爆砕ショット!ビースピリッツ!!
第62話「源氏の制裁 ヒロトの目的」
シュウとジャンとのバトルはシュウが勝利した。
バトルを終えたシュウは仲間の元へ帰った。
「ふぃ~、勝った勝った」
「やったな、シュウ」
「お疲れ様、シュウ君」
「やるじゃない、シュウ」
皆が口々に出迎えてくれる。
「お疲れ様ですぅ、シュウ先輩!」
いきなり、リカがシュウへ抱き着かんばかりの勢いでタオルを渡してきた。
「おぉ、リカ……!って、あれ?そういやさっきまでどこ行ってたんだ?」
そういえば、ここしばらくリカの姿を見てなかった。
「酷いですよシュウ先輩!皆さんを応援するためにいろいろ買い出ししてきたんですから!ほら!」
リカは両手にいっぱい物が入ったビニール袋を提げていた。
「おぉ!」
その中には水分補給のためのスポーツドリンクや栄養補給のための食べ物、汗を拭くためのタオルやウェットティッシュなどなど、
スポーツには欠かせないものがいっぱい入っていた。
「ちょうど腹減ってたんだ!」
シュウは目を輝かせてその袋から食料を漁って食べ始めた。
「おいシュウ、卑しいぞ」
「試合後なんだからしょうがないだろ!」
シュウは口いっぱいにものを入れながらモゴモゴしゃべった。
「だったらせめてキレイに食べろ」
タケルの言葉を無視してシュウはがっつくのをやめない。
そんな仲良しファイトクラブの所へ一人の少女がやってきた。
「ふふふ、相変わらず賑やかですね」
シスターの姿をした少女。阿倍マリアだった。
「ふぁりあ!」
「口の中の物飲み込んでからしゃべれ!」
ゴッ!とタケルはシュウの頭に拳骨を落とした。
「うぐっ、……ごっくん!ふぅ、よぉ、マリア!そいやお前も予選通過したんだよなぁ。やるじゃねぇか!」
「私には神のご加護がありますから。全ては神の思し召しです」
予選は体力的に厳しい所もあるが、運が良ければどうにでもなったりする。
マリアは占いによって、敵が誰もいなく、更に高得点のターゲットのある場所を見つけ出して最小限の力で予選を通過したようだ。
「またその梅干しって奴か。よく分からねぇけど、俺には通じねぇぜ!」
「それは分かっていますよ。もう一度戦ってもシュウさんには敵いません。それが神の定めた運命でしょう」
「な、なんだよ。戦う前から諦めやがって。そんなんじゃ大会に出た意味ねぇだろ」
「ありますよ。ようやく、私の目標に近づけるんです」
「相変わらずよく分からない奴だなぁ。まっ、でも目標があるのは良い事だよな!」
マリアとシュウが楽しげに話しているのを見て、リカはなんとなく面白くないようだ。
「なんなんですか、あの女の人。シュウ先輩と仲が良いようですけど」
「あいつは、ジャパンビーダマンカップでシュウと対戦した事のあるビーダー、安部マリアだ。教会でシスターをしてる」
「シスター……そういう属性もありですか……!」
リカは密かに対抗心を燃やした。
「属性ってなんだよ……」
タケルは呆れたようにため息を付いた。
そうこうしているうちに、次の試合が始まりそうだ。
『さぁ、次の対戦カードは、メアシ君VS輝彦君だ!!』
「負けないぞ!!」
「あなたのビーダマン。一度壊れたというのにわざわざ直したのですか?」
メアシは輝彦のビーダマンが一度琴音に破壊されたという事を知っていた。
「え、あぁ……」
「なんと愚かな。解放のチャンスを自ら無にするとは」
メアシは可哀相な子を見るような目で輝彦を見た。
「え?」
「ですが安心なさい。私があなたを救ってあげましょう。悪しき心も悪しきビーダマンも、全て浄化するのです」
「じょうかって……?」
輝彦がメアシの言葉の意味を理解する前にビーダマスタージンの実況は続いた。
『それでは、バトルを始めるぞ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
「いっくぞぉ!!」
輝彦が渾身の力を込めてシメ撃ちを放つ。
「ふふ」
メアシはそれに合わせて輝彦のビーダマンのコアを目掛けてショットを放った。
バーーーーン!!
