オリジナルビーダマン物語 第9話

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爆砕ショット!ビースピリッツ!!


第9話「サバイバル!危険がいっぱい遊園地バトル!!」




『さぁ、いよいよ始まった過酷な第二次予選!最初の難関で早く皆大苦戦しているようだ!!
だが、これはほんの序の口!これから、一体どんな展開が繰り広げられるのか!?』
「うわわ、くそぉ!!」
「め、目が回る……」
 仲良しファイトクラブは最初のコーヒーカップセクションでかなり苦戦しているようだ。
 ここは、カップのハンドルの上に置かれた『出口』と書いてあるターゲットを撃ち落さないと先に進めないセクションだ。
 しかし、激しく動くこの場所で狙いを定めるのは非常に困難で……!
「くっ……なんとか、ターゲットがあるカップに近づけないか?!」
「こう激しく動かれたんじゃ、たまらないわよ」
「ぎ、ぎもぢわりぃ……」
「くそぉ……シフトレックス、グリップモード!」
 タケルはレックスの腕をグリップに付け替えた。
「それから」
 懐からストレートマガジンを取り出して装着する。
「こうなりゃ、下手な鉄砲数撃ちゃ当たるだ!」
 グリップのおかげで安定したレックス、これだけで命中率が上がるというものでもないが、連射して微調整すればなんとかなるかもしれない。
「おらっ!」
 ズドドドド!!!
 マガジンに込めた玉をありったけ連射する。
 殆どの玉が外れるが、段々軌道がターゲットに近づいていく。
 カコンッ!!
 そして、見事ターゲットに命中。
「よっしゃ!」
 と、同時にコーヒーカップにブレーキが掛かり、停止する。
「た、助かったぁ……!」
 三人はフラフラしながら出口を通った。
 コーヒーカップを出られたのはいいが、力なく倒れる。
「うぇぇぇ……飯食ったばっかでコレはきついぜ……」
「クラクラする……」
 シュウの目の前に、フワフワとビー玉が飛んできた。
「う~~……あ、目の前にビー玉の妖精さんが……」
 シュウが電波な事を呟く。とうとう幻覚を見てしまうほどになってしまったか。
「ブレーキ・リフレクションじゃん!!!」
 どこからかそんな声が聞こえたかと思うと、そこそこのスピードのショットが飛んで来て、ビー玉の妖精さんに命中した!
 カキンッ!
 その反射で軌道を変えたショットがシュウのシャドウボムを狙う。
「シュウ、危ない!!」
 そのショットの正体に気付いた琴音が慌ててそれを撃ち落す。
「むむ、惜しかったじゃん!」
「……その声は」
 琴音がゲンナリしながら、声の方向へと視線を向けると……。
「じゃんじゃんじゃじゃーーーーーん!!」
 ジャンがエアギターしながら立っていた。
「ジャ、ジャン!?」
「やっぱりあんたか……」
 思わぬ敵の出現に三人は立ち上がり臨戦態勢をとる。
「なんだ、あのヘンテコな奴は!」
 タケルはジャンを見るのはこれが初めてだ。
「アイツがこの間道場破りに来た奴よ」
「あ、あいつが……!ってか、他のクラブに入ってるくせに道場破りしてきたのかよ」
 道場破りといえば、どこにも所属してない野良ビーダーがやるものだと思っていたのだが、最近はそうでもないのかもしれない。
「オレっちは別にクラブに入ってないじゃん!」
「えっ!?でも、この大会ってヒンメルが東京都正式登録クラブに送った招待券が無いと参加できないんじゃ…?」
「その通り!だから、杉並区のとあるクラブに送られた招待状を……」
「うん」
「合意のもとブン捕ったのじゃん!!」
「「「全然合意じゃねぇだろ!!!」」」
 三人の声は見事重なった。
「じゃん?」
 ジャンは首をかしげた。
「まぁとにかく、敵である以上は戦うしかないな!ジャン、あの時の借りを返すぜ!!」
「望むところじゃん!」
 両者、同時にビー玉を撃つ!
