弾突バトル!フリックス・アレイ 超X 第30話「傷だらけの希望」

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第30話「傷だらけの希望」

 

 GFCサマー大会はとんでもない展開になってしまった。
 セレスティアのリーダー、宍戸レイナの戦略によってあの不動ガイが撃沈。
 更に、イクヲリティーを付けたフリッカー達100人が横並びぶっちぎりの同時1位という前代未聞の事態になってしまった。

「100人が同時に1位なんて……!な、なんとかしなきゃ!」
 達斗は支給されている端末のマップを見る。シャングリラの場所やプラチナターゲットの位置、フリッカーの密集度などが確認出来る。しかし、現在地から遠くなればなるほど解像度は低くなる。
「こんなところでチマチマやってても勝てない!やっぱり、プラチナターゲットを狙おう!」
 シャングリラの存在があるせいか、今回のプラチナターゲットはいつもよりも得点が数倍高い。しかもプラチナターゲットを狙って集まった他フリッカーを倒せば更に得点も加算する。
 リスクは高いが、逆転を狙うならこれしかない。

 達斗は、道中ターゲットをそれなりに倒しつつもプラチナターゲットのある洞窟の入り口へ向かう事にした。

「いけぇ!スプリントヴァーテックス!!」
「あぁ、アクリルマゲターノ!!」

アクリルマゲターノ

 バキィ!!
 同じように考えているフリッカーはかなりいるようでフリッカーへの遭遇率も上がり得点を稼げる。
 しかし、それと同じようにダメージを受けてしまうし、時間も食うからフリッカーとの遭遇が必ずしも良いものというわけではない。

「絡め!ルブケート!」

 長い紐を駆使した機体が広範囲攻撃でマインヒットしてくる。
「しまった!でも、反撃だ!!」
 ダメージは喰らいつつも、達斗は順調にプラチナターゲットへ近付いていった。

 ……。

 そしてついに、マップの示すプラチナターゲットのある洞窟の入口にたどり着いた。
「よし、一番乗りだ!これで逆転を……」
 達斗が周囲を警戒しつつ洞窟へ入ろうとした瞬間……!

「甘ぇよ」

 シュンッ、バゴォォ!!
 横からバネギミックを搭載したプロジェクティル(射出物)が飛んできて達斗の足元で着弾。
「っ!」
 達斗は素早く地面を蹴って後方に下がってそれを回避したが、砂煙によって前方を塞がれてしまった。
 そして砂煙が晴れると同時に現れたのは……。
「的場、テル……!」
 セレスティアの射手座フリッカー、的場テルだった。
「こっから先には行かせないぜ」
「プラチナターゲットに行くには、こいつを倒さなきゃいけないのか……!」
 達斗は戦闘体制に入るのだが……。
「悪ぃが、戦う気はねぇんだ」
 テルは達斗から背を向けて洞窟の入口へ向かってプロジェクティルを放った。どうやらフリップスペル『ラピッド』を発動していたらしい。
 バシューン!バゴォォォ!!!
 何度も何度も洞窟入口の天井へ向けてプロジェクティルを放ちまくる。
「ま、まさか……やめろぉ!!」
 もう遅い。
 ガラガラガラガラ!!!
 度重なる衝撃によって洞窟入口の天井が崩れて瓦礫にによって入口が塞がれてしまった。
「はっはっはっ!!!これでもうプラチナターゲットは狙えないぜ!!!」
「こ、こんな事したら、お前だってプラチナターゲット狙えないじゃないか!」
「バカか?俺がプラチナターゲット撃破したら帳尻合わせが面倒だろうが。ハナッから狙う気はねぇよ」
 そう言いながら、テルは機体を回収してその場を去ろうとする。セレスティアの目的は全員で同点数のまま一位を取る事なので、テルだけが高得点を得るわけには行かない。この行動は妥当ではあるのだが……。
「待て!逃げるのか!?」
「戦う気はねぇっつっただろ」
「っ!!」
 達斗は咄嗟にスプリントヴァーテックスを構えてテルへ向けてシュートするが、テルは素早く瓦礫の影に隠れた。
「戦え!フリッカーなら、逃げずに戦え!!」
「うぜぇよ」
 吐き捨てて、テルは今度こそ去って行った。
 何も出来る事がなくなり、達斗はせめて時間いっぱいまでターゲットや遭遇したフリッカーと戦いながらポイントを稼ぐも、そんなものは雀の涙。徒党を組んで平等にポイントを獲得していくセレスティアには追いつけないまま午前の部は終了した。

『終了でーーす!!さぁ、サマー大会前半戦はとんでもない事になりました!!なんと一位は100人!全員が圧倒的な得点で横並びになっています!前代未聞のこの事態!果たして、この大会はどうなってしまうのでしょうか!?』

 午前の部が終わり、休憩時間に入る。
 達斗と翔也はバーチャルマシンから出て落ち合った。2人の表情は沈んでいる。

「タツ……すっかりやられちまったな、俺達」
「うん……何も出来なかった……」

「「はぁぁ〜〜〜」」
 2人は失意のまま大きなため息をついた。

「いつまでも凹んでても仕方ねぇ。飯食いながら作戦会議しようぜ」
「うん、そうだね……」

 2人は気を取り直して施設内の飲食店へ向かう事にした。

「マサノブ!お前どう言う事だよ!?」

 その道中、非常階段の方から怒鳴り声が聞こえてきた。
 気になって覗き込むと、普段は人のあまり通らないそこで2人と少年が対峙していた。
 怒鳴っている方の少年は、あの二代目小竜隊のリーダー、リュウだった。リュウは今にも殴り掛からんとする圧力でマサノブと呼んだ少年へ詰め寄っている。

