第28話「アイヤー!中華娘と二代目小竜隊」
7月下旬の休日昼下がり。
この日は達斗の両親が経営しているファミリーレストラン『ザイセリヤ』を休みにして、神田家一同で幕張本郷にある高級中華料理店『チャイナハウス 相葉楼』へランチに赴いていた。
相当人気な店らしく、昼時と言う事もあってか行列が出来ている。
神田家は予約していたので店内に入るとスムーズに席へ案内された。
「普段店が忙しくて家族サービスロクに出来なかった分、今日はお腹いっぱい食べてくれ!」
恰幅の良い父、士郎がまるで某すしざんまいのように手を広げながら太っ腹な宣言をした。
「「やったぁ!」」
達斗と美寧は年相応にはしゃぎがらメニューを食い入るように見つめる。
「そんな事言っちゃって大丈夫?」
母、美代子が苦笑しながら尋ねる。
「なぁに!たまには父親らしくカッコつけないとな!それに、新メニュー開発の研究にもなる」
「じゃあこの夏は中華系でアピールする?」
「そうだな、夏の暑さに負けない激辛四川料理などいいかもしれん!おっ、これとか良いなぁ」
美味しそうな料理の写真の乗ったメニューにはしゃぐ姉弟に、研究熱心でまるで少年のように目を輝かせる夫を見て、美代子は微笑ましくなるのだった。
「よし、決めた!僕このコースにしよう!小籠包と麻婆豆腐美味しそう」
「うーん、私は……このアワビのオイスターソース煮が気になるなぁ」
「はっはっは!好きなのじゃんじゃん頼みなさい!お父さんは、思い切ってフカヒレいっちゃおう!母さんは?」
「そうねぇ……たまには私も冒険しようかしら。燕の巣とか」
「おぉ、渋いチョイス!さすが母さん」
「つ、燕の巣!?燕って、スワローの方?」
「それ以外ないでしょ」
すっとんきょうな声をあげる達斗に美寧が苦笑する。
「鳥の巣なんか、食べて良いの?」
「なんだ達斗知らないのか?燕の巣ってのは、岩燕が海の岸壁で海藻とかを唾液で固めたモノなんだ。栄養満点なんだぞ」
「へぇぇぇ、そんなものを食べるなんて中華料理ってすごいなぁ」
「中国4000年の知恵は素晴らしいからな。父さんの店はイタリア料理で発展したものだけど、料理人としてより高みを目指すなら中華の研究は避けて通れないと思っている!」
「かっこいい……」
(ウチはただのファミレスなんだけどね……)
夢を語る父の姿に憧れを抱く息子に水を差すのも悪いので、美代子は心の中で突っ込んだ。
「あれ?どっかで聞いた声がすると思ったら……」
と、後ろのテーブルから声をかけられた。
「あ、翔也!」
「翔也君!?」
翔也とその両親がテーブルに腰掛けていた。
「あぁ、天崎さんもいらしてたんですか」
「どうも、いつも息子がお世話になってます」
「いえいえ、こちらこそ」
達斗の両親と翔也の両親が社交的に大人の挨拶を交わす。
翔也の両親はいかにも中流のサラリーマン家庭といった感じで、シュッとした仕事の出来そうなお父さんとしっかり者のお母さんと言った感じのごく普通の人だ。特別なものは何もないが、だからこそ翔也は伸び伸びとフリックスの才能を発揮できているのだろう。
「そうだ。席余ってるし、せっかくだから相席させてもらおうぜ」
「あ、いいね!そうしよ!」
「父さん、母さん、いいでしょ?」
「そうね、ご迷惑でなければ……」
翔也の母は翔也の提案に頷きつつも神田家の反応を見る。
「うちは全然構いませんよ。子供達も喜びますし」
「すみません、ではお言葉に甘えてお邪魔しますね」
「どうぞどうぞ!……あ、すみません店員さん!ちょっと隣の方と相席をお願いしたいんですけど!」
士郎は快く天崎家を受け入れて、近くを通りかかった店員に席の変更を申し出た。
こうして、神田家と天崎家で一つのテーブルを囲う大所帯となった。
テーブルの上に次々と料理が並べられ賑やかな食事会になる。
「翔也、随分変わったものばかり頼んだね」
翔也の目の前にある料理は『干しなまこの豚ひき肉詰め』やら『田鶏(カエル)の唐揚げ』やら『スッポンのスープ』やら、普段見慣れないものばかりだ。
「まぁな。こう言うときは冒険しねぇと損だろ」
「お母さんと似たような事言ってる……」
達斗の目の前にあるのは小籠包に春巻きに麻婆豆腐に、極々一般的なものだ。
「でもよく知ってる料理だからこそ、こう言う店だと味の違いが分かって楽しいってのもあるんじゃない?」
と、美寧がフォローする。
「それも一理ありますね。よし、タツ、取り替えっこしようぜ!」
「うん!」
こうして楽しい時間を過ごしていると、今度は奥から動きやすそうなミニタイプのチャイナドレスを着た保科メイが追加料理を持って現れた。
「はぁ〜いみなさーん!本日は相葉楼へご来店いただき、ありがとうございま〜す!一日店長を務めさせていただきます、保科メイです!美味しい料理をたっぷり堪能していってくださいね〜!」
「ごふっ、め、メイたん!?」
翔也と達斗は思わず料理を吹き出しかけるが勿体無いので耐える。