 しかし、ジャンが圧倒的に押されている。
「ああああ!!1vs3なんて卑怯じゃん!!」
「チーム戦の大会に一人で参加する方が悪い」
「そもそも、卑怯な手を使って大会に出場したあんたが言うな!」
 タケルと琴音の言う事は最もだ。しかし、リベンジしたかったシュウとしてはたまったもんじゃない。
「ちょっ、タケルことねぇ!手出すなよぉ!!」
 シュウの制止は間に合わず、三人がかりのショットはジャンをどんどん追い詰めていく。
「うぎゃあああ、じゃん!!」
 バーーーン!!
 ジャンのシャドウボムはあっさりと撃破されてしまった。
 何故かジャンも吹っ飛んで仰向けに倒れる。
「俺のリベンジが……」
 3vs1で勝っても全然借りを返せた気にならないシュウ。
「あんな奴に時間かけてられないでしょ」
「早く行くぞ」
「くそぅ!ジャン、覚えてろよ!!」
 勝者が言うセリフではない。
 観客達がいる東京都ドーム内では、備え付けのでっかいモニターに遊園地内の様子が映されており、ビーダマスタージンもその映像を見ながらドームの中で実況している。
『のおっと!各エリアで早くも敵チーム同士の接触があったようだ!激しいバトルが繰り広げられているぞ!!
アトラクションも強敵だが、敵チームとの遭遇も忘れちゃいけない!息つく暇も無いサバイバルだ!!』
 その様子を彩音は観客席で心配そうに見ていた。
「皆、頑張って……!」
 今の彩音には祈る事しか出来ない。
 そして場面転化。
 シュウたちはまた新たなアトラクションに辿り着いた。
「今度はなんだぁ!?」
 シュウたちの目の前に現れたのは、巨大な一本のレールが複雑にうねっている建造物だった。これは……
「ローラーコースターか。失楽園遊園地名物の『ファイヤードルフィン』を改造した奴だろうな」
「見た感じ、他に道はなさそうだし。このアトラクションをクリアする必要がありそうね」
 三人は、ローラーコースターの入り口まで歩みを進める。
 しかし、特に先に進めそうな感じはしない。
「特にターゲットとか見当たらないな」
「乗ればいいのかな?コーヒーカップの時みたいに、乗ってる間に何かターゲットを倒すのかも」
「それしかないか」
「うぅ、あたしこういうの苦手なんだけどなぁ……」
 三人はコースターに乗り込んだ。
 安全ベルトのロックを降ろすと、マシンがゆっくりと動き出す。
「皆!しっかり何かターゲットらしいものが無いか、しっかり見とくんだぞ!!」
「おう!」
「そんな余裕あるわけないでしょ……!」
 そして、マシンが最初の山の頂点に達する。
「そろそろか……」
 マシンが、ゆっくりと、頂点を過ぎて、急坂に……!
「きゃああああああああああ!!!!!!」
 猛スピードでマシンが駆けていく。
「イヤッホー!飛ばせ飛ばせ~!」
「アホシュウ~!遊んでないでよく探せ~~!!」
「わぁってるよ~~」
 遠心力や慣性のせいでまともに喋れない。
「つぅってもぉ~~、こんな~~スピィードじゃぁ~!」
「なんか言ったか~~?!」
「だぁかぁらぁぁぁぁ~~~!!この~~状態で~~~、周りが見れるか~~~!!!」
「た~し~か~に~!!!」
 ちなみに、琴音はぐったり気絶している。
 そして、ようやく一周した。
「ふぅ……」
 三人は一息ついてマシンから降りる。
「うぅ、ぎぼぢわるい……」
 琴音はフラフラだ。近くにある柵によっかかってグデーっとしている。
 一応ヒロインとしてリバースは許されない。
「あ~楽しかった!……でも結局何の収穫も得られなかったな」
「う~む、コーヒーカップの時は、俺たちと一緒にターゲットも同じフィールド内にいたからな。
でもローラーコースターとなるとターゲットは止まってるのに、俺たちは猛スピードで動いてる。これじゃ見つけづらいよな」
 同じ動いている状態でターゲットを狙うものでも、勝手が違うのだ。
「っていうか……わざわざ乗らなくても、ここから探せるんじゃないの……?」
 琴音が、ゲッソリしながら言った。
「あっ!」
 ローラーコースターのコースは別に隠されているわけじゃない。マシンに乗らずとも十分全景が見れるようになっているのだ。
「そ、それも、そうだな」
「なんで気付かなかったんだ……!」