「急に小竜隊辞めたかと思ったら、あんな妙な組織の言いなりになんかなって!」
「別に、何を辞めて何に入ったって、僕の勝手だよ……」
 マサノブは目を逸らしながら答える。
「なんだよそれ……俺達のダントツの誓いはどうしたんだよ!!」
「もう、うんざりなんだよ……勝つとか、負けるとか……」
「うんざりって、本気で言ってるのか……!」
 ヒートアップしそうになったので翔也と達斗が慌てて割って入る。
「リュウ!どうしたんだよ……!」
「天崎翔也に、神田達斗……」
 翔也と達斗の姿を見て、リュウのテンションも少し落ち着く。
「もういい?休憩時間短いからそろそろ行きたいんだけど」
 マサノブが静かにそう言って立ち去ろうとする。
「待てよ!まだ話は終わってねぇ!」
 なおも食ってかかろうとするリュウの肩に翔也が手を置いて制した。
「リュウ、さすがにここだといろいろマズイ」
 翔也に言われて、リュウは口を閉じて顔を逸らす。それを確認したマサノブはスッと立ち去って行った。

 一旦リュウを落ち着かせてベンチに座って話をする事にした。
「ね、ねぇ、マサノブって……この間小竜隊を辞めたって言う子?」
 達斗が遠慮がちに訊ねると、リュウは頷いた。
「あぁ。サマー大会の中継観てたら、あいつが出場してる上に妙な戦い方してたからさ。それで飛んできたんだ」
「そっか、そういえばここから小竜隊道場まで近いもんね」
「なぁ、セレスティアって結局なんなんだ?赤壁杯ユース大会でも妙な事やってたけど、なんでマサノブがあんな組織に……」
 まだセレスティアの直接の関わりが薄いリュウは疑問を口にした。
「ここ最近フリックス界で暗躍してる組織だ。まだ謎が多いけど、『全てのフリッカーが平等なパラダイス』の実現を目論んでいるらしい」
「なんだそれ、意味が分からない……いや、そうか、今日の大会のあいつらの戦い方がそれなのか」
「多分……。僕らもあんなやり方には驚いたけど」
「イクヲリティーを着けたフリッカー全員を同率一位にする。そんな事されたら、大会そのものが崩壊するぞ……!」
「マサノブは……小竜隊よりもあんな組織を選んだのか……」
 リュウは悔しげに俯いて歯噛みする。
「リュウ……」
 翔也が落ち込むリュウへどう声を掛けようか迷っていると、達斗が口を開いた。
「……翔也。この大会、絶対に勝とう!ダントツの頂点は、分け合うものじゃない!突き抜けるものなんだ!」
 リュウの落ち込んだ姿を見てたまらなくなったのか、達斗の声は強かった。
「そうだな!あいつらにダントツにおもしれぇバトルってのを見せつけてやろうぜ!」
 翔也も達斗に同調し、改めて勝利への決意を固めたのだった。
「天崎翔也、神田達斗……頼む、ここじゃ俺は手出し出来ない……だから……!」
 リュウは縋るような目で翔也と達斗へ向き直った。そんなリュウに2人は強く頷いた。
「うん、任せてよ!」
「ああ!それに、リュウはリュウでやる事があるもんな」
 翔也に言われてリュウはハッとし、照れ隠しに顔を背けて口を尖らせた。
「……まぁな。手間のかかる新人の指導もあるし」
 そんなリュウの態度に、達斗と翔也の頬が緩んだ。

「手間のかかる新人で悪かったアルね!」
 声がして振り向くと、そこにはむくれながら立っているサンニャンと周りに小竜隊メンバーがいた。
「みんな……」

「まったく、大会前の大事な練習を抜け出すとは困ったリーダーだ」
「でもリュウらしいぞぉ!」
「さぁ、戻りましょう先輩!」
 テッペイ、サイヤ、トウジから温かい言葉をかけられ、リュウは素直に頷いた。
「……そうだな、悪かった。帰って練習再開だ!」
 すると、サンニャンがさっそくリュウの腕に絡みついて引っ張った。
「早く行くアル!サンニャン、リュウ先輩にもっとチームプレイの極意を伝授してもらいたいアルよ!!」
「ちょ、おまっ、引っ張んな!大体新人のくせに図々しいんだよお前はぁ!!」
 サンニャンに引っ張られながら歩いていくリュウと苦笑しながらついていく小竜隊メンバー達を眺め、達斗と翔也は和やかに笑った。

 その様子を、的場テルが陰から伺っていた。
「……けっ」
 テルはつまらなそうに短く吐き捨てて立ち去った。

 ……。
 一悶着も終わり、達斗と翔也は適当にハンバーガーを買って昼食を取っていた。
「良いチームになりそうだな、新生小竜隊」
「うん。赤壁杯で頑張れば、きっとマサノブ君にも皆の想いは届くよ」
「だな。まぁ、サンニャンが足引っ張らないかだけが懸念点だけど」
「それはさすがに、即席メンバーだから仕方ないね……」
「ん、待てよ、足を引っ張る、か……」
 翔也が、自分の言った言葉を反芻し始めた。
「どうしたの翔也?」
「閃いたぜ、あいつらへの対抗策が!」
 翔也は思いついた作戦を達斗へ伝えた。

 そして、午後の部が始まる。

『さぁ、皆さん!休憩はバッチリ取れましたかぁ!?いよいよ午後の部開始の時間になりました!スタンバイしてください!!』

 フリッカー達は再びバーチャルマシンに乗り込み、バトルの準備を整える。

『では、GFCサマー午後の部スタートです!』

 バッ!!!
 スカイダイビングを経て、それぞれ着地する。

「よし、いくぜ、皆!」
「うん!」
「「はい!!」」
 達斗と翔也、そしてタダシとタカシもほぼ同じ位置に着地して共同で行動していた。
 バトルロイヤルではあるが、共闘してはいけないわけではない。
 翔也の思いついた作戦の一つがそれだった。会場の中から実力があり協力得られそうなメンバーを探しだして共同戦線を張る。
 ちょうどタダシとタカシがいたので早速話を持ちかけてみた。
 タダシとタカシはお互い面識はさほどなかったが、どちらも比較的温厚なタイプなので問題なくこの共同戦線に賛同してくれた。
 ガイもいてくれれば心強いが、性格的に無理だろう。

 共同戦線を張っているとは言えポイントは個別だ。ターゲット撃破などをしてもポイントは共有されない。
 ならば、この共闘にどんな意味があると言うのか……?