「あ、翔也様に達斗君に美寧ちゃん!来てくれてたんだ〜♪」
メイは追加料理を神田&天崎グループのテーブルに置いた。
「な、なんでメイたんが……」
「ふふ、ここが人気アイドル[台風]のメンバー、マサ君の実家なのは知ってるでしょ?前に共演した時に仲良くなって、その縁で時々バイトさせてもらってるんだ〜♪宣伝もさせてもらえるから結構助かってるの」
「へ、へぇ……変わった営業するんだね」
「うん!だってこれから夏に向けたビッグイベントが控えてるし、しっかりアピールしなきゃ!」
「へ?なんか大きなライブの予定あったっけ?」
最近のメイはセレスティアとのイザコザのせいで大きなライブは自粛気味だったはずだが……。
「ふふふ、それは夏のお楽しみだよ♪なにせ、みんなもよく知ってるイベントだからね!」
「「???」」
首を傾げる達斗と翔也をよそに、メイは美寧を指さした。
「それよりも美寧ちゃん。良くないよ、それ」
「え、私?」
急に話を振られて美寧は困惑した。
「こう言うお店は可愛い女の子のドレスコードってのがあるんだからね!」
「え、え、え!?」
そう言いながら美寧の手を掴むと強引に店の奥のスタッフルームへの連れ出していった。
「え、ちょ、これは流石に……!」
「良いから良いから、絶対似合うって!」
そして……。
店の奥から艶やかなロングスリットタイプのチャイナドレスに身を包んだ美寧が控えめな足取りで現れた。
「きゃー!やっぱり良く似合ってる!!ここでバイトしてた時、いつか美寧ちゃんに着せたいと思ってたんだぁ〜!!」
メイがはしゃぐ。
「は、恥ずかしい……」
顔を赤くして俯く美寧を両家の母親褒める。
「素敵だよ美寧ちゃん」
「ほんと、やっぱり女の子っていいわね〜」
一人息子しかいない天崎母は少し羨ましそうに言った。
「か、勝手にこんなことして良いのかな……」
「いいのいいの!だって、私今日店長だもん」
完全に公私混同の職権濫用だ。
「まぁ、俺はメイたんのこう言う自由なとこ好きだぜ」
翔也は呆れつつも、肯定的に苦笑した。
「そんな事よりぃ、達斗君は大好きなお姉ちゃんのこのセクシーな姿はどうかなぁ?」
メイが揶揄うように美寧を達斗の前に差し出す。
「ちょ、メイちゃん……」
もじもじと身体を捩る美寧。そのせいでチャイナドレス特有の質感によってボディラインが強調されてしまう。
「〜〜〜!!!」
達斗はたちまちに顔を真っ赤にして叫んだ。
「もう!僕に振らないでよ!!!」
照れ隠しにそっぽ向く。
「ははは!達斗、麻婆豆腐よりも顔が赤いぞ!!」
士郎のツッコミに、一同大笑いした。
「あ、そうだ。この後お店の裏にあるスペースでちょっとしたフリーバトル交流会やってるんだけど、ご飯食べ終わったら来てみない?結構強いフリッカーも来てるよ!」
「ほんとに?じゃあ行ってみようかな」
「だな。父さんと母さんは先帰ってて良いよ、俺ちょっとバトルしてくるから」
「はいはい」
「あんまり遅くなるなよ」
翔也の両親は快諾した。
「僕も、良い?」
「止めたって行くだろう」
「行っておいで。美寧ちゃんはどうする?」
「うーん、見ていきたいけど。私はこの後湊と約束あるから、二人と一緒に帰るよ」
「そっか……じゃあ翔也、急いで食べて行こう!」
「おう!」
達斗と翔也は急いで料理をかっこみ始めた。
「こらこら、ちゃんと味わっていけよ。……高いんだから」
慌てて注意する士郎に一同また笑うのだった。
「あ、そうだ。お店で食事した人限定だから、レシートは忘れないようにね」
メイはそれだけ伝えると仕事に戻っていった。
そして食後。達斗と翔也は店裏のスペースへ足を運んだ。受付にレシートを渡して中に入る。
そこには何台かのフィールドが設置しており、バトルするフリッカー達で賑わっていた。
「へぇ、結構盛り上がってるな」
「翔也、僕らも早速行こう!」
「ああ」
達斗と翔也が空いているフィールドに着くと、ガタイの良い少年に声をかけられた。
「やはり来たか、神田達斗、天崎翔也」
「ガ、ガイ!?」
「まさかお前まで中華食いにきてたとは」
「医食同源と言うように、良質な中華料理は滋養強壮に優れているからな。それに、サマー大会前にこいつの調整をしておきたかった」
ガイはそう言いながら機体を取り出して見せた。それは、ゼニスとよく似ていたが二人の全く知らない機体だった。
「そ、それは!?」
「新型機……!」
「新型ゼニス、[マッシブゼニス]だ!ちょうど良い、神田達斗!スプリング大会のリベンジがてら調整に付き合え」
「よし、分かった!」
達斗とガイがフィールドに着く。
「……」
と、ガイは徐に右手首にリング状のぶっといリストバンドを装着した。
「なんだ?珍しくオシャレか?」
翔也が茶化すとガイは不敵に笑った。
「今に分かる」
そしてバトルスタート。マインと機体をセットして対角から同時にシュートだ。
「「3.2.1.アクティブシュート!!」」
バシュッ!