 条件反射で乗ってしまったらしい。
「うぅ、最悪の無駄骨だわ……」
 琴音は吐き気に耐えながら涙目になった。
 三人は階段を降りて下からレールを見上げた。
「ん~、どっかに怪しい場所は無いか……?」
「それにしても、すっげぇでっけぇなぁ!見てるだけでワクワクする!!」
「はぁ、ある意味羨ましいわ、その性格」
 三人はレーンをくまなく探す。
「う~む……ローラーコースターで先に進むための仕掛けか……。
入り口と出口が違うコーヒーカップと違って、普通に乗っても、マシンはコースを一周するだけ。となると別のコースに進むための何かがあるはず……!」
 タケルは、一つ一つ推理しながら探っている。
「おぉ、なんかタケル、『バカヤロウ』みたいだ……」
 そんなタケルをシュウは羨望の眼差しで見ていた。
「あれは……!」
 そして、タケルが何かに気付いた。
「皆、アレを見てみろ!」
 タケルが、レールのある一部を指差す。
「なになに?」
「なんか見つけたの!?」
 タケルが指したところには、コースターが最終コーナーを曲がり、ホームストレートに入るところで、分岐点とそれを切り替えるためのレバーがある。
 更に、その分岐点したレーンは謎の古びた建物の中へと続いている。
「多分、あれが正解だ」
「なるほど、あそこを狙い撃てばいいんだな!」
「そういう事だろうな」
 早速、タケルがレバーに向かってショットする。
 ガキンッ!
 しかし、丁度レーンに阻まれていて狙えない。
「くっ!ここからじゃ無理だ!!どうしてもレールに邪魔されちまう!」
「よし、ブレイグのパワーで邪魔なレールをぶっ壊して……!」
 ブレイグを構えるシュウにタケルは突っ込む。
「アホ!それじゃ本末転倒だろうが!!」
「あ、そっか」
 レール壊したら先に進めない。
「狙うにはマシンに乗った状態じゃないと難しそうだな。だが、あの速度でまともに狙い撃ちするには……」
 グリップモードのレックスでもさすがに無理だろう。
「一撃必中は、まず不可能ね……でも、レバーは高低差の無いストレートの横にあるから、高さを変えずに平行連射していけば一発くらい当たるかも」
「そりゃそうだが、そんな事が出来る奴は……あっ!」
 琴音の案に、タケルは無理だと言いそうになるが、何かに気付いた。
「……スパークグルムなら、不可能じゃない」
「確かに、スパークグルムのあの機能なら、不安定な状態でも不動の連射が出来る」
「???」
 シュウには分からない。
「だが、大丈夫かお前?さっきだってまともに乗れてなかっただろ」
「……タケル、あたしは目を瞑ってるから。なるべく私の体が動かないように押えてて、それからターゲットに近づいたら発射するタイミングを教えて。
あたしはそれだけを頼りに連射するから」
「分かった」
 琴音の案に、タケルはしっかりとうなずいた。
 そして、三人は再びマシンに乗る。
「スパークグルム、シールドフットモード!」
 琴音はスパークグルムの左肩についているシールドを取り外し、フットの裏につけた。
「うわっ、その盾って付け替えが出来るの!?」
 見た事無いグルムの形態にシュウは驚いた。
「あぁ。グルムのシールドは元々スタッドについてるんだ。だから、同じスタッドを付けているフットの裏にも付けられる」
「そして、シールドは摩擦力の強い素材で出来ているから、この状態で接地させれば、ローラーコースターに乗りながらでも機体は安定する!」
「へぇ、そんな機能があったんだ……」
 琴音はマシンの縁にグルムを乗せる。
「それから……」
 そして、更に琴音は持ち手を肩グリップからワンサイドグリップに変えた。
「え、なんで持ち方変えるんだ?」
「グルムのショルダーはサイドグリップのためだけじゃなく、ワンサイドグリップでの安定性を上げる効果もあるの」
「サイドグリップだと、動きながらでも機体をしっかり保持できるし、装填する時に手が邪魔にならない。
だが、力の支点がどうしてもズレるから真っ直ぐ力が伝わらないんだ」
「ワンサイドを使ったセンターグリップの片手持ちなら、力が真っ直ぐに伝わるから威力や精密さが必要な連射をする時には有効なの」
「へぇぇ~」
 よく分かりました!
