弾突バトル!フリックス・アレイ FICS 第63話「進化を続ける伝統!」

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第63話「進化を続ける伝統!」

 

 FICSアジア大陸予選大会。
 ザキは練習試合でハオランに敗れた事で気が立った事でチームワークを乱していたが、リサの叱責でこれを乗り越え、ダントツウィナーズはついに一つになった。
 そしてついに、ダントツウィナーズと拳弾倶楽部の試合となった……!

 フィールドの横で両チームが対峙する。
「いよいよ君達とバトルか。楽しみったい!」
「おう!結局俺はハオランと戦えなかったからな!良いバトルしようぜ!!」
 バンとハオランが友好的に握手するのを横目で見て睨みつけるザキ。
「……今度こそテメェをぶっ潰す。覚悟しとけよ」
「ザキ」
 リサに嗜まれてザキは目を逸らす。
「分かってる。あくまでチームとして、だ」
 それを聞いてリサはホッと一息ついた。

『さぁ、両チームともに準備はOKだなぁ!?そんじゃおっぱじめるぜぇ!!』

 両チーム、スタート位置に機体をセットする。

『3.2.1.アクティブシュート!!』

 ガキンッ!!
 フィールド中央で6機のフリックスが激突する。

「砕破!!」
 ハオランの砕破が上手いこと力を受け流して前に出た。

『さぁ、先手を取ったのは拳弾倶楽部だ!』

「ちっ!」
「相変わらずすげぇな、フリックス太極拳」
「でも、この位置から攻撃は難しいはず」

 マインは遠い位置にあり、更にフリックスが密集しているためフリップアウトも難しいだろう。

「さぁ、ここからどうすんだハオラン!」
「太極拳の極意を使えば、やりようはあるったい!!」

 バッ!
 拳弾倶楽部はそれぞれ連携してシュートしてマインを弾き合い、それをプロミネンスウェイバーへぶつけた。

『これは上手い!三体の連携でマインを運び見事にプロミネンスウェイバーをマインヒットだ!』

「ま、まさに太極拳サッカー……!」
「少林寺だろ、それは」
 バンの驚愕にザキが突っ込んだ。少しずつだがチームメイトとして打ち解けつつあるらしい。

「とにかく、反撃しないと!プロミネンスドリフト!!」

 リサは、自分が食らったマインを弾き飛ばしながら壁に反射し、ハオラン以外の二人へマインヒットダメージを与える。

『グラスホッパー、パンツァーフェニル、ダブルマインヒット!!』

「さすがだぜ、リサ!よーし、俺はハオランを狙うぜ!」
「待て、奴は俺の獲物だ」
「早い者勝ちだろ、こういうのは」
「おもしれぇ」

 バッ!
 バンとザキは競うように我先にとシュートしてハオランの砕破を狙った。

 ガッ!
 二機はほぼ同時に砕破のフロントを捉える。

「「いっけええええ!!!」」

「このくらい、受け止めてやるったい!」
 ぐぐ……!
 砕破はフロントのバネを縮めてショックを和らげて、ヴィクターとディバウアの攻撃を受け流してしまった。

「なにっ!?」
「同時攻撃も受け流すか……!」
「これがフリックス太極拳!中国4000年の力ったい!!」
「まだまだ!!」

 バゴォ!!
 衝撃を吸収されたおかげでバネギミックが発動しなかったビートヴィクターは、代わりにディバウアへバネギミックを発動させて弾き飛ばす。
 そして、ディバウアをマインへぶつけた。

「これでマインヒット!こっちの方がHPは有利だぜ!!」
「さすが日本代表ったい!ならこっちは……!」

 拳弾倶楽部は三位一体となって無防備のプロミネンスウェイバーを順々に攻撃した。

「グラスホッパー!」
 バキィ!
「パンツァーフェニル!」
 バキィ!

 一体一体の攻撃は弱い。しかし、どこかへ誘導しているようだ。

「行くったい!」
 今度はハオランがスピンシュートする。砕破はスピンでは大した力を出せないはずだが。
 カコッン!
 小さな当たり。しかし、それが丁度良かった。
 プロミネンスウェイバーの広がったアームの先端が穴の上にかぶってしまった。

「あっ!」

『おおっと!弾拳倶楽部は三人がかりでプロミネンスウェイバーを猛攻撃!見事に撃沈しました!!』

「的確な力調整も太極拳の極意ったい!」
「そうだった!太極拳は静から動まで自在に力を使うのが強いんだった……!」
「こういうチーム戦の場合、総合的なダメージ量よりも如何に多く人数を削れるかの方が重要になるんだった……ごめん、二人とも」
「何言ってんだリサ!ここからは俺たちに任せろ!」
「ごちゃごちゃ言ってねぇで仕留めるぞ!」
「分かってるよ!」

 バシュッ!シュンッ!
 しかし、バンとザキの攻撃は不発。
「くっ!」
「ちぃ、まるで雲を殴ってるようだ!」

「次はこっちったい!」
 返しのターンで、拳弾倶楽部がディバウアをマインヒットした。

「ザキ!」
 ビートヴィクターはその小競り合いから離れた位置にいるので参戦が出来ない。とりあえずグラスホッパーへシュートするが位置が悪すぎて攻撃は不発。だが、飛ばした先にいるパンツァーフェニルへ密着させる事は出来た。
「くぅぅ、ダメージ入らねぇぇ!!」
「さすがに打つ手なしったいか?」
「甘い!如何に力を自在に操る太極拳と言えど、攻撃後は隙が出来る!」