(遅い……?)
翔也と達斗はガイのシュートに違和感を覚えた。
バキィィ!!
二機がフィールド中央で衝突する。
「っ、重い!?」
シュートスピードではスプリントヴァーテックスの方が勝っていた。
しかし、接触した瞬間あからさまにパワー負けしてヴァーテックスの方が弾き返されてアクティブアウト。マッシブゼニスは、まるで接触などはじめからなかったかのように場内に居座っている。
「な、なんだぁ!?」
「シュートと言うより、スペックが違うような……!」
翔也はガイのマッシブゼニスに表記されているステータスをよく観察した。HP15、そしてバリケードの枚数は0だ。
「まさか!」
そして所持しているスペルはミステリーウェイトと表記されている。
「でもミステリーウェイトならHPはペナルティで10になるはず……」
ミステリーウェイトの効果は100g以下の機体の重量レギュペナルティによるHP減少数を-10から-5に半減すると言うものだ(その代わりバリケードの所持が出来なくなる)。
しかし、そのスペルを所持しているのにマッシブゼニスはHPペナルティを受けていない。それに、あの重量感はたかだか100g程度のものでは無い。
「って事は、そのリストバンドか!」
翔也がガイの身に付けているリストバンドを指差すと、ガイはフッと笑い同じものを取り出して翔也へ投げ渡した。
「うぉっと、おもっ!!何キロあるんだこれ……!」
「5kgだ」
「って事は、500gにつき10gアップできるから……172g!?」
ミステリーウェイトのもう一つの効果、シュートする方の手首に錘を取り付ければ、その錘500gにつき機体重量を10g増加しても重量レギュ違反にならない。つまり、フリッカーの筋力(重い物を持つ力)を機体重量に変換出来るのだ。
ガイは5kgのリストバンドを装着してるので、機体重量レギュの上限が100g増加。172gになる。
「ヴァーテックスの倍以上の重量差……!」
「ってかそんなもの投げ渡すなよ!危ねえな!!」
柔らかい素材で保護してあるとはいえ、5kgの物体は気軽に投げ渡すものではない。
「5kgのリストバンドをつけたままシュートするなんて……!」
ただ5kgのウェイトを身につけるだけなら大した事はない。しかし、その上でフリックスシュートしなければならないとなると話は変わる。腕も機体も重くなるので、瞬発力ではなくトルクが重要になる。
「でも、タネが分かれば……!」
仕切り直しアクティブを構える。
達斗はスプリントヴァーテックスと目線を合わせた。
ポゥ……!
と光の点が見える。
(あれが来るか、だが!)
ガイは拳に力を込める。モリッと二の腕の筋肉が隆起する。
「3.2.1.アクティブシュート!!!」
「フラッシングクエーサー!!」
「ニュークリアプレッシャー!!」
バゴォォーーーン!!!
達斗は光の点を見据えた超ストレートシュート、一方のガイは腕に着けた錘の重量を逆に利用した拳のシュートだ。重い腕と重い機体、まるで核融合反応かのようなパワーが発生する!
「あいつっ、腕に着けたウェイトをブースターにしやがった……!」
凄まじい衝撃から目を凝らしながら翔也は言う。
バーーーーン!!!