輝彦のビーダマンの目の前で二つのビー玉がぶつかり、衝撃波とともに弾け飛んだ。
「う、くっ!」
輝彦は負けじと再びパワーショットを放つが、今度もビーダマンの目の前で弾け飛ばされてしまう。
『力は互角か!?互いのショットが拮抗し合い、なかなかダメージが通らない!!消耗戦の様相を呈しているぞ!』
「な、なんなんだよ!全然シャドウボムを狙えない……!」
バーーーーン!
何度も何度も、コアの目の前でビー玉が弾け飛ぶ。
いくら撃っても、目の前で弾かれてしまい、どうしようもない。
その様子を見ているシュウ達。
「なんだ、あの戦い方?」
「全然試合が動かないな。どういう作戦なんだ?」
「意図は分からないけど。でもあのメアシって子相当な使い手ね」
彩音が言う。
「どういう事だ?」
「相手のショットを、全て相手のビーダマンの目の前で弾いてる。力の差に余裕がないと出来ない芸当よ」
「へぇ……でも、だとしたらとっととシャドウボム狙っちまえばいいのに」
「奴も一応は源氏派だからな。俺達の考え付かない企みがあるのかもしれない」
シュウ達が話し合っている中で、マリアは祈るような目で試合を見ていた。
「……」
そして、試合の方は……。
「くっそー!こうなったらもっと強いパワーショットで……!」
ギシギシギシ……!
輝彦は更に力を込めてコアをシメつけた。
本体が軋む。それを見て、メアシは確信した。
(そろそろか)
メアシはルシファーを下げた。
「いっけぇ!!」
輝彦が渾身の力でパワーショットを放とうとする。
その瞬間だった。
バキィィ!!!
断末魔とともに輝彦のビーダマンが砕けてしまった。
「えぇ!?」
『なんとぉ!!輝彦君のビーダマンが壊れてしまった!!度重なるパワーショットに耐え切れなかったというのか!?』
「そ、そんなぁ……!」
『これによって自動的にメアシ君の勝利が決まったぞぉ!!』
「う、うぅ、俺のビーダマンが……!」
輝彦は泣きながら膝をついた。
そんな輝彦に、メアシはそっと近づいて優しく声をかけた。
「悲しむ事はありません。これであなたは救われた。いずれ感謝する時が来るでしょう」
それだけ言うと去って行った。
シュウ達はそれを見て。
「輝彦のビーダマン、よっぽど脆かったのか?」
「結構ハードなバトルだったからな、ガタが来ていたのかもしれない」
「ううん、違う……」
シュウとタケルの予測を彩音は否定した。
「さっきまでのあの戦い方は、全部このためだったんだ」
「どういうこと、お姉ちゃん?」
「輝彦君のビーダマンの目の前でショットを弾いていたのは、その衝撃波でビーダマン本体にダメージを与えるため。
そのダメージが蓄積したせいで、輝彦君のビーダマンは壊れたの……。しかも直接攻撃したわけじゃないから、運営も反則のとりようがないの」
彩音は戦慄しながら言った。
「じゃ、じゃあ、輝彦のビーダマンが壊れたのはメアシのせいだってのかよ!?」
「ちっ、タワーでは俺達を助けたりもしたが、源氏派はやっぱ源氏派って事か……!」
タケルは舌打ちした。
「でも、変じゃない?源氏派はあくまで『勝利した証』としてビーダマンを破壊しているだけで、破壊そのものは目的じゃないはずなのに」
琴音が言った。
「そう言われれば……。あいつの場合は逆に、勝利する事よりも破壊する事の方が優先だったように見えるな」
シュウ達のやりとりの横で、マリアは悲痛な表情をしていたが、誰もそれには気づかなかった。
「そ、それでは、私はそろそろ試合がありますので」
マリアがおずおずとシュウ達に言った。
「あ、あぁ、頑張ってな」
マリアの存在を忘れていたことに気付いたシュウはぎこちなく見送った。
『さぁ、次の対戦カードは、マリア君VSヘラ丸君だ!!』
「負けねぇぞ!」
ヘラ丸はグンマー語でそう言った。
『それでは行くぞ、レディ、ビー・ファイトォ!!』
試合は、一進一退だったが、マリアが辛くも勝利した。
「ま、負けた……」
ヘラ丸はグンマー語で悔しがった。
「申し訳ありません。私は、ここで朽ちるわけにはいかないのです」
マリアは頭を下げて、その場を後にした。
シュウ達。
「っひゃー、マリアの奴なんとか勝てたな!」
「インセクトリッキーのパワーは上がっていたが、神の加護とやらには勝てなかったみたいだな」
「フォーチュンプレディクターの発射精度も前の試合よりも格段に上がってたし。マリアちゃんの戦い方も占い任せだけじゃなくなってる」
「神頼みでバトルはできねぇからな!」
シュウとのバトルでいろいろ学んだというのは本当らしい。
「次は、ヒロ兄の試合ね……」
琴音が呟いた。
いよいよAブロックの二回戦が始まるのだ。
『さぁ、Bブロック一回戦最終試合も終わり、いよいよAブロックの二回戦が始まるぞ!
