【小説】僕の心はIn My Heart

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そろそろ日記ネタが怪しくなってきたので、ここいらで小説を投入して間を繋ぐw

僕が初めて書いた完全一次創作小説

某ケータイ小説の○空に憧れて書いたものですw

題して

切ナイ恋物語 『僕の心はIn My Heart』

 僕は、暗闇の世界を漂っていた。
 ふわふわと、海の上に浮いているような感覚はまるで胎盤の中を髣髴とさせ、とても心地よかった。
 が、それは長く続かなかった。
「ふんぎょおおおぁぁぁ!!」
 突如、全身を針で貫かれたような衝撃を受け、僕は断末魔をあげた。
 それはまるで、タンスの角に薬指と中指の間をぶつけてしまった時の痛みに似ていて、苦痛とともにどこか懐かしい香りがした。
 あと2,3秒くらいなら、この痛みを味わってもいいかもしれない。そんな風に感じた。
「はっ!」
 ふと気付くと、クリーム色をした天井とそこに吊されている蛍光灯が目に映った。背中には柔らかな感触がある。
 顔を傾けると、そこには見慣れた風景。北側に設置された窓や南に設置された勉強机。そして、その上に設置された本棚。それらを見ていくうちに、段々意識がはっきりとしていく。
 どうやら、僕は自室のベッドの上で仰向けになっているらしい。
「夢か……」
 そう認識すると、全身を襲っていた痛みが嘘のように消えていった。
 後に残るのは汗の嫌な感触と残尿感だけである。
「ん……後頭部がチクチクする」
 残尿感だけではなかった。痛みは夢の中だけなはずなのに、後頭部に針で刺されたような痛みが残っていた。
 この痛みの正体を突き止めようと後頭部に手を当ててみると、剣山が刺さっていた。
「なんでこんなものが……」
 銀色に艶かしく光るそれを眺めながら、僕は思考を巡らせた。
「そうだ、昨日の夜……」
 僕は昨日の夜、初めて足ツボマッサージ用のマットを踏んだ。すると、たちまち足の血行がよくなるのを感じた。
 そこで僕は、頭のツボを刺激すれば、頭が良くなるのではないかと思い付いたのだった!
 僕は頭が良くなりたかった。頭さえ良くなれば、7月7日にクリスマスツリーを飾るという失敗を毎年繰り返す事はないと目論んだからだ。
 しかし、足の裏より硬い頭を刺激するためにはマット程度じゃ少々物足りなかった、だから剣山を枕にして寝ることにしたのだ。
 結果は、先程のとおり嫌な夢を見るだけだった。別段、頭が良くなったとも思えない。
「お前のせいで……!」
 僕は剣山を憎しみを込めて睨み付けた。
 鋭いトゲトゲが、僕を嘲笑っているようだ。あぁ、見れば見るほど憎たらしい!
「お前みたいな悪い子は、お仕置きだ!」
 僕は渾身の力で、剣山に鉄拳制裁を下した!
 ゴツンッ!グサッ!
 と、いい音が鳴り響く。
「いってええぇぇぇ!!」
 そんな風に剣山が悲鳴をあげているように聞こえた。ザマァミロ。
 僕は血が滴り落ちる右手を摩りながら玄関に出て、剣山を郵便受けの中に入れておいた。その中でしばらく反省してなさい!

「う~ん、いい天気だ!」
 僕は、朝日を体中で浴びながら大きく伸びをした。
 寝起きは最悪だったが、今日の僕の心は弾んでいた。
 なぜなら。
「今日こそ、愛しのあの娘をデートに誘っちゃるぞぉ!ぐふ、ぐふふ、ぐふふぎょめぇぇぇ!」
 とまぁ、そういう事である。
 僕はいてもたってもいられなくなり、そのまま学校へ向かう事にした。

 申し遅れたが、僕の名前は極村原河(ごくむらはらがわ)ジンキロウ、24歳。ピカピカの高校一年生。独身だ。
 現在、クラスメイトの女生徒に片思い中だったりする。

 僕はスキップしながら我が母校『落第学園』へと急いだ。
 私立『落第学園』は、都内でも有名な学園だった。『落第こそ正義』を校風とし、進級する生徒は白い目で見られるという、少し特殊な学園だったからだ。
 ちなみに、僕がこの学園に入ったのは、僕がラクダが好きだったからに他ならない。しかし、未だに僕はこの学園でラクダを見た事がない。