「あ、いました!あそこです!」
 タダシが指差した方向には、少し遠いがイクヲリティーをつけたフリッカーが二人ほどいた。
「よし、奇襲掛けるぞ!こっそり近付こう!」「うん!」
 翔也達は機体を回収して物音を立てないように進んだ。

 イクヲリティーを着けた2人はぎこちない仕草でイクヲリティーの指示を確認しながらプレイしている。
「え、えっとぉ、イクヲリティーの指示だと次は俺があのターゲットを一つだけ狙えばいいんだよな。いけ、ガイスマ!」
 バシィ!

ガイスマ

 ガイスマと呼ばれた機体がターゲットを撃破する。が、ターゲットはいくつか密集していたので一気に複数倒してしまった。

「あ、やべ!俺の得点増えすぎた!」
「いや、こう言う時は僕が君をビートヒットすればいいってイクヲリティーが言ってる」
「なるほど。じゃあ頼む」
「うん!いけ、ハイダッシュセミー!」

ハイダッシュセミー

 バキッ!
 ハイダッシュセミーがガイスマをビートヒット。
 これでガイスマの得点が少し下がり、ハイダッシュセミーの得点がプラスされる。
「あとは少し時間が経てば均等になるって」
「さすがイクヲリティー!」
 100人を同一得点にしながらイクヲリティー以外のフリッカーを圧倒すると言うのは並大抵の計算力ではない。しかも、徒党を組ませて攻撃させ合うことで得点の均等性を保っているのだ。

「インスタントフィールド!いっけぇぇ!スプリントヴァーテックス!!」
「グランドパンツァー!!
 達斗とタダシの奇襲攻撃でガイスマとハイダッシュセミーがフリップアウトしてしまう。

グランドパンツァー

「「うわあああ!!!」」
 かなり軽い機体だったらしく一撃でオーバーディスタンスダメージを受けて撃沈してしまった。

「よし、次行くぞ!」
「うん!」
 イクヲリティーフリッカーの撃破を確認すると翔也達は機体を回収して周りにあるターゲットなど見向きもせずに駆け出した。

「おっ、あいつら機体出してないな!ダイレクト狙いだ!ヴァリアランサー!!」

 機体を回収していれば機動力は上がるが、その状態で攻撃を受けると一発KOされてしまう。
 当然、他フリッカーの良い獲物なのだが……。

「ポラリス!!」
 最後尾にいたタカシが背後からの気配に気づいてリベリオンポラリスをシュートして迎撃しヴァリアランサーは転倒してしまった。

「ちっ、気付かれたか!くそ……!」
 転倒して身動きが取れなくなったので、これは狙い撃ちされてしまうと覚悟を決める。
 しかし、タカシは即座にポラリスを回収して翔也達と合流して走り去っていった。
「な、なんだぁ?あいつポイントはいいのかよ……」
 絶対絶命だったはずなのにスルーされてしまい、ポカーンとしてしまった。

「サンキュー、タカシ!ポラリスの防御力かなり上がってるな!」
 翔也は走りながらタカシを称賛した。
「はい!バリアの素材を変えてみたんです!」
 タカシは得意げにTPUになったテンセグリティバリアを見せた。
「あ、また見つけたよ!イクヲリティーフリッカーだ!」
 達斗が叫ぶ。
「おっしゃ!今度は俺が攻めるぜ!いけ!スピニングエイペックス!!」
 スピニングエイペックスはイクヲリティーフリッカーの狙っていたターゲットを先に倒してしまった。

「あっっ!え、えぇとターゲット横取りされた場合はどうすれば……!」
 予定が狂った少年は慌ててイクヲリティーの指示を仰ごうとするが……。
「遅い!インスタントフィールド!!」
「いけ!グランドパンツァー!」
 達斗とタダシが咄嗟に攻撃して吹っ飛ばした。

ペラコバクター・ピロリ

「うわああ!ペラコバクター!!」

『おおっと、どうした事でしょうか!?午前の部終盤から100人のフリッカーが同率一位のまま得点を稼いでいましたが、ここに来て得点にバラつきが出てきています!そのせいなのか、トップ勢の得点追加がストップ!他のフリッカー達も少しずつ追い上げていきます!これは面白くなってきましたよぉ!!』

 メイの実況を聞いて、翔也がほくそ笑む。
「へへ、狙い通りだ」
「うまくいったね、翔也!」
「ああ!」
 翔也の作戦はこうだ。
 100人がAIによる完璧な計算で同得点を維持し続けるつもりなら、こっちは無理に高得点を狙ったり強いフリッカーと戦う必要はなく、イクヲリティーを着けている一般フリッカーを撃沈させていけばいい。
 そうすれば、セレスティアは平等を維持するために下位のポイントに合わせないといけなくなるから得点獲得出来なくなる。
 ただ、この広大なフィールドでイクヲリティーを付けた一般フリッカーだけに狙いを定めるためには、普通のターゲットや他フリッカーは完全スルーして機体回収状態で探索しなければいけない。そうなると無防備になるので他フリッカーにダイレクトヒットを狙われるリスクもある。
 そこで、攻めと守りの視野を広げるためにタダシとタカシへ話を持ちかけて共同戦線を張ったのだ。