 更に更に琴音は、ストレートマガジンの上にありったけのビー玉を持った左手を乗せた。左手もマガジン代わりとして大量のビー玉を補充しているのだろう。
「機動力は下がるが、乗り物自体が動いてくれてグルムは動かす必要無いからな。後は俺次第だ」
「頼むわよ、タケル。あたしはずっとこの姿勢を保つから、ブレない様にしっかり押さえつけてね。タケルの合図でありったけの玉を連射するから」
「任せろ。何年一緒のクラブにいると思ってんだ」
 タケルと琴音は小さい頃から同じチームにいる、いわば幼馴染のようなものだ。息もピッタリだろう。
「……変なとこ触ったら承知しないわよ」
「するかっ!」
 ピッタリ、だろう、多分。
「じゃあ、安全バーのロックするぜ」
 それがマシンのスタートボタンのようなものだ。今はタケルも琴音も動けないので、シュウがスタート役をする。
「あぁ、頼む」
「よしっ!」
 安全バーのロックをする。数秒後にマシンが動き出した。
「……!」
 やはり琴音は怖いのかギュッと力強く目を閉じている。
「大丈夫だ、安心しろ。お前はただ撃つことだけに集中すればいい」
「う、うん……」
 最初の急勾配の坂に突入する。
 右へ左へと大きく揺れるマシン。
「っ!」
 やはり、怖さは変わらない。でも、琴音は不思議と安心していた。
 視覚を遮断している今、感覚は聴覚と触覚のみ。
 そして、最も大きな感覚は、肩を抑えてくれているタケルの手と、手にしっかり持っているグルムの感触。
 それが心の支えとなっていた。
「いいやっほおおお!!やっぱ楽しい~~!!!」
 いや、こんな時でも能天気なシュウのせいで恐怖感が薄れただけなのかもしれない。
(人の気も知らないでこいつは……!)
 そして、ついにマシンはホームストレートに差し掛かる。
「よし、琴音今だ!!」
「オッケー!!」
 タケルの合図とともに琴音は凄まじい勢いで連射する!
 ストレートを駆けるマシンに乗った状態で放った連射は横一線に並んで分岐切り替え用のレバーへと向かっていく。
 ガコンッ!!
 放ったうちの一発がレバーにヒットする。
 レールが切り替わり、分岐点を通過する。と同時にマシンの速度も下がった。
 マシンは古びた建物の中へと入っていく。
「やったぞ琴音!成功だ!!」
「ほんと?」
 琴音はパッと目を開いた。
 しかし、周りが真っ暗で何も見えない。
「随分、暗いわね」
「あぁ。建物の中に入ったは良いんだが、明かりも何も無いみたいだ」
 マシンが止まる。どうやら終着点みたいだ。
「とりあえず、降りて先に向かうしかないな」
 三人は、マシンから降りて先に進む事にした。
「こう真っ暗じゃどうしようもないなぁ」
「不気味なところね……」
「あ、見ろよタケルことねぇ!」
 シュウが、床を指差す。そこには蛍光塗料で書かれた矢印が淡く光っていた。 
「順路だ!よし、これに沿って行こう!!」
 ヒュ~ドロドロドロ
 その時、不気味なBGMが流れたかと思うと、琴音の顔にピトッと冷たいものがあたった。
「きゃっ!……な、なにこれ……」
 段々暗闇に目が慣れてくる……。
「ひっ!」
 目の前には、釣竿でコンニャクをぶら下げたのっぺらぼうが立っていた。
「いやあああああああ!!!」
 琴音はその場でへたり込んでしまう。
「大丈夫か!?」
 ドキュンッ!!
 シュウは咄嗟にのっぺらぼうにショットを放つ。
 バーーン!!
 そのショットの衝撃でのっぺらぼうは倒れた。どうやら機械仕掛けの人形だったらしい。
「なんだ、ただの人形じゃんか」
「どうやらここはお化け屋敷みたいだな」
「さ、最悪……」
 琴音はタケルを手がかりに、震える足で立ち上がった。こういうときでかい図体のタケルは便利なのだ。
 う~ら~め~し~や~~~~。
 と、地の底から響くような声が聞こえたかと思うと、周りから、お岩さん、カラカサ、ろくろ首…などの妖怪が襲い掛かってきた。
「ひぃぃぃぃぃ!!!!」
 涙を流しながら琴音はタケルの後ろに隠れる。
「だああもう、やりづらい!!」
「ここは俺に任せろ!!おりゃああああ!!!」
 襲い来る妖怪達にシュウはショットをぶち込んでいく。
 機械仕掛けのそれはあっさりとぶっ壊されていく。
「へへ~ん!お化けだろうがなんだろうが、ブレイグの敵じゃねぇぜ!!」
 お化け屋敷も何のその、シュウは笑顔でガッツポーズを決めた。
「怖いもの知らずって、あんたみたいな事を言うのね……」
「って言うか、お前が怖がりすぎだ」
 さすがのタケルも琴音の異常なまでの反応には呆れてしまった。
 その時だった。
 バーーーーン!!!
