弾突バトル!フリックス・アレイ トリニティ 第35話「命燃え尽きるまで」

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第35話「命燃え尽きるまで」

 

 

『さぁ、トリニティカップ二回戦最終試合は、南雲ソウ君VSレッドウィングスだ!先の赤壁杯ではチームメイトだったこの二組だが、果たしてどのような熱い戦いを見せてくれるのか!?
なお、レッドウィングスの八文字ジン君は規定重量オーバーの機体をミステリーウェイトで運用している。故に振り分けられる総HPは6-1で5だ!』

 控えエリアで作戦を練っているレッドウィングス。
「本当に良いのか?レン、サイゾウ」
 ジンが戸惑いがちにレンとサイゾウへ問いかけると、二人は快く頷いた。
「当たり前だろ!ソウに勝つにはこれしかねぇ」
「しかし、HPが少ないのはバッフローのペナルティだ」
「バッフローのペナルティは、チームのペナルティだ。それに、今のソウ相手にはHPがいくらあっても意味をなさない。だが、本来ならHPを減らす事で得られる規格外の重量にHPが加われば……」
「俺とサイゾウで少しでも削るから、あとは任せるぜジン」
「……分かった」
 二人の作戦と覚悟を察したジンは深く頷いた。

 そして、試合開始だ。
 ソウとレッドウィングスがフィールドにつき、構えている。

『3.2.1.アクティブシュート!!』
 バトルフリッカーコウの合図で一斉にシュートする。

「噛み付け!ファングジャッカル!!」
「ふん」
 ガッ、バキィ!!
 デザイアフェニックスと真っ向からぶつかるファングジャッカルだが、あっさりと弾き飛ばされてしまう。
「受け止めろ!ランパートバッフロー!!」
 あわや場外かといった勢いで飛ばされジャッカルだが、バッフローが良い位置にいたおかげで受け止められた。
「悪いな、ジン」
「さすがにアクティブで噛みつきに行くのは無茶だ、レン」
「先走っちまった。けど、次のターンで決めるぜ。なぁサイゾウ!」
「あぁ、当然だ」

『さぁ、大激突のアクティブシュートでしたが先手を取ったのはレッドウィングス!激突を避けたツーサイドハウンドがこのチキンレースを制した!!』

「甲賀忍法・影打ち!!」
 シュンッ、ガッ!!
 ツーサイドハウンドの一撃がデザイアフェニックスを動かし、ジャッカルに対して横っ腹が向くようにした。

「いくぞ、レン!」
 バキィ!!
 ランパートバッフローがファングジャッカルを弾き飛ばし、デザイアフェニックスに噛み付かせた。
「へへ、決めるぜ!スナールキャリードロップ!!」
 ボルトでしっかりとフェニックスを捕捉し、そのままフィールド外へと運び出しフェニックスを落とした。
「からの、ストームグライド!!」
 更にレンはフリップスペルを利用してフィールド端のジャッカルをフィールド中央近くにいるツーサイドハウンドの付近へと移動させた。

『レッドウィングス見事な連携だ!!三位一体の必殺技でデザイアフェニックスを早くもフリップアウト!しかも反撃に備えた防御フォーメーションもばっちり!序盤から苦しくなったぞ、南雲ソウくん!!』

「どうだ、ソウ!これがチームの強みだぜ!!」
 息巻くレンへ、ソウは静かに肯定した。
「確かにあの時のような付け焼き刃ではないようだ……だが」
 そして、静かに目を閉じ、カッと見開いた。
「それだけだ」
「なに!?」
 ソウはデザイアフェニックスをスタート位置に戻し、シュート準備をする。
「はあああああ!!!」
 第一試合の時のように、ソウは機体へ念を送り、ユニットを分離させてバウンドとジャッカルの後ろに接地させた。
「来るかっ!」
「こっちは二体だぜ!攻め切れると思ってんのかよ!!」
「愚かな……!」
 更に念を込めるソウ。すると、デザイアフェニックスの翼が広がった。
「なんだ、保険でマインヒットでもする気か?」
「やっぱり二体相手だと自信がねぇんだろ」
 あの必殺技を使うならわざわざ翼を広げる必要は無いはずだが……。
「その認識の甘さ、反吐が出る!」
 ソウは的外れな予想を立てた二人へ嫌悪の表情を示し、そしてシュートする。