「ただ、あんまりイクヲリティーばかりに構ってたら俺たちも勝てないからな」
「うん、残り時間が少なくなったら一旦共闘は解除して大会に専念しよう。そこからは僕らもライバルだ!」
「わ、分かりました!」
「んじゃ、もう一踏ん張りするか!」

 そして、再びイクヲリティーフリッカーを数人見つける。
「うわぁ、見つかったぁ!?」
 既に翔也達の行動はイクヲリティーフリッカー達に勘付かれて通達されているのか、翔也達の姿を目視したフリッカー達は慌てて逃げようとする。

「逃すかっ!」
 翔也達はイクヲリティーフリッカー達を逃すまいと機体を構えるのだが……。

「それはこっちのセリフだ。バカが」

 シュンッ!
 どこからかサジタルバズーカのプロジェクティルが飛んで来た。咄嗟の事な上にプロジェクティルはフリックスよりも小さく軽いので反応出来ないまま、まだ機体を出していないタカシの身体にヒット!
 ダイレクトヒットで撃沈してしまった。

「うわああ!!」
「タカシ!」
「「タカシ君!!」

「ふふふ、これで盾は無くなったわね。インスタントフィールド!」
「いきますわよ!」
 シュン、シュン!!

 

 今度はクローズカルキノスとトリックアクラブがタダシに向かって飛んで来た。
「っ!グランドパンツァー!!」
 タダシは咄嗟にグランドパンツァーをシュートしてダイレクトヒットは回避しようとするが……。
 バキィィ!!!
 クローズカルキノスのハサミ攻撃を受けてバランスを崩したところをトリックアクラブの追撃を受けてしまい、サリアの生成したインスタントフィールドの場外へと弾き飛ばされてしまった。
「そ、そんなぁ……!」
 機動性を重視して防御力を下げていたグランドパンツァーはこの攻撃で撃沈してしまった。
「タ、タダシまで……!」

「ご、ごめんなさい」
「あとはお任せします……!」
 シュィン、シュィン……!
 撃沈した事でタカシとタダシは島の端まで転送されてしまった。

 そして、テル、サリア、クレアの三人が達斗と翔也の前に立ちはだかる。

「お前ら……!」
「雑魚狩りたぁ、随分セコい真似するじゃねぇか」
「まぁ、発想としては悪くないわね」
「ですが、そのくらいイクヲリティーが想定していないと思いまして?」
「……まぁ、そりゃ妨害に来るのが普通だよな」
 翔也と達斗は覚悟を決めて機体をスケールアップさせて戦闘体制になった。

「あ、あの、ありがとうございます!セレスティアの皆さん」
「気にしなくても良いですわ。……それより貴方、得点が低いのではなくって?避難する前にワタクシのクローズカルキノスをマインヒットなさい」
「は、はい!では、失礼します!いけ、文(ブン)ボーグ!」
 バシュッ、バーン!
 イクヲリティー一般フリッカーは遠慮がちにクローズカルキノスをマインヒットした。

「な、何から何までありがとうございました!」
「ノブレスオブリージュ、気にしなくて良いですわ。さぁ、お行きなさい」
 何度も頭を下げながら機体を回収して避難していく。

 翔也と達斗は機体をスケールアップしたばかりのウェイトフェイズの待機中なので特に行動出来ないままその様子を見ていた。
「随分と徹底してるな。自分のHPを犠牲にしてポイントを与えるなんて」
「おーほっほっほ!富の再分配は貴族の責任ですわ」
 翔也の言葉に対してクレアが得意気に高笑いすると、サリアが揶揄うような笑みでツッコミを入れた。
「あら?没落貴族の粟倉家にそんな余裕あったかしら?」
「余計なお世話ですわよ、サリア」
「あら失礼。その奉仕精神は立派だと思うわよ」
「何が奉仕精神だ!どうせイクヲリティーの判断の癖に!!」
 達斗が否定的に叫ぶ。
「それがどうした?お前らにゃ関係ねぇだろ?」
 達斗に対して、テルが挑発するように言った。
「関係あるよ!この大会は僕達フリッカーがダントツ目指して競うためにあるんだ!!そんなインチキみたいな戦い方……!」
 バシュン!!
 達斗が言い切る前に、テルがサジタルバズーカのプロジェクティルを発射してスプリントヴァーテックスを攻撃。ビートヒットを与えた。
「うぜぇよ。いい加減その口閉じろ」
「っ!閉じるもんか!!」
 達斗も反撃としてサジタルバズーカを狙ってシュートする。

 バキィィ!!

「フリックスバトルは!フリッカー達のものだ!お前達なんか、フリッカーじゃない!!」
「黙れっつってんだろが!!」
 達斗の攻撃に対して、サジタルバズーカも更に反撃する。
 バキィィ!!
 互いにビートヒットを仕返し合う泥沼の戦いだ。

 達斗とテルがヒートアップして一騎打ちをしながら少しずつその場を離れていったので、取り残された翔也はサリアとクレアの二人を相手にする事になった。

「あらあら、ではあなたはお姉さん達が相手してあげるわよ」
「覚悟はよろしくて?」
「上等だ!まともなバトルならいくらでも受けてやるぜ!!」
 バシュッ!!
 まずは翔也が素早いシュートで先手を取り、カルキノスとアクラブを同時にマインヒットする。しかもマインを遠くへ弾き飛ばしたので反撃マインを喰らう心配もない。