対戦カードは、大原タクマ君VS高橋ヒロト君!!』
バトルフィールドにタクマとヒロトが入場する。
「我はこの大会に集中するつもりでいた。だから裏切り者の処遇も後回しにする予定だったが、公式戦で対戦する以上は容赦はしない」
「あぁ、楽しみにしていたぜ」
ヒロトは不敵に笑う。
「どうやら、肝だけは据わっているようだ」
「違うな。俺はずっと望んでいたんだ。万全のお前が、全力で俺を倒しに来るこの時をな!」
ヒロトはタクマを指さして叫んだ。
「なに……?」
『さぁ、そろそろ始めるぞ!レディ、ビー・ファイトォ!!』
話が終わらないうちにスタートの合図が切って落とされた。
二人はそれに合わせて素早く射程圏内まで駆け寄った。
ドンッ!!
ドライグの強力なパワーショットが襲い掛かる。
ヒロトはそれを躱した。
「そうだ。このパワーだ!もっとだ。もっと来い!!」
「貴様は、俺に倒されたいのか……?」
タクマは怪訝な表情をした。すると、ヒロトは動きながら話を続ける。
「分からないか?なぜ俺が源氏派に入ったか。なぜ琴音を仲間に引き入れたか。なぜあのタイミングで裏切ったか!
全ては、コンフターティスドライグを駆るお前と全力で戦うためだ!!」
「俺と、全力で……?」
そのためにあの行動が必要だと言うのだろうか?
「そうだ!源氏派に入った時からお前の力には気づいていた。俺では足元にも及ばないほどの力。戦えば、必ず完膚なきまでに負けるだろう。
そんな力を持つお前と戦えば、俺は今よりも確実に強くなれる!」
「腑に落ちんな。それと貴様の行動と、どう関係がある」
「お前らの組織は、仲間同士での喰らい合いはしない。少なくとも源氏派の悲願とやらが達成されるまではな。つまり源氏派にいる限り、全力のお前と戦う事は出来ない!」
「……」
タクマは無言のままパワーショットを放った。
ドンッ!!
タクマのパワーショットがヒロトの足元の地面にぶつかり、衝撃波とともに砂埃が舞い上がった。
「ぐわああああ!!!」
その衝撃でヒロトはフッ飛び、地面に倒れた。
「へ、へへ……!いいぞ、これだ……!」
ヒロトは立ち上がりながらも笑みを浮かべた。
「裏切り者になればお前は全力で俺を倒しに来る。だからこそ、俺はコンフターティスドライグが完成するのを見計らって組織を裏切るつもりだった」
ズババババ!!!!