「うっす!はよざいやす!!」
 校門へとたどり着くと、早速元気で野太い声が聞こえて来た。
 長い髪の女生徒が反復横跳びをしながら、生徒一人一人に挨拶している。
 彼女こそが僕の未来のフィアンセ。毛利山便子(げりやまべんこ)さんだ。
 彼女は風紀委員と体育委員を掛け持ちしており、こうして毎朝トレーニングしながら校門前で風紀を守っているのだ。
 あぁ、二つの仕事を両立させているなんて、素敵過ぎるぜ。足捌きが眩しい!!
 僕は少し髪型を整えてから、毛利山さんに近づいた。
「うっす!極村原河君!はよざいやす!!」
「は、はよざいやす!!」
 毛利山さんに挨拶された……。野太くて甘い声が僕の鼓膜を震わせる。
 っと、うっとりしてる場合じゃない!
「あ、あの……毛利山さん!いや、便子!!」
 勇気を出して下の名前で呼んでみた。
「ん、なんじゃい?」
「その……」
 勇気を出してみたものの、いざとなるとどうしても言葉が出てこない。
 頑張れ、僕!
「えっと、今度の日曜日一緒に富士の樹海へ海水浴に行きませんか?!」
 渾身の想いを込めて、ついにデートのお誘いを口にしてしまった。
 よく言えたものだと自分で自分を褒めてやりたい。
 しかし、僕の気持ちと裏腹に毛利山さんは困惑した表情を浮かべていた。
「い、いや……気持ちはうれしいんすけど……」
 毛利山さんは言いにくそうに続ける。
「ズボン穿かずにデートに誘う人は、趣味じゃ無いと言うか……」
 な、なんだってー!
 言われて、僕は下半身が妙にスースーする事に気付いた。
 恐る恐る見下ろすと、勝負パンツの赤ビキニが目についた。
 な、なんという事だ……!
 ズボンを穿かずにデートを申し込むなんて!
 デートを申し込む時はズボンを穿くって、幼稚園の頃から教わってきたじゃないか!
 しかもデート当日以外で勝負パンツを相手に見られるなんて……!
 終わった……僕はもうダメだ……。
 僕は絶望に打ちひしがれ、膝をついた。そんな僕の頭上から、クールな声が降ってきた。
「フッ、ベイベー。だから君はノンノンなのさ」
 その声は……!
 僕は、顔を上げた。
 そこにいたのは、キザでクールそうなイケメン男『ノブのぶ太』だった。
「のぶ太……!」
 のぶ太はクラス一のイケメンで、何かといけ好かない奴だ。
「おいどんが手本を見せてやるよ」
 のぶ太がクールにそう言うと、我が愛しの毛利山さんに近づいていった。
「へいベイビー彼女ぉ!今度の日曜日、おいどんと二人っきりで踏み台昇降運動でもしないかい?」
「(ポッ)よろこんで」
 あ、毛利山さん頬染めて、OKしちゃったよ……。
「ふっ、ザッとこんなもんさ。ベイベー」
 のぶ太はクールに、自慢のリーゼントをふぁさぁっと右手で掻き揚げた。
 僕は完全に、のぶ太に負けてしまったのだ。
 僕は、目の前が真っ白になった……。

 そして、日曜日。
 敗者の僕の隣に毛利山さんがいるわけもなく、ただ一人商店街を徘徊していた。
 しかし、なんだか辺りが騒がしい事に気付いた。
 数名の少年少女が、目の前を駆けていく。
「た、大変だー!」
「殺人事件が起きたぞー!」
 彼らは口々にそんな事をいいながら、商店街の裏手にある牛糞公園へと走っていった。
「殺人事件……?」
 元々予定のなかった僕は、野次馬根性を発動させて、牛糞公園へと足を向けた。

「お、ベイベー!き、君も来たのかい?」
 牛糞公園では意外な人物がいた。
「のぶ太……どうしてお前が。僕は殺人事件があったと聞いて……」
「それが……」
 のぶ太は、気まずそうに視線を逸らした。
 その視線の先には……。
「げ、毛利山さん!!」
 毛利山さんが、倒れていた。口元やその周りにはべっとりと血がついている。恐らく吐血したのだろう。
「ど、どういう事だよ!」
「すまない、おいどんがついていながら……。毛利山さんは殺人事件だ……」
 な、なんだってー!
「そんな……そんな……」
 信じたくなかった。だが、こうして目の前で倒れている毛利山さんを見てしまっては、信じないわけにはいかない。
「状況を、説明してくれよ……」
 僕は、震える声でのぶ太に言った。
「……おいどんと彼女が踏み台昇降運動をしていた時、突然彼女が血を吐き出して倒れたんだ」
「そうか……」
 彼女の死は悲しい。
 だが、これは事件だ!ならば、犯人を見つけて彼女の無念を晴らさなければならない。