「早い!」
「さすがね、天崎翔也。……なら、これはどうかしら?インスタントフィールド!」
 サリアがインスタントフィールドを生成しながらシュートする。
(見た感じ、トリックアクラブはマインヒット型。ならこの攻撃は大した事ないはず……受け止めて反撃してやる!)
 翔也は向かってくるシュートに対してステップで前進させた。これで密着したまま停止すればダメージも喰らわないし反撃でマインヒットも狙える。
 バキィィ!!!
 しかし、その予想に反してトリックアクラブは想定以上の火力を発揮してスピニングエイペックスを弾きとばしてフリップアウトしてしまった。
「なに!?」
「ふふふ、蠍の毒を甘く見たわね」
 場外したエイペックスを復帰させながら翔也は驚愕する。
(シュート速度に見合わない高火力……まるでバネ畜勢ギミックだ。でも、トリックアクラブのフロントに変化はない)
 普通バネ畜勢ギミックを仕込んでいる場合は、機体のフロントが伸びるはずだ。
 しかし、トリックアクラブのフロントはシュート前と後で変化がない。
「行きますわよ!ライトニングラッシュ!
「しまっ!」
 ダメージを受けた直後に攻撃を受けてもそのダメージは重複されない。
 その事で油断していた隙にクレアは連続シュートができるライトニングラッシュを発動させた。
 その目的はダメージを与える事ではない。

 シュン!シュン!!
 カルキノスのハサミを広げた状態で何度もシュートしてエイペックスへ超接近する。
「ビンタシザーシュートですわ!」
 そして、フロントアームと連動しているシュートポイントをビンタのようなシュートで勢いよく閉じる事でハサミのようにアームが閉じ、目の前のエイペックスを挟み込んでひっくり返してしまった。
 ダメージは与えられないが、これで転倒スタンだ。一定時間動けなくなる。
「くそっ、そうだった。この機体はこれがあるだった……!」
 この技はメイのライブの時に一度見たはずだったが、自分が経験したわけではないので失念していた。

 その間に再びサリアのアクティブフェイズとなる。
「ふふふ、これで終わりね。サンダーラッシュよ」
 サリアはバリケード2枚消費してサンダーラッシュを発動。2回シュートで確実にフリップアウトを狙う気だ。
(くっ!でも機能はともかくバネギミックで来るなら、攻撃は直線的なはず……!2回シュートだろうと、バリケードを固めれば防げる!!)
「インスタントフィールド!いくわよ!」
 バシュッ!
 サリアは先ほどとほぼ同じ威力のシュートをした。しかし、さっきとは違いエイペックスは弾き飛ばされなかった。
「な、なんだ?今度は火力が出ない……?」
「ふふふ、捕まえたぁ❤️」
 エイペックスはバリケードで踏ん張ってしまったせいでトリックアクラブの大きく広げたアームに捉えられてしまった。
「くっ!」
「もちろん、これで終わらないわよ」
 サリアは2回目のシュート準備でトリックアクラブの尻尾についている分離パーツを外してエイペックスに取り付けた。
 所謂『毒針』と言う奴だ。シュート準備は敵機の位置を変更しないようにしないといけないため、これ以降翔也は取り付けられたパーツの位置を変えないようにシュート準備する事を強いられる。つまり、実質向き変えが出来なくなるのだ。しかも転倒したまま戻す事も出来ない。
「これでもう何も出来ないわね」
 バシュッ!
 サリアは毒針を付けた事で楽にマインヒットを決めた。

 そして翔也のアクティブフェイズになる。
 しかし、毒針のせいで転倒状態から戻す事も出来ずそのままシュートするしかない。
 普通なら詰みだ。
「さぁ、あなたの番よ。逃げも隠れもしないから、お得意のテクニックでお姉さん達を悦ばせてみなさい」
「くっ……!」
「サリア、年下を煽るなんて悪趣味ですわよ」
 と、嗜めつつクレアも笑いを抑えきれていない。
「くっ……くくく……」
 ついに、翔也が俯いてしまった。
「あらあら?もしかして泣いちゃったの、ぼくぅ?」
「くくく……くっ、へへ、へへへへ……!」
 顔を上げた翔也は泣いてはいなかった。それどころか、ニヤケが止まらないようだ。
「なに、気持ち悪いわね……」
 ドン引きするサリアへ、翔也は楽しそうに言った。
「意外とやるじゃねぇか!おもしれぇバトル!!」
「はぁ?」
「何を言ってますの……今の状況分かってまして?」
「負け惜しみかしら?」
 サリアとクリアの疑問をスルーして、翔也は語る。
「俺、ずっとやってみたかった事があるんだ……フリックスってさ、シャーシを接地させなきゃシュート出来ないじゃん?だからさ、逆さにした状態でスピンしたらどうなるのか、試した事ないんだよな……!」
 淡々と、目の前の相手も状況も全て無視して語り続ける。
「え、な、なに?急になんなんですの?」
「ちょっと、怖いんだけどこの子……」
 完全に引いているどころか怖がられているが、翔也は気にしない。
「バトル中に転倒したまま、しかも拘束もされてない状態でシュート出来るなんて……こんなチャンス滅多にないぞ!!何が起きるんだろう……!」
 ワクワクな好奇心を抑えきれない純真な少年のようだ。
「だ、だからなんなんですのよ!?」
「そんな事をして、勝てると思ってるのかしら?」
「勝てるかどうかなんてどうだっていい!俺は、俺は……おもしれぇバトルがしたいんだああああ!!!」

 バシュウウウウウ!!!!
 翔也はインスタントフィールドを生成し、ありったけの力で転倒したままのスピニングエイペックスをスピンシュートした。

 ズギャアアアアアアアア!!!!
 転倒して摩擦が少ないせいか、凄い回転スピードだ。
「す、すげぇ……!いつもと違うスピンだ!」
 そして、凄まじい磁気嵐が発生する。ただし、いつもは上方向に発生する嵐が、転倒しているせいで下に向かって発生している。
「うぉっ!」
 ゴオオオオオオオ!!!
 そのせいで下向きの力が上向きに働いてスピニングエイペックスは揚力を得て浮き上がり、さらに回転力を増していく。
「こ、これは……!」
「なんなんですの……!」
 ブオオオオオオオオ!!!!パシュンッ!
 あまりの回転の遠心力によって、スピニングエイペックスに取り付けられていた毒針が外れて場外へと飛んでいった。