「クレイビングルイネーション!!!」

 ガッ!
 翼を広げた事でフェニックスはバウンドとジャッカルを二体抱え込む事ができ、設置したバネギミックのユニットへぶつけ、押しつぶす事が出来た。

「「なに!?」」

 ソウの狙いに気付いてももう遅い。翼によって逃げ場を失い、鋭い爪と強力なバネギミックの圧力をモロに受けた二体はそのままボディを砕かれてしまい、そのカケラが場外してしまった。

『な、ま、またもソウ君の壮絶な必殺技が炸裂!!レッドウィングスの二体が撃破だ!!さぁ、タイマンとなったこのバトル!しかしバッフローは重量に分がある!まだまだ分からないぞ!!』

「く、くそぉ……」
「覚悟はしていたが、これほどとは」
「ちっ、ソウ!やはり元チームメイトを手にかけるのに躊躇いはないんだな」
「利害関係で寄せ集めたものに情を抱く方が異常だ」
「そうか……なら俺も、遠慮なくお前を叩き潰す!!」
 ジンは分離して重量が分散したフェニックスへ狙いを定めた。
「フォートインパクト!!」
 両手を使っての超トルクシュートだ。重量級の機体でもこれなら正確に速く撃つ事ができる。
 ガッ!!
 さすがに軽くなった本体ではこの攻撃に耐えきれずあっさりと場外してしまう。
 しかしソウは全く動じずに機体を再セットする。

「はあああああ!!!!」
 そして再び念を込める。
「ま、まさかまたあの技を使う気か!?」
 ユニットをバッフローの後ろにセットし、シュートする。

「クレイビングルイネーション!!!」
「バッフローのディフェンスを舐めるな!フォートカウンター!!」

 ガッ!!!
 デザイアフェニックスの押し潰しも防御力を高めたバッフローのバネによって吸収される。
「どうだ!」
「甘い!」
 ベキィィ!!
 バッフローの右のバネパーツが取れて場外してしまった。
「くっ、こしゃくな……フォートインパクト!!」
 スタート位置に戻し、反撃にとシュートするジンだが……その威力は先程とは打って変わって全くフェニックスを弾き飛ばせなかった。
「片腕もがれては自慢のパワーも出せまい」
「くっ!」
「フィニッシュだ」
 ソウはまたもクレイビングルイネーションの構えを取る。
「くっ、ぐおおおお!!!」
 さすがに連続の大技でソウ自身も苦しそうだ。
「な!俺のHPはたったの1だ!もうあの技使う必要ないだろ!?」
「得意のマインヒットはどうしたんだよ!?」
「お前なら十分狙えるはずだ!」
 デザイアフェニックスのフロントソードを延長させながら、ソウは息絶え絶えに言葉を紡いだ。
「……偽りの力によって得る勝利擬きには何の価値もない……己が圧倒的力で全てを叩き潰す事が真の勝利と知れえええ!!!」

 バッ!!!
 必殺技準備完了し、ソウは叫びながらシュートをする。

「グレイビングルイネーション!!!!」

 三度放たれる禁断の技。しかもフロントソードを延長させる事で破壊力は抜群。
「う、うわあああああ!!!」
 バギャアアアアア!!!
 その威力により、バッフローは砕け散りながら場外してしまった。

『き、決まったあああ!!南雲ソウ君、必殺技の連発で元チームメイトであるレッドウィングスを撃沈!』

 バトルが終わり、歓声を背に向けながらソウはステージから離れて歩く。
 その足取りはフラついており、息も少し乱れている。
 そんなソウの前にアツシが現れた。
「……」
「何か言いたい事でもあるか?」
「いや、お前は勝った。その結果に言う事はない」
「そうか……っ!」
 ソウは顔を顰めて疼くまる。
 アツシはそれを慣れた光景のように無表情で対応し、ソウに肩を貸して歩いて行った。

 医務室。
 ソウは、ソファに座り体力回復用のドリンクを飲んでいる。
「……日に日に負担が大きくなっているな」
「……」
 アツシの呟きに答えず、ソウは黙々とドリンクを飲む。