今度はヒロトの反撃だ。超速乱射がタクマに襲い掛かる。
「ふんっ!!」
タクマは素早くドライグを片手撃ちモードにしてそれらを弾き飛ばした。
「だが、一つ誤算が出来た。仲良しファイトクラブの連中が、源氏派に楯突いてきた事だ。
源氏派は組織として発展途上だ。いかにタクマと言えど、コンフターティスドライグの完成前では、組織そのものを潰されかねない」
実際、未完成のコンフターティスドライグではシュウとタケルに引き分けてしまった。
もし仲良しファイトクラブに全力で源氏タワーを攻め込まれたら、コンフターティスドライグの完成を待たずして組織が壊滅してしまう恐れがある。
組織が無くなってしまったら、ヒロトの目的も達成されない。
「そこで俺は、琴音を仲間に引き入れ、仲良しファイトクラブの矛先を俺に向けて時間稼ぎをした。琴音の存在はヴェルディルの完成にも必要不可欠だったしな」
琴音を仲間に引き入れる事は一石二鳥だったのだ。
「それが、貴様の目的の全てか」
「あぁ。全て、俺の計算通りだ」
「なるほど、ならば……」
タクマはカッと目を見開いた。
「望み通り、全力で貴様の息の根を止める!」
凄まじい目力でヒロトを睨み付けるが、ヒロトは全く怯まずに嬉しそうに笑った。
「へへへ……!」
グッ!
ヴェルディルを持つ手に力が籠る。
そしてグルグルと手を回した。
「踊れ……ジャンブルワルツ!!!」
ズババババ!!!
凄まじい乱射がタクマへ襲い掛かる。
「甘いっ!!」
タクマも連射でそれを防ぐ。
「まだだぁ!!!」
ヒロトの連射の中で、一際早いショットが3発一瞬で通り抜け、タクマのシャドウボムにヒットした。
『ヒット!!ヒロト君、必殺の乱射の中にスピード弾を混ぜていた!!これでタクマ君のHPは92だ!!』
スピード弾では大したダメージにはならない。
「良い奇襲だが、ストライクショットはもう使えないぞ」
「これでいい」
「なに?」
ズバババババ!!
ヒロトは一点集中で連射をした。
タクマのシャドウボムは、一撃喰らったせいですぐに動き出すことが出来ないのだ。
ガガガガガガ!
威力は低いが、ヒロトの連射が次々とヒットしていく。
『連続ヒット!細かいダメージで徐々にタクマ君のHPが削られていくぞぉ!!』
「ふん、笑止!!」
バーーーーーン!!!
タクマは地面を撃って、その衝撃波でヒロトのショットを全て弾き飛ばした。
「ぐぅ!!」
更に、その衝撃波によってヒロト自身も吹き飛ばされる。
「ぉおおお!!!」
ドギュッ!!
吹き飛ばされながらも、倒れながらも、ヒロトは反撃の手は止めない。タクマのシャドウボムに次々とビー玉をヒットさせていく。
「その程度で終わると思うなよ」
倒れたヒロトに対して、タクマは更に地面を撃って衝撃波を巻き起こす。
「ぐああああああああ!!!!」
苦痛に顔を歪めるヒロト。ヒロトのシャドウボムは無傷だ。にも関わらず、ヒロトはボロボロ。
タクマは完全に、バトルとは無関係にヒロトを痛めつけるためにビー玉を放っている。
『な、なんなんだ、このバトルは!現在、タクマ君のHPは32!一方のヒロト君は無傷……なのだが、ヒロト君の方がボロボロでピンチだ!!』
佐津正義は、警備室のモニターでそれを見ていた。
「大原タクマ、なんて奴だ……!これじゃ、反則が取れない。さっきのメアシといい、なんでこんなビーダーが大会に参加しているんだ……!?」
正義は悔しげに拳を握りしめた。
「正義の味方は、こんなにも無力なのか……!」
そして、そんな残酷なバトルを見ていたシュウ達は。
「な、なんだよこれ、一方的じゃねぇか……!」
「HPではヒロトさんの方がリードしているが、タクマの奴、なんて戦い方をしてんだ……!」
「衝撃波を起こして、ビーダーにダメージを与えるなんて……!」
さっきのメアシと同様、これでは反則も取れない。
「こんなの、こんなの、バトルじゃないよ……!」
琴音は悲痛の叫びをあげた。
「ことねぇ……」
「ヒロ兄……!」
ダッ!
