オリジナルビーダマン物語 第24話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第24話「関東予選決勝!爆走トロッコリレーレース!!」





 選手控室。
 次の試合に向けて、シュウ達が待機している。
「さぁ、いよいよ次は決勝戦だ!泣いても笑っても、これに勝てば全国大会に出場できる!みんな、気合い入れて行けよ!」
 タケルが、皆に活をいれる。
「言われるまでもねぇって!バスターブレイグがあれば、楽勝だぜ!!」
「油断してると、足元すくわれちゃうわよ」
「琴音の言うとおりだ。相手だって決勝まで勝ち進んだ猛者。簡単には勝たせてもらえないだろう」
「別に油断なんかしてねぇって!俺はただ、バスターブレイグを信じてるだけだぜ。なっ、ブレイグ!」
 言って、シュウはブレイグに頬ずりする。
「シュウはバスターブレイグにベッタリね」
「まっ、バスターブレイグの力は本物だからな。でも、力が強い分負担もデカくなってるんだ。あまり無茶な事はするなよ」
「分かってるって」
 タケルの忠告を聞いているのか聞いていないのか、シュウは至福の表情で頬ずりを続けた。
「まったく……。ところで彩音さん、決勝の相手『チームインセクターズ』の情報は検索できた?」
 タケルは、パソコンのモニターを見ている彩音に話を振った。
「うん、今検索完了したところだよ。ただ……」
「ただ?」
「情報が少ないのよ。群馬県出身なのと、趣味が昆虫採集って事以外、何も載ってない。肝心なビーダマンのスペックやビーダーとしての情報が皆無なの」
 確かにそれだけでは作戦の立てようがない。
「グンマーってずいぶん田舎から来てんだなぁ」
 シュウにとって群馬は田舎なイメージらしい。
「案外、田舎過ぎて情報が無いんじゃないの?」
「う~ん、田舎でも実績はネットに残るものだけど……」
「ほら、田舎だから地元に大会がなかったとか」
「いくら田舎でも、大会くらいは開かれるだろ」
「そうかなぁ?」
「まぁ、情報が少ないって事は、ますます油断が出来なくなったって事だ。気を引き締めていかないとな!」
 作戦が立てられない以上、気を引き締める事しか出来ない。
 仲良しファイトクラブは気合いを入れなおして次の試合に備えるのだった。
 
 そして、いよいよ試合開始時間になった。
 仲良しファイトクラブは会場に入る。
 会場では、既にチームインセクターズの三人が待機していた。三人とも麦わら帽子にランニングシャツと短パンという虫取り少年スタイルだ。
「さ、さすがグンマー。格好も田舎だぜ……」
 シュウはグンマーの田舎っぷりに感心するのだった。
「ふっふっふ!お前らが仲良しファイトクラブだな!!」
「俺達チームインセクターズと決勝を戦うごどを後悔するんだな!」
「なぜなら、俺達はグンマーでナンバーワンの虫取り少年だ!だがら当然、ビーダマンも強い!」
 こいつらのセリフは微妙にグンマー弁が混じっている。が、微妙すぎて分かりづらい。
「虫取りの技術をビーダマンにも応用しているのか?!」
「いや、別にそうた事はねえ」
 やっとグンマー弁っぽいセリフになった。
「無いんかい……」
「さすが田舎だ」
 そんな会話をしているうちに、ビーダマスタージンが現れる。
『さぁ、関東大会もいよいよ決勝戦だぞ!!対戦カードは、グンマー県出身のチームインセクターズと東京都出身の仲良しファイトクラブだ!
どっちもここまでの激戦を勝ち抜いた猛者!熱いバトルを期待しているぜ!!』
 