 ガチャ。
「当然さ。デザイアシステムを連発すれば、いかに訓練を積んだフリッカーといえど耐えられるわけがない」
 突如ノックもせずに扉が開かれてコウが入って来た。
「コウ……」
「二回戦突破おめでとう……と言いたい所だが、随分とらしくない戦いをするようになったね」
「どう言う意味だ」
「バネギミック、超グリップ、フロントソード、変形ウィング……デザイアには多様な機能が搭載されている。状況に応じてそれらを使い分けるのが本来の姿であり、そしてカイザーフェニックスを使っていた君も得意としたバトルスタイルのはずだ。だと言うのにそれら全てをたった一つの大技のためだけに使い、ゴリ押しするとはね」
「……だから俺には相応しくない、デザイアを返せとでも言いたいのか?」
「いいや、君がどんな機体を使おうが自由さ。だが、あの技の使用は控えた方がいい。身を滅ぼしたくないならね」
「くだらない」
 コウの忠告に対し、ソウはそう吐き捨てて立ち上がり窓際へ歩いた。
「命は飾り物ではない、燃やすものだ。滅びると言うのなら、それまでに成し得ればいいだけの事」
「……まぁそれも君の自由さ。ただし、くれぐれもパンデミックにだけは注意してくれよ。言うまでもないと思うがね」
 どうあっても自分の意志を曲げる気が無さそうなソウに、コウは半ば諦めたような口調でそれだけ言うと扉のほうへ歩いて行った。
「待て」
 扉に手を掛けたところでソウに呼び止められ、振り返るとカイザーフェニックスを投げ渡された。
「そいつには世話になった。一応礼を言う」
「……あぁ、確かに受け取ったよ」
 カイザーフェニックスは、ソウにとってただの借り物のつもりだったのだろうか。
 そう考えれば、一見険悪さの無い筋の通ったやり取りではあったが。それはコウとソウの決別を意味していた。

 ……。
 …。

 そして、トリニティカップ三回戦開催日。
 小竜隊は指定された観戦エリアの席に着き、開会を待っていた。

「さぁ、いよいよ三回戦や!気張っていくで、二人とも!」
「うん!」
「……あぁ」
「って、なんやゲンジ、気合いが足らんで!」
「そうか……?」
「仕方ないよ。先週、ソウ君のあんな試合を見ちゃったんだから」
「……あいつが、あんな戦い方するなんて」
 一回戦はまるで余興だったとでも言わんばかりに、相手の事も自分の事も考えないめちゃくちゃな力押し。それも、元チームメイトを相手に……ここ数日間ゲンジはそのショックが抜けきれていなかった。
「その南雲ソウと今日戦うかもしれんのやで!戦い方が気に入らんのやったらガツンと勝って止めるだけや!」
「……あぁ、分かってるよ。サンキュ」
 ツバサの喝に答えるゲンジだが、まだ弱々しい。
 そうこうしているうちに試合が始まる。

『さぁ、トリニティカップ三回戦!最初の試合は正本ハジメVSトライビーストだ!!』

「確か赤壁杯初代チャンピオンチームだっけ?よろしくな!」
「GFC現チャンピオンの実力と我々のチームワーク、どちらが強いか正々堂々勝負です!」

 ……。
 …。
 その頃、選手控え室ではナガトが一人機体のメンテをしていた。
「マイティオーガ……そろそろガタが来てるな」
 分解してパーツを入念にチェックしながら、ナガトは渋い顔をした。
「激闘の連続だった上にユウスケがいない事がここまで痛手になるなんてな……だが」
 マイティオーガの刀がキラッと光る。
「分かっているさ、マイティオーガ」

 そして、会場では……。
『決まったぁ!さすがチャンピオン!!トライビーストのフォーメーションシュートを真っ向から打ち破り、ハジメ君の勝利だ!!』

 観戦席の小竜隊。
「さすがだね、ハジメさん」
「せやな。あんな凄いフリッカーにスカウトされるなんて名誉なこっちゃで」
「ははは……おっ、次の対戦カードの発表だ」

 ステージの巨大モニターにフリッカーの顔が映し出され、バトルフリッカーコウのアナウンスが響く。
『さぁ、続いての試合は関ナガト君VS天領ガン君!!』

「ナガトの試合か……!」
 ソウの事、ハジメの事、いろいろあるがナガトの試合とあっては集中して見ないわけにはいかない。ゲンジは身を乗り出した。

 ステージではナガトと大柄な少年が対峙している。
(天領ガン……GFC会場で見かけた事はあるが、直接対決は初めてだな)
 どちらも個人戦部門での参戦なので一応顔は知っているようだ。天領ガンは開口一番親しげに話し掛けた。
「関ナガト、お前とのバトル楽しみにしてたぞ!ハジメ師匠の未来の兄弟弟子同士楽しもうや!!」
「え、あぁ……ってハジメ師匠?兄弟弟子??」
「だってお前も師匠の経営する予定のジムに招待されたんだろ?俺も同じだ。つまり俺はお前の兄弟子って事よ!」
「そ、そうなのか……でも悪い、その話はまだ保留にしてるんだ。俺は俺の道を行く上でどうするべきか考えたい」
「そうか……まぁいいや!じゃあ兄弟弟子未遂の関係って事でいいバトルしようや!」
「はは、もちろん!」