琴音は駆け出した。
「あ、ことねぇ!!」
駆け出した琴音はバトルフィールドのすぐそばまでやってきた。
「ぐああああああああああああ!!!!」
バトルフィールドでは、ヒロトがなおも衝撃波に苦しめられていた。
「ヒロ兄ーーー!!!」
琴音はありったけの大声でヒロトへ呼びかけた。
「……」
虚ろな瞳で、ヒロトは琴音の方を向いた。
「お願い、ヒロ兄……!棄権して!もう、無理だよ……こんなの、バトルじゃない……!」
涙声で訴える琴音だが、ヒロトはそれを無視して立ち上がる。
「まだだ……タクマ、行くぞ……!」
震える手でヴェルディルの銃口をタクマへ向ける。
「虫の息だが、容赦はしないぞ」
ドンッ!!!
再び衝撃波を起こし、ヒロトをフッ飛ばした。
「ぐああああああああああああ!!!!」
「ヒロ兄!!」
ヒロトは、琴音のすぐそばまで吹き飛ばされた。
「ぐぅぅ……!」
それでもヒロトは乱雑にビー玉を放っている。
そのショットの大半は外れるのだが、何発かはシャドウボムにヒットする。しかしタクマは意に介さない。
「ヒロ兄!お願い……これ以上やったら、死んじゃうよ……!」
「俺は……強く、な……る……!」
ヒロトは、朦朧とする意識の中で、なおも攻撃の手を止めない。
「ふん」
しかし、無情にもタクマの攻撃は緩まない。
バーーーーーン!!!
ヒロトは大きくブッ飛ばされた。
「ヒロ兄!!!」
ズザアアアアア!!!!
琴音は吹き飛ばされるヒロトを慌てて受け止め、耐え切れずに一緒に倒れた。
「うぅ……!」
「……」
琴音の腕の中で、ヒロトは気絶していた。その顔は、どこか満足気だった。
『あ、アクシデント発生!!激しいバトルを繰り広げていた二人だが、それ故にヒロト君は気絶してしまったようだ!!
異変に気付いた琴音君がいち早くヒロト君を庇ったが、これ以上のバトル続行は不可能と判断!
シャドウボムのHPでは圧倒的に勝っていたヒロト君だが、自動的に大原タクマ君の勝利となります!
救護班、急いでヒロト君を!』
タクマのHPは残り8。タクマは意図的にシャドウボムを狙っていなかったとはいえ、この状態でヒロトはタクマをここまで追い詰めていた。
気絶するのがもう少し遅ければ、あるいは結果が違っていたかもしれない。
「他愛もない」
しかしタクマは、倒れたヒロトに向かって無感情に一言そう言うと去ろうとした。
「待て!!」
琴音が凄い形相でタクマを睨み付ける。
「なんだ?」
タクマはめんどくさそうに振り返った。
「あたしもヒロ兄と同じ裏切り者よ!あたしとも戦え!!」
「くだらん。裏切り者は制裁するべきだが、今は大会の方が大事だ。今回こいつを始末したのは、そのついでに過ぎない」
ドギュンッ!!
グルムのショットがタクマの頬を掠めた。
「戦え……!ヒロ兄の仇はあたしが討つ!」
チッ!
鋭いショットがサンダーグルムを掠め、琴音はグルムを落としてしまった。
「あぅ……!」
その衝撃は、かすっただけだと言うのに、琴音を怯ませるには十分だった。
「くだらん。貴様に裂いている時間は無い」
タクマはそう吐き捨てて去って行った。
「琴音!」
「琴音ちゃん!」
「ことねぇ!!」
遅れて、シュウ達三人が駆けつけてきた。
「う、うぅ……ううう……!」
と、同時に、琴音は膝をついて泣き崩れた。
大切な人がボロボロに壊された。
なのに、何もできなかった。
敵討ちの戦いすらもさせてもらえなかった。
自分の無力感をひしひしと感じ、琴音は打ち震えていた。
「ことねぇ……」
「あぁぁぁ、ああ、あああああああああ!!!!」
いつまでもいつまでも、琴音は泣き続けた。
つづく
次回予告
「ビーダマンを破壊するメアシ。ビーダーを破壊するタクマ。どっちも許せねぇ……!
そんな中、マリアとメアシのバトルが始まった。
マリアもまた、ある目的を持って大会に参加していたんだ!
次回!『メアシとマリア』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」