「っ!アクラブの毒針を遠心力だけで外した!?」
 これでトリックアクラブは一部フリップアウトだ。
 そして、徐々に回転力を失ったスピニングエイペックスはゆっくりと降下して着地した。

「は、ははは、すげぇ……ダントツにおもしれぇぜ!!!!」
 翔也は、まるで勝利したかのように飛び上がって喜びを表現した。
「……ふ、ふん、少々驚かされましたけど、そこまで状況は変わらなくってよ!」
「あ」
 クレアに指摘されて翔也も気付く。毒針は外せたけど結局転倒したままだ。
「うーん、やっぱりシャーシは接地させてシュートした方が強いんだな……」
 そんな呑気な事を言ってる場合じゃない。
 バシュッ!
 クレアのシュートによって、またあっさりとスタンを取られてしまった。しかも密着状態になる。
「フリップスペル発動!『ポイズンメルト』ですわ」
 ポイズンメルト……シュート後に密着状態の敵機のバリケード2枚を出すとゾーンに送る。
 これで翔也は無防備になってしまった。
「まぁ、そうだよな……」
 がっくし項垂れる。
 さすがにもう逆転のチャンスはないだろう。
 サリアがエイペックスに向けて狙いを定めている。フリップアウトされるのは確実だ。
「さぁ、これでおしまいですわ!おーっほっほっほっほ!!!」
 勝利を確信し、クレアは高笑いする。
「……」
 サリアは無表情のままトリックアクラブを放った。
 その軌道は真っ直ぐにスピニングエイペックスへ……向かっていなかった。
「え!?」
 バキィィ!!
 トリックアクラブのフロントが一瞬伸びてから縮む。そのギミックで攻撃した機体を場外へと弾き飛ばしてしまった。
(そうか、クランク機構か!それでバネギミックを発動させてもフロントパーツが元の位置に戻るんだ!……って、そんな分析してる場合じゃないな)
 アクラブのギミックを分析している場合じゃない。しかし、アクラブのギミックを解析出来た一番の理由は、今起こった状況にあるのは間違いなかった。

「サ、サリア……どう言うつもりですの……?」
 サリアが攻撃した相手、それは翔也ではなく、仲間のはずのクレアだった。
 翔也がトリックアクラブのギミックを見抜けたのは、サリアが攻撃を仕掛けた対象が自分ではなく第三者だったからだ。
「ふふふ、そこのボウヤはいつでも仕留められるわ。なら一旦放置して、油断している別の敵を攻撃した方が得じゃないかしら?」
「敵……?ワタクシ達は、仲間じゃありませんか!」
 必死に訴えるクレアに対して、サリアは嘲笑する。
「ふふ、相変わらず甘いわねぇ。まぁ、好都合だけれど」
「何を、言ってますの……?」
 狼狽するクレアに、サリアは冷たく言い放つ。
「私は最初から、それこそサインスターズにいる頃から、平等なんてものに興味はないの。だってそうでしょう?アイドルもフリックスも戦いなんだから……戦いに平等なんてあり得ないわ!」
 ギンッ!と目を見開いてクレアを睨みつけた。明らかな敵意だ。
「最初から、ワタクシ達を騙してたんですのね!?」
「えぇ。平等に甘えて腑抜けたところを出し抜くつもりだったのよ!イクヲリティーが世に公認されて皆が腑抜ける今がチャンス!」
「そんな違反行為、イクヲリティーが許すはずありませんわよ!?」
「っ!」
 ビー!ビー!!
 サリアのイクヲリティーから警告音が鳴り響く。
『イハンコウイケンチ!イハンコウイケンチ!』
 バリバリバリバリ!!!
「っ!くっ!!」
 クレアの指摘する通り、イクヲリティーに反する行動をとった代償でサリアの体に電撃が走った。
「ほら、見た事ですわ……!イクヲリティーにはペナルティ機能が備わっている事を忘れまして?」
「ふふ、無駄よ……!」
 サリアは電撃に耐えつつ懐から注射器を取り出してイクヲリティーにブッ刺した。
 すると、イクヲリティーからの電撃が弱まる。
「それは!?」
「私が蠍座のフリッカーだって事忘れてた?イクヲリティーを狂わせる毒くらい用意しているに決まってるじゃないの」
「そんな、イクヲリティーが……!」
「もちろん、それだけじゃないわ」
 サリアは更にイクヲリティーへ毒となるプログラムを注入する。
 バリバリバリバリ!!!
 すはと、イクヲリティーから特殊な電波が発信され、それがトリックアクラブへ降り注ぐ。
 そして、トリックアクラブの姿形が変容していった。

「これが私の本当の愛機、ディシーブアクラブよ!!」
「サ、サリア……!」

『シキュウ、ウラギリモノヲハイジョセヨ』
 クレアのイクヲリティーにこんな指示が出た。
「言われるまでもありませんわ!」
 カルキノスを復帰させたクレアはディシーブアクラブに向けてシュートをする。
 ガキン!
 しかし、全く通じない。

「っ!そんな……!」
「ふふふ、平等のためのリミッターをパージした私の機体に勝てるわけないでしょう?」
 そして、サリアのアクティブフェイズになる。

「さようなら❤️」
 バキィィ!!!
 容赦ない一撃でクローズカルキノスを撃破してしまった。

「きゃああああああ!!!!」
 機体と一緒に吹っ飛ばれ倒れたクレアは、島の端へと転送されてしまった。

「さて、あとはボウヤだけね」
 クレアを倒したサリアが翔也へ向き直る。
「……そっちの事情は知らないけど、ちょっと面白くないな。いつでも仕留められるからって放置されるのは」
「あら、気に障ったのなら謝るわ。ただし、私がボウヤを仕留められなかったら、ね」
「試してみればいい!」
 スタンから復帰する翔也とサリアのアクティブフェイズのタイミングがほぼ同じになった。