「突然だけど、皆……」
 公園にいる皆が、一斉に僕の方を向く。
「彼女を殺した犯人は、この中にいる!!」

「「「「ええええ!?」」」」

「そして、その犯人は……お前だ!」
 僕は、震える指でのぶ太を指した。
「な、何!?おいどんが犯人だと言う証拠でもあるのかい!?」
「あぁ、あるとも!お前は、『突然毛利山さんが血を吐いて倒れた』って言ったよな?なのに、はっきりと『殺人事件』だと断定した!」
「!?」
「お前は嘘をつけない奴だ。だからきっとどっちも嘘ではない。これは『殺人事件』であり、『突然毛利山さんが血を吐いた』んだ!そしてそれが出来たのは、お前以外にいないんだ!」
 そう断言すると、のぶ太は悔しそうに顔をゆがめた。
「仕方が無かったんだ……。だって、おいどんが一生懸命踏み台昇降運動をしているのに、彼女はその傍らで、宿題を始めたんだ!だから、ついカッとなって……」
「嘘だな!」
「っ!?」
「お前は、その程度の事で人は殺せない奴だ!だってそうだろ!前に僕と二人きりでカラオケに行ったとき、僕が何も歌わずに学校の宿題を始めたときも、お前は文句一つ言わず、ただ黙々と一人で歌い続けてたじゃないか!」
「それは……」
「そんな優しいお前が、こんな事で人を殺せるわけがない!」
「……」
 僕は、自分の推理を全て披露した。
 すると、のぶ太は突然黙り込んだ。
 そして、体が小刻みに震えだす。必死に笑いを堪えているようだ。
「ククク……よくぞ見破ったな!」
「なにっ!?」
「そう、私こそ悪の組織『クッテネル団』の幹部!のぶ太さ!」
 バッと!のぶ太は着ていた服を脱いだ。
 服の中に、クッテネル団の制服を着ていたようだ。
 クッテネル団の制服姿になったのぶ太は両手を広げて、高笑いした。
「はっはっはっは!!だがもう遅い!毛利山はもう亡きものとなった!!」
「何故だ!なぜ毛利山さんを……!」
「毛利山は、我が組織を壊滅させる秘技を持っていた。だからだ!」
「だからって、なんてむごい事を!」
 そのときだった。
「ふぁ~あ!」
 死んでいたはずの毛利山さんが起き上がった!?
「な、なにぃ!?」
「げ、毛利山さん、どうして?」
「ん、何が?」
 公園中の皆が驚くのだが、毛利山さんはイマイチ状況が掴めてない様だ。
「バカな、確かに毒を盛ったはず……!」
 のぶ太は慌てて懐をまさぐり、毒薬の入れ物を取り出す。
「あ、間違えて風邪薬を持ってきてた!?」
 しかも奴が持っていたのは、『成分の半分は優しさで出来ている』と言う事で有名な『バフ○リン』だった。やはり、のぶ太は優しかったのだ。
「なるほど、風邪薬の副作用は睡眠を誘うものが多い。だから毛利山さんは、死なずに眠ったのか。でも、どうして吐血を?」
 最後に残った謎を問うと、毛利山さんは恥らいながら答えた。
「実は私、風邪薬を飲むと吐血する体質なんさ」
「そうだったのか……よかった」
 これで、全ての謎が一本に繋がった。

「くっ、毛利山抹殺計画は、これで失敗か……!こうなったら力尽くででも!」
 のぶ太は、毛利山さんに向かって突進してきた!
 その速度は、まさに神速!!あんなものにぶつかったら、タダじゃすまない!
「あ、あぶない!」
 僕は叫んだ。
 しかし、毛利山さんは落ち着いていた。
「便子パーンチ!!!」
 そう叫びながら、懐から取り出したナイフでのぶ太の顔面を突き刺した。
「ぐぼっ!」
 のぶ太の眉間から血が吹き出る。
「便子チョーップ!!」
 グサッ!
「便子キーック!!」
 ザクッ!メキッ!ジョグッ!!
 毛利山さんは必殺技を叫びながらのぶ太を滅多ざしにしてしまった。
 無残な姿で横たわる血塗れののぶ太に、僕は言葉を失った。
「悪は滅んだ」
 満足気な毛利山さんに、どう声をかけていいものやら。

 その時、けたたましいサイレンとともに数台のパトカーが公園にやってきた。
「警察だ!殺人事件があったと通報をうけてきたんだが……!」
 僕は、警察の行動の遅さに呆れてしまった。
 今更警察が来た所で、事件はもう解決しているのだ。
 諸悪の根源を倒した毛利山さんは、警察に対して笑顔で報告した。
「安心してください!殺人犯は私が……!」
 ガシャリ。
「……あら?」
 警察は、毛利山さんに手錠をかけた。
「殺人の現行犯で逮捕する!」
 毛利山さんは、そのまま連行されてしまった。
 悪は、滅んだのだ。
「僕の心は、インマイハート……」
 取り残された僕は、無意識のうちにそう呟いていた。


            完



恋の切なさを上手く書けた感動ストーリーになっているのではないかと思います


あなたは、風邪薬で吐血した事が、ありますか……?




 

 




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