 タケルの影に隠れていた琴音のシャドウボムが爆発してしまった。
『おおっと!!ここで、仲良しファイトクラブの佐倉琴音君のシャドウボムが爆発!琴音君はここでリタイヤだ!!』
 ジンのアナウンスが鳴り響く。
「えっ……」
 訳が分からず呆然とする琴音。
「なんだ!?何が起こったんだ!?」
「敵襲か!!」
 素早く身構えるタケル。しかし、どこにも敵の姿が見えない。
「ってか、今の発射音も何もしなかったぞ!!ほんとに撃たれたのか!?」
「現にビーダマンじゃないと破壊できないシャドウボムが爆発したんだ!俺たち以外のビーダーがここにいるのは、間違いない!!」
 シュンッ!カキンッ!!
「うわっ!」
 音も無く、飛んできたビー玉がシュウのシャドウボムのすぐ床に激突した。あと数センチずれていたらシュウがやられていただろう。
「ちっ、外したか……」
 どこからか、ボソッと小さな声が聞こえた。
「くっ、マジで誰かいるのか?!」
「琴音!とりあえずここは俺たちに任せろ!お前は非常口か何かを見つけてここから脱出するんだ!!」
「え、あ、あたし一人で!?」
 とは言え、リタイヤしてしまった以上ここにいても足手まといになるだけだ。
 琴音は涙目になりながらトボトボとその場を離れていった。
「くそっ、こんな暗闇じゃ見づらいし、音も無く迫ってくるショットをどう対策すればいいんだ!?」
「落ち着けシュウ!暗闇なのは相手も同じ!とにかく出口に向かって走るんだ!!
動いていればそうそう当たるもんじゃない!敵とのバトルは見晴らしの良い場所でやるんだ!!」
「そ、そうだな!!」
 ダッ!!
 シュウとタケルは駆け出した。
「むっ、外に出て応戦する気か。そうはさせない!!」
 シュンッ!
 謎の影が俊敏にジャンプしたかと思うと、シュウとタケルの前に現れた。
「なっ!なんてすばやい動きだ!!」
 謎の影の姿が徐々にはっきりしてくる。
「フフフ。仲良しファイトクラブ。ここから先へは行かせない。この隠忍シノブとインビジライヤが相手をする!」
 それは、忍者の姿をした女だった。
「ご、ゴキブリみたいだ……!」
 素早い動きと黒ずくめの格好に、シュウは思わず呟いた。
「ゴキブリではない!妾はくノ一、女忍者だ!」
「女ニンジン?女の野菜なら俺はメークイーンが好きだ!!」
「わ、妾だってニンジンよりもジャガイモの方が好きだが……」
「シュウ、お前は口を開くな」
 見かねたタケルは突っ込んだ。
「お前か、琴音をやったのは」
「フフフ、これはサバイバルバトル。油断している方が悪いのさ」
 と言っているうちに、シノブはインビジライヤを構えてショットを放った!
 やはり、発射音がしない。不意をつかれたタケルはなんとかかわせたものの、体勢を崩してしまう。
「くっ!」
「今だ、藩屏!」
「御意でござるよニンニン!!」
 バッ!影からまたも誰かが飛び出したかと思うと、物凄い連射の雨が襲い掛かってきた。
「タケル!!」
 シュウがそのショットをパワーショットで弾き飛ばす。
「悪いシュウ!」
「くそ、また変なのが現れた!!」
 藩屏と呼ばれた少年も現れた。今度は男忍者のようだ。
「拙者は服部藩屏(はっとりはんぺい)!インビジハリアーの連射をとくと喰らうでござるよ、ニンニン!!」
 ズドドドド!!