 ワーーーーーと歓声があがる。
『そんじゃ、今回の対戦ルールを説明するぞ!まずは、ステージオープン!!』
 ウィーーーーン!!
 会場に、ステージと、トロッコとそのレールが出現する。
「なんだごれは?!」
「トロッコ……?」
 インセクターズのメンバーのセリフは全てグンマー弁で喋っています。
『今回のルールは、トロッコリレーレース!その名の通り、このトロッコを使ってリレーレースをしてもらうぞ!!
このトロッコは特殊な作りをしていて、ビーダマンでターゲットを撃破していく事で走る仕組みになっているんだ!
トロッコを乗り継ぎ、セクションごとにリレーをつないで行って、最終的にゴール前にあるターゲットを撃破すれば勝利だぞ!
そして、各セクションごとにターゲットの形式も変わっている!
第1セクションは、レールは一直線で、スタート位置にあるターゲットにショットを当てるごとに決まった距離だけトロッコが進む。
単純だが、当然トロッコが進むたびにターゲットまでの距離も離れていく!進めば進むほど、パワーと命中精度が必要になってくるぞ!
そして、第2セクションのターゲットは、レーンの横にいくつも並べてある。
このセクションではターゲットを倒さなくてもトロッコは進むが、倒せば倒すほどトロッコを加速させる事が出来る。
ただし、トロッコのスピードが上がればそれだけターゲットにショットをぶつけるのは難しくなるぞ!!
最終の第3セクションのターゲットは、頭上に並べてある!
トロッコのスピードは第2セクションで加速した速度をそのまま引き継ぐが、トロッコがターゲットを通過するたびに減速してしまう。
ターゲットを撃破すれば、トロッコは減速しないぞ!
そして、ゴール前にある巨大ターゲット!こいつは、パワーと連射で破壊してくれ!
ルール説明は以上だ!リレーの順番を決めたら、スタート位置についてくれ!!』
 
 ビーダマスタージンのざっくりとした説明が終わり、各チーム順番を決める会議を始める。
「どうする、タケル?」
 作戦を決めるのはリーダーのタケルの役目だ。
「そうだな。第1セクションは、一旦狙いを定めたら、それをブラさなければ後はビー玉が届きさえすれば問題ない。ここはパワーと安定性を重視して俺とレックスが行く」
「なるほど。それで第2セクションは?」
「第2セクションは、反射神経がものを言うな……そこ行くとどっちもどっちな気はするが、ある程度連射で補える琴音が適任か」
「分かったわ」
「じゃあ、第3セクションは俺?」
「ああ。第3セクションも反射神経が大事だが、ターゲットが一直線上に迫ってくるタイプだから、命中精度はそこまで重要じゃない。
ターゲットが迫ってくれば来るほど当たりやすくもなるしな。それに、最後のターゲットの撃破。あれはバスターブレイグにやらせた方が有利だろ」
「なるほど、確かに!おっしゃ、任せろ!絶対に勝ってやるぜ!」
「ああ!最終戦、気張っていくぞ!」
「「おお!!」」
 両チーム、それぞれのスタート位置につく。
『さぁ、両チームとも配置についたようだな。そろそろおっぱじめるぜ!レディ、ビーファイト!!』
「うおおおおお!!」
 ドギュッ!ドギュッ!!
 タケルは見事にターゲットにビー玉をヒットさせていき、トロッコを進ませる。
「どんどん遠くなって狙いにくくなるが、ビーダマンの位置をズラさなければいけるっ!」
『決勝戦スタート!先手を取ったのは、チームインセクターのカブ太君だ!!』
 意外に、スタートダッシュを決めたのはタケルではなくインセクターだった。
「なにっ!?」
 タケルは驚いて隣のレーンを見る。
 わずかだが、インセクターのカブ太の方が先に進んでいる。
「くっくっく。俺の使うインセクトビートルは、ヘッドの角で照準を付けられるがら、狙いを外す心配がなぐ、猛連射が出来る!
このセクションにパワーは必要ねえ!この勝負もらった!!」
 インセクトビートルにはカブトムシのような角がついており、それが地面から見て垂直に立っていた。それによって、近距離での狙いがつけやすくなっているのだろう。
「なるほどな。連射によって多少機体がブレてもヘッドの照準ですぐに狙いを付け直す事が出来る。
このセクションはパワーに関係なく、一発当てた分の進む距離が変わらないから、連射重視で攻めてきたわけか」
 カブ太がどんどん先に進んでいく。
「だが、その照準は近距離を素早く狙うのには優れているが、長距離になると高く立った角が逆に邪魔になり、狙いがつけづらくなる!」
「それは、どうがな?」
 カブ太はかなり進み、ターゲットとの距離も開いてしまった。
 その時だった。
 インセクトビートルの角が前方に倒れ、上に立っていた角が、前に出た状態になった。
「なにぃ?!」
「インセクトビートルの角は可動式。ターゲットとの距離に合わせで、適切な角度に変更できるのさ!」
『インセクトビートル!!脅威の可動照準ギミックでタケル君に差をつけている!このリレーレース、早くも勝負が決まってしまうのか?』
「いや、勝負はこれからだ!」
 タケルの目は死んでいなかった。
 それどころか、相手のリードに心を乱すことなく、マイペースにターゲットにショットを当てていく。
『のおっと!ここで、タケル君が徐々にカブ太君を追い上げだしたぞ!?』
「なに?!」
「確かに、いくらパワーが強くても一発で進む距離は変わらない。だが、距離が遠くなればなるほど、ショットのスピードが影響してくる」
「っ!」
「今この状態では、お前の連射よりも、俺のドライブショットの方がターゲットにビー玉を当てる速度は速い!!」
 