勢いよく弾かれた二機は、躱わす余裕もなくそれぞれのフリッカーの身体にヒットする。
同時ダイレクトヒットでドローだ。
「ひ、必殺技使ったのに、ドロー……!」
「……やはりあの技には重量差だけでは圧倒できないか」
フラッシングクエーサーは相手の重心を狙って急所を的確に突いて相手の防御力を突破する技だ。重量を高めた機体相手には相性良い。
だが、それでも倍以上の重量差の前にはドローが限界だったらしい。
「良い調整になった、礼を言う。決着はサマー大会で着ける」
ガイは機体を拾うと踵を返した。
「ちょ、ちょっと待てよ、俺とも戦ってけよ!」
無視された翔也が慌てて引き止めようとする。
「貴様とのバトルは、クルーズで決着はついたからな。リベンジしたければサマー大会で受けてやる」
「なっ、てめ……!」
ガイは皮肉っぽく鼻で笑うとそのまま歩いて行った。
その途中、ガイは右腕を軽く抑える。痙攣していた。
(さすがにまだ負担が大きいな。サマー大会までに確実に自分のものにしなければな)
翔也の誘いを断った本当の理由はこれのようだ。5kgのウェイトを着けたまま172gの機体を本気で殴り飛ばすのは相当体力を使うらしい。
ガイを見送ったあと、翔也と達斗は手持ち沙汰になった。
「ちぇ、なんか他に面白そうなフリッカー探すか」
めぼしいフリッカーがいないか見渡す。
「……あれ?美ね……って、違った」
達斗の視界に、先ほど美寧が着ていたような艶やかなチャイナドレスが目に入り、美寧の名前を口に出しそうになったが、よく見るまでもなく明らかに人違いだったので訂正した。
その少女は、衣装こそ先程の美寧と似ていたが、ただ着せられた美寧とは違い。髪型も雰囲気も何もかもが活発な中華少女と言った感じだ。
「あの子もメイたんから衣装借りたのかな?」
「にしても本格的だよなぁ……。ちょうど良いや、あの子とバトルしてみるか。ねぇ、君ー!」
翔也に声をかけられて中華少女が怪訝な顔で振り向く。
「ん、サンニャンに何か用アルか?」
「君もバトルしに来たんだろ?良かったら俺らとやろうぜ!」
翔也が友好的に声をかけるが、サンニャンと名乗った少女の反応は薄い。
「サンニャン、バトルしに来た違うアル。人を探しに来てるヨ」
「人探し?知り合いか何か?」
「知り合い違うネ。サンニャン、関ナガトのファンアルよ!」
そう言いながら、サンニャンは緑が基調の機体を取り出して見せた。それはまるで鬼のような威圧感を放っていた。
「それは、マイティオーガ!?」
翔也が反応する。
「関ナガト?マイティオーガ?」
まだフリックス歴の浅い達斗は首を傾げる。
「関ナガトってのはFICSで活躍してるプロフリッカーだ。確か今は中国に遠征してんじゃなかったかな?その関ナガトがアマチュア時代に使ってたのが、その子の持ってるマイティオーガだ」
翔也の解説を聞いてサンニャンのテンションが上がる。
「そう!アナタ物知りアルな!!サンニャン、中国で関ナガトの活躍見て一目惚れしたネ!このマイティオーガもネットでいっぱい調べて、AIとかも使って一生懸命作ったヨ!!」
さすが中国人、IT系は強いようだ。
「自分でレプリカ作ったのか、すげぇな。でも、センチュリーオーガにはしなかったんだ」
センチュリーオーガは現在ナガトが使用している機体だ。
「それは解釈違いネ!!!まだペーペーなサンニャンはマイティオーガで修行を積みたいヨ!」
推し活として拘りが強いようだ。
「なるほどね」
「それで関ナガトの原点でもある小竜隊が日本の千葉にある事を知って、サンニャン小竜隊に入るため遥々中国から来たアルよ!でも、なかなか場所見つからなくて困ってたアル」
「小竜隊かぁ、確かあそこ今隊員募集してないからサイトとかも作ってないんだっけ。良かったら俺が案内しようか?」
「真的!?」
翔也の提案にサンニャンは中国語で歓喜した。
「ああ、どうせこの後予定ないし。ここからなら割と近いしな」
「謝謝!謝謝!あ、ワタシ、バオ・サンニャン言うヨ!よろしくアル!」
サンニャンは感激して翔也の手を掴んでブンブンと振った。
「あぁ、俺は翔也」
「僕は達斗、よろしく。それにしても翔也、随分詳しいね」
「まぁな。ほら、去年のSGFC決勝で俺と戦った闘将ナオトって覚えてるか?」
「え、あー、うーん、覚えてるような」
あの頃の達斗はまだフリッカーではなかったので、さすがに翔也の対戦相手までは覚えてない。
「ナオトとは去年結構付き合いあったんだよ。んで、ナオトの所属してる[チームバイエルン]が小竜隊と宿命のライバルでさ、その縁で俺も小竜隊と練習試合した事あるんだ。おかげでかなり腕を磨けたんだよな」
「へぇ……」
翔也の去年のフリックス活動はあまりよく知らなかったので、なんだか不思議な気分だ。
「それじゃあ、早速案内お願いするアル!」
話し込んでてもアレなので、早速出発する事にした。
「分かった」
「あ、ちょっと待つアル!その前に」
急かしておきながらたんましたサンニャンは、スペースの隅に何故か置いてある仏像のようなものに駆け寄って拝み始めた。
「何してんの?」
「仏像?」
「これは中国の武神であり三国志のヒーロー、関羽を祀っているミニ関帝廟ネ!このマイティオーガと共に小竜隊の元に無事辿り着けるようにお祈りするアルよ」