 そして会話を終えて二人は準備を整えて構える。

『それでは行くぞ!3.2.1.アクティブシュート!!』

「いけっ!マイティオーガ!!」
「ぶっ飛ばせ!スラッシュアリゲーツ!!」

 スラッシュアリゲーツは長いブレードが特徴的なワニ型の機体だ。
 ガッ!
 オーガとアリゲーツが真正面から激突する。その瞬間。
 ピギィィィ!!
 と聞き慣れない音を発し、マイティオーガが大きく弾かれた。

「くっ!」
「どうした!フリックス界の神童はそんなもんか!?」

『おおっと!互角に思えた二機の衝突だが、マイティオーガが大きく後退し、先手はスラッシュアリゲーツだ!!』

 その様子を見たユウスケはハッとして立ち上がる。
「こ、これは!」
「どうしたんだ、ユウスケ?」
「ダメだ、ナガトくん!」
「お、おい!」
「どないしたんや!?」
 ユウスケは慌てて席を離れ駆け出した。ゲンジとツバサもそれを追いかける。

「いけ!マイティオーガ」
「スラッシュアリゲーツ!!」
「躱せ!!」

 ユウスケ達が駆けている間も試合は進行しており、現在お互い残りHP4。
 ナガトはいつもの攻撃力がなく、そしてステップに集中してアリゲーツの攻撃を上手くいなしているためお互いに決め手に欠けてマイン合戦が続いていた。

「おいおいどうした?そろそろエンジンかけようぜ?」
「そう慌てるな。まだ試合は始まったばかりだ」
「悪ぃが、俺はもうパワーMAXだぜ!この距離ならアレが使えるからなぁ!」
「っ!」
 いつの間にか二機の距離はかなり近付いており、アリゲーツのフロント側面がオーガへ接触していた。
 ガンはギアラックが差し込まれた器具を取り出し、それをアリゲーツの上部にセットして構える。
「それは!」
「俺はフリップスペル『カタパルトランチャー』を所持している!機体を軽くすればランチャー使ってシュートができるんだよ!」
「そ、それでノーマルシュートだと火力が低かったのか……!」
「喰らえ!ギガンティススラッシュ!!」
 ガンがラックを引く事でアリゲーツが猛烈に回転する。そして接触していたオーガを投げ飛ばした。
「くっ!」
 接触してるのでステップは使えない。ナガトは急いでバリケードを構えるも、方向の読めない投げ飛ばし攻撃に対応出来ずにフリップアウトしてしまう。
 バキィィィ!!
 そして、そのあまりの衝撃でオーガの角が折れてしまった。
「なに!?」
「……!」
 思わぬ破損にナガトよりもガンの方が驚いているようだった。

「ナガト君、ダメだ!!」
 その時、ステージ近くまで駆け寄ったユウスケがナガトへ叫ぶ。
「ユウスケ……!」
「マイティオーガはもう限界だよ!このままオーバーホールもせずに戦い続けたら再起不能になる!!悔しいけど、棄権した方がいい!」
 ユウスケの言葉にガンは合点がいった。
「そういう事か」
「……悪いな。この破損は俺の責任だ」
「……仲間の言う通り、棄権しろ。弱った相手を痛ぶる趣味はない」
「冗談じゃない。オーガはまだ戦える。何があろうと最後まで戦い抜くのがフリッカーだ」
「ふざけるな!!愛機に無理させてまで自己満足貫く奴なんざフリッカー失格だ!貴様それでもハジメ師匠に認められた男か!?」
「俺は誰かに認められるために戦っているわけじゃない!オーガと共に勝つために戦っているんだ!!自己満足なんかじゃない!今のオーガでも、いや、今のオーガだからこそ俺は勝つ!!」
 ナガトの並々ならぬ決意に一同静まり返る。
「ナガト……」
「ナガト君……」