 そして……!
『抜いたー!!タケル君がカブ太君を抜いて逆転だ!!さらにその差はぐんぐん広がっていく!!』
 ある程度まで差が広がったところで、タケルは琴音とタッチした。
「頼むぞ!」
「任せて!!」
 琴音スタート。
『ここでタケル君が琴音君にバトンタッチ!仲良しファイトクラブは第二セクションに突入だ!!』
「いっけぇ!!」
 横並びに置かれているターゲットを、琴音は連射で打ち抜いていく。
『琴音君、見事な連射だ!狙いの付けづらさを、連射でカバーしている!!』
 チームインセクターもバトンタッチした。
『遅れて、チームインセクターも第二セクションに突入だ!!』
「いけぇ!インセクトスタッグ!!』
 ズドドドド!!!!
 インセクトスタッグが、横並びのターゲットを次々と撃破していく。
『おおっと!チームインセクターのクワ吉君!怒涛の追い上げ!!』
「え、嘘……!!」
「俺のインセクトスタッグは、ヘッドについでいる二本の角を使って照準を合わせでる。二本の角の間を通過するターゲットには、反応しやすいのさ!」
 つまり、横並びになっているターゲットを次々と撃破していく競技は十八番というわけだ。
『琴音君、必死にリード守ろうとするが、クワ吉君の追い上げは凄まじい!!』
「くっ!トロッコが加速すればするほど、狙いが付けづらい……!」
 トロッコが加速するにしたがって、琴音の命中率も下がっていく。
 それに引き替え、クワ吉はほぼ全てのターゲットを撃破していっている。
『ここで、チームインセクターが仲良しファイトクラブと並んだ!!』
「うっ!」
「よし!」
 と、同時にシュウの声が聞こえてきた。
「琴音!バトンタッチだ!」
「あ!」
『並んだと同時に、両チームともに最終走者へとバトンタッチ!!泣いても笑っても、これで全てが決まるぞ!!』
「ご、ごめんシュウ!」
「大丈夫!俺が決めてやるぜ!!」
 仲良しファイトクラブとインセクターの最終走者が同時にスタート。
 が、インセクターのトロッコの方が速い。
『最終走者同時にスタート!が、インセクターの方が速い!!』
「えぇ、なんでぇ!?」
「聞いてなかったのが?第三セクションのトロッコのスピードは第二セクションでの加速が引き継がれるんだ」
「あぁ、そっか」
 琴音よりもクワ吉の方が倒したターゲットが多い。つまり、トロッコのスピードはインセクターの方が上なのだ。
『第三セクションは、天井に一直線に並べられたターゲットを撃破していく!
ターゲットを仕留めそこなった場合、そのターゲットをトロッコが通過したときにトロッコのスピードが落ちてしまうぞ!』
「うおおおお!!!!」
 シュウは、迫りくるターゲットをどんどん撃破していくのだが、全く差は縮まらない。
 インセクターも同じようにターゲットを撃破していっているからだ。
「くっ!」
『シュウ君にヘラ丸君、両者大健闘!しかし、差は全く縮まらない!それどころか、インセクターがどんどん差を広げている!!』
 
「くっ、あいつパワーも命中精度もあるのか!」
「俺のインセクトリッキーは、ヘッドから前方に伸びだ太い角が、照準をつげられるのど同時に、機体をがっちりホールドするごどでパワーショットにも対応しでいる!」
「なんて、ビーダマンだ……!」
「つまり、お前に勝ち目はねえ!」
 ヘラ丸のトロッコがどんどん前に進んでいく。
「俺だって、負けてたまるか!!」
 シュウも懸命に追いかける。
『さぁ、決勝リレーレースもいよいよ大詰めだ!ヘラ丸君が、トロッコでレールを走り切り、いよいよ最終ターゲットに向かうぞぉ!!』
 最終ターゲットの前に到着し、ヘラ丸の乗っているトロッコが止まる。
「あどは、このターゲットを倒せば勝ちだ!」
 ヘラ丸がターゲットに向かってショットを放つ。
 ガキンッ!
 しかし、弾かれた。
「むっ!」
『最終ターゲットは、そう簡単には破れないぞ!パワーショットをガンガンぶつけて破壊してくれ!!』
「なるほど……面白れぇ!」
 ドンッ!ドンッ!!
 ヘラ丸がパワーショットをどんどんぶつけていく。
『おお!素晴らしいショットだ!ターゲットにヒビが入ったぞ!撃破まで、あと少しか!?』
 シュウは、懸命にトロッコを走らせていた。
「くっそぉ、俺に勝ち目があるとしたら、あの最終ターゲットを一撃でぶっ壊すしかねぇ!でも、いけるのか……!」
 