関帝廟といえば神戸や横浜にあるものだが、中華料理店でも中国の神様に肖って仏壇のように置かれる事があるらしい。
「小竜隊ってどんなフリッカーチームなの?」
「それは道中歩きながら説明するよ。サンニャン、そろそろ行こうぜ!」
「我知道了〜!」
……。
…。
と、その頃、千葉県市川市にある小竜隊の道場では何やらトラブルが発生しているらしく、唯ならぬ雰囲気を醸し出していた。
道場のコーチであるゲンジ、ユウスケ、ツバサの三人が何やら深刻な顔で、メンバーであるリュウ、サイヤ、テッペイ、トウジの四人へ報告をしている。
「ゲ、ゲンジさん、それ本当ですか!?」
二代目小竜隊隊のリーダー、封神リュウがゲンジに詰め寄る。
「あぁ、冗談でこんな事言えない。今朝、花厳マサノブから正式に小竜隊からの退所願が届けられた」
「そんな、うそだろ……なんで……!」
リュウがヨロヨロと後ずさる。
「僕達だって、信じたくないよ」
「親御さんとも話したんやけどな、本人の意思は硬いようで、うちらとも顔合わせたくないようなんや」
「マサノブが……俺達を、避けてる……?」
「ど、どうしちゃったんでしょう、マサノブ先輩」
「オラ、わけわかんねぇぞ」
困惑してざわつくメンバーを刺激しないようにゲンジは気を遣いながら質問した。
「俺も、5人は上手くやってると思ってたから、まさかこんな事になるなんて……何か、心当たりがあるものはいないか?」
4人はゆっくり首を振る。
「マサノブ殿は、少々抱え込む所があった故……拙者達には預かり知らぬ想いがあったのかもしれぬ」
テッペイがそう呟くと、リュウはダンと床を叩いて叫んだ。
「だったら!なんで何も言ってくれなかったんだよ!俺達、仲間なのに……いや、違う……俺が、気付くべきだったんだ……すまねぇ、マサノブ……!」
リュウは拳を握りしめて歯を食い縛り自責する。
「リュウ君、自分を責めちゃダメだよ」
ユウスケはそんなリュウの肩にそっと手を添える。
「で、でも、次の赤壁杯はどうなるんでしょうか……?」
トウジが遠慮がちに不安を口にすると、ゲンジが言いづらそうに話す。
「登録メンバーは原則5人……欠員が出た以上は補充するしかない……でも、もう時間がない。最悪の場合は……」
その先を口にする事は出来なかった。
誰に言われるまでもなくどうなるかは分かり切っている。まるでお通夜のような嫌な沈黙が続いた。
バッ!
「ニーーハーオッ♪」
と、突如空気をぶち壊すように勢いよく扉が開かれて、サンニャンがお気楽な挨拶と共に入った。
「おおお!東堂ゲンジに乾ユウスケに張本ツバサ!関ナガトと苦楽を共にした初代小竜隊レジェンド!本物アルね!!」
サンニャンは目を輝かせながらゲンジ、ユウスケ、ツバサを舐め回すように眺める。
「え、え、え???」
「な、なんやなんやいきなり!?」
唐突な出来事にお通夜ムードも一気に吹っ飛んでしまった。
「はじめまして〜!ワタシ、バオ・サンニャン言うヨ!」
「バオ・サンニャン……?」
ゲンジは脳の処理がおっつかないまま、名乗られた名前をただ呟くしかなかった。
「ちょ、サンニャン!勝手に駆け出すなって!」
「待ってって言ったのに……!」
と、少し遅れて翔也と達斗も息を切らしながら入ってきた。
「ん、あ、もしかして天崎翔也!?」
よく見知った顔である翔也の姿を確認してゲンジが反応する。
「あ、どうもお久しぶりです……!」
翔也は苦笑いしながら会釈した。
「懐かしいなぁ!去年ナオトと一緒にやった練習試合ぶりだっけ?」
「はい、その節はお世話になりました。お陰様で去年のSGFCは準優勝出来ました」
「大したもんやで。そういえばユース大会も見たで、大活躍やったやんか!」
「そちらの子は確か神田達斗、だったかな?最近GFCで活躍してたし、ユース大会でもチーム組んでたよね」
「は、はじめまして、小竜隊の皆さん」
ゲンジは子供の頃から割とそう言う情報は仕入れる方である(トリニティ第1話参照)。
初対面ではあるが、互いに情報を持っているので自己紹介の必要はなさそうだ。
「あ、もしかしてそれでチーム戦に興味が出てウチに来たんか?」
「あ、いや、それは俺じゃなくてそっちの子が……かくかくしかじかで」
翔也は簡単に事の顛末を説明した。
「……なるほどな。ナガトに憧れて、それで小竜隊に入りたいと」
ゲンジは大体の事情を理解して頷いた。
「このマイティオーガも一所懸命作ったネ!」
サンニャンがアピールとしてマイティオーガを見せる。
「うわ、懐かしい!よく再現出来たね!」
元々の開発者であるユウスケが感嘆する。
「自信作アルよ!」
サンニャンは得意げに胸を張った後、すぐに勢いよく頭を下げた。
「サンニャン、頑張るから是非小竜隊に入れて欲しいアル!!このとーりネ!!」
しかし、ゲンジの反応は芳しくない。
「うーん、遥々来てもらって悪いんだけどさ。こっちも今ちょっとゴタついてて、それどころじゃないんだ。だから……」
大事なチームメンバーが急に辞めてしまい、大会に出られるか否かと言う時にいきなり来訪してきた見知らぬ少女の相手をしている余裕はない。ここは丁重にお引き取り願おうとするゲンジだが……。