「良いだろう、そこまで言うなら俺は容赦しない。それでも勝てる戦いを見せてくれ」
「ああ!」

 試合は続行しナガトのターン。場外したのでスタート位置からシュートする。
「マイティオーガ……命を燃やして、勝つぞ!!」
 ドンッ、バシュウウウウウ!!
 破損も自滅を恐れぬ勢いのシュートを放った。
「なんだあの勢い!?」
「自滅してまうで!」
「やはりただの自棄か」
 自滅が目に見えているのであればバリケードを構える必要はない。ガンは腕組みをしてオーガの行方を見据えるが……。
「鬼牙創痍斬!!」
 パキャンッ!!
 接触の瞬間、オーガの右の刀が折れた。破損の衝撃がダンパーとなりオーガはブレーキがかかりアリゲーツを場外へ吹っ飛ばした。
「捨て身技だと……!だが、次で終わりだ!!」
 ガンはアリゲーツをスタート位置に戻してシュートする。
「ギガンティススラッシュ!!」
 ランチャーを使った超高速回転の斬撃!ナガトはステップもバリケードも構えずに傍観していた。
 バキィィィ!!!
 凄まじい破壊力に、オーガの左刀と兜が剥がれてしまう。しかし、そのせいでアリゲーツはブレーキがかからずオーガのフロントがジャンプ台となって飛び上がり場外してしまった。

『スラッシュアリゲーツ、自滅!残りHP1!大ピンチと思われたナガト君ですが、まさかまさかの大番狂わせが起きました!!』

 スラッシュアリゲーツはスタート位置に戻り、再びナガトのターン。
「どんな状況も武器に変える……なるほど、さすがだ。しかし、それもここまでだ!丸腰では何も出来まい!!」
「そうでもないさ……!」
 刀も兜も失い戦闘力を失ったオーガだが、ナガトはマインに向けてオーガをシュートする。
 カンッ、バシュッ!
 マインにぶつかったオーガは反射で軌道を変えてアリゲーツに接触し、撃沈させた。
「なにぃ!?」

『なんとなんと!満身創痍のマイティオーガ!ミラクルなシュートで見事にマインヒットを決めた!勝者は関ナガト君だ!!』

「よく頑張ったなマイティオーガ……ありがとう」
 ナガトはボロボロになりながらも勝利を勝ち取ったマイティオーガを慈しむように抱えた。
「……そうか、破損して軽量化した事で機動力を上げたのか。褒められたものじゃないが、愛機との絆がなければ出来ない戦い方だ。さすがだな、関ナガト」
「本来なら俺も正攻法で戦いたかった。こんな形になってしまい、すまない」
「勝ちは勝ち。そして負けは負けだ」
 ガンは負けを素直に受け入れ、そしてナガトと固く握手をした。
 ステージ近くで見ていた小竜隊もナガトへ声をかける。
「さすがやな、ナガト」
「あぁ。でもどうするんだ、マイティオーガ?これじゃ戦えないぞ……」
「直すさ、必ずな」
「ナガト君、僕に預けて。次の試合までに元通りに出来るかは分からないけど手を尽くしてみるよ」
 ユウスケの提案にナガトは首を振った。
「せっかくだが、気持ちだけ受け取っておく。これは俺の問題だ」
「でも……!」
「何遠慮しとんのや、うちら仲間やんけ」
「そうだぜ!例え離れても小竜隊の絆は消えないって言ったじゃんか!」
「……だからこそだ。俺は小竜隊の一員として、お前達にも勝ち上がってほしいんだ。トリニティカップは自分以外に塩を送って勝てるほど甘くない」
「勝ち上がってほしいのは俺達だって同じだ!」
「俺は勝ち上がった!今勝たなきゃいけないのはお前達の方だ」
「そうだけど、そうじゃなくて!」
 押し問答を繰り返すナガトと小竜隊のやりとりを見て、ガンは豪快に笑い出した。
「くっ、がっはっはっは!!」
「な、なんだよ?」
「お前達、お互いを好き過ぎだろ。でも、だからこそ受け入れられない事もある」
「……」
「ナガト!これから戦う相手に塩を送られたくないなら、負けた俺が手を貸してやる!兄弟子未遂のよしみだ!!」
「は?」
「何せ俺は正本クリニックを継ぐハジメ師匠の一番弟子だからな!フリックス治すくらいわけないってもんよ!!」
 ガンはガシッとナガトの肩を掴んで歩出した。
「ちょ、な、急に……!」
「遠慮するな!スラッシュアリゲーツにも使っている超強力セメダインがあれば、直せないフリックスなんてない!!ガッハッハ!!」
 ガンに引きずられるようにナガトは連れ去られてしまった。

「正本クリニックは人間だけやのうて機体も治せるんかい」
「な、なんか不思議な人だったね……」
「ハジメの弟子って感じだ」

『さぁ、大盛り上がりのトリニティカップ3回戦!続いては小竜隊VS馬場超次郎君だ!!』

 モニターに対戦カードが映し出される。
 それを見て、ツバサは素っ頓狂な声を上げた。

「ば、馬場やてぇ!?」

 

 つづく

 

 

 

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