 ビュウウウウウウウウ!!
 トロッコの走行風により、シュウの髪がなびく。
「っ!」
 その時だった。
 
 ガクガクガクガク!!
 ブレイグのヘッドの光の刃が振動し始めた。
 いつもだったらこの状態に持っていくのに一苦労なのだが、今回はトロッコに乗っていたおかげで手間が省けたのだ。
「ブレイグ……?そうか、この風!いけるぜ!!」
 この瞬間、シュウは勝利を確信した。
「シュウーー!!あと少しだ!!頑張れ!!」
「シュウ、負けないで!!」
 既に走り終えているタケルと琴音は必死にシュウを応援している。
「ヘラ丸!いけー!」
「あと少しで俺達の勝ちだ!!」
 インセクターも負けじと応援する。
 そして、シュウが最終ターゲットへと到着した。
『ようやく、シュウ君も最終ターゲットへと到着だ!しかし、ヘラ丸君の狙っているターゲットはすでに半壊している!もう勝負はついたかぁ?!』
「遅かったっぺ。んだげんど、今更来ても勝負はついでいる!」
「さぁ、そりゃどうかな!?」
 ビュウウウウウウウウ!!!
 トロッコは既に止まっているのに、シュウの周りには風が吹き荒れている。
「うおおおおおお!!!フェイタルストーーーーム!!!」
 
 バシュウウウウウウウウウウ!!!
 吹き荒れる風を纏って、ブレイグのショットがブッ飛んだ。
 そして、一撃で最終ターゲットを破壊してしまった。
「な、なにいいいいい!?」
『な……バ、バトル終了!まさかまさかの大逆転!勝ったのは、シュウ君!仲良しファイトクラブだああああ!!!!』
 ワーーーーーと歓声が湧き上がる。
「よっしゃ!!!」
 シュウは飛び上がって歓喜した。
「そ、そんな……」
 ヘラ丸はへなへなと倒れる。
「やったな、シュウ!!」
 タケルと琴音がシュウの元へ駆け寄る。
「おう!なんとか勝ったぜ!!」
 シュウは、タケルと琴音に向かってサムズアップした。
「なんとかって、一撃だったじゃない!」
「へへへ」
「しかし、溜め無しでよくフェイタルストーム撃てたな」
「ああ。トロッコに乗ってた時に受けた風がブレイグのヘッドを振動させてたんだ。その勢いのまま撃てば、一発でフェイタルストームが撃てると思ったんだ」
「なるほどな」
「ステージに助けられたってわけね」
「実力だっての!!」
 そして、表彰式。
 表彰台の一番上に、仲良しファイトクラブの三人が乗っている。
『ジャパンビーダマンカップ関東予選団体部門!優勝は、仲良しファイトクラブだ!!』
 ワーーーーー!
「おっしゃあ!やったぜ!!」
『さぁ、ここで優勝を決めた仲良しファイトクラブ!
この三人には、日本の八大州の代表ビーダーが集まる全国大会、ジャパンビーダマンカップ決勝トーナメントへの出場権が得られるぞ!!』
 ビーダマスタージンの実況により、さらに歓声が大きくなる。
「へへへ、ついにやったな、タケル!琴音!」
「何言ってんのよ。まだ予選でしょうが」
「そうだ。俺達の戦いはこれからだ。あまり浮かれすぎるなよ」
「分かってるって。でも、このバスターブレイグがいる限り、全国大会も絶対に優勝だ!!」
 シュウは表彰台の上でブレイグを掲げ、堂々と勝利宣言するのだった。
 
  
       つづく

 次回予告

「おっしゃあ!全国大会への出場を決めたぜ!!と、いうわけでそのご褒美として俺達仲良しファイトクラブは休暇をとってヨーロッパへ旅行する事にした!
最初の国は、神話の地ギリシャだ!そこで出会ったビーダー、アラストール。そいつの案内で、俺達はあるいわくつきの地を訪れた。
 次回!『神秘の大陸 ヨーロッパ』
熱き魂で、ビー・ファイトォ!!」

 

 



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