「何言うとんのや、ゲンジ。これは渡りに船やないか!」
それをツバサが止めた。
「え?」
「ウチらは今メンバーが欠員しとる、そこに入所希望者が来た。なら答えは一つやんか」
「いや、そんな単純な話じゃ」
「簡単な算数や。それに見てみいあのマイティオーガを、大した再現度や。あれだけのものが作れるなら戦力も申し分ないやろ?」
「そりゃそうだけど」
ツバサのプッシュにゲンジが納得しかけた瞬間、リュウが声を張り上げた。
「俺は反対だ!!!」
「リュウ……」
「マサノブの代わりは誰もいない!」
「そら、気持ちは分かるけどな」
リュウの突然の怒声に、一同水を打ったように静まり返った。
「……あ、あの、差し支えなければ、そちらの事情を伺っても宜しいですかね……?」
沈黙に耐えきれず、翔也が遠慮がちに尋ねる。
「あぁ、悪い。実は、まるまるうまうまで」
ゲンジは先程翔也がしたような簡単な事情説明をした。
「なるほどな……それは、なんと言うか、難しいな……」
翔也が困ったように呟くと、リュウが口を開いた。
「俺達の小竜隊は、この5人揃ってこそなんだ!頭数があればいいわけじゃない!マサノブがいないなら、俺は赤壁杯出場を辞退する!」
リュウの気持ちを聞いて、ゲンジは深く頷く。そして他のメンバーへ視線を移した。
「……皆は、どうなんだ?」
ゲンジが問うと、メンバーは遠慮がちに声を出した。
「お、俺は、マサノブ先輩がいなくなるのは嫌ですけど、でも、赤壁杯には、出たい、です……」
「オラも、戦えるなら戦いてぇ」
「拙者は、どこの馬の骨とも分からぬものに武運を託したくはない。だが、戦わずに敗走するのはごめん被る」
それぞれの想いを語る。マサノブへの想いはリュウと同様にあるようだが、マサノブ抜きでの赤壁杯出場に関しては比較的前向きなように見える。
「そうか……」
明らかに場違いだと感じた達斗は、やんわりとサンニャンへ諦めるように促す。
「ちょっとタイミング悪かったかもね……サンニャン、今日のところは帰った方がいいんじゃ」
しかし、サンニャンは物怖じせずに言い切る。
「嫌アル!サンニャン小竜隊に入れてもらうまでテコでも動かないアル!」
「サンニャン……!」
「サンニャン、二代目小竜隊の活躍もよく見てたヨ!花厳マサノブの戦い方も大好きだったネ!だから今日小竜隊やめたと聞いたの、サンニャンもすごく悲しかったアル。でも、それでもサンニャンは小竜隊の皆とフリックスがしたいアル!それに、サンニャンが力になれる事があるなら、なりたいネ!」
サンニャンのあまりにも素直でまっすぐな瞳を見て、ゲンジは思いを馳せる。
(リュウの気持ちはよく分かる……昔の俺が同じ状況になったら、きっと同じ反応をしてた。でも、彼女の小竜隊を想う気持ちも本物だ。小竜隊の絆は小さく閉じこもるべきじゃないのかもしれない)
ゲンジは意を決して口を開いた。
「分かった、じゃあテストをしよう」
「テスト?」
「バオ・サンニャン、天崎翔也、神田達斗の三人と小竜隊三人でチーム戦をするんだ。そのバトルの内容でバオ・サンニャンが本当に小竜隊メンバーに相応しいかどうかを決める」
「チーム戦!?」
「ちょ、ちょっと待ってください!俺とタツはともかく、サンニャンとはさっき会ったばかりでチーム戦なんか……」
翔也が慌てて抗議するが、ゲンジは動じずに説明する。
「いや、だからこそだ。マサノブが抜けてサンニャンが入るって事は、小竜隊は即興のチームとして戦う事になる。なら即興チームの中でサンニャンがどう動くのか、それが見たい」
「いや、まぁ、理屈は分かりますけど。俺ら責任取れないですよ?」
さすがの翔也も、サンニャンや小竜隊の今後に関わるバトルとなると困惑してしまうが、ゲンジが穏やかに説明した。
「別に勝てなくたっていいんだ。勝敗じゃなくて、内容で判定する。……審査するのは、リュウ。お前だ」
「え、俺?」
急に指名されて目を見開く。
「サンニャンがマサノブの穴を埋めるに相応しいかどうか、それを判断出来るのはお前しかいない」
「俺は……認めないですよ」
「それでもいい。ただ、その答えはバトルの後に聞かせてくれ」
「……分かりました」
と言う感じで、なし崩し的にサイヤ、テッペイ、トウジの二代目小竜隊三人とサンニャン、翔也、達斗の三人によるチーム戦をする事になった。
ルールは赤壁杯と同様の3点制の初級アクティブバトルだ。
「タツ、スーパーノヴァトルネードはサンニャン巻き込むかもしれないし、封印した方が良いかもな」
「そうだね。それにこれはサンニャンのテストだし」
バトル前に達斗と翔也はコソッと話し合った。
3vs3用の少し広めなフィールドにそれぞれマインをセットする。達斗は二つマインをセットした。
それを見て、小竜隊はコソコソと話す。
(ボマーか、となると誰かブレイズバレットを仕込んでいるな)
(機体のタイプ的にはエイペックスの天崎翔也でしょうね)
(なら、ブレバを喰らわないように警戒すっぞ)
翔也のブレイズバレットは厄介だ。しかも、ボマーと合わせられると成功率が上がる。警戒は必至だろう。
そして、お互いに向き合って最初のアクティブシュートをする。
バシュッ!!
