 
 
 
 
        つづく
 
 次回予告
 
「藤堂家の力ってすげー!これさえあれば、いつどこでどれだけスクールの奴らが悪さしても問題ないぜ!
俺達でスクールの奴らをブッ倒そうぜ!な、剛志、レイジ、リサ!……って、あれ、リサ?なんかお前、様子が変だぞ?
 
 次回!『リサの焦り 悪魔のささやき』
 
次回も俺がダントツ一番!!」
 
 
 
 

  

 




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