 インビジハリアーから物凄い量の連射が襲い掛かる。
「な、なんだアイツの動き!まるで手裏剣を投げてるみたいだ!!」
 そう、藩屏は、手裏剣のようにトリガーを掌で擦りながら撃っている。あの連射の秘密はそれだろう。
「音も無く相手を襲うインビジライヤ。手裏剣のようなモーションで連射するインビジハリアー……まさに忍者チームってわけか」
「でも、真正面からのバトルだったら俺たちだって負けねぇぜ!」
「ああ!行くぞ、シュウ!!」
 シュウとタケルも負けじと応戦する。
 インビジハリアーのショットは全て弾かれてしまった。
「ちっ、やはり真正面からは無理でござるか、ニンニン」
「あの作戦で行くぞ、藩屏!」
「御意!」
 サッ!と二人が物陰に隠れる。
「あぁ、卑怯だぞ!!」
「これが忍者の戦い方でござるよ、ニンニン!!
 ズドドドド!!
 物陰から連射が襲い掛かる。
「けっ!お前のショットは発射音でどっからくるか分かってんだ!当たるもんか!!
 シュウとタケルはそのショットをかわしていく。
 ドンッ!
 かわしている間にシュウとタケルがぶつかってしまった。
「あ、わりっ!」
 隙が生まれる。
「今だ!」
 その隙をついて、インビジライヤの音の無いショットが襲い掛かる。
「ぐっ!」
 カキンッ!
 間一髪でそれをかわすが、本当に危なかった。
「なるほど、インビジハリアーの連射はあくまで陽動で、トドメはインビジライヤの奇襲攻撃ってわけか。
連射に気を取られてちゃ、音も無いショットに反応する事は不可能だからな」
「どうすんだ、タケル」
「だが、特別ビーダマンのパワーが優れているわけじゃない。タイマンに持ち込めばどうにでもなる!シュウ、二手に分かれるぞ!!」
「へっ?」
 ダッ!とタケルは出口とは反対側に駆け出した。
「お、おい!」
「シュウ!お前は出口に向かって走れ!!」
「わ、分かった!」
 シュウは出口に向かって走る。
「ふふふ、分断作戦か」
「甘いでござるな、ニンニン。どの道出口までは一本道。あのタケルとか言う奴はいずれにせよ出口に向かわなければならない」
「そう、出口に向かってるシュウって子だけを狙い打ちにすれば、逆走した奴は無視すれば良い」
 そう言って、二人はシュウを追いかけていく。
「うわわ、二人来た!!なんでお前らどっちかタケル追いかけないんだよ!?タケルほっといていいのかよ!!」
 逃げながら、シュウは二人に抗議する。
「逆走した所で、出口に向かわなければゴール出来ないんだ。タイムロスしてる奴なんかをわざわざ相手にする必要はないだろう」
「くっくっく、逆に2VS1に持ち込めて、拙者たちとしては好都合でござるよ、ニンニン!」
 これは、タケルの作戦ミスだ。
「くそっ!こうなったらせめて出口にいって、広い場所で戦ってやる!!」
 シュウはついにお化け屋敷から出る。
 外は、特にアトラクションは無く、普通に外だった。
「よし、ここなら隠れる場所はねぇぞ!」
「でも、2VS1のこの状況で私たちに勝てるかしら?」
「あのタケルって奴が作戦ミスに気付いて戻ってくる前にお前を仕留めてやるでござるよ、ニンニン」
 二人がジリジリとシュウに詰め寄る。
「やってやるさ!俺とブレイグの力で!!」
 チャキ……!三人がビーダマンを構える。
「いっけえええ!!!」
 そして、同時にショットを放つ!!
 ズドドドド!!
 しかし、シュウは二人分のショットに耐えなければいけない。さすがに攻撃に転じる事は難しく、防戦一方。
「くっそぉ、こんな所で負けてたまるか!せめて、タケルが戻ってくるまで耐えるんだ!ブレイグ!!」

        つづく

 次回予告

「予選から波乱万丈だぜ!忍者ビーダー達によって、早くもことねぇを失った俺たちは苦戦を強いられてしまう。
しかも、途中のトラップによって、俺とタケルは離れ離れになってしまったんだ!!
くっそー、こうなったら、俺一人でも戦ってやる!!
 次回!『分断!シュウとタケル ゴールに辿り着くのは?!』
熱き魂で、ビーファイトォ!!」

 



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