「先攻はツインターボユニコーン!小竜隊だ!」
さすが機動重視の機体だ。
「おっしゃ、先手必勝決めっぞ!!」
「いきましょう!」
「御意!!」
三人はそれぞれ抜群の連携で見事全員にマインヒットを決めた。
これで翔也達斗サンニャンは1ダメージ食らって残りHP2だ。
「い、いきなりやられた……!」
「ただのマインヒットじゃない。互いの立ち位置を把握しあって連携している。即興チームで出来る技じゃないぞ……!」
「さすが小竜隊!すっごいアルね!でも、サンニャンも負けないアル!!」
「あ、ちょ!」
作戦を話し合う前にサンニャンがツインターボユニコーンへ狙いを定めてしまう。
「アイヤー!鬼牙二連斬アル!!」
バシュッ、バキィィィ!!!
「「なにぃ!?」」
マイティオーガのフロントアッパー刃で掬い上げた敵機を上部の刀で追撃するナガトの必殺技だ。
(まさか、あの技を習得していたのか……!)
ゲンジはサンニャンの才能に驚愕する。
「させぬ!!」
「仲間はやらせねぇぞ!」
シュンッ!
サイヤとテッペイがサンシャインワイアームとカリバーセンチュリオンを素早くステップさせて、飛ばされたツインターボユニコーンを支えた。
「トウジ、でぇじょうぶか!?」
「あ、ありがとございます!」
「礼には及ばぬ、これで不動の陣形が取れた!」
そう、ツインターボユニコーンを助けただけでなく自然と3機が固まる防御陣形が取れている。
「くっ、なんてスムーズな試合運びなんだ……!」
「マインも遠いし、あの防御を突破するのは難しいよ」
「仕方ねぇ、ここはマイン再セットでお茶を濁すか」
攻撃手段が無いのに無理に動いても仕方ない、翔也は動かずにマイン再セットでターンを終わらせようとするのだが。
「何言ってるネ?二人ともとっておき隠してるの知ってるアルよ!それ使うよろし!」
「えっ……!」
「で、でも」
「サンニャン思いっきりシュートした!だから二人も思いっきりやるネ!仲間と思いっきり楽しむのがチームアルよ!」
その言葉を聞き、ゲンジはハッとした。
(そう言えば、ナガトはチーム戦でも全員で連携するより、個々の力を高めあいながら最大の成果を得ようとするタイプだったな……あの子、そこまでナガトへの解像度が高かったのか)
「よし、やるか、タツ!」
「うん!」
サンニャンの後押しにより、翔也と達斗は合体技の構えをとった。
「何かしてくるな」
「ユース大会で出したあの技かもですね」
「オラワクワクっぞ!」
まずは翔也がスピニングエイペックスをスピンシュート。
そこへ達斗がスプリントヴァーテックスをストレートシュートでぶつける。
「「いっけぇ!スーパーノヴァトルネード!!」」
凄まじい磁気嵐を発しながら強烈スピンするエイペックスを、ヴァーテックスのマグネバウンドで弾き飛ばして高速で相手にぶつける大技だ。
バゴオオオオオン!!!!