「「いけええ!!!」」
 二人は示し合わせるように同時シュートして機体をぶつけ合わせた。
 バキィィ!!
 二体のフリックスはぶつかった瞬間に弾け飛んで場外する。同時自滅だ。
(っ、思ったよりパワーアップしてる……!でもバリケードが無い以上、タイミング合わせて同時シュートで戦っていくしかない……!)
 そう、下手に防御状態で相手のアクティブフェイズになったらもう翔也に勝ち目がなくなる。同時シュートに持ち込んで競り勝つしか無いのだ。
「ふふふ、割と粘るじゃない。素敵よ……ゾクゾクしちゃう❤️」
 サリアは妖艶に顔を赤ながら機体を復帰させる。
(フェイントかけて自滅を誘うか?いや、それで場外しなかったらこっちが無防備になる……ガチンコしかない……!)
 必死に思考を巡らせながらもやはり答えは一つしか浮かばず、覚悟を決めて再度同時シュートの構えを取る。
 その時だった。

 ブオーーーン!ブォーーーーン!!
 先程とは比べ物にならない大きなサイレンが鳴り響いた。
「な、なんだ!?」
「なんなの!?」

『イホウプログラムハイジョ!イホウプログラムハイジョ!』
 イクヲリティーから強い電子ボイスが流れる。
「まさか、ウィルスを自動で解除したの!?」

『ウラギリモノヘタダチニセイサイヲクワエル!!』
 バリバリバリバリ!!!!
 強力な電撃がサリアへ襲いかかる。

「ぎ、ぎゃああああああああ!!!!」

 サリアは悲痛の叫びを上げた。
「っ、これやばいんじゃないか!?」
 目の前で起こっている事態に、翔也はサリアを救うためにエイペックスを構える。
「い、一か八か……いけぇ!!」

 バゴオォォ!!!!
 ディシーブアクラブを弾き飛ばし場外させる。
 撃沈させてしまえばイクヲリティーは機能停止するかもしれない。

 プシュウウウ……!
 翔也の思った通り、機体が撃沈した事でイクヲリティーの制裁は終わった。
 しかし、力尽きたサリアはそのまま倒れてしまい……転送されてしまった。
 後味は悪いが、翔也の勝利だ。
「はぁ、はぁ、びっくりした……タツの奴は大丈夫か?」

 一方の達斗は……。

「いけぇ!スプリントヴァーテックス!!!」
「潰せ!サジタルバズーカ!!!」

 バゴオォォ!!!!
 テルと激しい泥試合を繰り広げていた。
「や、やるな、的場テル……!でも、絶対負けない!!」
「るせぇ!どうでもいいんだよ!こんな戦い、勝ったからなんだってんだ!!」
「僕は勝つ!だってフリッカーだから、君に勝ちたいんだ!!」
「黙れっつってんだろ!何が勝ちたいだ!何が負けたくないだ!!そんなもん、そんなもんのために……!!」

 ピピピ、ピピピッ!
 その時、テルのイクヲリティーから電子音が鳴る。

『アシドメセイコウ、タダチニリダツセヨ。ハイチヘモドレ』

「離脱しろ、だと……!」
 そもそもテルの目的は達斗を倒す事ではなく、イクヲリティー狩りをしている達斗の行動を妨害をする事だ。ならその目的は十分に達したと言う事だろう。

『ソッコクセントウヲチュウシシ、タダチニリダツセヨ』

「ざけんな!!まだアイツを仕留めてねぇ!!!」

『リダツセヨ』
 イクヲリティーは無機質に命令を繰り返すのみだ。

「うる、せぇんだよ!!!」
 テルはイクヲリティーを外して地面に叩きつけた。イクヲリティーは煙を上げて破損する。
「ま、的場テル……!」
「神田、達斗……オメェにだけは、負けねぇ……!ぜってぇぶっ潰す!」
「ああ!勝負だ!!!」

 二人は同時に機体を構える。
 テルは射撃ではなくシュートの構えだ。

「いっけええええ!!!」
「つぶせええええ!!!」

 バーーーーーーーーーン!!!
 二人の想いを込めたシュートがぶつかる。
 しかし、シュートに関しては完全に素人なテルが達斗に勝てるはずもなく、サジタルバズーカは大きくすっ飛ばされて場外。
 アクティブアウトで撃沈してしまった。

「はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ……ぐっ、ちくしょおおおおお!!!!!」
 テルは肩で息をした後に、悔しさの雄叫びを上げた。
「テル……」
 テルは撃沈した機体を回収して達斗へ向き直る。
「……次は、負けねぇからな」
 それだけ言うと、転送させられてしまった。
「うん、受けて立つよ」
 消えていったテルへ、達斗は再戦を誓った。

 しかし、息つく暇もなく敵意の籠った声が響き渡る。
「セレスティアメンバーが三人も撃沈されるとは、情けない」
「っ!」
 達斗の前に、宍戸レイナがゆっくりと歩いてきた。
「こうなった以上、残ったものだけで平等な世界を作るしかない。だがその前に……貴様にはそれなりの報復を受けてもらう!」
 怒り心頭と言った様子の宍戸レイナ。百獣の王たるライオン型機体を使うだけあって、その威圧感はすごい。
 機体を構えるレイナに合わせて、達斗もシュートの構えを取る。

「「いけええ!!」」
 バーーーーン!!
 同時にシュートしてぶつかる二機、どちらもそこまで弾き飛ぶことはなく場外はしなかった。
 しかし、レイナのマイティバリオンはこの激突によって変化が起きていた。