 無理な体制でマインヒットしたせいで、ディバウアへリアを向けている砕破。これなら撃沈出来そうだ。
 そして、少し離れた場所には二機で固まっているグラスホッパーとパンツァーフェニル。こちらも狙えば倒せるだろう。
 どちらを狙うかは決まっている。

「借りを返すぞ!」
 ザキはハオランを狙う。
 しかし……一瞬思い直し、二機で固まっている側へ狙いを定めた。
「おらぁぁぁ!!」

 バキィィィ!!
 さすがはザキの攻撃力。二機で固まって受け流しの出来ない状態ではひとたまりも無く弾け飛び場外してしまった。

「ザキ……ハオランを狙わなかったのか」
「……」
「面白い判断をするったい!」
 返しのターン。
 ハオランは無防備になったディバウアを弾き飛ばし穴の上に停止させた。

『さぁ、シェイドディバウアもフリップアウトで撃沈!1VS1の戦いにも連れ込んだぞ!!』

「ザキ、お前。まさか、自分よりチームの……」
 一人へダメージ与えるよりも二人撃沈させた方がチームとして得は大きい。しかし、それをザキが、念願のリベンジを蹴って、反撃で撃沈されるにも関わらず……。
「余計な事考えんな。集中しろ、バカが」
「あ、あぁ……!」

『さぁ、仕切り直しアクティブだ!HPではダントツウィナーズが有利だが、果たしてどうなるか!?』

「ここからはフリックス太極拳が有利ったい!進化を続ける伝統の力を思い知るったい!」
「進化を続ける伝統……!?」

『3.2.1.アクティブシュート!!』

 バシュウウウウウ!ガッ、ギュムッ、バゴッ!
 真正面から激突する二機だが、やはりと言うかハオランは太極拳の極意を使ってビートヴィクターを受け流して場外させる。

「くっ!」
「この間の練習試合のおかげったい!あれでダントツウィナーズの強さをフリックス太極拳に取り入れて、伝統はさらに進化したったい!」
「俺たちの強さを取り入れて、進化した……!」
「そうったい!太極拳は凡ゆる力と気の流れを取り込む!そうやって4000年の歴史を戦い抜いたったい!」
「4000年の力と、進化……!」
 重い、あまりにも重い歴史。バンは思わずたじろいでしまう。
「ふん、くだらねぇ。フリックスの歴史なんざ、たかだか10数年程度だろうが」
「あ」
 そうだ。それに実際にその創始者のフリップゴッドと自分達は交流しているのだ。
「そうだよ!バン、私達は既にフリックスの創生に触れてるんだよ!それは4000年の歴史にも負けない、大きな力のはず!」
「っ!」
 バンはビートヴィクターのバネギミックを見た。
 フリックスの創生者であるフリップゴッドの開発した悪夢の発明。その悪夢を乗り越えて自分のものとして取り込んだ力。それが今のヴィクターだ。
 それは、フリックスと直接関係ない所で刻んだ歴史の長さには決して負けない重みがあるはずだ!

「そうだったな、ヴィクター。俺達には古い伝統とか、新しい進化の前に、今ここで手にしてる強い力があるんだ。それを信じねぇと、勝てるもんも勝てねぇぜ!」

 今の自分の力は、過去や未来ではなく、現在に存在する!バンはそれをしっかりと見据えた。

『3.2.1.アクティブシュート!!』

「いっけぇぇぇ!!」
「勝負ったい!!」

 ガッ!!ブォン!!
 接触した瞬間に、ビートヴィクターのギミックが発動。その衝撃でビートヴィクターのリアが浮き上がり、前転するように砕破を乗り越えた。

「なにったい!?」

『おおっと!ミラクル前転発動してヴィクターが乗り越えて先手を取った!!しかも砕破はリア面を向けている!ここで決まるか!?』

「うおおおおお!!いっけええええ!!!」

 バンの渾身のシュート。
 バキィィィ!!
 難なく砕破を弾き飛ばして場外した。

『決まったあああ!!力強いフリップアウトで砕破を撃沈!勝ったのは、ダントツウィナーズのだ!!』

「おっしゃぁぁ!!」
「やったね、バン!」
「ちっ、ひやひやさせやがる」

「いやぁ、参ったったい。フリックス太極拳は過去の伝統も未来への進化も大事にしてるつもりが、フリックスの純粋な力を疎かにしていたようったい」
「へへへっ、でもフリックス太極拳はやっぱり凄かったぜ。またやろうな!」
「もちろんったい」
 ハオランとバンが固く握手をする。

「おい」
 そこへ、ザキがハオランへ呼び掛けた。
「FICSが終わったら、またてめぇの道場に行ってやる。その時は、あの時と同じ条件で俺と戦え」
「……喜んでお受けするったい!世界一のフリッカーと戦えるなら道場生達もいい経験になるったい」
「言うじゃねぇか」

 ハオランとザキはそれぞれの言葉の意味を察し、不敵に笑うのだった。

 

   つづく

 

 

CM

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