さすがの防御陣形もこれには耐えきれず全員フリップアウトしてしまった。
小竜隊は全員2ダメージ受けて残りHP1だ。
しかし、その勢いにサンニャンのマイティオーガも巻き込まれて場外してしまい自滅扱いで1ダメージ。サンニャンは残りHP1だ。
「やったアルね!翔也、達斗!!」
「うん!でもごめん、巻き込んで……」
「気にしないアル!これで形成逆転ネ!」
小竜隊のターン。チーム戦なので場外しても仕切り直しはせずに復帰位置に戻して続行する。
「少々侮っていた。しかし、ここからが拙者達の本領発揮!」
「おっしゃ、いっちょやってやんぞ!!」
サイヤとテッペイがほぼ同時に機体をシュートする。
「カリバーセンチュリオン!!」
「サンシャインワイアーム!!」
そして同時にスプリントヴァーテックスへ着弾する。
バゴォォ!!!!
見た目以上の衝撃が入り、スプリントヴァーテックスは場外してしまった。
これで達斗は撃沈だ。
「二体同時に攻撃する事で火力を高めた!?」
「息ぴったりだ……」
「次は俺です!!」
トウジがツインターボユニコーンを走らせ、スタート位置に復帰したばかりのマイティオーガへマインヒットを決めた。
これでサンニャンも撃沈だ。
翔也はHP2のままだが、たった一人で3体を相手にする事になる。
「面白くなってきたぜ!いけ!スピニングエイペックス!!」
ガッ、ガッ!!
スピニングエイペックスは壁反射しながらサンシャインワイアームにマインヒットを決める。サイヤ撃沈だ。
「これで同時攻撃は出来ないぜ!」
「ならば、受け取れ!トウジ!!」
カッ!
テッペイが近くのマインを弾き飛ばしてツインターボユニコーンに当てる。
「はい!行きます!」
バキィ!!
ツインターボユニコーンはマインを場外へ弾きとばしながらスピニングエイペックスにヒット。更に、カリバーセンチュリオンとも距離を取った。
翔也残りHP1。
「盤石な布陣。これで彼奴はこのターン拙者達を仕留める事は不可能なはず」
「ここを凌げば返しのターンでマインヒットを決めて俺達の勝ちですね!」
マイン、両敵機、全てが遠い位置にある。どちらかを仕留めたとしても次のターンで返されてしまう可能性が高い。
「確かに1シュートじゃ仕留めきれねぇな……なら、フリップスペル発動!ライトニングラッシュ!!」
忘れた時のスペル発動!
ライトニングラッシュは3秒間何度でも機体をシュート出来るスペルだ。
「しまった!仕込んでいたスペルはライトニングラッシュであったか!?」
「てっきりブレイズバレットかフレイムヒットかと……!」
マインヒット型のエイペックスならマインを強化するスペルを仕込んでいると思い、それを使われない立ち位置を意識していたのに。
「チーム戦なら、複数体に攻撃できるライラが有効だからな!いっくぜ!!」
シュン、シュン、シュン!!
翔也は何度もエイペックスをシュートしてツインターボユニコーンとカリバーセンチュリオンを捉えて見事撃破した。
サンニャン、翔也、達斗チームの勝利だ!
「ちくしょう負けちまった〜」
「さすがは現アマチュアチャンピオン、天崎翔也だ」
「闘将ナオトさんと日本一を競い合っただけはありますね……」
「おっしゃ、決まったぜ!」
「やったね、翔也!」
「やったアル!サンニャン達の勝利アルよ!!」
飛び上がって勝利を喜ぶサンニャンだが、ふと達斗は冷静になる。
(あれ?で、でも、これっていいのかな……)
リュウは、自チームの勝利を素直に喜ぶサンニャンをただ見つめていた。
そして、運命の結果発表だ。
「さて、バトルの結果はサンニャンチームの勝利だが……リュウ、お前はこのバトルでバオ・サンニャンをどう評価する?」
ゲンジがリュウへ結果を尋ねる。
「……不合格だ。マサノブの代わりにはなれねぇよ」
リュウは不機嫌そうに審判を下した。
「まぁ、そうなるよね……」
「そ、そんなぁ〜、勝ったのに残念アル……!」
サンニャンはがっくしと項垂れる。
「翔也がサンニャンに花を持たせないから」
達斗は冷たい目線を翔也に送った。
「悪い……ってかこれ俺のせいか!?」
ちょっと理不尽ではある。
「でも、結果は結果……仕方ないアル」
サンニャンはゆっくりと踵を返すが、リュウがそれを引き止めるように更に言葉を続ける。
「……でもまぁ、赤壁杯までまだ時間がある。また挑戦すればいいんじゃねぇの?」
それを聞き、サンニャンは振り返った。
「リュウ……」
「リュウ君……」
リュウは照れ隠しにそっぽを向く。
「素直やないな」
サンニャンの顔はたちまちパァっと明るくなり、そっぽを向いているリュウへ飛び込んで抱きついた。
「謝謝!謝謝!リュウ〜!!」
「おわっ、やめろ!俺はまだ認めたわけじゃないからな〜!!」
……。
…。
セレスティアアジト。
薄暗い部屋の中で、プロフェッサーFと一人の少年が対峙していた。
「ようこそ、セレスティアへ!歓迎しよう……花厳マサノブ」
つづく