超自律兵器起動!
 衝撃を利用して機体を自動変形させたのだ。
 しかもその形態は今までに見た四足歩行型ではない。

 二足歩行の人型ロボット形態だった。
「ヒューマノイドフォーム!この形態を見せるのはこれが初めてだ。光栄に思いな!」
「まだこんな形態が……!」
 レイナの方がウェイトカウントが短いようで、先にレイナのアクティブフェイズになる。
「バリオンソード!!」
 マイティバリオンのヒューマノイドフォームは右手に大剣を装備している。それをスプリントヴァーテックスへ向けて振り下ろした。
「うわあああ!!!」
 超自律兵器による格闘攻撃で大ダメージを受けてしまう。もうスプリントヴァーテックスのHPは残り少ない。
「く、でも、超自律兵器なら倒せばいいだけ……!」
 そう、転倒させてしまえば解除できる……!
 達斗はスプリントヴァーテックスをマイティバリオンに向けてシュートするが……!

「フルードジャッグ!」
「シュラーフアリエス!」
「ランブルブルルルルルルルル!!!」
 突如三機のフリックスが現れてスプリントヴァーテックスの行手を阻んだ。
「あっ!」
 いくらスプリントヴァーテックスとは言え、突如現れた三機の壁を突破するのは難しい。

 そして、身動きが取れなくなったスプリントヴァーテックスへレイナは狙いを定める。

超感覚醒
 超感覚醒……バリケードを消費した枚数に応じた一定時間、超自律兵器形態の自機を動かして、移動、射撃、格闘を自由に何度でも行えるコマンド。

 レイナはマイティバリオンの脚を動かしてスプリントヴァーテックスの目の前まで移動させる。関節の自由度が高い二足歩行形態だからこそ出来る歩行移動だ。

「これで終わりだ!」
 大剣を振り翳して格闘の構えを取る。
「っ!」
 達斗が覚悟を決めた時だった。

「ニュークリアプレッシャー!!!」
 突如響くガイの声。
 すると、フロントに5体のチープゼニスを抱えたままマッシブゼニスが突っ込んできた。

「なんだ!?」
 バキィィ!!!
 チープゼニス&マッシブゼニスの塊が、スプリントヴァーテックスやそれを抑え込んでいた三機のセレスティアフリックスを弾き飛ばしてマイティバリオンの前に出る。
「っ、不動ガイ!?」
「前半戦の礼をさせてもらう、これは手土産だ!」
 レイナは振り下ろした剣の勢いを止める事はできず、そのまま5体のチープゼニスとマッシブゼニスを大剣で薙ぎ払ってしまった。
 バーーーーン!!!
 合計6体もの機体に格闘攻撃による大ダメージを与えてしまった上に、撃沈もしてしまい大量の得点がレイナに入ってしまう。
「ぐ、ぅ……!」
 レイナの顔が歪む。
 イクヲリティーフリッカーの中で、レイナの得点が突出してしまい一位になってしまった。
 この点差は残り時間で普通のターゲットを狙うだけではとても埋められない。

「付き合わせて悪かったな」
 ガイが後ろで待機しているゼニス軍団達に謝罪した。
「いえ、元々自分達はリタイアのはずでしたし!」
「まさか、ガイさんからリザレクトジュエルを分けていただけるなんて……!」
「こうやって共闘出来るなんて、夢のようです!」
 ゼニス軍団はそもそも午前の部で撃沈してリタイアしたはずだが、ガイからリザレクトジュエルを分けてもらい復帰出来たようだ。
「うぅ、お役に立てて、光栄ですぅぅ……」
 ゼニス軍団は涙を流して喜んでいる。
 そして、ガイとゼニス軍団達の身体が透け始める。撃沈したので転送させられてしまう前触れだ。

「やれ!神田達斗!!」
 ガイは転送させられる直前に達斗へ叫んだ。
 達斗はその意図を察して宣言する。

「フリップスペル発動!デスペレーションリバース!!

 デスペレーションリバース……目隠しした状態でシュート。このシュートでは自滅を無効にできる。ただし、使用後バリケードをすべて失う。

 達斗の目の周りに瘴気が集まって視界を奪う。だが、達斗の動きを封じるために纏わりついてくれている以上、敵機を見る必要はない。
「インスタントフィールド!いっけええええ!!!」

 3体のフリックスに纏わりつかれたまま、スプリントヴァーテックスは場外へ自ら飛んでいった。
 しかし、スペルの効果で自滅無効になり元の位置に戻る。場外したのは3体の敵機のみだ。大量の得点が入った。

「ぐ、く……!」
 自分が突出して得点した上に仲間の得点も下がってしまい、更に差がついてしまった事で、レイナはもう行動が出来なくなった。

 ピーーーーーーー!!!!
 ここでバトル終了の合図が響く。

『これにて、午後の部終了でーーーす!さぁ、結果発表ですよぉー!
なんと一位はぶっちぎりで宍戸レイナちゃん!最後の最後で一気に6体も撃破したのは本当にお見事でした!おめでとうございまーす!』

「……!」
 メイの実況に、レイナは顔を歪める。これは皮肉にしか聞こえない。

『2位は天崎翔也君!前半は勢いに欠けていましたが、バトル終了30分前から一気にスパートをかけて2位に躍り出ました!!
3位は神田達斗君!最後の最後で3体を撃破したのが効いたようで、滑り込みで入賞です!そして、4位はまさかまさかの同率者が80人以上もいます!いつにない大波乱のGFCサマー!素晴らしい戦いをありがとうございましたぁ!!』

 メイの実況を聞きながら、レイナは呆然とし、達斗はレイナを睨め付ける。

「セレスティアの好きにはさせない!絶対に……!」

 

    つづく

 

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